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その4. スパークリング
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店員が頃合いを見計らった様にやって来て、説明を始めた。それを聞きながら、メニューに視線を落とす彼女をそっと見る。真剣にメニューに書かれた内容に目を通している彼女を眺め、ご飯を食べるのが好きな人で良かったと思った。そうでなければ初回でこんな気合の入った店にいきなり誘っても、決して付いてきてはくれなかっただろう。
「お飲み物ですが、いかがなさいますか」
「俺はビールで」
「私は、……スパークリングにします」
「スパークリング・ワイン?」
飲み物といえばビールしか頭になかったので、つい反射的に聞き返してしまう。
「ビールも好きなんですが、せっかくのフランス料理なのでワインでいこうかと」
「そうか。俺も、そうしようかな」
ほんの軽い気持ちでそう言ったのだが、美晴の視線が思案するように揺れたのに気がついた。
「それでしたら、ボトル頼んじゃいます?」
「ボトル」
「ビールに比べたら一杯の量が少ないんですよね。多分、すぐ飲んでしまうと思うので、それならボトルの方がいいかと」
なにか躊躇いがちな表情が気になりつつも、健斗は素直にうなずく。その恵まれた体型ゆえに、学生時代は運動部に所属していた。大学時代に部活仲間に散々酒も鍛えられた健斗にとって、ワインの一本くらいどうということもない。店員にお勧めを訊いてスパークリングを選ぶと乾杯をして、食事が始まる。
さすが陽平が推すだけあって、店の雰囲気に劣らず料理もなかなかのものだった。とはいえ、健斗に味わう余裕はなく、主に美晴の満足そうな表情でそう判断する。
「穴子、コンビニおにぎりだけじゃなくフレンチでもメニューにでてきましたね。さすが旬の魚」
「夏が旬なんですか?」
「そうです。これ、穴子と根野菜のコンソメ仕立てって字面だけでも十分美味しそうだけれど、実際食べると出汁が効いて本当に美味しい」
「俺、フランス料理で出汁って考えたことなかったです」
「確かに出汁って言うと、和食っぽいですね」
そんな風に料理について語りながら一口食べると、漫然と食べていた物の味が広がる。酒と料理に次第に気持ちがほぐれたところで、ようやくお互いの自己紹介が始まった。考えてみると美晴のことは、毎週水曜日にコンビニのイートインコーナーでコーヒーを飲む、という習慣しか知らない。聞いてみると自分より三歳年上で、アウトソーシングの会社に勤めているとのことだった。
「アウトソーシングって?」
「お飲み物ですが、いかがなさいますか」
「俺はビールで」
「私は、……スパークリングにします」
「スパークリング・ワイン?」
飲み物といえばビールしか頭になかったので、つい反射的に聞き返してしまう。
「ビールも好きなんですが、せっかくのフランス料理なのでワインでいこうかと」
「そうか。俺も、そうしようかな」
ほんの軽い気持ちでそう言ったのだが、美晴の視線が思案するように揺れたのに気がついた。
「それでしたら、ボトル頼んじゃいます?」
「ボトル」
「ビールに比べたら一杯の量が少ないんですよね。多分、すぐ飲んでしまうと思うので、それならボトルの方がいいかと」
なにか躊躇いがちな表情が気になりつつも、健斗は素直にうなずく。その恵まれた体型ゆえに、学生時代は運動部に所属していた。大学時代に部活仲間に散々酒も鍛えられた健斗にとって、ワインの一本くらいどうということもない。店員にお勧めを訊いてスパークリングを選ぶと乾杯をして、食事が始まる。
さすが陽平が推すだけあって、店の雰囲気に劣らず料理もなかなかのものだった。とはいえ、健斗に味わう余裕はなく、主に美晴の満足そうな表情でそう判断する。
「穴子、コンビニおにぎりだけじゃなくフレンチでもメニューにでてきましたね。さすが旬の魚」
「夏が旬なんですか?」
「そうです。これ、穴子と根野菜のコンソメ仕立てって字面だけでも十分美味しそうだけれど、実際食べると出汁が効いて本当に美味しい」
「俺、フランス料理で出汁って考えたことなかったです」
「確かに出汁って言うと、和食っぽいですね」
そんな風に料理について語りながら一口食べると、漫然と食べていた物の味が広がる。酒と料理に次第に気持ちがほぐれたところで、ようやくお互いの自己紹介が始まった。考えてみると美晴のことは、毎週水曜日にコンビニのイートインコーナーでコーヒーを飲む、という習慣しか知らない。聞いてみると自分より三歳年上で、アウトソーシングの会社に勤めているとのことだった。
「アウトソーシングって?」
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