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第三章 二人の会話
31.✵
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言ってから、こらえきれずに瞳を逸らしてしまった。その人を目の前にして、あなただから良いのって言うのって、こんなに恥ずかしいと思わなかった。ドラマではよくあるのにいざ自分がやると、無茶苦茶高いハードルをなんとか飛越えたような気分になる。どんどんと顔が火照ってうつむいたら、下腹部からずんとうごめくような振動がした。
「うっ。と、俊成君?」
慌ててたずねるけれど、俊成君はそれには答えてくれなかった。かわりにおでことおでこを重ね合わせ、ぐりぐりとこすり付けてキスをされ、最後にぎゅっと抱きしめられる。
嵐に翻弄されるみたいにそこまでされて、訳が分からず俊成君を見つめてしまった。途端に瞳がかち合って、もう外すことが出来なくなってしまう。
「自分がなに言ってるか、分かってる? あず」
「え?」
俊成君の表情が怖いくらいに真剣で、どきりとする。なぜか体も反応して、とろっとあそこからあふれてくる感触がした。
「んっ」
「……ごめん。俺、もう止まんないから」
そう言うと私の肩に固定するように顔をうずめ、俊成君は腰を動かしだした。
「はぁっ、あ、俊成君」
最初はゆっくりと動かされ、それでも痛みに顔をしかめた。入り口を押し広げられている痛みと内部を圧迫する苦しさと、二つに責められて上手く息が出来ない。
でも、俊成君の動きに呼吸を合わせるうち、少しずつ苦痛だけではない何かが生まれてきた。真っ暗闇の中、薄ぼんやりと差し込む明かりのような、ひどくもどかしいのだけれど確実に広がってゆく何か。
「あず」
熱っぽくささやかれて、夢中でキスをかわす。光に手を伸ばすように俊成君を抱きしめると、さらに強く抱きしめ返された。いつのまに湿った音と打ち付ける音が大きくなり、どんどんと腰の動きは加速され、吐息が荒くなる。
「ゃあ、あっ、はぁっ、俊成君、俊成君っ」
「あずっ、……っう」
小さくうめき声が聞こえ、一瞬動きが止まった。びくんびくんと私の中で俊成君のものが跳ね上がり、それから遅れて俊成君の体から力が抜ける。けれど時々ゆっくりと、余韻を楽しむように腰が動いていた。さっきの、指で初めていってしまった私みたいだ。
はぁはぁと息を整えながら、無意識のうちに俊成君の髪の毛を指で梳いていた。受け止めるだけだったのに、まるで全力疾走をした後のようだった。
それからしばらく二人、ただ黙ってじっとしていた。でもほどなくして、俊成君がゆっくりと動いて私の中から去っていく。初めてこじ開けられた痛みはぼうっと続いているけれど、体が離れてしまったことがひどく寂しい。
「俊成君」
自分の始末をつけ、すぐに戻ってきた彼に手を差し出して呼びかけた。
「ん?」
「ぎゅって、して」
疲れてしまったせいか、ちょっと舌足らずのしゃべり方になっている。甘えているなぁって自分でも思うけれど、今更意地を張る気も無い。俊成君は柔らかく微笑むと、望みどおりぎゅっと抱きしめてくれた。
さっきまでいっぱい快楽を与えてくれて、それはそれで自分にとって大切なことなんだけれど、この抱擁が一番好きかも知れない。何よりも、俊成君に包まれていることが実感できる。
「あと、始末しなくちゃな」
「……うん」
初めてだった私をいたわる様にそっと言ってくれるのだけれど、まだ動きたくなくて曖昧にうなずいた。
「温泉入っているみたい」
無意識のうちにつぶやくと、鼻をつままれた。
「痛いよ」
「一人で落ち着くな」
抗議したら言い返されて、逆に俊成君が私の肩に顔をうずめてきた。彼の髪の毛が頬を掠めるのが、心地よい。
このままずっと、こうしていたいな。
俊成君の頭を抱きかかえ、髪の毛を指ですくってもて遊ぶ。自然に口元がにやけてきてしまった。へへって間抜けな笑いをした途端、俊成君がため息をつきながら顔を上げる。
「やっぱり離れたくない。ずっと一緒にいたい」
ふてくされた子供みたいな表情に、一瞬黙ってまじまじと見つめてしまう。
「我がまま、言ってる」
自分だって同じこと思っていたくせに、妙に冷静になって言い返してしまった。俊成君はう、ってつまった顔をして、こちらを見る。その表情がやっぱりまだ子供みたいで、優しい気持ちがにじむように浮かんできた。今度は私が息を吐き出し、力を抜く。
「でも、……いいよ。待っている。離れていても、そばにいる。俊成君と同じだよ。私もずっと俊成君のそばにいたいから」
よく考えるとあんまり意味の通っていない言葉だけれど、公園にいたときよりもずっとずっと、楽な気持ちでそういえた。とても素直になっている。素直になったついでに、またにやけた笑いをしてしまった。もうどんな顔していようと、いいやって思えた。
「やっぱり、あずがいい」
目を細めて、ゆっくりと頬を撫でながらつぶやくから、私も俊成君の瞳を見つめて腕を伸ばす。
