騎士学生と教官の百合物語

コマドリ

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第8節 フィリア騎士学園本校地下・世界の深奥編

第343話 拳の騎士

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マコ「どこに行ってたんだ?ミユの試合が始まるぞ」

ルリラ「ちょっと昔の知り合いと会いましてね」

マコ「昔の…ああ、なるほど」

ルリラがグラウンドに目を向けると、セイバーと彼女がお互い向かえあっていた。


セイバー「まさか私以外に、拳をメインとする騎士がいるとは思いませんでした」

ミユ「私のはあなたのとは違って『正道』ではありませんけど。『紫電』の弟子というあなたの実力、見極めさせてもらう」

ロア「『黒風』と呼ばれるだけあって、彼女もルリラさんと同じく未知の力を使うのでしょうね…セイバーは大丈夫でしょうか?」

コトリ「大丈夫、セイバーなら」

モニカ「セイバーちゃん、ファイトです!でも怪我には気をつけてください!」

ミユさんは…黒髪ポニーテール、薄い黄色の瞳、マフラーに白の騎士服、凛とし手には籠手を装備している

彼女の表に出ている情報では、その戦闘スタイルはセイバーと同じみたいだ。


フレイ「それでは、試合開始」

合図と共にセイバーはミユに向けて駆け出す

セイバー「先手必勝ですわ!」

足の指先に力を込めて踏み込み、セイバーは右ストレートを繰り出す

ミユ「遅い」

セイバー「あうっ!?」

しかし攻撃を仕掛けたセイバーは後ろによろめき、攻撃を受けるはずだったミユは涼しい顔をしている

ざわめきが起こり、一般の観客はミユが何をしたのかわからないようだ…あと、騎士の中にもわからないという人がちらほらいるようだ。


ミヤコ「一応見えたけど、あれって…」

コトリ「ん、すっごい速さの右ストレート…それがカウンターで決まったね」

アズ「ミユさん、スピードタイプですね」

セイバー「く…!」

ミユ「こないのであれば、こちらから行きますよ」

攻撃を躊躇したセイバーを見て、踏み込んだミユは左手で連続攻撃を繰り出す…その超速の左ジャブの嵐を浴びせられ、セイバーはダメージを受けながら後退させられる。


セイバー「あ…ぅ…!こ…の!」

ミユ「隙だらけ」

セイバー「きゃん!くうっ!」

セイバーが拳で反撃しようとすると、ミユはすかさず右ストレートでカウンターを放ち…それがセイバーの顔に直撃して、ダメージを受けてよろめきながら後退させられる

セイバー「っぅ~!」

攻撃すると右拳によるカウンターをくらい、手を出せずにいると左ジャブをくらい…セイバーは両手でガード体勢をするしかなく、ミユに一方的に殴られ続ける。


ロア「魔力を纏って防御してますが…あれだけの魔力出力を出し続けていたら、魔力消費が激しくて長くは保ちません」

モニカ「っ…セイバーちゃん…」

コトリ「大丈夫だよ、セイバーは少しずつ『良くなって』いってる」

全身に魔力を纏わせ、魔力全開防御をするセイバー…それに伴う魔力と体力消費は激しく、すぐガス欠するのは明らかで

ミユ「なかなかタフだね…でも、いつまでもその状態は保たないよ」

セイバー「……私はコトリさんと違って、あんな即座に対応できないのです」

ミユ「…?何を言って…いや、何かを狙っているのか。ならその前に仕留める」

