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第8節 フィリア騎士学園本校地下・世界の深奥編
第344話 進化の兆し
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お互いに剣を抜き、私たちは戦闘態勢をとる
コトリ「最初から…私『だけ』の全力で挑ませてもらう」
マコ「その全力とやら見せてもらおう」
アイリス「それでは、試合開始」
教官の合図と共にマコさんは踏み込み、私との間合いを詰めて斬りかかってくる。
コトリ「小鳥の舞」
私は集中力のスイッチを入れて、その怒涛の攻撃を避ける
マコ「私は初めて見るが、どうやら回避が得意なようだな」
コトリ「ん…素の私の唯一の取り柄」
眼で見切り身体で相手の動きを覚えていく
コトリ「ふっ!」
マコさんの動きに合わせてカウンターを放つ…それは防がれるが彼女を後退させる
コトリ「七翼流 風の型 疾風」
追撃するため魔法剣を発動し、私は一気に詰め寄りながら斬りかかる
マコ「……七翼流 風の型 疾風・改」
コトリ「っ!?くああっ!」
しかし、私の技を上回る技で迎え撃たれ…同じ剣技なのに練度差で打ち負け、私は後方に弾き飛ばされる。
マコ「七翼流 闇の型 重力剣・改」
コトリ「くっ…重力剣!」
何とか体勢を立て直す私に、マコさんは追撃の魔法剣を放つ…だから私もそれにカウンターを合わせ迎え撃つ
マコ「軽い」
コトリ「っ…ああっ!」
しかしまた練度の差で打ち負け、私は後方へと弾き飛ばされる
コトリ「ぁ…ぅ…!」
威力を受け流しきれなかった私はダメージを受け、よろりと身体がふらつく
マコ「まだ攻撃は終わってないぞ」
コトリ「っぅ…!」
マコさんの猛攻により、捌ききれなかったものがダメージとして蓄積していく。
ミヤコ「コトリ!」
ロア「これは…」
アズ「まずいかも」
シロナ「私と斬り合う時も半魔化と花剣…あとモニカとセイバーの補助無しじゃ打ち負けるくらいだったしね、今の素のコトリの実力は」
シャロン「お嬢さまの技とその動きを瞬時に会得できるセンスはすごかったですが…やはり単純な練度などは、お嬢さまやあの魔剣騎士に劣りますね」
戦乙女三姉妹「相手や仲間の動きに呼応して、技を真似て習得まではできる…けど剣技の練度は、その相手の域までは達しない。
(ミクなら技の精度や威力まで真似て、完全に習得するセンスがあったけど…さすがに娘といえど、それはできませんか)」
マコ「お前は眼はいいが、肝心の身体がそれに追いついていないぞ」
コトリ「う…ああ…!(っ…今の私の練度じゃ、マコさんの動きを追い切れない…カウンターも速度負けして打ち負ける…
……あれに対抗するには、シロナみたいに…技の威力が最大に発揮する前に反応して、初動の時に迎撃するカウンターを放つしか…)」
マコさんの動きを眼で追いきれず反応が遅れ、カウンターもうまく決まらないうえに…自分より昇華されたマコさんの剣技に、同じ技なのに実力差で打ち負ける…
この現象は戦乙女のドウセツさんとの試合の時と同じで…今の小鳥の舞を上回られる速さを持つ相手だと、それ以外劣る私は途端に並み程度の騎士になってしまう…
だからいつも純魔法や半魔化などに頼る形になる…だから私は…。
エレイン「コトリの対戦相手…彼女は強い」
シャロン「それにまだ魔剣という余力を残していますからね。(……魔剣を抜いた彼女と…『あれを纏った』お嬢さまなら、どちらが強いのでしょうか?)」
アイリス(……こんなものじゃない、彼女の力は…そうだよね、コトリ)
マコ「(あの人の娘で…『剣鬼』と『赤い閃光』の弟子といっても、素だと今の時点ではこのくらいか)
半魔化しろ…それなら私の動きに対応できるはずだ」
コトリ「はぁはぁ…やだ!この試合では絶対に使わない!半魔化無しで…私の実力だけで、マコさんに魔剣を抜かせてみせる!」
マコ「…なぜそこまで頑なに?」
コトリ「今まで格上相手だったから仕方ないけど、私は半魔化や花剣に頼りすぎてた…
花剣に…半魔化、今ある力はもう否定しない…だけどそれとは別に自分自身の力を磨かないと意味ない…真に強くなってアイリス教官の隣に並ぶために!」
マコ「ふっ…やはりその性格嫌いではない…だが、ならばどうする?今のままではジリ貧だぞ」
コトリ「……この『1ヶ月近く試していたこと』全部をぶつける」
より深い所にあるスイッチを入れるため、私は目を閉じて本能と身体に意識を向ける。
コトリ「……ふぅ…『恐怖センサー』オン」
セイバー「あれをやるのですね」
ウンディーネ(私も特訓に付き合ったやつね)
モニカ「ぶっつけ本番ですが、大丈夫でしょうか…」
クレーティ「さて、お姉ちゃんはどこまで精度を引き上げられるかな」
コトリ「小鳥の舞・真に至るまで」
私が目を開くと、集中力だけではなく身体のスイッチが完全に切り替わる…しかし見た目には、何一つ変化はない
マコ(先程までと何も変化は感じられないが…いったい何が変わった?)
