騎士学生と教官の百合物語

コマドリ

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第9節 教会騎士団内乱編

第353話 魔の首都と監獄

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3人で歩きながら、私はここにいる理由…そしてリュネの姉などのことも話す

私の首にはクロからもらったマフラーが巻いてあり、どうやら温度調整魔法が施されていて…騎士服が防寒魔法を施されてるからいいけど、冬の連峰はさすがにちょっと寒かったからこのマフラーはありがたい。


リュネメイア「……まさかそんな事態になっておるとは…ぬしの話と合わせて考察すると、妾たちが追っている件と今回の教会の件、どうやら連動しているようじゃな。

しかし…花剣が精霊武器で、そしてフレイのやつが管理者だったとはの…妾が騎士学生時代からいて、食わせ者だとは思っていたが…

あとは魔王キールと『禁忌の魔女』マサキ、ぬしの母親…それに…ルリラ姉さまにアネット姉さまの存在……はぁ…これは、色々と今後の方針を決める必要があるの」

リュネは色々と考えを巡らせているのか、複雑な表情で感想と方針を打ち出す

キールさんやマサキさんのこともそうだが…死んだはずの人たちが生きていたら、嬉しさもあるけど困惑の方が大きいはずで…私だってそうなのだから。


コトリ「メイヴさんから聞いた話では、リュネとクロは恩人さんを助けに魔族領へ来てるんだよね?」

クロ「ん…ユラミルティさんを救出するために、今は穏健派と協力している。そのために滞在してる街が…」

ウンディーネ「あれね、その魔族の首都…緋の王都セレスティアルは」

ユラミルティ…ん…?どこかでその名前に聞き覚えが…

私が思考したり話している間に、私たちは街へとたどり着く

緋色のレンガを基調した美しい街並みで、歴史的な建造物も数多く存在し、魔族領の中でも最大規模を誇る都市

その街並みや名前といい、どこか王国の蒼の王都アルカンシエルを連想させる…何か関係性が…?

だけど、1つ大きく違うといえば…王国だと王宮がある場所に、天まで届きそうな大きな塔があることだ。


リュネメイア「ここが魔族の首都…だがこの街は『その一部分』でしかない。あの見えてる塔こそが本質で、あれは『東の監獄塔…または監獄都市』と呼ばれておる」

コトリ「監獄?それに…塔の中に都市?」

リュネメイア「そう監獄であり都市でもある。まず塔の地中地下には最下層の街があり、そこから上にも各所に街が存在し…階層の所々に囚人を収容する場所、苗床部屋なども存在し…そして塔の天空には『魔王城』がある」

コトリ「魔王城…!?」

クロ「ん…聞いた話では、監獄塔は魔王城を守る鉄壁の要塞にもなってるそう」

リュネメイア「魔族領でありながら、ここは絶対中立領域で…監獄と魔王の御前であるから、争いや犯罪が起こらない街…世界で1番治安がよいかもしれん面白い街じゃ」

監獄には六武聖やその他強力な魔族が滞在し、そして魔王が絶対的存在だから…魔族たちは街のルールを守るため、争いなどが起こらない安全な街だそうで

しかし、魔王城が塔の上に…あの天空にキールさんが…。


リュネメイア「……キールが魔王であること…マサキが強かったことや学生時代、そして妾たちの記憶細工しておったこと…裏側は見通せんくらいドス黒いの…」

塔を見ながら知り得た情報に、リュネも色々と思うところがあるようで…そうして話してるうちに目的地へと着いた

リュネメイア「ここに妾たちは滞在しておる」

クロ「とりあえず、コトリが中に入っていいか2人に許可とってくる…合図は主従の印で送るから」

コトリ「ここって…教会の孤児院…?どうして魔族領に教会のが…」

リュネメイア「それはユラのやつが教会の元シスターで、教会を出て自身の孤児院を魔族領に作ったからじゃ…ここ以外にも何個かある」

教会…孤児院…魔族…ユラミルティ…そうだ、それって確かミヤコたちの…まさかリュネの恩人と同一人物だったなんて…。


リュネメイア「ユラのやつが部族争いに敗れてからは、他の奴らが孤児院を管理しておる。その中の2人はミレイとフウカという人間で、どちらも優れた肩書きを持っておる…特にミレイ…のお方は、よりな」

コトリ「(フウカ…その名は確か、エレインさんやシャロンさんから聞いたような…そうだ、冒険者ギルドのAランクだったかな。ミレイという人の方は、リュネが畏まるほどの人なのか…いったい何者なのだろう)

でもどうして冒険者の人が…そしてミレイさんは、人間なのに魔族領で孤児院を?」

リュネメイア「フウカのやつは妾と同じよ、魔族に育てられた人間の1人じゃ。ミレイの方は…まあ実際に会えばわかる」

ウンディーネ(この孤児院の中からする…この『どこか覚えがある感覚』は…『神性』…?)

