ちびっこ怪獣三匹、異世界に降り立つ~異世界転移は課外活動に入りますか?~

ふゆき

文字の大きさ
上 下
30 / 60
第2章 ちびっこ怪獣三匹、事の次第を知る

15

しおりを挟む
「ほらおまえら。ふざけるのはそこまでにしておけ。能力ちからとやらについて調べるんだろう?」

 念のため、木本先生と手分けをして一通り周囲を確認していた大内先生に声をかけられ、雑談で盛り上がっていた子供たちが、ハッとした表情になる。
 いつの間にか、話が完全にそれてしまっているのに気づいたらしい。

「そーだった。コズエっち、なんかアイデア!」

「だぁから。変な呼び方しないでってば」

「じゃあなんて呼ぶんだよ?」

 光太に問われ、コズエはちょっと考えるような間をあける。

「えー? コズエさんってなんか違うし、コズエちゃんもなあ。あ、コズエさまとか?」

 ふと、さすがの光太も『さま』呼びは嫌がるだろうと思って冗談を口にしたコズエはけれど。

「よしわかった! コズエさまだな」

 あっさり受け入れられ、おおいに焦る。

「わかるな、バカッ」

「なんでだよ?」

 光太はどこかズレている。
 わかっているのに、つい忘れてしまうのはどうしてなのか。

「コウちゃんだしなあ」

「うん、コウちゃんだ」

「光太だもんな」

「光太くんだもんねえ」

 脱力したコズエを囲み、わいわいと仲良さげに騒ぐ子供たちを、大内先生は苦笑いで順番に見やる。
 どこにいてもいつも通りなのは、偶然ながらも仲良しばかりが一緒だからか。
 はたまた、この子たちの性格故か。

 実は、『教師なのだからまずは子供たちを優先に考えて欲しい』と木本先生に告げた手前、いつも通りに見えるよう頑張っている大内先生である。
 木本先生のように取り乱して発散していない分、精神的な余裕もあまりなく、内心では不安に押し潰されそうな部分もあったのだが--……。

「冗談を本気にしないでよね!」

「光太にその手の冗談は通じねえぞ、ハタナカ」

「だね。コウちゃんもほら。呼び捨てにしたいのなら名字。名前で呼びたいのなら『ちゃん』か『さん』をつける!」

「コズエはコズエなんだけどなー」

「コウちゃんは、人の嫌がることはしないんじゃなかったのか?」

 元の世界でもマイペースだったちびっこやんちゃ怪獣トリオは異世界でもマイペースなままで。
 そんな彼らと普段から仲の良かった他の子たちも、普段通りの彼らと接するうちに、引きずられるようにして平静を取り戻した。

 そもそも、やんちゃ怪獣たちがほとんど普段と変わらないのは、お互いへの信頼故だ。
 三人いれば大丈夫。
 どこでだってなんとかなる。
 端から見ていてそうだとわかるほど、三人はお互いの存在を頼りにしている。

 幼いながらもそこまでの信頼関係を築けている三人が羨ましい反面。
 中心となっている草下光太の性格には、いささかの不安を覚える大内先生だ。

 光太は、仲良しふたりを信頼するあまり、時々自分で考えることを放棄して、本能のまま動くことがある。

 学校でならまだしも、どうやら異世界に転移させられてしまったらしい現在。
 普段の光太の猪突猛進っぷりを思い出せば、不安しかない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

王女様は美しくわらいました

トネリコ
児童書・童話
   無様であろうと出来る全てはやったと満足を抱き、王女様は美しくわらいました。  それはそれは美しい笑みでした。  「お前程の悪女はおるまいよ」  王子様は最後まで嘲笑う悪女を一刀で断罪しました。  きたいの悪女は処刑されました 解説版

【総集編】日本昔話 パロディ短編集

Grisly
児童書・童話
❤️⭐️お願いします。  今まで発表した 日本昔ばなしの短編集を、再放送致します。 朝ドラの総集編のような物です笑 読みやすくなっているので、 ⭐️して、何度もお読み下さい。 読んだ方も、読んでない方も、 新しい発見があるはず! 是非お楽しみ下さい😄 ⭐︎登録、コメント待ってます。

お姫様の願い事

月詠世理
児童書・童話
赤子が生まれた時に母親は亡くなってしまった。赤子は実の父親から嫌われてしまう。そのため、赤子は血の繋がらない女に育てられた。 決められた期限は十年。十歳になった女の子は母親代わりに連れられて城に行くことになった。女の子の実の父親のもとへ——。女の子はさいごに何を願うのだろうか。

ぼくの家族は…内緒だよ!!

