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第三章 二人の会話
29.✵
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「いっちゃった?」
「え?」
言葉の意味を理解する前に、俊成君に抱きしめられた。
「あんっ」
どこが、というのではなく、触れ合った肌の全部が反応して、思わず声が漏れる。俊成君はゆっくりと私から離れると上半身を起こし、私の体を見下ろした。ただお互いの吐息だけが、部屋の中響き渡る。
「……そんな、見ないで」
直前までの高まりと見られることの羞恥から、全身が上気した。俊成君と共にはがれてしまった上掛けを手繰り寄せようとするけれど、妙に体がふわふわしてしまって動けない。
俊成君はそっと私の頬をひと撫ですると、ベッドから離れ、机の引き出しからなにかを取り出した。それを手にしたまま戻ってくると枕元に置き、私を抱いて上掛けに包まった。
「なに?」
よく分からなくて聞いたら、頬と頬を寄せられて、耳元で囁かれる。
「あずの中に入る準備」
その言葉に初めて何を持ってきたか理解して、顔がほてった。そして一つのことに思い当たる。
「俊成君、初めてじゃないんだよね」
「え?」
ここまでの一連の手馴れた動作。俊成君が経験者でなければ、こうもスムースには進んでいなかっただろう。まあなんとなくそれ前提で私も接していたんだけれど、実際に言葉に出して確認してしまうとどこかが妙に寂しい。俊成君だけとっくに大人になっていて、なんとなく置いてきぼりをくらった感じだ。本当に今更なんだけれど。
私だって俊成君の初めての相手になりたかったのにな。
別にこんなところの経験値で対等になろうと思わなくてもいいはずなのに、ちょっと拗ねていた。独占欲とか、嫉妬心なのかな。でも、具体的に俊成君の過去の相手を想像するともっといやな感情が湧き出してしまいそうなので、そこにはあえて目をつむる。
そんな色々な考えが渦巻いて、つい黙って俊成君を見ていたら、彼の動きが止まってしまった。あ、これ、心底困っているときのパターンだ。
「俊成君」
困らせるつもりじゃなかったけれど、そうなってしまったことに反省し、名前を呼んだ。ゆっくりと手を伸ばし、彼の頬に触れる。髪に指を絡め、撫で上げる。自分から触れるという行為に、また鼓動が早くなった。
「あのね、大切にしてくれる?」
自分から問いかけるというのも最大限に恥ずかしいんだけれど、自分が撒いてしまった種なので仕方ないと開き直る。
「大切にするよ」
心外な事を言われたといった表情で俊成君が答えた。
「優しく、してくれる?」
「する」
「それなら、ね、……来て」
小さく、聞こえるか聞こえないか位の声で言ったのに、俊成君には十分伝わったみたいだ。びっくりしたように一瞬だけ目を見開いてからすぐに優しい顔になり、深く息を吐き出して私にゆっくりと覆いかぶさってきた。
「本当に、いい?」
「……うん」
仕切りなおすみたいにキスされて、優しく胸をいじられた。さっきまでの火照りはすぐに復活して、私の息が上がる。
「はぁ、ああ、ああん、……あっ、やぁ」
そっと中心に指が伸びて、そこがまた濡れてきていることを確かめられた。俊成君に快楽を教え込まれた体は素直に、次に来る刺激を待ち望む。
「ああっ、やん、やっ、ああ」
時々芽にかすらせながら、俊成君は入り口を丁寧になぞり始めた。
「あず」
確かめられるように囁かれ、その声だけで体が反応する。耳たぶをかじられて思わずのけぞると、その隙を突いて指が私の中に入ってきた。
「ん、んー」
その異物感に眉を寄せる。
「やっぱり、まだ狭い」
俊成君はそうつぶやいて、私の胸に舌を這わせる。ぴんと立ち上がっている頂を唇で揉みほぐすようにして、刺激が与えられた。びくりと反応するたび、連動するように下の中心に沿わせた指を動かされる。少しずつ指は奥まで入り込み、そして動きを止めた。
「痛い?」
「大、丈夫」
「もうちょっと慣らすから」
「うん」
不安な気持ちを悟られないように、小さくうなずく。指が一本入っただけなのにものすごい圧迫感を感じていた。こんなんで、本当に俊成君を受け入れることが出来るんだろうか。
「大丈夫。ちゃんと慣らすから」
安心させるようにもう一度囁くと、俊成君は動きを再開させる。
くちゅ。
ぬめった音が響いて、私の腰が反射的に跳ね上がった。
「聞こえた? 今の。あずの音だよ。あずが感じている音」