コトリ「……。」
マコ「…攻撃してみればわかるか…七翼流 風の型 疾風・改」
私の何が変わったのか確かめるため、マコさんは魔法剣を使って超速で突っ込んでくる
コトリ「七翼流 風の型 疾風」
マコ「…!」
先程まで反応しきれなかったそれに私は反応してみせ…それどころかすれ違いざまにカウンターを決めマコさんに初ダメージを与えた。
ミユ「…これは」
ルリラ「…何が起こったの?」
マコ「七翼流 風の型 風神・改」
魔力の帯がマコさんの剣に発現し、それによる無数の斬撃が私目掛けて放たれる
コトリ「……ふぅ」
私はある感覚に…『恐怖』に敏感に反応するようになった本能と身体に身を任せる
それにより恐怖を避けるために身体が勝手に動き、遠隔斬撃の嵐を必要最低限の動きで躱してみせる
マコ「(風神を全て避けきるとは…さっきまでのコトリでは不可能なはずだが…)
七翼流 光の型 閃・改」
コトリ「っ…!」
しかし小鳥の舞の精度が完璧ではなく、身体の恐怖への反応が遅れ…攻撃を避けれなく私はダメージを受けてしまう
マコ「七翼流 炎の型 爆炎剣・改」
コトリ「爆炎剣…くぅ!」
恐怖を感じとった身体は自動反応してカウンターを放つが…カウンターを合わせるのが遅れ、打ち負けた私はダメージを受ける
マコ「七翼流 氷の型 氷雪斬」
コトリ「…ふぅ」
迫る刃、その恐怖に反応し…恐怖を避けるため身体が勝手に動き、自動反応で剣技を躱す
マコ「七翼流 闇の型 重力剣・改」
コトリ「闇の型 重力剣」
マコ「っ…!」
恐怖を感じとった身体が勝手に反応して迎え撃つ…今度は完璧なタイミングでカウンターを放つことができ、打ち勝つことでマコさんにダメージを与える
私の突然のパワーアップに観客はざわめく
よし…練度はマコさんのが高いけど、自動反応速度で何とか打ち勝てるようになってる…新しく舞に組み込んだ事は、とりあえず成功だ。
マコ「……完全ではないが、攻撃を見切られている…なぜ急に動きがよくなった?」
コトリ「ただ集中力高めて躱すだけじゃなく…迫る恐怖を身体が勝手に躱しつつ、反射的なカウンターを決めれるようにしただけ」
「…?」
私の言葉を聞いて観客は混乱しているようだ…騎士たちの大半も理解不能な様子だ
シャロン「……なんという常識を逸した回避技術…私も全てを理解できないので、解説をお願いしてもいいでしょうか?」
エレイン「おそらくは自分の中の本能や身体に訴えかけて…身体が『恐怖』することに自動で反応し、その『恐怖』を避けるために身体が勝手に動くようになる…技だとは思う」
ニニム「恐怖で自動的に躱すことにより、相手の攻撃自体も身体が覚え…そして眼も相手の速い動きに慣れていく」
アネット「それにより戦闘が長引くほど、回避精度がより正確に引き上がっていく…そんな感じでしょうね、おそらくあれの完成系は」
ドウセツ「あの時の進化系ですか、やはり本当にとんでもない才能です…ですが、どうやらまだ完全じゃないようですね」
アイリス「恐怖による自動回避の精度もまだ完全ではないようだし、それによる自動カウンターの精度もまだまだ甘い…守り部分でもだけど、攻撃面に活かせていない…その証拠が反射的なカウンターの失敗だね。
でも、その理想とするものが完成したら…恐怖センサーという反応で完全に攻撃を自動で避け不意打ちも効かず、敵の攻撃が最大限力を発揮する前にカウンターで潰すことができたのなら…戦いにおいて、攻守共に隙がなくなるということだね」
