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その15. 計画と決意
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「毎週水曜日?」
なぜ曜日を限定しているのか理解できずに、美晴が首をひねる。陽平は先に来たラーメンをすすりながら、うんとうなずいた。
「毎週水曜日にしか現れない『コンビニの君』に会いたさに 、俺達も毎週水曜日にだけあそこの公園前のコンビニに通っていたんですよ」
「それって」
「もちろん、美晴さんのことです」
健斗との会話では出てこなかったその新事実に、美晴の動きが停止した。
「小籠包と炒飯のセット、お待たせしましたー」
「美晴さん、来ましたよ」
言われてハッとして、蒸籠の蓋を開ける。湯気とともに小籠包があらわれて、美晴は反射的に笑顔になった。そのまま一気に食べたいところだが、ここで急くと口の中を火傷する。レンゲに小籠包を一つ置くと、冷ましながら話の続きを再開した。
「陽平くん達、いつもあそこのコンビニを利用しているんじゃ無かったの?」
「あそこより会社の近くに別のコンビニありますから。たまたま気分変えてあそこに入った時に偶然美晴さんを見て、それからですよ」
「……てっきり、コンビニのおにぎりが大好きな二人組なのかと」
「それだけで毎回あんなテンション高くなんかならないです」
「そう、なんだ……」
蒸籠の蒸気と初めて知る事実と、二つの熱にあてられて、顔がどんどんと火照ってゆく。そんな美晴の顔をまじまじと見つめ、陽平がポツリとつぶやいた。
「なんだ。ちゃんと好きなんだ」
「ええ、まあ……」
初めて自ら口に出して肯定して、一気に照れくささが沸き起きる。
「その表情、画像撮ってケンケンに送っていいですか?」
「駄目!」
陽平の口調が完全に面白がっている。美晴は目の前の男を軽く睨みつけながら、ようやく熱さが和らいだ小籠包を食べ始めた。
皮を箸で少し破って汁を先にすする。確かに新菜の言うとおり少し甘めの味が口に広がり、食欲をより刺激する。汁を堪能したあとは、生姜の千切りを乗せて頬張った。
「これ、本当に美味しいね」
「でしょう? で、なんで過渡期なんですか?」
小籠包にそろそろ話題を変えたい美晴の思惑には乗らず、にこやかに微笑みながら陽平が話を戻す。美晴はゆっくり丁寧に小籠包を味わうと、水を一口飲んでから渋々答えた。
「まだ、自分の気持ちを伝えていないので」
「それって、好きだってことを、ですか?」
「ええ、まあ」
なぜ曜日を限定しているのか理解できずに、美晴が首をひねる。陽平は先に来たラーメンをすすりながら、うんとうなずいた。
「毎週水曜日にしか現れない『コンビニの君』に会いたさに 、俺達も毎週水曜日にだけあそこの公園前のコンビニに通っていたんですよ」
「それって」
「もちろん、美晴さんのことです」
健斗との会話では出てこなかったその新事実に、美晴の動きが停止した。
「小籠包と炒飯のセット、お待たせしましたー」
「美晴さん、来ましたよ」
言われてハッとして、蒸籠の蓋を開ける。湯気とともに小籠包があらわれて、美晴は反射的に笑顔になった。そのまま一気に食べたいところだが、ここで急くと口の中を火傷する。レンゲに小籠包を一つ置くと、冷ましながら話の続きを再開した。
「陽平くん達、いつもあそこのコンビニを利用しているんじゃ無かったの?」
「あそこより会社の近くに別のコンビニありますから。たまたま気分変えてあそこに入った時に偶然美晴さんを見て、それからですよ」
「……てっきり、コンビニのおにぎりが大好きな二人組なのかと」
「それだけで毎回あんなテンション高くなんかならないです」
「そう、なんだ……」
蒸籠の蒸気と初めて知る事実と、二つの熱にあてられて、顔がどんどんと火照ってゆく。そんな美晴の顔をまじまじと見つめ、陽平がポツリとつぶやいた。
「なんだ。ちゃんと好きなんだ」
「ええ、まあ……」
初めて自ら口に出して肯定して、一気に照れくささが沸き起きる。
「その表情、画像撮ってケンケンに送っていいですか?」
「駄目!」
陽平の口調が完全に面白がっている。美晴は目の前の男を軽く睨みつけながら、ようやく熱さが和らいだ小籠包を食べ始めた。
皮を箸で少し破って汁を先にすする。確かに新菜の言うとおり少し甘めの味が口に広がり、食欲をより刺激する。汁を堪能したあとは、生姜の千切りを乗せて頬張った。
「これ、本当に美味しいね」
「でしょう? で、なんで過渡期なんですか?」
小籠包にそろそろ話題を変えたい美晴の思惑には乗らず、にこやかに微笑みながら陽平が話を戻す。美晴はゆっくり丁寧に小籠包を味わうと、水を一口飲んでから渋々答えた。
「まだ、自分の気持ちを伝えていないので」
「それって、好きだってことを、ですか?」
「ええ、まあ」
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