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第3章 ちびっこ怪獣三匹、仲間と共に|能力《ちから》の検証をする
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「「コウちゃんんんーッ!?」」
光太に問われ、『最初に光が宿った文字』について考えていたユーゴとケースケは、すぐ横。
風を感じるほど近くをものすごい勢いで走り抜けていった光太が、この辺りで一番大きくて立派な大木に突っ込んだのを見て、悲鳴をあげる。
光太が突っ込んだのは、宮古島にあるガジュマルのような見た目をした巨木だ。
うっそうと葉を繁らせた枝を高く大きく張り巡らせ、その枝からは、長いヒゲのような根っこがたくさん垂れ下がっている。
地面に付いた根っこは細い幹のようになり、複雑怪奇な絡まり方をしながら太さを増し、さらに枝葉を伸ばしている。
先ほどの言葉から察するに、たぶんおそらく光太は、自分の能力がどんなものか試してみたくなったのだ。
『神速』の言葉の意味を木本先生に問うていたのもそのためだ。
石の板には、たくさんの能力が記されていた。
光が宿り、水晶玉の中で混ざりあったモノが自分に与えられた能力なら、一番最初に光った文字にこそヒントがあるとでも思ったのだろう。
『神速』が『とんでもなくはやく動けること』だと聞いて、光太はきっと、軽い気持ちで走ってみたくなったに違いない。
そうして、なんの偶然か。みんなで知恵をしぼってアイデアを出しあっていたときにはなんの反応もなかったくせをして、光太の思い付きに、能力が反応して発動してしまった。
結果。光太はミサイルのごときスピードでかっ飛んで行き、自分で自分をコントロールできなかったのか、大木に突っ込んでしまった。
ドカーン! と派手な音が辺り一帯に鳴り響く。
どれくらいの勢いで突っ込んでいったのか。
光太は曲がることもよけることもしないで、まっすぐ巨木へ向かって飛び込んでいる。
「ギャー、なにやってんだ光太ぁあッ」
パッと見、ガジュマルそのものな大木に真正面からぶつかっていった光太を見て、金堂もまた悲鳴をあげる。
槍を構えていたのも手伝って、光太がぶち当たった辺りの幹は弾け飛び、巨木を半ばまでへし折ってしまっているような状態だったからだ。
しかも、ガジュマルっぽい大木を中ほどまで突き抜いた光太が、そのまま巨木にめり込んでしまっている。
あわてて救助に走ったユーゴとケースケ、少し遅れて続く木本先生を追いかけようとした金堂だったが。
「ちょ、みんな待って! 気配探知になんか引っ掛かったって!」
コズエが叫ぶのと同時に頭の中で警報が鳴り響き、踏み止まる。
「え、うわ、オレもだッ。危機察知が危険ありとか言ってる!」
光太の突っ込んでいった方向。
いままさにユーゴとケースケ、そして木本先生が走り寄ろうとしている場所。
要するに、光太がめり込んでしまっている巨木に近寄るなと、危機察知がうるさく警告を発する。
言葉ではなく感覚として危険だと伝えてくるソレは、間違いなく自分の能力なのだろうが、使いこなせていなければ意味がない。
危険な状態になってから教えられても遅いのだ。
もっとはやく。せめて光太が行動を起こそうとしている時に教えてくれたなら、まだ動けた。
光太を止めることもできただろうし、みんなに警告を発することもできた。
あまり役に立てていない自分に金堂が歯噛みする思いでいると、カエデが悲鳴のような声を発する。
「ねえ、見て! あの木、なんか動いてるよう」
光太に問われ、『最初に光が宿った文字』について考えていたユーゴとケースケは、すぐ横。
風を感じるほど近くをものすごい勢いで走り抜けていった光太が、この辺りで一番大きくて立派な大木に突っ込んだのを見て、悲鳴をあげる。
光太が突っ込んだのは、宮古島にあるガジュマルのような見た目をした巨木だ。
うっそうと葉を繁らせた枝を高く大きく張り巡らせ、その枝からは、長いヒゲのような根っこがたくさん垂れ下がっている。
地面に付いた根っこは細い幹のようになり、複雑怪奇な絡まり方をしながら太さを増し、さらに枝葉を伸ばしている。
先ほどの言葉から察するに、たぶんおそらく光太は、自分の能力がどんなものか試してみたくなったのだ。
『神速』の言葉の意味を木本先生に問うていたのもそのためだ。
石の板には、たくさんの能力が記されていた。
光が宿り、水晶玉の中で混ざりあったモノが自分に与えられた能力なら、一番最初に光った文字にこそヒントがあるとでも思ったのだろう。
『神速』が『とんでもなくはやく動けること』だと聞いて、光太はきっと、軽い気持ちで走ってみたくなったに違いない。
そうして、なんの偶然か。みんなで知恵をしぼってアイデアを出しあっていたときにはなんの反応もなかったくせをして、光太の思い付きに、能力が反応して発動してしまった。
結果。光太はミサイルのごときスピードでかっ飛んで行き、自分で自分をコントロールできなかったのか、大木に突っ込んでしまった。
ドカーン! と派手な音が辺り一帯に鳴り響く。
どれくらいの勢いで突っ込んでいったのか。
光太は曲がることもよけることもしないで、まっすぐ巨木へ向かって飛び込んでいる。
「ギャー、なにやってんだ光太ぁあッ」
パッと見、ガジュマルそのものな大木に真正面からぶつかっていった光太を見て、金堂もまた悲鳴をあげる。
槍を構えていたのも手伝って、光太がぶち当たった辺りの幹は弾け飛び、巨木を半ばまでへし折ってしまっているような状態だったからだ。
しかも、ガジュマルっぽい大木を中ほどまで突き抜いた光太が、そのまま巨木にめり込んでしまっている。
あわてて救助に走ったユーゴとケースケ、少し遅れて続く木本先生を追いかけようとした金堂だったが。
「ちょ、みんな待って! 気配探知になんか引っ掛かったって!」
コズエが叫ぶのと同時に頭の中で警報が鳴り響き、踏み止まる。
「え、うわ、オレもだッ。危機察知が危険ありとか言ってる!」
光太の突っ込んでいった方向。
いままさにユーゴとケースケ、そして木本先生が走り寄ろうとしている場所。
要するに、光太がめり込んでしまっている巨木に近寄るなと、危機察知がうるさく警告を発する。
言葉ではなく感覚として危険だと伝えてくるソレは、間違いなく自分の能力なのだろうが、使いこなせていなければ意味がない。
危険な状態になってから教えられても遅いのだ。
もっとはやく。せめて光太が行動を起こそうとしている時に教えてくれたなら、まだ動けた。
光太を止めることもできただろうし、みんなに警告を発することもできた。
あまり役に立てていない自分に金堂が歯噛みする思いでいると、カエデが悲鳴のような声を発する。
「ねえ、見て! あの木、なんか動いてるよう」
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