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第三章 二人の会話
30.✵
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抱きしめられて、いじられて、私のあえぎ声に呼応するように耳元で聞こえる俊成君の息遣いも荒くなる。くちゅくちゅと絶え間なく水音は聞こえてきて、この三つの音だけでも十分私を興奮させた。気が付くと、指は一本から二本に増えて私の中を出入りしている。
「あず、そろそろ大丈夫か?」
さらに一本指が増えて三本がばらばらに動かされるようになってから、その手が止まった。囁く俊成君の声がさっきよりもずっと艶っぽくなって、高まってきているのが感じられる。
「ん」
どう大丈夫か分からなかったけれど、彼の望んでいるようにしたくって素直にうなずく。俊成君はまた私にキスすると指を抜き、枕元に置いた避妊具を着けると、そこに自分の体を割り込ませた。
「あ」
太ももに熱い塊の感触を覚え、反射的に腰が逃げる。頭よりも体が、それが何かを理解していた。
「怖い?」
動きを止めて、俊成君が静かに聞いた。
「……ちょっと」
控えめに言うけれど、本当はそのリアルな熱に怯えていた。たとえ好きな人のものであっても、初めて自分の体が受け入れるものには本能的な恐怖が付きまとう。
「大丈夫だよ」
「……うん」
すがるように俊成君を抱きしめたら、ぎゅっと強く抱きしめ返された。その時俊成君の中心が私に合わさって、彼の欲望を伝えてくる。
「俊成君、熱い……」
つぶやいたら、ぐりっとそれを押し付けられた。
「あずを抱いているから」
そう囁いて、私の溝に沿わせて熱の塊を滑り込ませる。
「膝、立てて。その方が楽」
言われて膝を曲げると、俊成君がゆっくりと私の中に入ってきた。
「ふぅっ、んっ」
その大きさに圧倒される。自分の体がみしみしと音をたてて、壊れるんじゃないかと思った。
指で散々いじられて、三本も入るようになっただけでもすごいと思うのに、俊成君のそれは入り口をさらに押し広げ進入する。
「くっ、は、ああっ」
「あず、力抜いて」
つい歯を食いしばってしまうけれど、なだめるように彼に頬を撫でられた。
「俊成君」
うっすらと涙のにじんだ目で訴えるように呼びかけると、キスを与えられる。舌が唇をなぞるから、まるで助けを求めるみたいに自分から絡めていった。俊成君はその間も自身を押し進め、入ってくる。
「はぁっ」
大きな引っ掛かりを乗り越えて、俊成君の動きが止まった。私も唇を離す。気が付けば肩で息をしていた。
「入った?」
祈るような気持ちでそう聞いたら、俊成君がちょっと苦しそうな表情で答えた。
「入った。でもこれからもっと奥に入るけど、……大丈夫か?」
「うん」
息を吐き出すみたいにうなずいて、頬を寄せた。痛みだけをいうなら、とっくに参っている。でも、それだけじゃない切羽詰った何かが、自分の身の内で沸き上がっていた。止めないで欲しい。このまま中途半端に、投げ出さないで欲しい。でもその気持ちは俊成君のほうが強かったみたいだ。
さっきよりも少し余裕を無くした手が私の胸を揉んで、彼の腰が突き出されてゆく。
「あっ、はあっ、あん」
辛くて普通に呼吸していられないだけなのに、漏れてくる私の声はさっきまでのようなあえぎ声だった。苦しいのと気持ちいいのとは全然違うはずなのに、私の中のスイッチは入りっぱなしだから、自分の声でまた少しずつ興奮してくる。眉を寄せ真剣な顔をしている俊成君をこっそり見つめ、その色気にもぞくっとした。
「んっ、くぅ」
小刻みにゆっくりと進入してくるそれがふいに大きく突き出され、一瞬の痛みと共にぐいっと奥まで入り込んだ。
「……入った」
荒い息と共にささやかれ、抱きしめられる。
「うっ、ん……」
苦しくて、痛いけど、じんわりと柔らかい気分になった。俊成君が私の中に入っているって思うと、体の気持ち良さとは違う、なにか暖かいものが胸の奥からにじんでくる。
全部入ったときの痛みでぎゅっと目をつむっていたけれど、ゆっくりと目を開けた。俊成君の肩とそれ越しに天井を見ながら、なるべく楽になろうと息を吐く。
「辛そう」
ふいに顔をのぞきこまれ、そう言われた。
「大丈夫だよ」
ちょっと意地を張って、即答してしまう。確かに今、快感を得ているかって聞かれたらそれは無い。でも、快感とは違う充実感があるから、俊成君が気にしなくていいんだよ。
「それに」
ぽろっと口から言葉が出て、私は慌てた。
「ん? なに」
「あー、なんでもない」
告げる気が無い言葉だったので、焦って打ち消す。ここまで来て今更なのかもしれないけれど、やっぱり口に出すと恥ずかしい言葉っていうのもあるんだ。
「なんだよ」
でも俊成君は気になるみたいで、逃げないようにと私の頬を両手で固定し、真正面からじっと見つめてきた。
