ちびっこ怪獣三匹、異世界に降り立つ~異世界転移は課外活動に入りますか?~

ふゆき

文字の大きさ
上 下
23 / 60
第2章 ちびっこ怪獣三匹、事の次第を知る

8

しおりを挟む
 『帰れる』のなら、帰るためにやらなければならないことをやるだけだ。
 光太とユーゴとケースケの三人だけではない。ここには、金堂もコズエもカエデもいる。
 頼りになる先生たちだっているのだ。
 やってやれないことはない。
 みんなで協力すれば、たいていのことはなんとかなる。

 たくさんの能力ちからをもらったみたいだし、この世界のイキモノより、自分たちの方が頑丈にできているという。
 魔物がどんなモノかは直接見てみないとわからないけれど。
 少なくとも、導くもの大精霊は、異世界のイキモノの方が強いと言い切っている。
 その言葉に嘘がないなら、みんなでそろって帰れるはずだ。

 だって、魔王を倒してこいだとか、邪神を封印してこいだとか、命懸いのちがけでいどまなければできないことを言われたわけじゃない。
 増えすぎた魔物を魔素に戻して欲しいと頼まれただけである。

 不安がまったくないと言ってしまえば嘘になる。
 なんで自分たちがそんなことをしなければならないのかという思いもある。

 でも、光太たちは異世界へと召喚されて、帰るためには魔物とやらを狩るしかないのだ。
 ほんの少し、魔物を狩る--……殺すといった行為に不安があれど。
 魔物は魔素とかいうのが『形』を持っただけで、イキモノのですらないという。

 生きてるものを殺し食らって魔素を奪う負の要素の集合体--それが魔物だ。
 ならばきっと、どうにかできる……はずだ。


《魔物を倒し、ダンジョンを攻略するのに必要なものはすべて授けました。救世の徒よ--……この世界をお願いします》


 導くもの大精霊は語りたいことだけを語ると、少しずつ霞み、消えてゆく。
 どうやら、質問タイムはないらしい。

「え……? ちょ、待っ」

「お願いしますって、こんなところに置いていかれてどうしろと!?」

 ギョッとした顔で、木本先生と大内先生があわてて追いすがるも間に合わず、石の板までもがゆっくりと薄れ、その姿を消してしまう。
 どこまでも続く草原すら消え失せ、森の中の広場らしきところへ放り出された一同は、その場でぽかんと立ち尽くす。

 無理矢理連れてきて、一方的に頼み事をしたあとは、返事も聞かずに放置。
 小学生でもさすがにわかる。
 いくらなんでも、人にものを頼む態度ではない。
 相手は異世界の導くもの大精霊とやらで、種族や世界が違えば感覚も違うのかもしれないが。
 コレでは、体のいい押し付けである。

 呆然とすることしばし。

「--……とりあえず、全員集まろうか」

 はっと我に返った大内先生の呼びかけが、どこか疲れているように感じられたのはたぶん、光太だけではなかったはずだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

王女様は美しくわらいました

トネリコ
児童書・童話
   無様であろうと出来る全てはやったと満足を抱き、王女様は美しくわらいました。  それはそれは美しい笑みでした。  「お前程の悪女はおるまいよ」  王子様は最後まで嘲笑う悪女を一刀で断罪しました。  きたいの悪女は処刑されました 解説版

生贄姫の末路 【完結】

松林ナオ
児童書・童話
水の豊かな国の王様と魔物は、はるか昔にある契約を交わしました。 それは、姫を生贄に捧げる代わりに国へ繁栄をもたらすというものです。 水の豊かな国には双子のお姫様がいます。 ひとりは金色の髪をもつ、活発で愛らしい金のお姫様。 もうひとりは銀色の髪をもつ、表情が乏しく物静かな銀のお姫様。 王様が生贄に選んだのは、銀のお姫様でした。

お姫様の願い事

月詠世理
児童書・童話
赤子が生まれた時に母親は亡くなってしまった。赤子は実の父親から嫌われてしまう。そのため、赤子は血の繋がらない女に育てられた。 決められた期限は十年。十歳になった女の子は母親代わりに連れられて城に行くことになった。女の子の実の父親のもとへ——。女の子はさいごに何を願うのだろうか。

生まれたばかりですが、早速赤ちゃんセラピー?始めます!

mabu
児童書・童話
超ラッキーな環境での転生と思っていたのにママさんの体調が危ないんじゃぁないの? ママさんが大好きそうなパパさんを闇落ちさせない様に赤ちゃんセラピーで頑張ります。 力を使って魔力を増やして大きくなったらチートになる! ちょっと赤ちゃん系に挑戦してみたくてチャレンジしてみました。 読みにくいかもしれませんが宜しくお願いします。 誤字や意味がわからない時は皆様の感性で受け捉えてもらえると助かります。 流れでどうなるかは未定なので一応R15にしております。 現在投稿中の作品と共に地道にマイペースで進めていきますので宜しくお願いします🙇 此方でも感想やご指摘等への返答は致しませんので宜しくお願いします。

ローズお姉さまのドレス

有沢真尋
児童書・童話
最近のルイーゼは少しおかしい。 いつも丈の合わない、ローズお姉さまのドレスを着ている。 話し方もお姉さまそっくり。 わたしと同じ年なのに、ずいぶん年上のように振舞う。 表紙はかんたん表紙メーカーさまで作成

山姥(やまんば)

野松 彦秋
児童書・童話
小学校5年生の仲良し3人組の、テッカ(佐上哲也)、カッチ(野田克彦)、ナオケン(犬塚直哉)。 実は3人とも、同じクラスの女委員長の松本いずみに片思いをしている。 小学校の宿泊研修を楽しみにしていた4人。ある日、宿泊研修の目的地が3枚の御札の昔話が生まれた山である事が分かる。 しかも、10年前自分達の学校の先輩がその山で失踪していた事実がわかる。 行方不明者3名のうち、一人だけ帰って来た先輩がいるという事を知り、興味本位でその人に会いに行く事を思いつく3人。 3人の意中の女の子、委員長松本いずみもその計画に興味を持ち、4人はその先輩に会いに行く事にする。 それが、恐怖の夏休みの始まりであった。 山姥が実在し、4人に危険が迫る。 4人は、信頼する大人達に助けを求めるが、その結果大事な人を失う事に、状況はどんどん悪くなる。 山姥の執拗な追跡に、彼らは生き残る事が出来るのか!

ぼくの家族は…内緒だよ!!

まりぃべる
児童書・童話
うちの家族は、ふつうとちょっと違うんだって。ぼくには良く分からないけど、友だちや知らない人がいるところでは力を隠さなきゃならないんだ。本気で走ってはダメとか、ジャンプも手を抜け、とかいろいろ守らないといけない約束がある。面倒だけど、約束破ったら引っ越さないといけないって言われてるから面倒だけど仕方なく守ってる。 それでね、十二月なんて一年で一番忙しくなるからぼく、いやなんだけど。 そんなぼくの話、聞いてくれる? ☆まりぃべるの世界観です。楽しんでもらえたら嬉しいです。

稀代の悪女は死してなお

楪巴 (ゆずりは)
児童書・童話
「めでたく、また首をはねられてしまったわ」 稀代の悪女は処刑されました。 しかし、彼女には思惑があるようで……? 悪女聖女物語、第2弾♪ タイトルには2通りの意味を込めましたが、他にもあるかも……? ※ イラストは、親友の朝美智晴さまに描いていただきました。

処理中です...