騎士学生と教官の百合物語

コマドリ

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第9節 教会騎士団内乱編

第359話 斥候と想い

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情報を集め、私たちは宿屋に集い…だけど予定時刻過ぎてもフウカさんは帰ってこなく

オフェリア「…これだけ待っても帰ってこないだなんて、多分何かあったわね」

クロ「トラブルに巻き込まれたのかな…でもそうなると…」

リュネメイア「詳しくはわからんが…Aランク冒険者であるあやつが、警戒してても不覚をとる相手ということかの」

コトリ「そうなると早く捜索に行かないと」

ウンディーネ「待ちなさいな。場所もわからないし、そして本当にトラブルに巻き込まれたかもわからないじゃない…この状況で不用意に動くのは、余計に危険ではなくて」

クロ「リュネ、どう動くの?」

リュネメイア「……調べていた奴隷関連で行方がわからなくなったとなると、怪しい場所としてはここかの」

ここにいるみんなで集めた情報から分析すると…統括官の館に奴隷が運び込まれていて、そこで奴隷オークションが開かれるらしい。


コトリ「ここでもまた、新政府の統括官が関わってるんだね」

ウンディーネ「でもフウカが本当にそこにいるか確証がないのに、そこへ潜入するだなんて危険じゃないかしら」

リュネメイア「どのみち奴隷解放の依頼もある…なら危険を承知で潜入し、フウカのことも探ってみるか…さて、どうしたものか」

クロ「一応こっちには最強種である真祖のオフェリアさんがいるし、不測の事態にも対処できる戦力はあるけど…」

確証したものがほぼないため、どう動くか話し合っていると

コトリ「っ…!?」

前回と同じように…私の中の導きの結晶が、私にある映像を見せ始める

前みたいにはっきりとはしていなく、ぼんやりとしたものだったが…

『堕天使の人形』を連れた3人の人物たちに敗北し、地面に倒れる私たちの姿で…

まさかオフェリアさんの他にも…という声が聞こえる記憶だった……。


コトリ(い、今のビジョンは…?)