「言って」
素っ気ない口調だけど、瞳が返事を求めている。しばらく黙って対抗してみたけれど、結局根負けしてしまった。
「俊成君だから耐えられる、って思っただけ。他の人とじゃなくて俊成君とで良かったな、って」
「あず、そろそろ大丈夫か?」
さらに一本指が増えて三本がばらばらに動かされるようになってから、その手が止まった。囁く俊成君の声がさっきよりもずっと艶っぽくなって、高まってきているのが感じられる。
「ん」
どう大丈夫か分からなかったけれど、彼の望んでいるようにしたくって素直にうなずく。俊成君はまた私にキスすると指を抜き、枕元に置いた避妊具を着けると、そこに自分の体を割り込ませた。
「あ」
太ももに熱い塊の感触を覚え、反射的に腰が逃げる。頭よりも体が、それが何かを理解していた。
「怖い?」
動きを止めて、俊成君が静かに聞いた。
「……ちょっと」
控えめに言うけれど、本当はそのリアルな熱に怯えていた。たとえ好きな人のものであっても、初めて自分の体が受け入れるものには本能的な恐怖が付きまとう。
「大丈夫だよ」
「……うん」
すがるように俊成君を抱きしめたら、ぎゅっと強く抱きしめ返された。その時俊成君の中心が私に合わさって、彼の欲望を伝えてくる。
「俊成君、熱い……」
つぶやいたら、ぐりっとそれを押し付けられた。
「あずを抱いているから」
そう囁いて、私の溝に沿わせて熱の塊を滑り込ませる。
「膝、立てて。その方が楽」
言われて膝を曲げると、俊成君がゆっくりと私の中に入ってきた。
「ふぅっ、んっ」
その大きさに圧倒される。自分の体がみしみしと音をたてて、壊れるんじゃないかと思った。
指で散々いじられて、三本も入るようになっただけでもすごいと思うのに、俊成君のそれは入り口をさらに押し広げ進入する。
「くっ、は、ああっ」
「あず、力抜いて」
つい歯を食いしばってしまうけれど、なだめるように彼に頬を撫でられた。
「俊成君」
うっすらと涙のにじんだ目で訴えるように呼びかけると、キスを与えられる。舌が唇をなぞるから、まるで助けを求めるみたいに自分から絡めていった。俊成君はその間も自身を押し進め、入ってくる。
「はぁっ」
大きな引っ掛かりを乗り越えて、俊成君の動きが止まった。私も唇を離す。気が付けば肩で息をしていた。
「入った?」
祈るような気持ちでそう聞いたら、俊成君がちょっと苦しそうな表情で答えた。
「入った。でもこれからもっと奥に入るけど、……大丈夫か?」
「うん」
息を吐き出すみたいにうなずいて、頬を寄せた。痛みだけをいうなら、とっくに参っている。でも、それだけじゃない切羽詰った何かが、自分の身の内で沸き上がっていた。止めないで欲しい。このまま中途半端に、投げ出さないで欲しい。でもその気持ちは俊成君のほうが強かったみたいだ。
さっきよりも少し余裕を無くした手が私の胸を揉んで、彼の腰が突き出されてゆく。
「あっ、はあっ、あん」
辛くて普通に呼吸していられないだけなのに、漏れてくる私の声はさっきまでのようなあえぎ声だった。苦しいのと気持ちいいのとは全然違うはずなのに、私の中のスイッチは入りっぱなしだから、自分の声でまた少しずつ興奮してくる。眉を寄せ真剣な顔をしている俊成君をこっそり見つめ、その色気にもぞくっとした。
「んっ、くぅ」
小刻みにゆっくりと進入してくるそれがふいに大きく突き出され、一瞬の痛みと共にぐいっと奥まで入り込んだ。
「……入った」
荒い息と共にささやかれ、抱きしめられる。
「うっ、ん……」
苦しくて、痛いけど、じんわりと柔らかい気分になった。俊成君が私の中に入っているって思うと、体の気持ち良さとは違う、なにか暖かいものが胸の奥からにじんでくる。
全部入ったときの痛みでぎゅっと目をつむっていたけれど、ゆっくりと目を開けた。俊成君の肩とそれ越しに天井を見ながら、なるべく楽になろうと息を吐く。
「辛そう」
ふいに顔をのぞきこまれ、そう言われた。
「大丈夫だよ」
ちょっと意地を張って、即答してしまう。確かに今、快感を得ているかって聞かれたらそれは無い。でも、快感とは違う充実感があるから、俊成君が気にしなくていいんだよ。
「それに」
ぽろっと口から言葉が出て、私は慌てた。
「ん? なに」
「あー、なんでもない」
告げる気が無い言葉だったので、焦って打ち消す。ここまで来て今更なのかもしれないけれど、やっぱり口に出すと恥ずかしい言葉っていうのもあるんだ。
「なんだよ」
でも俊成君は気になるみたいで、逃げないようにと私の頬を両手で固定し、真正面からじっと見つめてきた。
「言って」
素っ気ない口調だけど、瞳が返事を求めている。しばらく黙って対抗してみたけれど、結局根負けしてしまった。
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