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第二章 彼からみた彼女の話※
その1
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俺と彼女の出会いはよくあると言えばよくある話で、でも偶然が積み重なった、自分にとっては奇跡のような出会いだった。
夕方の駅ビル入り口。
これから会社に戻ろうとした俺と、仕事が終わって帰ろうとする彼女。どちらも突然降り出した雨に慌てて一歩踏み出し、前方不注意でぶつかった。ただそれだけ。
けど俺は、その時とっさに抱きとめた彼女の柔らかさにどきりとして、このままで終わらせたくないと強く思った。
その場で必死になって、近くのカフェで待っていて欲しいと懇願し、大慌てで会社に戻って報告を済ませると、彼女の待つ店へと急いだ。
これが俺の運命のとき。
人はこんなにも簡単にたやすく恋におちてしまうものなんだって、身をもって知った夕暮れ。
そしてそれから数ヶ月後───。
湿った音と共に、唇と唇が離れてゆく。
抑えた照明の中、彼女の濡れた唇を眺め、ゆっくりとなぞり上げた。力の抜けた体は俺にもたれかかり、唇もうっすらと開いて俺の指を無意識に呑み込もうとしている。
彼女の望み通り人差し指を入れると、合図するように舌を軽く突く。すぐに指にまとわりついてくる舌。まるで子犬が戯れるみたいだ。
その動きに俺の別の場所が刺激され、徐々にそこが勃ち上がる。
「煽り上手だ」
にんまり笑ってそう褒めると、彼女の頬が赤くなった。
「そっちが、でしょう」
そして一瞬のためらいの後、俺の指をちゅっと吸い上げる。
自分のしたことの反応を窺うように、こちらを見上げる彼女。
もっと自信を持って誘惑してくれればいいのに。
そこまでの度胸はまだ無いらしく、少し不安げに俺を見つめる。そんな彼女が可愛過ぎて、返事の代わりに自分のモノを押し付けた。彼女の腰がとっさに跳ね上がる。
「……ばか」
伏し目がちとなり、背中に回されている彼女の手が俺のシャツをきゅっと握る。照れ隠しの言葉は艶を含んで、まるで誘っている様だ。
俺は上機嫌で彼女の服に手をかけ、ゆっくりと脱がせた。一枚脱がすたびに口付けて、その後、彼女のうなじに鼻をつけて、匂いをそっと嗅ぐ。少しずつ匂い立つ甘い香りに、幸せを噛みしめる。
ショーツを一枚残したところで、完全に腰砕けになった彼女をベッドに横たわらせ、そのままうつ伏せにさせた。自分も手早く服を脱ぎ捨てると、彼女のうなじに流れる髪の毛を掻き分けて、ペロリと舐める。
あんずジャム。
その言葉が浮かぶと同時に、彼女の口から小さく息が漏れた。ふるりと背中が震える。
いつも、抱く時に必ずうなじを舐めるから、彼女がすっかり覚えてしまった。これから二人で快楽に溺れるという合図。
もう一度うなじを舐めると、そのまま背骨を舌でなぞった。
今まで自分が匂いフェチだと思ったことも無かったし、好きな子を舐めたいという欲望を強く持ったことも無かった。と思う。
こうなったきっかけは、最初の出逢いで彼女をとっさに抱きとめた、その時の印象からだ。
抱き心地の柔らかさに猫を連想し、彼女の身にまとう香りに、子供のころに読んだ猫に絡んだ児童書を思い出した。
もう、タイトルも忘れてしまった本。子供のいる家庭で飼われている黒猫の話。
夕方の駅ビル入り口。
これから会社に戻ろうとした俺と、仕事が終わって帰ろうとする彼女。どちらも突然降り出した雨に慌てて一歩踏み出し、前方不注意でぶつかった。ただそれだけ。
けど俺は、その時とっさに抱きとめた彼女の柔らかさにどきりとして、このままで終わらせたくないと強く思った。
その場で必死になって、近くのカフェで待っていて欲しいと懇願し、大慌てで会社に戻って報告を済ませると、彼女の待つ店へと急いだ。
これが俺の運命のとき。
人はこんなにも簡単にたやすく恋におちてしまうものなんだって、身をもって知った夕暮れ。
そしてそれから数ヶ月後───。
湿った音と共に、唇と唇が離れてゆく。
抑えた照明の中、彼女の濡れた唇を眺め、ゆっくりとなぞり上げた。力の抜けた体は俺にもたれかかり、唇もうっすらと開いて俺の指を無意識に呑み込もうとしている。
彼女の望み通り人差し指を入れると、合図するように舌を軽く突く。すぐに指にまとわりついてくる舌。まるで子犬が戯れるみたいだ。
その動きに俺の別の場所が刺激され、徐々にそこが勃ち上がる。
「煽り上手だ」
にんまり笑ってそう褒めると、彼女の頬が赤くなった。
「そっちが、でしょう」
そして一瞬のためらいの後、俺の指をちゅっと吸い上げる。
自分のしたことの反応を窺うように、こちらを見上げる彼女。
もっと自信を持って誘惑してくれればいいのに。
そこまでの度胸はまだ無いらしく、少し不安げに俺を見つめる。そんな彼女が可愛過ぎて、返事の代わりに自分のモノを押し付けた。彼女の腰がとっさに跳ね上がる。
「……ばか」
伏し目がちとなり、背中に回されている彼女の手が俺のシャツをきゅっと握る。照れ隠しの言葉は艶を含んで、まるで誘っている様だ。
俺は上機嫌で彼女の服に手をかけ、ゆっくりと脱がせた。一枚脱がすたびに口付けて、その後、彼女のうなじに鼻をつけて、匂いをそっと嗅ぐ。少しずつ匂い立つ甘い香りに、幸せを噛みしめる。
ショーツを一枚残したところで、完全に腰砕けになった彼女をベッドに横たわらせ、そのままうつ伏せにさせた。自分も手早く服を脱ぎ捨てると、彼女のうなじに流れる髪の毛を掻き分けて、ペロリと舐める。
あんずジャム。
その言葉が浮かぶと同時に、彼女の口から小さく息が漏れた。ふるりと背中が震える。
いつも、抱く時に必ずうなじを舐めるから、彼女がすっかり覚えてしまった。これから二人で快楽に溺れるという合図。
もう一度うなじを舐めると、そのまま背骨を舌でなぞった。
今まで自分が匂いフェチだと思ったことも無かったし、好きな子を舐めたいという欲望を強く持ったことも無かった。と思う。
こうなったきっかけは、最初の出逢いで彼女をとっさに抱きとめた、その時の印象からだ。
抱き心地の柔らかさに猫を連想し、彼女の身にまとう香りに、子供のころに読んだ猫に絡んだ児童書を思い出した。
もう、タイトルも忘れてしまった本。子供のいる家庭で飼われている黒猫の話。
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