絶滅危惧種オメガと異世界アルファ

さこ

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俺の

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「ベッド、やらかい」

 シーツの上に降ろされて、ぽよんと跳ね返ったのが面白くてぽよぽよ揺らす。すごい。ぎしぎし鳴らない。
「うん。まどかはやわらかいのが好きかい?」
 耳元の声がくすぐったくて、くくくと笑う。枕みたいなのを抱きしめる。
「ねえ円」 頬を撫でてくる手に目を細める。「やわらかくて広いベッドも、この船もこの世界も、全部君にあげるよ。受け取ってくれる?」
 きょとんと水色を見つめる。
「ナイトしかいらない」
「くっ……」
 ナイトがぼすっとシーツの中に沈み込んだ。勢いすごい。

『モアサナイト……なに言質を取ろうとしてるんですか』
「まずい……逆に打ちのめされた。可愛い」 苦しげに胸を押さえて言う。「覗くなよ」
『ひとの中で勝手に初めておいて』
「だれ? ですか?」
 しらない声が上からした。天井、見上げる。……天蓋付きベッドだー?
『はじめましてマドカ。わたしはあなた方のおうち。船【緑の庭園】です。こちらの概念なら人工知能と言えば解りやすいでしょうか? マァ、あんな単純なものじゃあ御座いませんがね』
「ナイトおなかすいた」
『聞けよ』
「くっ……しまった。性欲より食欲か」
『お前は最低だな……』
「主人をお前呼ばわりする悪い船なんて今すぐに廃棄しても構わないんだが?」
『不徳の致すところでございます。他の敬称が思いつかなかったのです申し訳ございません』
「フォローになってないがな。御託は良いから食事を頼む」
『勿論、用意しておりますよ』
 台詞と同時にドアが開いて、少年が歩いてくる。

 ──わあ。
 瞳の色と髪が、まんま庭園の緑色だ。
『とりあえずはこちらをどうぞ』
 天井と同じ声でカゴを差し出してくれる。食べ物! 果物とかパン。
「ガーデン君ありがとう」
 林檎を口に入れるとしゃりしゃりした。
『あれ? 私が私だと解るのですか? 仰るとおり船ですけど。反応薄くないですか? でもいきなり愛称で呼んでいただいてありがとうございます』
 ナイトの口にも林檎を入れてあげる。

『……あーんしてもらって良かったですねー。いつまで悶えてるんですか気持ちが悪い』
「今すぐ廃棄にしてやろうか」
「ガーデン君はなに食べるの?」
『じゆうですねマドカ。かすみを食べて生きていける訳ではございませんが、我が艦の燃料は石油や原子力などではありませんのでご安心を。こちらの世界では現在放置されている物質ですのでね。正直なところ、奪い合いが起きている元の世界より資源が豊富に余っておりますので使い放題ウハウハと言いますか。なんと言いますか……ウフフフフ』
「お前に気持ち悪いと言われたくはないんだよな」
『お互い様ですね。貴方がそうやってマドカを抱え込んでいたら彼が食べにくいでしょうに』
「支えてないと眠ってしまうんだよ。……美味しいかな? 頬がパンパンになっているけど詰め込みすぎじゃないのか」
『素直に寝かせてあげれば良いのでは』
「まだ。もったいない」
 指にしたたった汁を指ごとナイトに吸われる。
「んう」
 びりっとする。ナイトの首を引き寄せてキスする。舌を絡めると果物より甘い。
『ご忠告させて頂きますが、マドカの国ではそういった行為は犯罪にあたります』 ガーデン君がこてんと首を傾ける。『そういった行為とは、正気ではないと解っている相手に手を出すことを指します』
「ふうん。オメガに理解がないんだな」
『オメガが相手を選ばないと誤解されるような発言はよろしくありませんね。と言いますか同意なき行為が最低なのはこっちでもあっちでも何処でも同じなのですが。とか言ってる間にいそいそと服を脱がしてますけど貴方、理性、まだ残ってますよねー?』
「円は俺を選んでいる」
『存じ上げております。ただ正気になった時に許してくれるかどうかは難しいところなのでは? と進言している間に脱ぐな。ステイ』
「見なければ良い。下がれよ」
 ナイト、五月蠅うるさそう。
『そのように私をつくったのは貴方でしょうに。──御存じの通り』 こてんとしていた首を元に戻す。『我が艦の序列はモアサナイトより、モアサナイトのつがいであるマドカの方が上です。貴方の暴走を防ぐために』
 ナイトは溜息。
「だったな」 ナイトの身体が俺から離れる。「想定外だ。こんな事まで暴走に数えられていたら堪らないんだけどなあ……」
『嫌われても知りませんよ』
「嫌われるのは嫌だ。けど次から船の設定は──いって?」
 つんと髪の毛を引っ張ったら頭が仰け反った。
「やめるのか? ナイト」
「円?」
「俺はナイトが欲しい。好きだから。なんで疑う?」
 沈黙。
 固まったナイトの頬をピタビタ叩く。……顔が真っ赤で可愛い。引き寄せて首筋にキスする。