シロナ「あらゆる危機を回避する無念無想と違って範囲は限定的だけど、死を感じる戦場では非常に理にかなった…危機を敏感に察知して回避する一種の奥義ではあるね
ふふ…コトリ、やるじゃん♪さっすが私が安心して斬りかかれるって認めた騎士なだけあるね♪」
ミヤコ「いや何それ…聞いてもまるで意味不明なんだけど…」
ロア「常人では理解できない避け方ですね…恐怖に反応して身体が勝手に避けるってなんですか…普通なら恐怖で身体が動かなくなるものでは?」
アズ(危険察知して身体が勝手に避ける…私はちょっとわかるかも)
コトリ「ん…やっとマコさんの動き…見えてきたよ」
マコ「っ…!」
進化させようとしてる小鳥の舞の精度は完璧ではないけど、回避してるうちに段々と眼も慣れてきて、マコさんの動きが見えるようになってくる…避けつつ攻撃を当てる頻度が相手を上回り、次第に彼女を追い詰めていく。
シロナの…眼だけで動きを追っているようじゃまだまだだね…と言われたのをヒントに、小鳥の舞を進化させようとしたのが今のこれで
教官の隣に並びたいというのも本当で…あともう一つは、回避で誰かに負けっぱなしは気が済まなかったのもある
でもシロナと同じことをしたくても、無念夢想とか私にはどんなのかよくわからない…だけど身体で相手の動きを事前に掴んで、自動で危機を避けるための何か限定的な条件を設ければ…その一端は再現可能かもしれない
そう思った私はこの1ヶ月近く…モニカ、セイバー、クレー、ウンディーネの5人に頼んで特訓に付き合ってもらっていた
コトリ「これが今の持てる私の全て」
マコ「……参ったよ…『覚醒』こそしなかったが、コトリの実力は予想を超えてきた…私に魔剣を抜かせるほどにな」
コトリ「っ…!」
小鳥の舞に進化の兆しが見えた。その私を見て、マコさんは楽しそうに微笑むと…力を発動させた彼女の背中に、黒い剣のような聖痕が発現した。
マコ「魔剣抜剣…これを抜いたからには、お前の負けが私には視えた」
マコさんは魔法剣・疾風で踏み込み、一瞬にして私との間合いを縮めてきた
コトリ「っ…!(魔剣を抜いた事でマコさんの身体能力が向上してる…!避けきれない…ここは身体に身を任せて…)」
マコさんの動きを眼で追いきれず、だから私は恐怖による危険回避技でそれを避ける…
コトリ「っ…かはぁ!?あ…ぅ…!」
けど…剣は躱したはずなのに、躱した先にはマコさんの拳があって…その拳がお腹に直撃し、私は殴り飛ばされ地面に平伏す
エレイン「これは…」
シロナ「へぇ…♪」
セイバー「な、何が起こったのですか…?」
マコ「まだ戦闘不能判定はされないか…ならこのまま攻めさせてもらおう」
コトリ「っぅ!」
攻撃の手を緩めず迫るマコさん…私は急いで起き上がり、身体に身を任せながら迎え撃つ
マコ「……恐怖センサーとやらの反応精度もまだ完璧ではないな…そのような鋭さが今ひとつの中途半端な反射カウンターなど、私の『先読み』の餌食だ」
コトリ「あぐぅ!」
攻撃を回避ができないどころか、カウンターにカウンターを合わせられ…試合は一方的な展開となっていく
モニカ「コトリちゃん!」
マコさんの怒涛の猛攻により、ダメージを受けた私は肩で息をして疲労困憊で。
コトリ「はぁはぁ…!(さ、さっきから恐怖で危険回避した先に…すでに次の危険/攻撃が存在してる…!このマコさんの動き…まるで私の動きを事前に見えてるかのような…)