私は胸に手を当てながら考える…今この場面であんな記憶を見せた意味、それは危険予知ということだろうか?なら、私がとれる行動は…

コトリ「……もっとちゃんと事前準備してから向かった方がいいかも、情報や戦力も多分このままじゃ色々と足りてないと思う」

クロ「え」

リュネメイア「……ぬしのその様子…フレイのやつからもらった結晶とやらで、何か視えたようじゃな?」

コトリ「はっきりと視えた訳じゃないけど、統括官の館は当たりで…そこに、オフェリアさんに匹敵する何者かが潜んでる」

オフェリア「……へぇ」

リュネメイア「災害クラスとされる最強種に匹敵する何者かのぉ…はぁ…やはり碌でもない面倒な依頼じゃったか…」

オフェリア「話には聞いていたけど…コトリさんのそれ、危険予知能力ってやつかしら?いわゆる未来視の類い?」

コトリ「詳しくはわからないけど…並行世界の記憶ってことは聞いてる」

つまりさっきの映像は、他の私たちが辿った結末ってことだよね…気をつけないと私も…

リュネメイア「まあとにかく、色々と情報集めのやりなおしと作戦を練る必要がある。面倒ごとは避けたいが…どのみち、フウカのこともあるから放ってはおけん」

クロ「でも、これ以上どこで聞き込みをするの?統括官の館内部の詳しい情報なんて、誰が知って…」

ウンディーネ「それなら1つ、心当たりがあるじゃない」

コトリ「え」

オフェリア「街に入る前に会った商人たちね」

リュネメイア「あやつらか…確かに引っかかるところもあったから、一度色々と聞き出しに行くのもありかの」

今は手掛かりがそこしかなく、私たちは商人たちの所を訪ねることにした……。


私たちは顔を隠すフードを被って街に出て…そして商人の看板を掲げた建物と、その入り口前に立つアーニャさんを見つけた

クロ「いた」

アーニャ「あれ、コトリさんたち…どうしたの?私を探してた、みたいな感じだけど」

リュネメイア「あの商人たちに聞きたい情報があってな、今中にいるかの?」

アーニャ「いるけど、今は会議中だから聞いてみないと…」

確認してくるとアーニャさんが言った直後、店の扉が開き声がきこえて

「アーニャさん、彼女たちを中に入れてくれて構わないよ…誰かに見られる前にね」

扉の隙間からフードを被った人物が見える

リュネメイア「む…この声…まさか…」

招かれて建物の中に入ると、先程あった女性たちもそこにはいた

「彼女たちから聞いた時は驚きましたが、本当にリュネメイア『隊長』だったんですね」

リュネメイア「やはりぬしか『エイデン』」

コトリ「えっ…その名前は確か…」

フードをとるとその素顔は女性で、私にはその顔と名に見覚えがあって…その女性は過去で、キールさんの副官をやっていた1人で…。


リュネメイア「そして今やっと思い出したぞ、さっき会ったぬしたちはキールの隊にいた新人どもか」

「お久しぶりです、リュネメイア隊長。一応経歴など正体を隠していたので、先程は名乗れず申し訳ありませんでした」

今リュネメイアに新人と言われた彼女たちは…105話でオーレリアにリンゴを渡していた女性騎士たちだった。


リュネメイア「驚いたぞ…しかし、なぜぬしらが魔族領におる?正体を隠すと言うたが、それと関係あるのか?」

エイデン「それは私たちの目的が…魔族たちの動向を探ること、そして魔王となったキール隊長を取り戻すため動いているからです」

コトリ「!?」

リュネメイア「……ぬしら、なぜそれを知っておる」

エイデン「商会というのは表の顔…私たちは今、『雷帝』さまとその奥さまのもとで王国斥候をやっています

だからキール隊長のことや魔王のこと、魔族たちが再び戦争を起こそうとしてるのも知っていますし…その辺りの捜査もしています」

「そしてミレナリオ王太子殿下とも、魔族領での活動のために連携しており…穏健派の魔族たちにも存在は極秘で、密かに情報提供などで助力を貸したりもしています」

リュネメイア「王国最強の将である雷帝…その王様直属の部隊に、ぬしらが今所属しておるということか。ふっ…出世したの」

クロ「王国騎士ならミレイと繋がりがあってもおかしくないね…って、そうか…もしかしてミレイが言っていた、当てがあるって…」

ミレイさん…ミレナリオ王太子殿下が言っていた助っ人が、どうやらエイデンさんたち王国斥候のことだったようで

エイデン「それで…リュネメイアさまたちは何か訳あってここを訪ねたようですが、ご用件はなんでしょうか?」

私たちがここへ来た理由…フウカさんのこと、そして統括官の館での奴隷オークションの話を伝えた……。


エイデン「なるほど、用件はわかりました。あなたたち、リュネメイアさまにあれを」

部下の女性騎士たちは、奥から封筒のようなものを持ってくる

クロ「これは?」

「奴隷オークションへの招待状です」

コトリ「!?」

エイデン「私たちも事前にその動きは掴んでいて、商会のコネを使ってこれを入手しました…ですが…」

「部族争いが済むまでは戦争を仕掛けてこない見込みとはいえ、斥候である私たちが率先しては動きづらかった…しかし」

リュネメイア「妾たちは、渡りに船ということかの?」

エイデン「はい、その通りです。リュネメイアさまたちと繋がりができた今、私たちも介入できる土台ができました…この事は上司である雷帝の奥さまにお伝えするので、お互いに協力致しましょう」

オフェリア「キールさんにオーレリアさんの元部下たちね…ふふ、これは心強い協力者ね」


話がまとまったところで、内容を聞いていた彼女が声をかけてきた

アーニャ「なら、私もそれに付き合うよ」

コトリ「え」

アーニャ「実は護衛依頼もほぼ終わってて、これから行く当てもないんだ…だからコトリたちが契約してくれれば、用心棒するよ」

クロ「って、お金いるの?」

アーニャ「それはもちろん。お金は命と同じくらい大事って、姉に教わってるからね…それに生活するには、ほぼ必須だし」

オフェリア「あなたの実力がそれなりなのは、先ほどの戦闘で見せてもらったし…戦力が増えるのはいいことじゃない?」

ウンディーネ(……それなりね…表面上はその通りだけど…)

リュネメイア「よかろう、ぬしを雇う…その代わり、しっかりと働いてもらうからの」

アーニャ「大丈夫、お金もらうからには役に立ってみせるよ」

こうしてアーニャを加え、エイデンさんたちとも協力関係を結べ…準備が完了次第、私たちは統括官の館に潜入することに……。
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