『……ではそういうことで私は下がります』 すすすとガーデン君が撤収の姿勢。『端末ひとつだけ下げたところで全部見えてますけどねー』
 扉が閉まる。

 急に抱きすくめられてグエッてなる。
「力加減!」
「ああごめん」 すぐに腕が緩められてナイトがくすくす笑う。「円は本能のままだと少し格好良くなるんだな。可愛い」
 なだめるように背中を撫でる手が、でかくて好きだ。髪を梳く長い指がきもちよくて目を細める。
「……んっ」
 背中の指の動きが怪しくなってきてセクシャルな気分が引き出されてく。
「足、開いて円」
「ん」
 言うとおりにする。
「手で足を抱えて? そう」 満足げ。「いいこ」
 む。
「自分でほぐしてみせて。いたたたたた」
 鼻に噛みつく。
「わかんねーよ」
「手加減無いなあ」 鼻の頭に噛み後を付けられたのに、凄く笑顔。「じゃあ僕がやるね」
 よいしょと開いた脚の間に身体を入れて屈んでくる。え──噛まれる? 恐怖で逃げようとしたらガッチリ足を抱えられて無理。
「あっあー?」 性器をかぷりと銜えられるのと一緒に尻の穴にもぬるっと指が入ってきた。「あ、なに……あ」
 わけわかんない。
 呆然としているとナイトは口から出した竿をもういちど舌でべろりと舐めあげて、満足げ。
「僕はこういう、ほぐすのまで魔法ですませるのは無粋だと思うんだ」 ひとのペニスを愛しげに摩る。瞳だけはこっちの瞳を凝視したまま、「やっぱり見ていたいじゃないか」
 またぱくりと食われる。
「あっあ」
 グポグポと抜き差しする音が、前からなのか後ろからなのか。このままだと口の中に出しそうで、それは嫌だから我慢する。
 なのに銜え方に変化をつけてくる。飴みたいにしゃぶられた性器がぷるぷる震える。爪先を突っ張って耐える。「う……くっ」
 ぼうっとしてきて何で耐えてるのかわからなくなってきた。けど、嫌だ。
 じゅっと吸われた。
「ひっあっあ、ばか」 びくびくとだらしなく漏れた白い液体をぢゅうっと吸われた。それから丁寧に舐め取られる。くっそ。相手の顔に向かって蹴りを入れるけど、へろへろ。そのまま足を取られてちゅと股の内側にキスしてくるからぞくぞくする。
 色を含んだ声が聞いてくる。
「いや?」
「きもちいー……けど飲むなばか!」
「そっか。飲まれるのは本気で嫌なんだね。かわいい」 でもね、とナイトが耳元に囁く。「好きになろうね?」
 ひっと振り向いて見たら目が据わってる。お前の正気どこ。そのまま口づけてくる。
「んぷ」 精液臭──? ナイトの匂いのが強くてわかんない。口の中まで犯すように歯列をなぞって舌を絡め取ってくる。唾液が口の端からこぼれて気持ち悪いのにきもちがいい。食われる勢いで嬲られてぼうっとなる。
「入れるね」
「はやっ……あっ、ああん」 一気に突き立てられた。……嘘。すんなりと。「俺、に、な、なにしたの?」
「なにも」 はあっ、感極まった吐息のような、首筋にかかる息が熱い。それだけでびくびくと感じてしまう。「円が受け入れてくれただけだよ」
 間髪入れずに動きだす。
「んっあ、ひん」
「どこを突かれるのががいい?」
「あ、あ、あ」
「円、ねえ教えて」
 パンパン。という音に合わせて視界が上下にぶれる。どこか他人事みたいに聞こえてくるあえぎ声。だんだん、遠くから見てる感覚になってくる。霊体験かな。
 ナイトの逞しい肩が一瞬固まってから、ぶるりと震える。と、じわじわと内側が濡れていくのだけがリアルに感じられた。ナカに染み入って、ひろがる。
 ──と。
「んあ? あー」 コレ、ヤバイ。「あ。あ。なんか、なんか来る」
 血管に、細胞に、何かが腹からぜんぶに行き渡っていく。……ドクンドクンドクン、とじぶんの心臓の音が鼓膜にとどろく。怖くなって傍らの腕をぎゅっと握りしめる。
「……円?」
 ナイトは戸惑いながら手のひらを取って握り返してくれる。愛しい。

 身体の内側で溜まりきってよどんでた熱が、ぶわっと外にあふれ出た。

「……円……フェロモンが……初めて」 ナイトが目を見開く。「う、わ」
 獣じみた唸り。腹の中に入っているモノが──膨らんだ。
「あっああ長っ」
「……クッ」
 ぐずぐずになっていく身体とは対照的に、頭の芯だけが冷静だ。なんつーか。

 伸びたって! 絶対伸びた。アルファなんなん!? 太いのが奥の奥まで侵入ってくる──深く。
 俺がひっきりなしにあえいでる。モアサナイトは獣みたい。
 でも綺麗な獣だ。手を伸ばして抱きしめる。
 ──俺の。

 飛んでるっぽいモアサナイトに言う。
「噛んでよ」
 その牙を、首の裏側の急所に──うなじに導く。


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