マコ「不思議そうな表情だな…なら教えておこう。私の魔剣の能力は『対象者1人の動きの未来…軌跡が事前に見える』といったものだ。
だから敵の攻撃など、視えている動きの軌跡により先読み回避できる…そして、その見えている動きの軌跡の場所に攻撃を置くだけで、簡単にカウンターが決まる」
コトリ「っ…!」
話しながらマコさんが超速で迫る…私は何とか反応してガードしようとするが…
マコ「残念ながら抜剣した私には、回避もガードも無意味だ」
コトリ「あぁああっ!」
動きの未来が視えている彼女には通用せず、ガードをすり抜け攻撃が直撃…私は後方に吹き飛ばされ、大の字仰向け地面に倒れる
フレイ「戦闘不能判定…そこまで、この試合の勝者はマコさんです」
その実況の声を聞いて、観客から拍手が起こって試合終了となった。
シロナ「ふふ…魔剣騎士筆頭の『黒焔魔神』以外にも、こんなに強い人がいるだなんてね…しかもそれがあなたとは…ねぇ『マコ』
(そして…幼かったあの子も強くなっているはず…ふふ…私は嬉しい限りだよ…)」
シロナはマコを見た後、視線を観客席のニニムへと移した…
イムカ「どうやら一対一では無類の強さを発揮する魔剣のようだな…彼女の不意をつく事は実質不可能だ」
ノエイン「これが、三賢人が有する最高戦力の1人である『天帝』ですか…しかし…
(なぜ自分の魔剣の力を明かして?彼女たちの立場を考えると、明かすメリットなどないはずですが…その意図はいったい?)」
倒れこむ私を見て、アイリス教官は微笑む
アイリス(ふふ…どうやらいい経験になったようだね、コトリ)
コトリ「あーあ、完敗だね…何か最近負けてばっかりだ。もっと強くならないと…アイリス教官の隣に並んで、大切なものを守れる騎士になるためにもね…」
地面に大の字で倒れ空を見つめながら私は、すでに次のことを考え前を向いていた
今ある『力』は否定せず、それでいて自分の力を磨いて『なりたい自分』になる…そのためには立ち止まってなどいられなかった……。
(……『覚醒』には至らず…だけど、私には真似できない回避技をあの子は見据えている…。ふふ…これなら期待できそうね…待っているわよ、コトリ)
影から試合を見ていた母の顔は、穏やかな微笑みだった……。
コトリ「最初から…私『だけ』の全力で挑ませてもらう」
マコ「その全力とやら見せてもらおう」
アイリス「それでは、試合開始」
教官の合図と共にマコさんは踏み込み、私との間合いを詰めて斬りかかってくる。
コトリ「小鳥の舞」
私は集中力のスイッチを入れて、その怒涛の攻撃を避ける
マコ「私は初めて見るが、どうやら回避が得意なようだな」
コトリ「ん…素の私の唯一の取り柄」
眼で見切り身体で相手の動きを覚えていく
コトリ「ふっ!」
マコさんの動きに合わせてカウンターを放つ…それは防がれるが彼女を後退させる
コトリ「七翼流 風の型 疾風」
追撃するため魔法剣を発動し、私は一気に詰め寄りながら斬りかかる
マコ「……七翼流 風の型 疾風・改」
コトリ「っ!?くああっ!」
しかし、私の技を上回る技で迎え撃たれ…同じ剣技なのに練度差で打ち負け、私は後方に弾き飛ばされる。
マコ「七翼流 闇の型 重力剣・改」
コトリ「くっ…重力剣!」
何とか体勢を立て直す私に、マコさんは追撃の魔法剣を放つ…だから私もそれにカウンターを合わせ迎え撃つ
マコ「軽い」
コトリ「っ…ああっ!」
しかしまた練度の差で打ち負け、私は後方へと弾き飛ばされる