ミヤコ「それもらったら危ないよ!」

ミユはガードをこじ開けるため、魔力を込めた右ストレートを放つ…先ほどより遥かに威力が増した拳が、超速でセイバーの顔面に迫る。


コトリ「いま」

セイバー「ウィンドシールド!」

ミユ「っ!?」

拳サイズの風魔法の盾が作り出され、顔面ぎりぎりでミユの右ストレートを受け止める

セイバー「はぁあああっ!」

ミユ「あっぐぅ!」

かろうじてガードしてみせるも…セイバーの魔力を練り込んだ右ストレートを受け、ミユは後方に吹き飛ばされてダメージを受ける

マコ「ほう」

ルリラ「ミユの速さに反応できるだなんて…それでいて反撃のために、魔法盾のサイズを縮める芸当を見せるとは…あの子、刹那の魔力操作技術が高いわね」

ミヤコ「い、今何したの?」

アズ「多分、守りながら攻撃」

コトリ「ん、そんな感じ。セイバーは油断しなければ反射神経も悪くないし、不器用にみえて意外と器用…そして一撃の破壊力は私より上で、あれに何回か私もやられた」

ロア「いつもの勝負で、ですか…しかし回避厨のコトリさんを捉えて仕留めるほどとは、かなりすごいことでは?」

魔法盾で防ぎ、カウンターでの反撃に支障がないように魔力操作で…盾のサイズを拳サイズのピンポイントシールドでガードしてみせる

拳を何度もその身で受けることで…身体がミユの攻撃を覚え、非常に優れた眼と学習した身体の反応で…相手の動きの先をよみ切り、攻撃がくる所に先回りして風の盾を置き、拳を防いで逆に右ストレートのカウンターで反撃した

セイバー「魔力全開のままいきますよ!」

ミユ「っ…!」

ピンポイントウィンドシールド展開でミユの拳はガードしながら、自身の拳を彼女に当てていき…守っても受ける蓄積ダメージによりミユの動きが鈍っていき、1発の威力の高さで状況を切り返していく。


ミユ「はぁはぁ」

セイバー「はぁはぁ…お、追い詰めましたわ!」

ミユ「驚いた、あなたは強い。……正道の戦い方ではそちらが上なのは認める…だからちょっと力を使わせてもらう」

流れはセイバーに傾きかけた…が、それに対抗するためミユは瞳を閉じて集中する

その試合を見ていた夜天の娘は、彼女のその力を感じ取り興味を示す

シロナ「……へぇ…♪」

再び瞳を開いたミユの額には…赤黒く光る眼のマークが現れ、そこを軸にして顔や全身に赤黒い紋様が浮き出ていた。


マリスミゼル「あの紋様…まさかあれは…」

ミユ「『仙烈モード』でいかせてもらうよ」

セイバー「っ…!」

ミユは足先に力を入れて踏み込み、セイバーの懐に潜り込む

それを迎え撃つセイバー…同時に放たれる魔力を纏った右拳の攻撃、それが交差しセイバーはピンポイントシールドを展開する

ミヤコ「さっきより遥かに速いよ!」

コトリ「でも反応できてる」

セイバー「ウィンドシールド!」

ミユ「『仙術』月閃掌」

セイバー「なっーーっああ!?」

ミユの放った黒いオーラを右手に纏わせた掌底打ちにより、ピンポイント魔法盾を砕く…その受けた破壊力により、セイバーは遥か後方に吹き飛ばされダメージを負う。


アズ「魔法の盾を砕くだなんて…あの力はいったい何なの…?」

マリスミゼル「……『体術からなる仙術』『広範囲殲滅の仙法』…昔仙人なる者から教わり、魔を滅するくのいちの里に伝わっている奥義…魔法とは違った、文字通り人が開発した技…それを使えるということは、あの子は…」

