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第1章 ちびっこ怪獣三匹、異世界に降り立つ

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 右を見て。
 左を見て。
 光太は、自分の周囲には誰もおらず、雲ひとつない青空だけが広がっていることを、あらためて確認する。

 ケースケやユーゴだけでなく、金堂や先生たち、女の子ふたりの姿もない。
 広い広い大空で、たったひとり。
 しかも、現在進行形げんざいしんこうけいで、落下中らっかちゅうだ。

 ゾクッとしたナニカが、ソロリと光太を絡めとる。

 どうして、一緒に光の渦へと引きずり込まれた、誰の姿も見えないのだろう?
 どうして自分はひとり、ものすごいスピードで下に向かって落ちているのだろう?
 考えれば考えるほど、苦しいほどの焦燥感しょうそうかんが、じわりじわりとわき上がり--……。
 すぐに消えた。

 だって、ユーゴが言ったのだ。
 
 『コウちゃん、ケースケッ、みんなも! 手を繋いで離さないでッ』、と。

 ユーゴはいつだって、光太には考えつかないようなことまで考えてくれている。

 昨日、人面魚を見つけたときだってそうだった。
 光太とケースケは、つかまえることしか考えていなかったのに。
 『入れ物がなければせっかく人面魚を捕まえても意味ないでしょ』、と。
 騒ぐ光太とケースケを横目に、ユーゴだけが人面魚を入れるモノを探してくれていたのだ。

 結局、三人して池にはまって怒られたけど。
 ユーゴは、いろんな意味で間違いなく、光太たちよりもかしこい。
 学校の成績とかじゃなく。
 勉強以外の。
 おばあちゃんの知恵袋みたいな部分で。

 光太はその事を、経験から理解していた。

 ユーゴが手を繋げと言ったなら、繋がなきゃならない理由がきっとある。
 『なんで』だとか『どうして』だとか、考える必要なんて、なにもない。

 言葉の意味を理解するより先に手が動き、光太は左手で金堂を、右手でケースケを掴んだ。
 ケースケもまた即座そくざに反応して、片手で光太を掴み、もう片方の手で、ユーゴを掴んでいた。
 ユーゴもそうだ。ケースケに手を差し伸べつつも、近くにいた木本先生にしがみついていたように思う。

 木本先生も、ちょうど教室に入ってきたばかりの大内先生も、それぞれが近くにいた女の子たちを抱え込むようにしてお互いを抱きしめ、団子状になっていたから大丈夫。
 魔方陣に引きずり込まれた瞬間、確かにみんな、繋がっていた。

 見えなくても、感じられなくても、きっとみんなそばにいる。

 ごおごおと鳴く風の音がうるさくて、なにも聞こえなくだって、平気。
 手のひらさえしっかり握りしめていれば平気。

 ギュッと握った右の手のひらが、握り返してくる手の感触を伝えてくるから。

 光太が右手で掴んだのはケースケだ。
 大きくて力持ち。優しくて強い。ケースケはそんなヤツ。
 ケースケは、光太を掴んだのと反対側の手で、ユーゴを掴んでた。
 なら平気。なら大丈夫。
 ケースケが、光太やユーゴの手を離すなんてことは、絶対にない。
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