36 / 60
第3章 ちびっこ怪獣三匹、仲間と共に|能力《ちから》の検証をする
5
しおりを挟む
コズエの腕にしがみつきながら、カエデが震える指先でガジュマルっぽい大木の上部を示す。
見れば、枝のような根っこのような部分がうねうねとうねりながらまとまり、腕のような形を作りつつあった。
「待て待て待て、みんな待て。危ないから突っ込むな!」
動き出した巨木を見て大内先生が全員に待ったをかけるが、ユーゴとケースケは止まらない。
身の安全の確保なんて二の次だ。
そんなもの、大事な仲間の無事を確認してからでも遅くない。
それに--……。
光太に能力が使えたのなら、自分たちにも使えるはずだ。
いや、絶対に使える。
光太と同じように、自分たちだって能力を与えられたのだから、使えないわけがない。
どんな能力でもいい。あるならさっさと発動しろと、ふたりは走りながら強く願う。
ユーゴは--ケースケも--光太が言っていた『最初の文字』を頭に思い描く。
石の板に刻まれていた、『見たこともない文字』。
いまにして思えば、異世界の文字だったのだろう。
光と同化したと同時に、読めはしなくとも、意味はわかるようになったソレ。
ユーゴに同化した光が最初に宿った文字は、『知性』だった。
知性とは、物事を知り、考えたり判断することのはず。
だったら、光太のいまの状態を教えろと、ユーゴは強く願う。
『物事を知る』ために必要な能力を全部寄越せ。
そうして、望むすべての事柄を自分に示せ--と。
ケースケに同化した光が最初に宿った文字は、『屈強』だった。
屈強なんて言葉、ケースケはまだ習っていない。
でも、言葉の意味は知っている。
力が強くて頑丈なことだと、前にマンガで読んだ。
なら、みんなを守れる強さが欲しいと、ケースケは強く願う。
『頑丈』さをじゅうぶんに発揮できるだけの能力をいますぐこの手に。
大内先生がなにか叫んでいるけれど。
すぐ後ろを木本先生がついてきているということは、気にしなくてもいいことなのだと思うことにする。
だって、うねうねと動き出した木の枝が。ヒゲのような根っこが。
幹にできた大穴をふさごうとするかのように動いて、中にいる光太を絡めとろうとしているのだ。
待ってなんていられない。
「コウちゃん! 生きてる? ケガはしてない!?」
「いま出してやるからな、コウちゃん!」
光太の元まで走り寄り、ふたりは声を張り上げる。
頭を低く、槍を腰だめに構えて突っ込んでいったせいで、光太は上半身のほとんどが巨木に埋まっているような状態だ。
じたばたとあがいているから意識はあるのだろうが、巨木が光太ごと自身にあいた大穴をふさごうとしているせいで、うまく抜け出せずにいるらしかった。
見れば、枝のような根っこのような部分がうねうねとうねりながらまとまり、腕のような形を作りつつあった。
「待て待て待て、みんな待て。危ないから突っ込むな!」
動き出した巨木を見て大内先生が全員に待ったをかけるが、ユーゴとケースケは止まらない。
身の安全の確保なんて二の次だ。
そんなもの、大事な仲間の無事を確認してからでも遅くない。
それに--……。
光太に能力が使えたのなら、自分たちにも使えるはずだ。
いや、絶対に使える。
光太と同じように、自分たちだって能力を与えられたのだから、使えないわけがない。
どんな能力でもいい。あるならさっさと発動しろと、ふたりは走りながら強く願う。
ユーゴは--ケースケも--光太が言っていた『最初の文字』を頭に思い描く。
石の板に刻まれていた、『見たこともない文字』。
いまにして思えば、異世界の文字だったのだろう。
光と同化したと同時に、読めはしなくとも、意味はわかるようになったソレ。
ユーゴに同化した光が最初に宿った文字は、『知性』だった。
知性とは、物事を知り、考えたり判断することのはず。
だったら、光太のいまの状態を教えろと、ユーゴは強く願う。
『物事を知る』ために必要な能力を全部寄越せ。
そうして、望むすべての事柄を自分に示せ--と。
ケースケに同化した光が最初に宿った文字は、『屈強』だった。
屈強なんて言葉、ケースケはまだ習っていない。
でも、言葉の意味は知っている。
力が強くて頑丈なことだと、前にマンガで読んだ。
なら、みんなを守れる強さが欲しいと、ケースケは強く願う。
『頑丈』さをじゅうぶんに発揮できるだけの能力をいますぐこの手に。
大内先生がなにか叫んでいるけれど。
すぐ後ろを木本先生がついてきているということは、気にしなくてもいいことなのだと思うことにする。
だって、うねうねと動き出した木の枝が。ヒゲのような根っこが。
幹にできた大穴をふさごうとするかのように動いて、中にいる光太を絡めとろうとしているのだ。
待ってなんていられない。
「コウちゃん! 生きてる? ケガはしてない!?」
「いま出してやるからな、コウちゃん!」
光太の元まで走り寄り、ふたりは声を張り上げる。
頭を低く、槍を腰だめに構えて突っ込んでいったせいで、光太は上半身のほとんどが巨木に埋まっているような状態だ。
じたばたとあがいているから意識はあるのだろうが、巨木が光太ごと自身にあいた大穴をふさごうとしているせいで、うまく抜け出せずにいるらしかった。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
王女様は美しくわらいました
トネリコ
児童書・童話
無様であろうと出来る全てはやったと満足を抱き、王女様は美しくわらいました。
それはそれは美しい笑みでした。
「お前程の悪女はおるまいよ」
王子様は最後まで嘲笑う悪女を一刀で断罪しました。
きたいの悪女は処刑されました 解説版

こちら御神楽学園心霊部!