コトリ「ぁ…ぅ…!」
威力を受け流しきれなかった私はダメージを受け、よろりと身体がふらつく
マコ「まだ攻撃は終わってないぞ」
コトリ「っぅ…!」
マコさんの猛攻により、捌ききれなかったものがダメージとして蓄積していく。
ミヤコ「コトリ!」
ロア「これは…」
アズ「まずいかも」
シロナ「私と斬り合う時も半魔化と花剣…あとモニカとセイバーの補助無しじゃ打ち負けるくらいだったしね、今の素のコトリの実力は」
シャロン「お嬢さまの技とその動きを瞬時に会得できるセンスはすごかったですが…やはり単純な練度などは、お嬢さまやあの魔剣騎士に劣りますね」
戦乙女三姉妹「相手や仲間の動きに呼応して、技を真似て習得まではできる…けど剣技の練度は、その相手の域までは達しない。
(ミクなら技の精度や威力まで真似て、完全に習得するセンスがあったけど…さすがに娘といえど、それはできませんか)」
マコ「お前は眼はいいが、肝心の身体がそれに追いついていないぞ」
コトリ「う…ああ…!(っ…今の私の練度じゃ、マコさんの動きを追い切れない…カウンターも速度負けして打ち負ける…
……あれに対抗するには、シロナみたいに…技の威力が最大に発揮する前に反応して、初動の時に迎撃するカウンターを放つしか…)」
マコさんの動きを眼で追いきれず反応が遅れ、カウンターもうまく決まらないうえに…自分より昇華されたマコさんの剣技に、同じ技なのに実力差で打ち負ける…
この現象は戦乙女のドウセツさんとの試合の時と同じで…今の小鳥の舞を上回られる速さを持つ相手だと、それ以外劣る私は途端に並み程度の騎士になってしまう…
だからいつも純魔法や半魔化などに頼る形になる…だから私は…。
エレイン「コトリの対戦相手…彼女は強い」
シャロン「それにまだ魔剣という余力を残していますからね。(……魔剣を抜いた彼女と…『あれを纏った』お嬢さまなら、どちらが強いのでしょうか?)」
アイリス(……こんなものじゃない、彼女の力は…そうだよね、コトリ)
マコ「(あの人の娘で…『剣鬼』と『赤い閃光』の弟子といっても、素だと今の時点ではこのくらいか)
半魔化しろ…それなら私の動きに対応できるはずだ」
コトリ「はぁはぁ…やだ!この試合では絶対に使わない!半魔化無しで…私の実力だけで、マコさんに魔剣を抜かせてみせる!」
マコ「…なぜそこまで頑なに?」
コトリ「今まで格上相手だったから仕方ないけど、私は半魔化や花剣に頼りすぎてた…
花剣に…半魔化、今ある力はもう否定しない…だけどそれとは別に自分自身の力を磨かないと意味ない…真に強くなってアイリス教官の隣に並ぶために!」
マコ「ふっ…やはりその性格嫌いではない…だが、ならばどうする?今のままではジリ貧だぞ」
コトリ「……この『1ヶ月近く試していたこと』全部をぶつける」
より深い所にあるスイッチを入れるため、私は目を閉じて本能と身体に意識を向ける。
コトリ「……ふぅ…『恐怖センサー』オン」
セイバー「あれをやるのですね」
ウンディーネ(私も特訓に付き合ったやつね)
モニカ「ぶっつけ本番ですが、大丈夫でしょうか…」
クレーティ「さて、お姉ちゃんはどこまで精度を引き上げられるかな」
コトリ「小鳥の舞・真に至るまで」
私が目を開くと、集中力だけではなく身体のスイッチが完全に切り替わる…しかし見た目には、何一つ変化はない
マコ(先程までと何も変化は感じられないが…いったい何が変わった?)
