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第1章 ちびっこ怪獣三匹、異世界に降り立つ
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これらすべてに、なんらかの細工がほどこされていたのは間違いないだろう。
誰がなんのためにほどこした仕掛けなのかは知らないが、勝手にこんなところへ連れてきておいて、なにもかもを隠して見せないだなんて。
不親切にもほどがある。
もし、コズエが石の板を見つけていなかったら。
ケースケが、浮かんでは消える魔方陣らしきモノに気がつかなかったら。
光太たちはいまもまだ、草原の真ん中で途方に暮れていたことだろう。
「ずるいというか、卑怯ではあるな」
「だよなー。書いてあるのも文字だかなんだかわっかんないし」
仮に文字だとしても、この高さでは全文を読むことはできないだろうとは思う。
だが、一部でも読めればわかることがあるわけで。
ここはどこなのか。
なぜこんな場所へ連れてこられたのか。
なにより--帰れるのか。
知りたいことは山ほどあって。
一度考え出したら、あちらで泣いている木本先生や金堂たちのように、不安で押しつぶされそうになってくる。
「大内先生の読めない文字を、ボクに読めると思う?」
「いやだって、ユーゴだし」
光太やケースケが見落としていることでも、ユーゴだけが気づいている、といったことは、結構ある。
今回もなにか見つけていないかと、頭脳担当のユーゴへちらりと視線を向けてみた光太だったが、なんの手がかりもない状態では、さすがに無茶ぶりが過ぎたようだ。
小さく首を横にふられてしまった。
同じく、ケースケにも目を向けるが、こちらも新たな発見はないとばかりに首をふられる。
「とにかく、他にもなにかないか、石の板のまわりを調べてみよう。コウちゃんはなにか見つけても、絶対ひとりで見に行っちゃダメだからね。ケースケは、高い場所を見てくれる? ボクは下の方を調べてみるから」
「あいよう」
「おう、わかった」
突進癖のある自分だけが注意されるのはいつものこと、と光太はさして気にすることなく石の板へと近づいていき、ふと思いとどまる。
わざわざ前もって注意されたということは、本当に危ないかもしれないということで。
「みんなバラけない方がよかったりする?」
「ああ、うん。手を伸ばして届くくらいの距離がいいかも?」
「了解だ」
手分けすべく、それぞれ別の方向へ歩いていこうとしていた光太たちだったが、思い直して寄りかたまる。
なるべくいつもの自分たちを崩さないよう振る舞っていても、不安感がまったくないわけではない。
そろり忍び寄ってくる不安をふりはらいつつ、探索することしばし。
石の板の前をうろうろしてみたり。
ギリギリまで近寄ってみたり。
ぐるりと石の板のまわりを一周してみたりしたが、特に目新しい発見はなにもなく。
無駄に歩き回って疲れた三人は、いったん休憩をはさむことにした。
誰がなんのためにほどこした仕掛けなのかは知らないが、勝手にこんなところへ連れてきておいて、なにもかもを隠して見せないだなんて。
不親切にもほどがある。
もし、コズエが石の板を見つけていなかったら。
ケースケが、浮かんでは消える魔方陣らしきモノに気がつかなかったら。
光太たちはいまもまだ、草原の真ん中で途方に暮れていたことだろう。
「ずるいというか、卑怯ではあるな」
「だよなー。書いてあるのも文字だかなんだかわっかんないし」
仮に文字だとしても、この高さでは全文を読むことはできないだろうとは思う。
だが、一部でも読めればわかることがあるわけで。
ここはどこなのか。
なぜこんな場所へ連れてこられたのか。
なにより--帰れるのか。
知りたいことは山ほどあって。
一度考え出したら、あちらで泣いている木本先生や金堂たちのように、不安で押しつぶされそうになってくる。
「大内先生の読めない文字を、ボクに読めると思う?」
「いやだって、ユーゴだし」
光太やケースケが見落としていることでも、ユーゴだけが気づいている、といったことは、結構ある。
今回もなにか見つけていないかと、頭脳担当のユーゴへちらりと視線を向けてみた光太だったが、なんの手がかりもない状態では、さすがに無茶ぶりが過ぎたようだ。
小さく首を横にふられてしまった。
同じく、ケースケにも目を向けるが、こちらも新たな発見はないとばかりに首をふられる。
「とにかく、他にもなにかないか、石の板のまわりを調べてみよう。コウちゃんはなにか見つけても、絶対ひとりで見に行っちゃダメだからね。ケースケは、高い場所を見てくれる? ボクは下の方を調べてみるから」
「あいよう」
「おう、わかった」
突進癖のある自分だけが注意されるのはいつものこと、と光太はさして気にすることなく石の板へと近づいていき、ふと思いとどまる。
わざわざ前もって注意されたということは、本当に危ないかもしれないということで。
「みんなバラけない方がよかったりする?」
「ああ、うん。手を伸ばして届くくらいの距離がいいかも?」
「了解だ」
手分けすべく、それぞれ別の方向へ歩いていこうとしていた光太たちだったが、思い直して寄りかたまる。
なるべくいつもの自分たちを崩さないよう振る舞っていても、不安感がまったくないわけではない。
そろり忍び寄ってくる不安をふりはらいつつ、探索することしばし。
石の板の前をうろうろしてみたり。
ギリギリまで近寄ってみたり。
ぐるりと石の板のまわりを一周してみたりしたが、特に目新しい発見はなにもなく。
無駄に歩き回って疲れた三人は、いったん休憩をはさむことにした。
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