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第2章 ちびっこ怪獣三匹、事の次第を知る
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競争しなくてもいいとわかった光たちの行動は早かった。
先に『器』を掴んでいた光を起点に手を伸ばし、そこにあった『器』すべてを、世界の狭間へ引きずり込んだ。
あとは、それぞれが元の世界へと戻され、別々の時代、別々の場所へと送られるのを待つだけだった。
『器』が役目を終えれば光は姿形を得て、世界に定着することができる。
いずれ消えゆく小さな光から、永遠を約束された存在へと進化できる喜びにひたっていた光たちは、けれど。
予想外の出来事に困惑する。
別々の時代、別々の場所へと『器』を導かねばならないのに、『器』たちはひとかたまりとなったまま、どれほど頑張っても、離れてくれなかったからだ。
頑張って頑張って頑張って、なんとかばらばらになれたのは、石の板の中を抜けた後。
集めた能力を『器』へ移し終えて地上に着地する、直前だった。
《どうしよう……!》
《どうしようか?》
《みんなおなじところだ》
《おなじところだよ……!》
光たちは、ささやき声のような思念のようなモノで言葉を交わすが、答えは出ない。
おろおろおろおろうろたえてみても、後の祭り。
『器』はもう、同じ時代、同じ場所へと降りてしまった。
そうなってしまえばもう、小さな光にできることはなにもない。
役目を終えた光はすべての力を使い果たし、時がくるまでは『器』の中で眠りにつく。
再び目覚めるのは、その存在が世界に定着した、その後である。
どうしようどうしようと困りつつも、光たちは眠りにつく。
そうして、『彼』『彼女』らが眠りについた後は--導くもの、この世界に定着した元光の出番となる。
《あら? あらあらあらあら。どうしてかたまって現れたのかしら? 別の時間、別の場所に送られるはずの『器』なのに、おかしいわ?》
はじけては飛び出し、魔方陣となって消えてゆく光たち。
水晶玉の中で躍りながら混ざり合い、ひとつになったら『器』を探して飛び出してゆくのが、生まれたばかりの光たちの習性だ。
『器』を見つけた光は、この地へと『器』を導き、平穏を託す。
何度も何度も繰り返される、営み。
『器』が平穏をもたらすことができれば、光は姿形を得て、世界に定着することができる。
だが、ほとんどの光は、『器』を見つけることなく、世界の狭間で力尽きて消えてゆく。
そうしてまた生まれなおし、石の板の単語に宿る。
運良く『器』を見つけることができた光だけが、『器』に同化して、石の板の中へと戻ってこられる。
ひとつの時代に一体だけ。
同じ場所、同じ時間に複数戻ってくることはない。
はるか昔にそう定められ、長い長い年月、この場所に複数の『器』が現れることはなかった。
《不具合かしら? それとも、混ざり具合が不充分で、途中でほぐれてしまったのかしら?》
困ったわ、困ったわと繰り返す白い影は--かつて小さな光だったモノ。
『器』を見つけ、世界に定着することができた存在だ。
先に『器』を掴んでいた光を起点に手を伸ばし、そこにあった『器』すべてを、世界の狭間へ引きずり込んだ。
あとは、それぞれが元の世界へと戻され、別々の時代、別々の場所へと送られるのを待つだけだった。
『器』が役目を終えれば光は姿形を得て、世界に定着することができる。
いずれ消えゆく小さな光から、永遠を約束された存在へと進化できる喜びにひたっていた光たちは、けれど。
予想外の出来事に困惑する。
別々の時代、別々の場所へと『器』を導かねばならないのに、『器』たちはひとかたまりとなったまま、どれほど頑張っても、離れてくれなかったからだ。
頑張って頑張って頑張って、なんとかばらばらになれたのは、石の板の中を抜けた後。
集めた能力を『器』へ移し終えて地上に着地する、直前だった。
《どうしよう……!》
《どうしようか?》
《みんなおなじところだ》
《おなじところだよ……!》
光たちは、ささやき声のような思念のようなモノで言葉を交わすが、答えは出ない。
おろおろおろおろうろたえてみても、後の祭り。
『器』はもう、同じ時代、同じ場所へと降りてしまった。
そうなってしまえばもう、小さな光にできることはなにもない。
役目を終えた光はすべての力を使い果たし、時がくるまでは『器』の中で眠りにつく。
再び目覚めるのは、その存在が世界に定着した、その後である。
どうしようどうしようと困りつつも、光たちは眠りにつく。
そうして、『彼』『彼女』らが眠りについた後は--導くもの、この世界に定着した元光の出番となる。
《あら? あらあらあらあら。どうしてかたまって現れたのかしら? 別の時間、別の場所に送られるはずの『器』なのに、おかしいわ?》
はじけては飛び出し、魔方陣となって消えてゆく光たち。
水晶玉の中で躍りながら混ざり合い、ひとつになったら『器』を探して飛び出してゆくのが、生まれたばかりの光たちの習性だ。
『器』を見つけた光は、この地へと『器』を導き、平穏を託す。
何度も何度も繰り返される、営み。
『器』が平穏をもたらすことができれば、光は姿形を得て、世界に定着することができる。
だが、ほとんどの光は、『器』を見つけることなく、世界の狭間で力尽きて消えてゆく。
そうしてまた生まれなおし、石の板の単語に宿る。
運良く『器』を見つけることができた光だけが、『器』に同化して、石の板の中へと戻ってこられる。
ひとつの時代に一体だけ。
同じ場所、同じ時間に複数戻ってくることはない。
はるか昔にそう定められ、長い長い年月、この場所に複数の『器』が現れることはなかった。
《不具合かしら? それとも、混ざり具合が不充分で、途中でほぐれてしまったのかしら?》
困ったわ、困ったわと繰り返す白い影は--かつて小さな光だったモノ。
『器』を見つけ、世界に定着することができた存在だ。
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