「や、あ……」
恥ずかしくって身をよじったけれど、あんないやらしい音を聞いただけで、圧迫感は薄らいで快楽が増していた。
「え?」
言葉の意味を理解する前に、俊成君に抱きしめられた。
「あんっ」
どこが、というのではなく、触れ合った肌の全部が反応して、思わず声が漏れる。俊成君はゆっくりと私から離れると上半身を起こし、私の体を見下ろした。ただお互いの吐息だけが、部屋の中響き渡る。
「……そんな、見ないで」
直前までの高まりと見られることの羞恥から、全身が上気した。俊成君と共にはがれてしまった上掛けを手繰り寄せようとするけれど、妙に体がふわふわしてしまって動けない。
俊成君はそっと私の頬をひと撫ですると、ベッドから離れ、机の引き出しからなにかを取り出した。それを手にしたまま戻ってくると枕元に置き、私を抱いて上掛けに包まった。
「なに?」
よく分からなくて聞いたら、頬と頬を寄せられて、耳元で囁かれる。
「あずの中に入る準備」
その言葉に初めて何を持ってきたか理解して、顔がほてった。そして一つのことに思い当たる。
「俊成君、初めてじゃないんだよね」
「え?」
ここまでの一連の手馴れた動作。俊成君が経験者でなければ、こうもスムースには進んでいなかっただろう。まあなんとなくそれ前提で私も接していたんだけれど、実際に言葉に出して確認してしまうとどこかが妙に寂しい。俊成君だけとっくに大人になっていて、なんとなく置いてきぼりをくらった感じだ。本当に今更なんだけれど。
私だって俊成君の初めての相手になりたかったのにな。
別にこんなところの経験値で対等になろうと思わなくてもいいはずなのに、ちょっと拗ねていた。独占欲とか、嫉妬心なのかな。でも、具体的に俊成君の過去の相手を想像するともっといやな感情が湧き出してしまいそうなので、そこにはあえて目をつむる。
そんな色々な考えが渦巻いて、つい黙って俊成君を見ていたら、彼の動きが止まってしまった。あ、これ、心底困っているときのパターンだ。
「俊成君」
困らせるつもりじゃなかったけれど、そうなってしまったことに反省し、名前を呼んだ。ゆっくりと手を伸ばし、彼の頬に触れる。髪に指を絡め、撫で上げる。自分から触れるという行為に、また鼓動が早くなった。
「あのね、大切にしてくれる?」
自分から問いかけるというのも最大限に恥ずかしいんだけれど、自分が撒いてしまった種なので仕方ないと開き直る。
「大切にするよ」
心外な事を言われたといった表情で俊成君が答えた。
「優しく、してくれる?」
「する」
「それなら、ね、……来て」
小さく、聞こえるか聞こえないか位の声で言ったのに、俊成君には十分伝わったみたいだ。びっくりしたように一瞬だけ目を見開いてからすぐに優しい顔になり、深く息を吐き出して私にゆっくりと覆いかぶさってきた。
「本当に、いい?」
「……うん」
仕切りなおすみたいにキスされて、優しく胸をいじられた。さっきまでの火照りはすぐに復活して、私の息が上がる。
「はぁ、ああ、ああん、……あっ、やぁ」
そっと中心に指が伸びて、そこがまた濡れてきていることを確かめられた。俊成君に快楽を教え込まれた体は素直に、次に来る刺激を待ち望む。
「ああっ、やん、やっ、ああ」
時々芽にかすらせながら、俊成君は入り口を丁寧になぞり始めた。
「あず」
確かめられるように囁かれ、その声だけで体が反応する。耳たぶをかじられて思わずのけぞると、その隙を突いて指が私の中に入ってきた。
「ん、んー」
その異物感に眉を寄せる。
「やっぱり、まだ狭い」
俊成君はそうつぶやいて、私の胸に舌を這わせる。ぴんと立ち上がっている頂を唇で揉みほぐすようにして、刺激が与えられた。びくりと反応するたび、連動するように下の中心に沿わせた指を動かされる。少しずつ指は奥まで入り込み、そして動きを止めた。
「痛い?」
「大、丈夫」
「もうちょっと慣らすから」
「うん」
不安な気持ちを悟られないように、小さくうなずく。指が一本入っただけなのにものすごい圧迫感を感じていた。こんなんで、本当に俊成君を受け入れることが出来るんだろうか。
「大丈夫。ちゃんと慣らすから」
安心させるようにもう一度囁くと、俊成君は動きを再開させる。
くちゅ。
ぬめった音が響いて、私の腰が反射的に跳ね上がった。
「聞こえた? 今の。あずの音だよ。あずが感じている音」
「や、あ……」
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