コトリ「……。」
マコ「…攻撃してみればわかるか…七翼流 風の型 疾風・改」
私の何が変わったのか確かめるため、マコさんは魔法剣を使って超速で突っ込んでくる
コトリ「七翼流 風の型 疾風」
マコ「…!」
先程まで反応しきれなかったそれに私は反応してみせ…それどころかすれ違いざまにカウンターを決めマコさんに初ダメージを与えた。
ミユ「…これは」
ルリラ「…何が起こったの?」
マコ「七翼流 風の型 風神・改」
魔力の帯がマコさんの剣に発現し、それによる無数の斬撃が私目掛けて放たれる
コトリ「……ふぅ」
私はある感覚に…『恐怖』に敏感に反応するようになった本能と身体に身を任せる
それにより恐怖を避けるために身体が勝手に動き、遠隔斬撃の嵐を必要最低限の動きで躱してみせる
マコ「(風神を全て避けきるとは…さっきまでのコトリでは不可能なはずだが…)
七翼流 光の型 閃・改」
コトリ「っ…!」
しかし小鳥の舞の精度が完璧ではなく、身体の恐怖への反応が遅れ…攻撃を避けれなく私はダメージを受けてしまう
マコ「七翼流 炎の型 爆炎剣・改」
コトリ「爆炎剣…くぅ!」
恐怖を感じとった身体は自動反応してカウンターを放つが…カウンターを合わせるのが遅れ、打ち負けた私はダメージを受ける
マコ「七翼流 氷の型 氷雪斬」
コトリ「…ふぅ」
迫る刃、その恐怖に反応し…恐怖を避けるため身体が勝手に動き、自動反応で剣技を躱す
マコ「七翼流 闇の型 重力剣・改」
コトリ「闇の型 重力剣」
マコ「っ…!」
恐怖を感じとった身体が勝手に反応して迎え撃つ…今度は完璧なタイミングでカウンターを放つことができ、打ち勝つことでマコさんにダメージを与える
私の突然のパワーアップに観客はざわめく
よし…練度はマコさんのが高いけど、自動反応速度で何とか打ち勝てるようになってる…新しく舞に組み込んだ事は、とりあえず成功だ。
マコ「……完全ではないが、攻撃を見切られている…なぜ急に動きがよくなった?」
コトリ「ただ集中力高めて躱すだけじゃなく…迫る恐怖を身体が勝手に躱しつつ、反射的なカウンターを決めれるようにしただけ」
「…?」
私の言葉を聞いて観客は混乱しているようだ…騎士たちの大半も理解不能な様子だ
シャロン「……なんという常識を逸した回避技術…私も全てを理解できないので、解説をお願いしてもいいでしょうか?」
エレイン「おそらくは自分の中の本能や身体に訴えかけて…身体が『恐怖』することに自動で反応し、その『恐怖』を避けるために身体が勝手に動くようになる…技だとは思う」
ニニム「恐怖で自動的に躱すことにより、相手の攻撃自体も身体が覚え…そして眼も相手の速い動きに慣れていく」
アネット「それにより戦闘が長引くほど、回避精度がより正確に引き上がっていく…そんな感じでしょうね、おそらくあれの完成系は」
ドウセツ「あの時の進化系ですか、やはり本当にとんでもない才能です…ですが、どうやらまだ完全じゃないようですね」
アイリス「恐怖による自動回避の精度もまだ完全ではないようだし、それによる自動カウンターの精度もまだまだ甘い…守り部分でもだけど、攻撃面に活かせていない…その証拠が反射的なカウンターの失敗だね。
でも、その理想とするものが完成したら…恐怖センサーという反応で完全に攻撃を自動で避け不意打ちも効かず、敵の攻撃が最大限力を発揮する前にカウンターで潰すことができたのなら…戦いにおいて、攻守共に隙がなくなるということだね」
シロナ「あらゆる危機を回避する無念無想と違って範囲は限定的だけど、死を感じる戦場では非常に理にかなった…危機を敏感に察知して回避する一種の奥義ではあるね
ふふ…コトリ、やるじゃん♪さっすが私が安心して斬りかかれるって認めた騎士なだけあるね♪」
ミヤコ「いや何それ…聞いてもまるで意味不明なんだけど…」
ロア「常人では理解できない避け方ですね…恐怖に反応して身体が勝手に避けるってなんですか…普通なら恐怖で身体が動かなくなるものでは?」
アズ(危険察知して身体が勝手に避ける…私はちょっとわかるかも)
コトリ「ん…やっとマコさんの動き…見えてきたよ」
マコ「っ…!」
進化させようとしてる小鳥の舞の精度は完璧ではないけど、回避してるうちに段々と眼も慣れてきて、マコさんの動きが見えるようになってくる…避けつつ攻撃を当てる頻度が相手を上回り、次第に彼女を追い詰めていく。
シロナの…眼だけで動きを追っているようじゃまだまだだね…と言われたのをヒントに、小鳥の舞を進化させようとしたのが今のこれで
教官の隣に並びたいというのも本当で…あともう一つは、回避で誰かに負けっぱなしは気が済まなかったのもある
