ちびっこ怪獣三匹、異世界に降り立つ~異世界転移は課外活動に入りますか?~

ふゆき

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第2章 ちびっこ怪獣三匹、事の次第を知る

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 白い影が完全に消えてしまうまで見送って、光太は首をひねる。
 いまさらではあるが、自分の立ち位置がわからず混乱しかけた光太はけれど。

「たぶんだけど、石の板に残ってた記憶を見せられてるからじゃないかな?」

「それと、オレたちの中に入ってきた光……精霊? とやらの記憶……か?」

 しれっと告げられた言葉に横を見て、ユーゴとケースケが先ほどと変わらず隣にいることに笑みを浮かべる。
 光太ひとりではわからないことでも、ふたりが一緒なら相談できる。
 相談ができれば、解決法だってきっと見つかる。

 正直、いろいろ見せられた半分も、光太は理解できていない。
 どうして精霊たちは自分自身を削ってまで『器』を求めるのかだとか。
 『器』の役目ってなんだろうだとか。
 頭の中は疑問符でいっぱいだ。

 どうやらふたりも同じモノを見てきたらしいのでちょうどいい。
 光太は、頭の中に浮かんだ疑問を全部口にしようとして。

「うん。両方の記憶かな。見てみなよ。ボクらが水晶玉に手を乗せようとしてる」

 ユーゴの言葉に気をそらされる。

 光太たちの見下ろす先で、過去のできごとの時間は進み、真面目な顔をした三人が、水晶玉を握った瞬間まで進んでいた。
 草原一帯を真っ白に染めあげるほどのまばゆい光が水晶玉から発せられ、力の波紋はもんとなって下草をぐ。

 ちょうどタイミングが重なったせいなのか。
 はたまたなんらかのイレギュラーがおきたからか。
 水晶玉を飛び出していこうとしていた精霊たちと、三人の中で眠る精霊たちが、真正面からぶつかったらしい。

 本来、精霊たちは水晶玉の中でしか混ざり合えない。
 だが、今回。三人は水晶玉に手を乗せていて、『器』を得たばかりの精霊たちは、世界の狭間で能力ちからの一部を失っていた。

 『器』に馴染みはじめたばかりの精霊は、とても不安定な存在となる。
 持てる能力ちからのすべてを移すため、ゆっくりけて『器』のすみずみにまで浸透しんとうしようとしているせいだ。

 そして、三人の中にいる精霊たちには、世界の狭間で削られた隙間すきまがある。
 欠けたジグソーパズルのピースのような、足りない部分。
 そこへ、水晶玉の中にいた、まだまとまりきっていない精霊たちが三分割して、スルリと入り込んでしまったのだ。

 本来あり得ない現象がおきたわけだが、導くもの大精霊は逆に、その事で光太たちの存在を『能力ちからあるモノ』として認識したらしい。



《--------…………対象者複数の適性を確認。これより術式を展開します》



 音もなく石の板から浮き出てくると、自身を中心として、やっつの魔方陣を、同時に展開させた。
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