「私も、俊成君がいい」
顔が間近に迫ってきて、柔らかいキスが落とされる。宙に浮いた私の腕は彼のうなじに巻きついて、そして最後はまた抱きしめる形となった。
本当。私、俊成君のことが好きだ。
幸せな気持ちで、そうはっきりと思った。
「うっ。と、俊成君?」
慌ててたずねるけれど、俊成君はそれには答えてくれなかった。かわりにおでことおでこを重ね合わせ、ぐりぐりとこすり付けてキスをされ、最後にぎゅっと抱きしめられる。
嵐に翻弄されるみたいにそこまでされて、訳が分からず俊成君を見つめてしまった。途端に瞳がかち合って、もう外すことが出来なくなってしまう。
「自分がなに言ってるか、分かってる? あず」
「え?」
俊成君の表情が怖いくらいに真剣で、どきりとする。なぜか体も反応して、とろっとあそこからあふれてくる感触がした。
「んっ」
「……ごめん。俺、もう止まんないから」
そう言うと私の肩に固定するように顔をうずめ、俊成君は腰を動かしだした。
「はぁっ、あ、俊成君」
最初はゆっくりと動かされ、それでも痛みに顔をしかめた。入り口を押し広げられている痛みと内部を圧迫する苦しさと、二つに責められて上手く息が出来ない。
でも、俊成君の動きに呼吸を合わせるうち、少しずつ苦痛だけではない何かが生まれてきた。真っ暗闇の中、薄ぼんやりと差し込む明かりのような、ひどくもどかしいのだけれど確実に広がってゆく何か。
「あず」
熱っぽくささやかれて、夢中でキスをかわす。光に手を伸ばすように俊成君を抱きしめると、さらに強く抱きしめ返された。いつのまに湿った音と打ち付ける音が大きくなり、どんどんと腰の動きは加速され、吐息が荒くなる。
「ゃあ、あっ、はぁっ、俊成君、俊成君っ」
「あずっ、……っう」
小さくうめき声が聞こえ、一瞬動きが止まった。びくんびくんと私の中で俊成君のものが跳ね上がり、それから遅れて俊成君の体から力が抜ける。けれど時々ゆっくりと、余韻を楽しむように腰が動いていた。さっきの、指で初めていってしまった私みたいだ。
はぁはぁと息を整えながら、無意識のうちに俊成君の髪の毛を指で梳いていた。受け止めるだけだったのに、まるで全力疾走をした後のようだった。
それからしばらく二人、ただ黙ってじっとしていた。でもほどなくして、俊成君がゆっくりと動いて私の中から去っていく。初めてこじ開けられた痛みはぼうっと続いているけれど、体が離れてしまったことがひどく寂しい。
「俊成君」
自分の始末をつけ、すぐに戻ってきた彼に手を差し出して呼びかけた。
「ん?」
「ぎゅって、して」
疲れてしまったせいか、ちょっと舌足らずのしゃべり方になっている。甘えているなぁって自分でも思うけれど、今更意地を張る気も無い。俊成君は柔らかく微笑むと、望みどおりぎゅっと抱きしめてくれた。
さっきまでいっぱい快楽を与えてくれて、それはそれで自分にとって大切なことなんだけれど、この抱擁が一番好きかも知れない。何よりも、俊成君に包まれていることが実感できる。
「あと、始末しなくちゃな」
「……うん」
初めてだった私をいたわる様にそっと言ってくれるのだけれど、まだ動きたくなくて曖昧にうなずいた。
「温泉入っているみたい」
無意識のうちにつぶやくと、鼻をつままれた。
「痛いよ」
「一人で落ち着くな」
抗議したら言い返されて、逆に俊成君が私の肩に顔をうずめてきた。彼の髪の毛が頬を掠めるのが、心地よい。
このままずっと、こうしていたいな。
俊成君の頭を抱きかかえ、髪の毛を指ですくってもて遊ぶ。自然に口元がにやけてきてしまった。へへって間抜けな笑いをした途端、俊成君がため息をつきながら顔を上げる。
「やっぱり離れたくない。ずっと一緒にいたい」
ふてくされた子供みたいな表情に、一瞬黙ってまじまじと見つめてしまう。
「我がまま、言ってる」
自分だって同じこと思っていたくせに、妙に冷静になって言い返してしまった。俊成君はう、ってつまった顔をして、こちらを見る。その表情がやっぱりまだ子供みたいで、優しい気持ちがにじむように浮かんできた。今度は私が息を吐き出し、力を抜く。
「でも、……いいよ。待っている。離れていても、そばにいる。俊成君と同じだよ。私もずっと俊成君のそばにいたいから」
よく考えるとあんまり意味の通っていない言葉だけれど、公園にいたときよりもずっとずっと、楽な気持ちでそういえた。とても素直になっている。素直になったついでに、またにやけた笑いをしてしまった。もうどんな顔していようと、いいやって思えた。
「やっぱり、あずがいい」
目を細めて、ゆっくりと頬を撫でながらつぶやくから、私も俊成君の瞳を見つめて腕を伸ばす。
「私も、俊成君がいい」
顔が間近に迫ってきて、柔らかいキスが落とされる。宙に浮いた私の腕は彼のうなじに巻きついて、そして最後はまた抱きしめる形となった。
本当。私、俊成君のことが好きだ。
幸せな気持ちで、そうはっきりと思った。
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