まりぃべる
児童書・童話
うちの家族は、ふつうとちょっと違うんだって。ぼくには良く分からないけど、友だちや知らない人がいるところでは力を隠さなきゃならないんだ。本気で走ってはダメとか、ジャンプも手を抜け、とかいろいろ守らないといけない約束がある。面倒だけど、約束破ったら引っ越さないといけないって言われてるから面倒だけど仕方なく守ってる。 それでね、十二月なんて一年で一番忙しくなるからぼく、いやなんだけど。 そんなぼくの話、聞いてくれる? ☆まりぃべるの世界観です。楽しんでもらえたら嬉しいです。

夢の中で人狼ゲーム~負けたら存在消滅するし勝ってもなんかヤバそうなんですが~

世津路 章
児童書・童話
《蒲帆フウキ》は通信簿にも“オオカミ少年”と書かれるほどウソつきな小学生男子。 友達の《東間ホマレ》・《印路ミア》と一緒に、時々担任のこわーい本間先生に怒られつつも、おもしろおかしく暮らしていた。 ある日、駅前で配られていた不思議なカードをもらったフウキたち。それは、夢の中で行われる《バグストマック・ゲーム》への招待状だった。ルールは人狼ゲームだが、勝者はなんでも願いが叶うと聞き、フウキ・ホマレ・ミアは他の参加者と対決することに。 だが、彼らはまだ知らなかった。 ゲームの敗者は、現実から存在が跡形もなく消滅すること――そして勝者ですら、ゲームに潜む呪いから逃れられないことを。 敗退し、この世から消滅した友達を取り戻すため、フウキはゲームマスターに立ち向かう。 果たしてウソつきオオカミ少年は、勝っても負けても詰んでいる人狼ゲームに勝利することができるのだろうか? 8月中、ほぼ毎日更新予定です。 (※他小説サイトに別タイトルで投稿してます)

生贄姫の末路 【完結】

松林ナオ
児童書・童話
水の豊かな国の王様と魔物は、はるか昔にある契約を交わしました。 それは、姫を生贄に捧げる代わりに国へ繁栄をもたらすというものです。 水の豊かな国には双子のお姫様がいます。 ひとりは金色の髪をもつ、活発で愛らしい金のお姫様。 もうひとりは銀色の髪をもつ、表情が乏しく物静かな銀のお姫様。 王様が生贄に選んだのは、銀のお姫様でした。

【完】ことうの怪物いっか ~夏休みに親子で漂流したのは怪物島!? 吸血鬼と人造人間に育てられた女の子を救出せよ! ~

丹斗大巴
児童書・童話
 どきどきヒヤヒヤの夏休み!小学生とその両親が流れ着いたのは、モンスターの住む孤島!? *☆* *☆* *☆* *☆* *☆* *☆* *☆*   夏休み、家族で出掛けた先でクルーザーが転覆し、漂流した青山親子の3人。とある島に流れ着くと、古風で顔色の悪い外国人と、大怪我を負ったという気味の悪い執事、そしてあどけない少女が住んでいた。なんと、彼らの正体は吸血鬼と、その吸血鬼に作られた人造人間! 人間の少女を救い出し、無事に島から脱出できるのか……!?  *☆* *☆* *☆* *☆* *☆* *☆* *☆* 家族のきずなと種を超えた友情の物語。

【総集編】童話パロディ短編集

Grisly
児童書・童話
❤️⭐️お願いします。童話パロディ短編集

処理中です...