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第3章 ちびっこ怪獣三匹、仲間と共に|能力《ちから》の検証をする
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「ねえ。さっきあなたたちが『声』を聞いた時は、どんな感じだったのかしら?」
ほとほと困り果てていると、木本先生がふと顔をあげる。
学校内で流行っているアニメの内容をチェックするのも仕事のうちだとかで、木本先生だけでなく、大内先生も、この手の知識をかなり持っていた。
そこに大人としての知恵がプラスされ、なにか思いついたらしい。
「どんなって?」
「きっかけみたいなものはなかった?」
『声』が聞こえてきたとき、なにをしていたのか。
もしくはなにを考えていたのか。
ひょっとしたらなにか手がかりがみつかるかもしれないから思い出してみて欲しいと言われた金堂、カエデ、コズエの三人は、腕を組んで首をひねる。
「きっかけ……。んー。オレは、危険がなけりゃいいなって考えてたかな」
「ワタシは、怖いのに見つかりませんようにって」
「んーと、ここが安全な場所だといいなって思ってたくらい……かな?」
それぞれが自信なさげにしながらも、取り立ててなにをしていたわけでも、なにか具体的な考え事をしていたわけでもないと言う。
「ふむ。つまり、能力とやらは、思考に反応して発動するということか?」
「でも、大内先生。考えただけでいちいち発動していたら、暴走しているのと変わらないのではありませんか?」
「まあ、確かに。自分にどんな能力があるのか把握していない状態で思考による発動は、迷惑でしかないかもしれませんね」
結局、これといった手がかりらしきものもなく、木本先生と大内先生のふたりが、揃ってため息を吐き出す。
どうやら、大人の知恵でも、この状態はどうにもならないらしい。
みんなで、ああでもないこうでもないと意見を交わすが、たいていのネタは出尽くしたあとだ。
さてどうしたものかと行き詰まった一同であったが。
「なあなあ。みんな、最初に光が宿った文字? 能力? って覚えてねえ?」
大内先生に撃沈されてうなだれていたはずの光太が、ひょこん、と話の輪の中に顔を出す。
誰もかまってくれないので、自力で勝手に復活してきた--もしくは聞こえてくる話の内容の方が気になって、会話に混ざりたくなったらしい。
光太は、ついさっきまでうなだれていたなんて思えない陽気さで、ごく自然にみんなの輪の中に入ってきた。
なるほど。これはユーゴとケースケが心配しないはずである。
光太は負の感情に流されることなく、自分の中で解決できる強さを持っている。
大人になったら失くしてしまいがちな純真さ故の強さ。
たぶん光太は、ここにいる人間は誰も、自分に対して本当の意味での悪意をぶつけてくることはないと信じているのだ。
だから、瞬間的に落ち込んでも、自分の中で納得のいく答えを見つけだし、立ち直れてしまう。
この純真さがうっかりねじ曲がって自己中心的な子にならないよう気を付けなければ、とは木本先生と大内先生の心の声だ。
「文字?」
「そう! オレのは神速だったんだけどさあ。神速ってナニ?」
「そうねえ。わかりやすく言うなら、とんでもない速さ……かしら」
ほとほと困り果てていると、木本先生がふと顔をあげる。
学校内で流行っているアニメの内容をチェックするのも仕事のうちだとかで、木本先生だけでなく、大内先生も、この手の知識をかなり持っていた。
そこに大人としての知恵がプラスされ、なにか思いついたらしい。
「どんなって?」
「きっかけみたいなものはなかった?」
『声』が聞こえてきたとき、なにをしていたのか。
もしくはなにを考えていたのか。
ひょっとしたらなにか手がかりがみつかるかもしれないから思い出してみて欲しいと言われた金堂、カエデ、コズエの三人は、腕を組んで首をひねる。
「きっかけ……。んー。オレは、危険がなけりゃいいなって考えてたかな」
「ワタシは、怖いのに見つかりませんようにって」
「んーと、ここが安全な場所だといいなって思ってたくらい……かな?」
それぞれが自信なさげにしながらも、取り立ててなにをしていたわけでも、なにか具体的な考え事をしていたわけでもないと言う。
「ふむ。つまり、能力とやらは、思考に反応して発動するということか?」
「でも、大内先生。考えただけでいちいち発動していたら、暴走しているのと変わらないのではありませんか?」
「まあ、確かに。自分にどんな能力があるのか把握していない状態で思考による発動は、迷惑でしかないかもしれませんね」
結局、これといった手がかりらしきものもなく、木本先生と大内先生のふたりが、揃ってため息を吐き出す。
どうやら、大人の知恵でも、この状態はどうにもならないらしい。
みんなで、ああでもないこうでもないと意見を交わすが、たいていのネタは出尽くしたあとだ。
さてどうしたものかと行き詰まった一同であったが。
「なあなあ。みんな、最初に光が宿った文字? 能力? って覚えてねえ?」
大内先生に撃沈されてうなだれていたはずの光太が、ひょこん、と話の輪の中に顔を出す。
誰もかまってくれないので、自力で勝手に復活してきた--もしくは聞こえてくる話の内容の方が気になって、会話に混ざりたくなったらしい。
光太は、ついさっきまでうなだれていたなんて思えない陽気さで、ごく自然にみんなの輪の中に入ってきた。
なるほど。これはユーゴとケースケが心配しないはずである。
光太は負の感情に流されることなく、自分の中で解決できる強さを持っている。
大人になったら失くしてしまいがちな純真さ故の強さ。
たぶん光太は、ここにいる人間は誰も、自分に対して本当の意味での悪意をぶつけてくることはないと信じているのだ。
だから、瞬間的に落ち込んでも、自分の中で納得のいく答えを見つけだし、立ち直れてしまう。
この純真さがうっかりねじ曲がって自己中心的な子にならないよう気を付けなければ、とは木本先生と大内先生の心の声だ。
「文字?」
「そう! オレのは神速だったんだけどさあ。神速ってナニ?」
「そうねえ。わかりやすく言うなら、とんでもない速さ……かしら」
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