緒方あきら
児童書・童話
取りつかれ体質の主人公、月城灯里が霊に憑かれた事を切っ掛けに心霊部に入部する。そこに数々の心霊体験が舞い込んでくる。事件を解決するごとに部員との絆は深まっていく。けれど、彼らにやってくる心霊事件は身の毛がよだつ恐ろしいものばかりで――。
灯里は取りつかれ体質で、事あるごとに幽霊に取りつかれる。
それがきっかけで学校の心霊部に入部する事になったが、いくつもの事件がやってきて――。
。
部屋に異音がなり、主人公を怯えさせる【トッテさん】。
前世から続く呪いにより死に導かれる生徒を救うが、彼にあげたお札は一週間でボロボロになってしまう【前世の名前】。
通ってはいけない道を通り、自分の影を失い、荒れた祠を修復し祈りを捧げて解決を試みる【竹林の道】。
どこまでもついて来る影が、家まで辿り着いたと安心した主人公の耳元に突然囁きかけてさっていく【楽しかった?】。
封印されていたものを解き放つと、それは江戸時代に封じられた幽霊。彼は門吉と名乗り主人公たちは土地神にするべく扱う【首無し地蔵】。
決して話してはいけない怪談を話してしまい、クラスメイトの背中に危険な影が現れ、咄嗟にこの話は嘘だったと弁明し霊を払う【嘘つき先生】。
事故死してさ迷う亡霊と出くわしてしまう。気付かぬふりをしてやり過ごすがすれ違い様に「見えてるくせに」と囁かれ襲われる【交差点】。
ひたすら振返らせようとする霊、駅まで着いたがトンネルを走る窓が鏡のようになり憑りついた霊の禍々しい姿を見る事になる【うしろ】。
都市伝説の噂を元に、エレベーターで消えてしまった生徒。記憶からさえもその存在を消す神隠し。心霊部は総出で生徒の救出を行った【異世界エレベーター】。
延々と名前を問う不気味な声【名前】。
10の怪異譚からなる心霊ホラー。心霊部の活躍は続いていく。
おっとりドンの童歌
花田 一劫
児童書・童話
いつもおっとりしているドン(道明寺僚) が、通学途中で暴走車に引かれてしまった。
意識を失い気が付くと、この世では見たことのない奇妙な部屋の中。
「どこ。どこ。ここはどこ?」と自問していたら、こっちに雀が近づいて来た。
なんと、その雀は歌をうたい狂ったように踊って(跳ねて)いた。
「チュン。チュン。はあ~。らっせーら。らっせいら。らせらせ、らせーら。」と。
その雀が言うことには、ドンが死んだことを(津軽弁や古いギャグを交えて)伝えに来た者だという。
道明寺が下の世界を覗くと、テレビのドラマで観た昔話の風景のようだった。
その中には、自分と瓜二つのドン助や同級生の瓜二つのハナちゃん、ヤーミ、イート、ヨウカイ、カトッぺがいた。
みんながいる村では、ヌエという妖怪がいた。
ヌエとは、顔は鬼、身体は熊、虎の手や足をもち、何とシッポの先に大蛇の頭がついてあり、人を食べる恐ろしい妖怪のことだった。
ある時、ハナちゃんがヌエに攫われて、ドン助とヤーミがヌエを退治に行くことになるが、天界からドラマを観るように楽しんで鑑賞していた道明寺だったが、道明寺の体は消え、意識はドン助の体と同化していった。
ドン助とヤーミは、ハナちゃんを救出できたのか?恐ろしいヌエは退治できたのか?