でもシロナと同じことをしたくても、無念夢想とか私にはどんなのかよくわからない…だけど身体で相手の動きを事前に掴んで、自動で危機を避けるための何か限定的な条件を設ければ…その一端は再現可能かもしれない
そう思った私はこの1ヶ月近く…モニカ、セイバー、クレー、ウンディーネの5人に頼んで特訓に付き合ってもらっていた
コトリ「これが今の持てる私の全て」
マコ「……参ったよ…『覚醒』こそしなかったが、コトリの実力は予想を超えてきた…私に魔剣を抜かせるほどにな」
コトリ「っ…!」
小鳥の舞に進化の兆しが見えた。その私を見て、マコさんは楽しそうに微笑むと…力を発動させた彼女の背中に、黒い剣のような聖痕が発現した。
マコ「魔剣抜剣…これを抜いたからには、お前の負けが私には視えた」
マコさんは魔法剣・疾風で踏み込み、一瞬にして私との間合いを縮めてきた
コトリ「っ…!(魔剣を抜いた事でマコさんの身体能力が向上してる…!避けきれない…ここは身体に身を任せて…)」
マコさんの動きを眼で追いきれず、だから私は恐怖による危険回避技でそれを避ける…
コトリ「っ…かはぁ!?あ…ぅ…!」
けど…剣は躱したはずなのに、躱した先にはマコさんの拳があって…その拳がお腹に直撃し、私は殴り飛ばされ地面に平伏す
エレイン「これは…」
シロナ「へぇ…♪」
セイバー「な、何が起こったのですか…?」
マコ「まだ戦闘不能判定はされないか…ならこのまま攻めさせてもらおう」
コトリ「っぅ!」
攻撃の手を緩めず迫るマコさん…私は急いで起き上がり、身体に身を任せながら迎え撃つ
マコ「……恐怖センサーとやらの反応精度もまだ完璧ではないな…そのような鋭さが今ひとつの中途半端な反射カウンターなど、私の『先読み』の餌食だ」
コトリ「あぐぅ!」
攻撃を回避ができないどころか、カウンターにカウンターを合わせられ…試合は一方的な展開となっていく
モニカ「コトリちゃん!」
マコさんの怒涛の猛攻により、ダメージを受けた私は肩で息をして疲労困憊で。
コトリ「はぁはぁ…!(さ、さっきから恐怖で危険回避した先に…すでに次の危険/攻撃が存在してる…!このマコさんの動き…まるで私の動きを事前に見えてるかのような…)
マコ「不思議そうな表情だな…なら教えておこう。私の魔剣の能力は『対象者1人の動きの未来…軌跡が事前に見える』といったものだ。
だから敵の攻撃など、視えている動きの軌跡により先読み回避できる…そして、その見えている動きの軌跡の場所に攻撃を置くだけで、簡単にカウンターが決まる」
コトリ「っ…!」
話しながらマコさんが超速で迫る…私は何とか反応してガードしようとするが…
マコ「残念ながら抜剣した私には、回避もガードも無意味だ」
コトリ「あぁああっ!」
動きの未来が視えている彼女には通用せず、ガードをすり抜け攻撃が直撃…私は後方に吹き飛ばされ、大の字仰向け地面に倒れる
フレイ「戦闘不能判定…そこまで、この試合の勝者はマコさんです」
その実況の声を聞いて、観客から拍手が起こって試合終了となった。
シロナ「ふふ…魔剣騎士筆頭の『黒焔魔神』以外にも、こんなに強い人がいるだなんてね…しかもそれがあなたとは…ねぇ『マコ』
(そして…幼かったあの子も強くなっているはず…ふふ…私は嬉しい限りだよ…)」
シロナはマコを見た後、視線を観客席のニニムへと移した…
イムカ「どうやら一対一では無類の強さを発揮する魔剣のようだな…彼女の不意をつく事は実質不可能だ」
ノエイン「これが、三賢人が有する最高戦力の1人である『天帝』ですか…しかし…
(なぜ自分の魔剣の力を明かして?彼女たちの立場を考えると、明かすメリットなどないはずですが…その意図はいったい?)」
倒れこむ私を見て、アイリス教官は微笑む
アイリス(ふふ…どうやらいい経験になったようだね、コトリ)
コトリ「あーあ、完敗だね…何か最近負けてばっかりだ。もっと強くならないと…アイリス教官の隣に並んで、大切なものを守れる騎士になるためにもね…」
地面に大の字で倒れ空を見つめながら私は、すでに次のことを考え前を向いていた
今ある『力』は否定せず、それでいて自分の力を磨いて『なりたい自分』になる…そのためには立ち止まってなどいられなかった……。
(……『覚醒』には至らず…だけど、私には真似できない回避技をあの子は見据えている…。ふふ…これなら期待できそうね…待っているわよ、コトリ)
影から試合を見ていた母の顔は、穏やかな微笑みだった……。
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