そうして私たちは孤児院の中へ入り、リュネにその2人がいる部屋へと入る。そこには先に許可と報告しに行ってたクロと…

1人は…薄紫色の髪を軽くツインテールにして纏め、エメラルドグリーンの瞳に華奢な体格で、頭には獣耳が生えた小柄な少女…

もう1人は…赤いチャイナドレスを着て…短めの髪の左右には、白のシニヨンキャップを2つ付け…髪色はサーモンピンクのショート、緋色の瞳をした女性…の2人がいた。


チャイナの女性「本当にクロと瓜二つね」

獣耳の少女「初めまして、歓迎するよ。そっちの女性はフウカ、『拳姫/けんき』の二つ名を持つAランクの冒険者だ」

チャイナの女性「あなたがコトリね?『剣姫/けんき』エレインと協力した騎士学生がいるとギルド内の噂で聞いてたわ、よろしくね」

獣耳の少女「そして私はミレイと呼ばれている…アルモンド=ミレナリオ=ミルド=アーデイが真名で、一応エクエス王国の王族だ」

コトリ「えっ!?シオン皇女殿下のお兄さん!?でも確か王太子殿下は、王妃と同じく病に伏せてるはずじゃ…」

彼女たちの自己紹介を聞いて私は驚愕する…何で王国の王族が魔族領にいるの?というか王太子さまの見た目、女性にしか見えないけど…あと何で獣耳が……。


ミレイ「……というわけで、私はオーレリアたちによって救われた」

大戦でのアグレゴの一件、その他ミレイさまが知ることを語って聞かせてもらえた…まさか王国上層部で、そんなことがあったなんて…

ミレイ「今はユラ…ユラミルティによって、魔族領に亡命してる身だ…まあ国民には、王国では病に伏せてるとなっている。

あれから7年、いやもう8年近く…シオンたちと連携しながら、ギランバルトからアルの奪還などに動いていたが…今はユラなどのことで、状況が変化している。聞くに、そちらも深刻な事態のようだな?」

コトリ「はい…話した通り、三賢人たちが内戦を起こしました」

フウカ「こちらにはまだ届いてないけど、ギルド魔族支部には情報が届いてそうね。それで、かの三英雄の1人『魔剣公主』はどう動くのかしら?」

リュネメイア「……気が進まぬが、ギルドを頼るかの」

クロ「冒険者ギルドに?」

リュネメイア「フレイのやつの意図は完全にはわからぬが…繋がりを広げつつというならば、戦力としても情報網してもギルドは最適じゃ。冒険者ギルドならば、妾がいても力を貸してくれるじゃろう」

フレイ教官は、クロやリュネメイアがいる場所にわざと私を飛ばしたのだろう。それだとしたら…それからの流れ、私たちがどう行動するのか把握してそうで…。


リュネメイア「……今は、穏健派と魔王派でも昔と事情が大きく変化しておる…穏健派の六武聖も全員が魔王側、そして四大魔光の大半も魔王側じゃ…

妾たちが来た時と魔族領内の状況も変化している今…王国まで無事辿り着く確率を上げ、そしてそこから新たに行動するための戦力確保ということを考えてもギルドを頼るのが得策」

コトリ「というか今更だけど、リュネとクロもついてきてくれるの?」

リュネメイア「何やらこちら側と動きが連動していそうだしの…魔剣騎士とやらと魔王の協力関係も気になるし、それに…教会の三賢人には少し聞きたいことがあるからの」

フウカ「なら、私も3人について行くわ」

リュネの行動目標などを聞いて、フウカさんは口を開く

フウカ「一応今私は、冒険者ギルド魔族支部に所属してる。ならそこのギルド長…Sランクのティフィアさんには、私がいた方が話が通しやすいでしょ?

(それに…教会関連なら、イムカたちの安否も気になるところだしね…。)」

クロ「確かにその申し出は嬉しいけど…でも私たち3人も抜けて、ミレイの方は大丈夫なの?」

ミレイ「こちらは私1人で大丈夫だ…元々ユラと2人で、主な孤児院運営もその他穏健派の統率や各種対応もやっていたしな。まあ何かあれば他の者に協力を仰ぐ…それに今ならちょうど『当てもある』から大丈夫だ」

どうやら何かあった時の助っ人には当てがある様子だ…ならありがたくリュネたちを借りよう、私1人じゃ道も迷いそうだし。


ミレイ「お前たちが三賢人の問題を対処している間に、私は魔王軍や監獄の情報などを集めておく。ただ…ひとつだけお前たちに頼みごとをしてもいいか?」

クロ「頼みごと?」

ミレイ「王国に戻る間に我々の仲間が困っているのを見かけたら、その仲間の穏健派たちを助けてやってくれ…旅もあるだろうから助けた後は、各地に我らの仲間いるからそこに預けてくれたらいい」

コトリ「ん…どこまで力になれるかわからないけど、私たちの手の届く範囲で手助けする」

こうして私たち4人は準備を整えたのち、魔族の首都を旅立った……。
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