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第1章 ちびっこ怪獣三匹、異世界に降り立つ
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大内先生が、身振り手振りで『そこにいろ』と光太たち三人に指示を出し、泣いているみんなを集めて、落ちつくようにと話かける。
取り乱している四人に対して、応対するのが大内先生ひとりだけ。
とても手に負えるような事態ではなさそうだが、悲しいかな。光太たち三人は、まだまだ子供である。
手伝おうにも、役に立たないのは目に見えている。
「大内先生に任せておけば大丈夫だよ、コウちゃん。みんなちょっとパニックになってるだけだと思うし」
「うん……」
三人を代表し、小さく大内先生に頷いてみせたユーゴの言葉に、光太はきゅっと唇を噛みしめる。
光太は子供で、大内先生みたいに木本先生をなぐさめてはあげられないし、金堂や女の子たちにも、なにもしてあげられることがない。
それに。
光太にはユーゴとケースケがいる。
同じようにユーゴには光太とケースケがいて、ケースケには光太とユーゴがいる。
三人一緒なら、だいたいのことはなんとかなった。
だからもし、ここが異世界なのだとしても、なんとかなると思っている。
それが、少しだけ後ろめたいのはどうしてだろう。
「なあ、コウちゃん、ユーゴ。コレが異世界転移だったとして、あの魔方陣っぽいの、最初は小さな光の輪っかだったろう?」
ふと、ケースケが疑問を口にする。
ケースケは、あまり自分からはしゃべらない。
どっしり構えた、聞き上手の話し下手。
それがケースケだ。
そのケースケが自分から話をふってきたということは、なにかよほど言いたいことがあるということで。
光太とユーゴは意識を切り替え、じっくり腰を据えて話をする体勢にはいる。
誰かがなにかを話はじめたら、向かいあってきちんと向き合う。
それが、仲良し三人組の、暗黙のルールだ。
または、仲良しの秘訣ともいう。
「最初は金堂だけを引きずり込もうとしてて、オレたちにはなんの反応もなかったと思うんだけど……あってるか?」
自分の記憶がふたりと同じであるかを確認するかのように、ケースケが問いかけを口にする。
バタバタしてたし、とっさのことで細かい記憶があやふやなのはお互い様だ。
しばし記憶をたどるように小首を傾げていた光太とユーゴだったが、ほぼ同時に顔をあげる。
「そうだね。コウちゃんが何回か魔方陣みたいなのの端っこを踏んじゃってたけど、大丈夫だった」
「うん。ユーゴがズルズル引っ張られて魔方陣? の輪っかん中に両足が入っても、なんともなかった」
お互いを指で差し、あの時確かそうだったと、ふたりで頷く。
取り乱している四人に対して、応対するのが大内先生ひとりだけ。
とても手に負えるような事態ではなさそうだが、悲しいかな。光太たち三人は、まだまだ子供である。
手伝おうにも、役に立たないのは目に見えている。
「大内先生に任せておけば大丈夫だよ、コウちゃん。みんなちょっとパニックになってるだけだと思うし」
「うん……」
三人を代表し、小さく大内先生に頷いてみせたユーゴの言葉に、光太はきゅっと唇を噛みしめる。
光太は子供で、大内先生みたいに木本先生をなぐさめてはあげられないし、金堂や女の子たちにも、なにもしてあげられることがない。
それに。
光太にはユーゴとケースケがいる。
同じようにユーゴには光太とケースケがいて、ケースケには光太とユーゴがいる。
三人一緒なら、だいたいのことはなんとかなった。
だからもし、ここが異世界なのだとしても、なんとかなると思っている。
それが、少しだけ後ろめたいのはどうしてだろう。
「なあ、コウちゃん、ユーゴ。コレが異世界転移だったとして、あの魔方陣っぽいの、最初は小さな光の輪っかだったろう?」
ふと、ケースケが疑問を口にする。
ケースケは、あまり自分からはしゃべらない。
どっしり構えた、聞き上手の話し下手。
それがケースケだ。
そのケースケが自分から話をふってきたということは、なにかよほど言いたいことがあるということで。
光太とユーゴは意識を切り替え、じっくり腰を据えて話をする体勢にはいる。
誰かがなにかを話はじめたら、向かいあってきちんと向き合う。
それが、仲良し三人組の、暗黙のルールだ。
または、仲良しの秘訣ともいう。
「最初は金堂だけを引きずり込もうとしてて、オレたちにはなんの反応もなかったと思うんだけど……あってるか?」
自分の記憶がふたりと同じであるかを確認するかのように、ケースケが問いかけを口にする。
バタバタしてたし、とっさのことで細かい記憶があやふやなのはお互い様だ。
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「そうだね。コウちゃんが何回か魔方陣みたいなのの端っこを踏んじゃってたけど、大丈夫だった」
「うん。ユーゴがズルズル引っ張られて魔方陣? の輪っかん中に両足が入っても、なんともなかった」
お互いを指で差し、あの時確かそうだったと、ふたりで頷く。
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