愚かな道化は鬼哭と踊る

ふゆき

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【護り人形】

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 そっとオレの手から人形を連れて行った佐津川さんが、寝かせたり起こしたりして、瞼の動きを確かめる。
 寝かせた時にはちゃんと目を閉じて、起こせばぱちりと目が開く。

「錘が外れて--とかではなさそうだね」

「異変を感じてから何度かメンテナンスに出しているそうだから、仕掛けが壊れているといったことはないよ。問題なのは、ふたつめの異変でね。どうも、夜な夜な勝手に動きまわっているらしいんだ」

「ん~? 悪いモノは特に……なんにも入っていない……ような?」

 矯めつ眇めつ、向きを変え角度を変えて人形をじっくりと眺めた佐津川さんが、首を傾げる。

 佐津川さんも尼子さんも職業柄、怪異の存在が視える人だ。普段なら問題なく怪異の存在を察知して、彼らなりの手順を踏んで排除に動く。
 だが稀に、出現に条件のあるモノや存在が弱すぎるモノ、または隠れるのが上手なモノなどは、なかなか視えないこともある。それでも、存在しているかどうかの判別くらいは出来る人たちだ。

「だろう? 悪いモノはなにも感じないんだ。それで困って、龍之介に一度視てもらおうと思って持ってきた」

「オレなんかより、佐津川さんの見立ての方がよほど信用出来ると思いますけどね」

 怪異のプロがふたりともに『悪いモノは感じない』と判断したなら、素人に毛が生えた程度のオレが視るより確実だと思う。の、だが。
 怪異のプロの見解は、オレとは違っているらしい。

「佐津川を信用していない訳ではないのだが、引き受けた以上は何故この人形が動き回るのか、原因を見つけねばならんのでな。『見鬼の目』で、視るだけ視てくれ」

「確認の意味でも、一度きちんと視ておいた方が安心できるからね」

 尼子さんの言葉を受けて差し出されたビスクドールを佐津川さんの手から受け取り、念のため、応接室のソファに腰を下ろす。
 モノがモノだけに落とすとヤバい。なにも憑いていないと油断しているところを脅かされ、驚いた拍子に落としでもしたら目も当てられない事になる。
 佐久間のおっさんが『絶対壊すな』と念押しするくらいだ。万が一、弁償しろだなんぞと言われたら間違いなく破産する。

「必ず視えるという保証はありませんよ?」

 一応の念押しをして、しっかりと抱えた人形を、真正面から見つめる。正直、『見鬼』だのなんだの言われても、意図して『力』を使えている訳ではないのだ。
 じっと見つめていれば、視線に気づいた怪異が反応を示す。オレが『視る』事で向こうもオレの存在を見つけて動きを見せる--ってのがいつものパターンだ。

 だが今回は、少しばかりいつもと反応が異なっていた。
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