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第2章 ちびっこ怪獣三匹、事の次第を知る
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パッとはじけて魔方陣を描きながら、光は『器』を求めて世界の狭間へ手を伸ばす。
『器』は、数多ある異世界のモノがふさわしい。
この世界のイキモノは、他の世界のイキモノと比べれば、弱くて脆く、集めた能力を注ぎ込んだだけで壊れてしまう。
強くたくましいイキモノを。
能力を受け取ってなお、成長できる余地のある『器』を。
どこだどこだと探し求めて世界の狭間を覗き込む光は、いまいる世界をはみ出した部分がどんどん削られ、削れた部分から霧が散ってゆくように、跡形もなく消えてゆく。
ジリジリと削られていくことを恐れもせず、光は削られたら削られただけ、その身を乗り出す。
『器』を求めるのは、光たちの本能だ。身が削られようと消え失せてしまおうと、『器』を求めて伸ばす手を、引っ込めるなどと思いもしない。
どんどんどんどん削られて、集めに集めた能力が減っても大丈夫。
たくさんたくさん集めたから、少しくらい減っても大丈夫。
半分以下になったら世界の狭間を覗く力もなくなって消えてしまうけれど大丈夫。
それまでに『器』を見つけてしまえばいいのだから。
どんどんどんどんなくなりながら、光はいろんな世界を覗いてまわる。
『器』が見つかるまで--もしくは、その存在が消えてしまうまで。
高い場所からその様を見ていた光太は、溶け合ったままでいなくてよかったと安堵する。
もし、あのまま溶け合っていたら、おそらく光太自身も削られ、霧のように消えていたことだろう。
これが過去の出来事--もう終わったことを見ているのだということはわかる。
でも、だけど。
世界の狭間で、光たちと同じように削られてしまえば、『光太』も削られてしまう。
なぜだか、強烈にそう感じた。
あるいはそれは、『光太』の中にいる光からのメッセージなのかもしれない。
世界の狭間では、その存在を削られる。
だからたくさんの能力がいる。
光たちはそのことを知っていたからこそ、あんなにもたくさん集まってひとつになろうとしていたのだ。
一部が消えても、その他は残る--そんな考えで。
全部が消えてしまう前に見つけなければと必死になっていた光は、やがて歓喜に震えながら、世界の狭間を飛び越える。
先に『器』を求めて旅立った光の側に、最適な『器』をいくつも見つけたからだ。
光太たちだ。
光は世界の狭間を抜けて、光太たちへと手を伸ばす。
どれかひとつ。
掴んだ『器』を世界の狭間へと引っ張れば、あとは石の板が引き寄せてくれる。
そういう仕組みになっている。
だが、同じく光を通して光太たちを見つけた光は、他にもいた。
光は、水晶玉の中でしか混ざり合うことはできない。
だから、『器』の欲しい光たちは、先を競って手を伸ばし--めったにない幸運を掴んだ。
競い合う光の数だけ、『器』が現れたのだ。
『器』は、数多ある異世界のモノがふさわしい。
この世界のイキモノは、他の世界のイキモノと比べれば、弱くて脆く、集めた能力を注ぎ込んだだけで壊れてしまう。
強くたくましいイキモノを。
能力を受け取ってなお、成長できる余地のある『器』を。
どこだどこだと探し求めて世界の狭間を覗き込む光は、いまいる世界をはみ出した部分がどんどん削られ、削れた部分から霧が散ってゆくように、跡形もなく消えてゆく。
ジリジリと削られていくことを恐れもせず、光は削られたら削られただけ、その身を乗り出す。
『器』を求めるのは、光たちの本能だ。身が削られようと消え失せてしまおうと、『器』を求めて伸ばす手を、引っ込めるなどと思いもしない。
どんどんどんどん削られて、集めに集めた能力が減っても大丈夫。
たくさんたくさん集めたから、少しくらい減っても大丈夫。
半分以下になったら世界の狭間を覗く力もなくなって消えてしまうけれど大丈夫。
それまでに『器』を見つけてしまえばいいのだから。
どんどんどんどんなくなりながら、光はいろんな世界を覗いてまわる。
『器』が見つかるまで--もしくは、その存在が消えてしまうまで。
高い場所からその様を見ていた光太は、溶け合ったままでいなくてよかったと安堵する。
もし、あのまま溶け合っていたら、おそらく光太自身も削られ、霧のように消えていたことだろう。
これが過去の出来事--もう終わったことを見ているのだということはわかる。
でも、だけど。
世界の狭間で、光たちと同じように削られてしまえば、『光太』も削られてしまう。
なぜだか、強烈にそう感じた。
あるいはそれは、『光太』の中にいる光からのメッセージなのかもしれない。
世界の狭間では、その存在を削られる。
だからたくさんの能力がいる。
光たちはそのことを知っていたからこそ、あんなにもたくさん集まってひとつになろうとしていたのだ。
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だが、同じく光を通して光太たちを見つけた光は、他にもいた。
光は、水晶玉の中でしか混ざり合うことはできない。
だから、『器』の欲しい光たちは、先を競って手を伸ばし--めったにない幸運を掴んだ。
競い合う光の数だけ、『器』が現れたのだ。
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