忠犬ハジッコ
SoftCareer
児童書・童話
もうすぐ天寿を全うするはずだった老犬ハジッコでしたが、飼い主である高校生・澄子の魂が、偶然出会った付喪神(つくもがみ)の「夜桜」に抜き去られてしまいます。
「夜桜」と戦い力尽きたハジッコの魂は、犬の転生神によって、抜け殻になってしまった澄子の身体に転生し、奪われた澄子の魂を取り戻すべく、仲間達の力を借りながら奮闘努力する……というお話です。
※今まで、オトナ向けの小説ばかり書いておりましたが、
今回は中学生位を読者対象と想定してチャレンジしてみました。
お楽しみいただければうれしいです。
守護霊のお仕事なんて出来ません!
柚月しずく
児童書・童話
事故に遭ってしまった未蘭が目が覚めると……そこは死後の世界だった。
死後の世界には「死亡予定者リスト」が存在するらしい。未蘭はリストに名前がなく「不法侵入者」と責められてしまう。
そんな未蘭を救ってくれたのは、白いスーツを着た少年。柊だった。
助けてもらいホッとしていた未蘭だったが、ある選択を迫られる。
・守護霊代行の仕事を手伝うか。
・死亡手続きを進められるか。
究極の選択を迫られた未蘭。
守護霊代行の仕事を引き受けることに。
人には視えない存在「守護霊代行」の任務を、なんとかこなしていたが……。
「視えないはずなのに、どうして私のことがわかるの?」
話しかけてくる男の子が現れて――⁉︎
ちょっと不思議で、信じられないような。だけど心温まるお話。
荒川ハツコイ物語~宇宙から来た少女と過ごした小学生最後の夏休み~
釈 余白(しやく)
ライト文芸
今より少し前の時代には、子供らが荒川土手に集まって遊ぶのは当たり前だったらしい。野球をしたり凧揚げをしたり釣りをしたり、時には決闘したり下級生の自転車練習に付き合ったりと様々だ。
そんな話を親から聞かされながら育ったせいなのか、僕らの遊び場はもっぱら荒川土手だった。もちろん小学生最後となる六年生の夏休みもいつもと変わらず、いつものように幼馴染で集まってありきたりの遊びに精を出す毎日である。
そして今日は鯉釣りの予定だ。今まで一度も釣り上げたことのない鯉を小学生のうちに釣り上げるのが僕、田口暦(たぐち こよみ)の目標だった。
今日こそはと強い意気込みで釣りを始めた僕だったが、初めての鯉と出会う前に自分を宇宙人だと言う女子、ミクに出会い一目で恋に落ちてしまった。だが夏休みが終わるころには自分の星へ帰ってしまうと言う。
かくして小学生最後の夏休みは、彼女が帰る前に何でもいいから忘れられないくらいの思い出を作り、特別なものにするという目的が最優先となったのだった。
はたして初めての鯉と初めての恋の両方を成就させることができるのだろうか。
わたしの師匠になってください! ―お師匠さまは落ちこぼれ魔道士?―
島崎 紗都子
児童書・童話
「師匠になってください!」
落ちこぼれ無能魔道士イェンの元に、突如、ツェツイーリアと名乗る少女が魔術を教えて欲しいと言って現れた。ツェツイーリアの真剣さに負け、しぶしぶ彼女を弟子にするのだが……。次第にイェンに惹かれていくツェツイーリア。彼女の真っ直ぐな思いに戸惑うイェン。何より、二人の間には十二歳という歳の差があった。そして、落ちこぼれと皆から言われてきたイェンには、隠された秘密があって──。

ぼくの家族は…内緒だよ!!
まりぃべる
児童書・童話
うちの家族は、ふつうとちょっと違うんだって。ぼくには良く分からないけど、友だちや知らない人がいるところでは力を隠さなきゃならないんだ。本気で走ってはダメとか、ジャンプも手を抜け、とかいろいろ守らないといけない約束がある。面倒だけど、約束破ったら引っ越さないといけないって言われてるから面倒だけど仕方なく守ってる。
それでね、十二月なんて一年で一番忙しくなるからぼく、いやなんだけど。
そんなぼくの話、聞いてくれる?
☆まりぃべるの世界観です。楽しんでもらえたら嬉しいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる