ちびっこ怪獣三匹、異世界に降り立つ~異世界転移は課外活動に入りますか?~

ふゆき

文字の大きさ
上 下
7 / 60
第1章 ちびっこ怪獣三匹、異世界に降り立つ

5

しおりを挟む
「大内先生、『せきひ』ってなに?」

 光太は、びっくりした顔で石の板を見て固まっている大内先生の太ももをつつく。
 ぽかんと口を開けた大内先生は、たぶん意識が半分どこかへいってしまっている。
 まあ、どや顔のコズエと、ちびっこ怪獣たち以外はほぼ、半分意識がトンでいるみたいな状態だけれども。

 大内先生にまで、そちらの仲間入りをしてもらっては困る。
 頼れる大人がひとりもいなくなってしまうのは、さすがに怖い。

「あ? ああ……。簡単に言うとだな。誰かが、何らかの目的をもって銘文めいぶん--文章を刻んで建立した石のことだ」

 はっと正気づいた大内先生が、頭をふりふり、なんとか現実へとかえってくる。

 光太だって--ユーゴやケースケだって、まるっきり平気なわけではないのだ。
 せめてひとり、正気の大人がいて欲しい。

「なるほど。で、これにはなんて書いてあるんですか?」

 もっとも、ユーゴは石の板に刻まれている文字に興味をひかれ、些細ささいな不安もふっ飛んでしまったようだっただけれど。

 まあ、光太だって石の板の下の方。ちょっと迫り出して、結婚式場の祭壇さいだんみたいになっている部分が、ふらふらと寄って行きかけて、『コウちゃん、危ないよ』とケースケに引き戻されるくらいには気になっていたりするから人のことは言えなかったりする。

「残念ながら、この文字は先生にも読めないよ、水森。見たことのない文字だ」

「先生も読めない文字?」

「そりゃあ、先生だって、全部の文字を知ってるわけじゃあないからなあ」

 大内先生はユーゴと並んで、天高くそびえ立つ石の板を見上げる。
 文字は、上の方までびっしりと、細かく刻み込まれている。
 たとえ知ってる文字だったとしても、これでは一部分しか読めなかったのではなかろうか。

「だ~から、異世界転移だって言ってるじゃん。異世界の文字だから読めないんだって」

 ああでもないこうでもないと意見を交わしているふたりの間へ、コズエがふざけた調子で割り込んでゆく。

 普段のコズエはどちらかというと物静かで、人の話に割り込んでいくタイプではない。
 休み時間は仲良しのカエデとふたり、読書にいそしんでいるようなタイプだ。

 そんなコズエがテンションも高く割り込んできたことに違和感を覚えたユーゴが口を開くより早く。

 ぬっと伸びてきた手が、コズエの肩をガシリとを掴む。

「~~~~~ぅなよッ」

「え?」

「軽々しく異世界転移とか言うなよッ!! だって、そんなのッ。ほんとに異世界転移だったら、オレのせいじゃん! オレがみんなを巻き込んだんじゃん!!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【総集編】日本昔話 パロディ短編集

Grisly
児童書・童話
❤️⭐️お願いします。  今まで発表した 日本昔ばなしの短編集を、再放送致します。 朝ドラの総集編のような物です笑 読みやすくなっているので、 ⭐️して、何度もお読み下さい。 読んだ方も、読んでない方も、 新しい発見があるはず! 是非お楽しみ下さい😄 ⭐︎登録、コメント待ってます。

空の話をしよう

源燕め
児童書・童話
「空の話をしよう」  そう言って、美しい白い羽を持つ羽人(はねひと)は、自分を助けた男の子に、空の話をした。    人は、空を飛ぶために、飛空艇を作り上げた。  生まれながらに羽を持つ羽人と人間の物語がはじまる。  

忠犬ハジッコ

SoftCareer
児童書・童話
もうすぐ天寿を全うするはずだった老犬ハジッコでしたが、飼い主である高校生・澄子の魂が、偶然出会った付喪神(つくもがみ)の「夜桜」に抜き去られてしまいます。 「夜桜」と戦い力尽きたハジッコの魂は、犬の転生神によって、抜け殻になってしまった澄子の身体に転生し、奪われた澄子の魂を取り戻すべく、仲間達の力を借りながら奮闘努力する……というお話です。 ※今まで、オトナ向けの小説ばかり書いておりましたが、  今回は中学生位を読者対象と想定してチャレンジしてみました。  お楽しみいただければうれしいです。

見習い錬金術士ミミリの冒険の記録〜討伐も採集もお任せください!ご依頼達成の報酬は、情報でお願いできますか?〜

うさみち
児童書・童話
【見習い錬金術士とうさぎのぬいぐるみたちが描く、スパイス混じりのゆるふわ冒険!情報収集のために、お仕事のご依頼も承ります!】 「……襲われてる! 助けなきゃ!」  錬成アイテムの採集作業中に訪れた、モンスターに襲われている少年との突然の出会い。  人里離れた山陵の中で、慎ましやかに暮らしていた見習い錬金術士ミミリと彼女の家族、機械人形(オートマタ)とうさぎのぬいぐるみ。彼女たちの運命は、少年との出会いで大きく動き出す。 「俺は、ある人たちから頼まれて預かり物を渡すためにここに来たんだ」  少年から渡された物は、いくつかの錬成アイテムと一枚の手紙。 「……この手紙、私宛てなの?」  少年との出会いをキッカケに、ミミリはある人、あるアイテムを探すために冒険を始めることに。  ――冒険の舞台は、まだ見ぬ世界へ。  新たな地で、右も左もわからないミミリたちの人探し。その方法は……。 「討伐、採集何でもします!ご依頼達成の報酬は、情報でお願いできますか?」  見習い錬金術士ミミリの冒険の記録は、今、ここから綴られ始める。 《この小説の見どころ》 ①可愛いらしい登場人物 見習い錬金術士のゆるふわ少女×しっかり者だけど寂しがり屋の凄腕美少女剣士の機械人形(オートマタ)×ツンデレ魔法使いのうさぎのぬいぐるみ×コシヌカシの少年⁉︎ ②ほのぼのほんわか世界観 可愛いらしいに囲まれ、ゆったり流れる物語。読了後、「ほわっとした気持ち」になってもらいたいをコンセプトに。 ③時々スパイスきいてます! ゆるふわの中に時折現れるスパイシーな展開。そして時々ミステリー。 ④魅力ある錬成アイテム 錬金術士の醍醐味!それは錬成アイテムにあり。魅力あるアイテムを活用して冒険していきます。 ◾️第3章完結!現在第4章執筆中です。 ◾️この小説は小説家になろう、カクヨムでも連載しています。 ◾️作者以外による小説の無断転載を禁止しています。 ◾️挿絵はなんでも書いちゃうヨギリ酔客様からご寄贈いただいたものです。

夢の中で人狼ゲーム~負けたら存在消滅するし勝ってもなんかヤバそうなんですが~

世津路 章
児童書・童話
《蒲帆フウキ》は通信簿にも“オオカミ少年”と書かれるほどウソつきな小学生男子。 友達の《東間ホマレ》・《印路ミア》と一緒に、時々担任のこわーい本間先生に怒られつつも、おもしろおかしく暮らしていた。 ある日、駅前で配られていた不思議なカードをもらったフウキたち。それは、夢の中で行われる《バグストマック・ゲーム》への招待状だった。ルールは人狼ゲームだが、勝者はなんでも願いが叶うと聞き、フウキ・ホマレ・ミアは他の参加者と対決することに。 だが、彼らはまだ知らなかった。 ゲームの敗者は、現実から存在が跡形もなく消滅すること――そして勝者ですら、ゲームに潜む呪いから逃れられないことを。 敗退し、この世から消滅した友達を取り戻すため、フウキはゲームマスターに立ち向かう。 果たしてウソつきオオカミ少年は、勝っても負けても詰んでいる人狼ゲームに勝利することができるのだろうか? 8月中、ほぼ毎日更新予定です。 (※他小説サイトに別タイトルで投稿してます)

鳥の詩

恋下うらら
児童書・童話
小学生、名探偵ソラくん、クラスで起こった事件を次々と解決していくお話。

王女様は美しくわらいました

トネリコ
児童書・童話
   無様であろうと出来る全てはやったと満足を抱き、王女様は美しくわらいました。  それはそれは美しい笑みでした。  「お前程の悪女はおるまいよ」  王子様は最後まで嘲笑う悪女を一刀で断罪しました。  きたいの悪女は処刑されました 解説版

昨日の敵は今日のパパ!

波湖 真
児童書・童話
アンジュは、途方に暮れていた。 画家のママは行方不明で、慣れない街に一人になってしまったのだ。 迷子になって助けてくれたのは騎士団のおじさんだった。 親切なおじさんに面倒を見てもらっているうちに、何故かこの国の公爵様の娘にされてしまった。 私、そんなの困ります!! アンジュの気持ちを取り残したまま、公爵家に引き取られ、そこで会ったのは超不機嫌で冷たく、意地悪な人だったのだ。 家にも帰れず、公爵様には嫌われて、泣きたいのをグッと我慢する。 そう、画家のママが戻って来るまでは、ここで頑張るしかない! アンジュは、なんとか公爵家で生きていけるのか? どうせなら楽しく過ごしたい! そんな元気でちゃっかりした女の子の物語が始まります。

処理中です...