シロナ「くのいちの里の生き残り…まさか私の団所属の他にもいたとはね」

立ち上がったセイバーに近づいていくミユ

ミユ「試合では使えないけど、暗殺術とこの仙人の力を交えて戦うのが私本来の闘い方」

セイバー「あ…ぐ…ぅ…!」

ミユ「盾で少しは防いだとはいえ、あなたでもさすがにこたえたようだね」

仙術の掌底打ちを受けたことにより…セイバーの足はがくがく震え、立っているのがやっとのうだ。


ミユ「これで終わり」

ミヤコ「だめだ…さすがにあのダメージはまずいって!あれじゃ躱せないし、盾で防ぐこともできない!」

モニカ「いいえ、まだです」

セイバー「ウィンドシールド!」

パワーアップしたミユの攻撃を受け『通常サイズのウィンドシールド』が砕かれ粉々になる

ミユ「なっ!?」

しかしその直撃寸前に、セイバーは暁風モードを発動…纏いし風の力で急上昇して躱し、さらにミユの上をとる

ルリラ「ジャンプ…ではない…これは宙に浮いて…!」

ロア「なるほどです…まさか今まで躱さなかったのは、躱せないと印象づけるための布石でしたか」

コトリ「ん、それに盾のサイズを普通にしたのは姿を目隠しするためだね」

モニカ「……ダメージを受けて動けなくなっても、風の力で空を飛んで無理やり動くことができる…それを利用すれば隙をつけます

直前まで力を隠すことも含めて作戦は事前に聞いていました、でも見てるこっちはひやひやものですよ…まったくコトリちゃんもですが、2人は本当にいつも無茶な戦い方ばかりして」

コトリ「…私にまで飛び火」

空中でセイバーは両手に風魔力を集中する。


セイバー「(相手は格上です…勝機があるとすればこれしかありませんでした。ですが予想より相手の反応が速く、そこまで不意をつけてません…あの技の力でしょうか?ですが、一瞬でも得た好機は掴みとります!)

受けるがいい…我が全身全霊の奥義!轟けーーー獅子咆天撃っ!!」

ミユ「っ…仙術・月閃掌!」

セイバーは獅子が如き風を纏わせた、両手による全力の掌底打ちを繰り出す…それを迎え撃つミユも仙術を放つ

獅子の姿をした暴風と、仙術の力を纏った掌底打ちが激突…その衝突の衝撃波により、爆音と共に砂煙が巻き起こる。


ミヤコ「ど、どうなったの!?」

砂煙が晴れると迎え合っている2人…お互い平気そうに立っているが、共に身体のあちこちを負傷しているようだ

フレイ「測定魔法、2人ともバイタル値戦闘不能判定…よってこの試合は引き分けとなります」

そのコールを聞いて鎮まりかえる…そんななか2人はお互いに距離を縮め

ミユ「最後の一撃、見事でした」

セイバー「ここまでして勝ちきれませんとは…次こそはあなたに『本気』を出させてみせます」

2人が握手を交わすと歓声と拍手が起こる…その後、2人はグラウンドを後にした。


ミヤコ「セイバー、引き分けだったけどお疲れさま!」

セイバー「……。」

アズ「浮かない顔ですが、やはり納得できてないんですね」

セイバー「ええ…彼女は『魔剣』を抜いていません。それなのに引き分けとは…ぐぬぬですわ…!」

モニカ「無茶をしたのは減点です…でもセイバーちゃん、すっごくかっこよかったです♪」

セイバー「モ、モニカさん…//」

ロア(私たちの前なのに、平然といちゃつきますね…まあ眼福ですが)

悔しそうな表情をみせるセイバー…それをモニカが慰めると、たちまちセイバーは微笑みをみせた…。


マコ「ミユに仙術を使わせたうえに引き分けとは、コトリに劣らずセイバーもやるな」

ミユ「仙術のタイミングが遅れてたら、相殺しきれなかったかも…まだまだあの子は強くなる」

ルリラ「彼女の風魔法、ミユの魔剣の『特性と似て』いましたね…驚異となる可能性があるので『開戦前に』知れてよかったです」

アイリス「それでは、最終戦に出場する2人はグラウンドへ」

拡声魔法のアナウンスが響く

ミヤコ/アズ/ロア「コトリさん、頑張ってください」

モニカ「無茶するなと言っても無駄だと思うので言わないけど、悔いが残らないようにです」

セイバー「せめて1勝はとってください…私が認めたあなたならそれができるはずですから」

コトリ「ん、2人の仇とってくる」

みんなの信頼を受け取って、私は入場口から出て行く

ルリラ「さて、本日のメインイベントですね」

ミユ「ミクの期待通りにまで達するか」

マコ「見極めさせてもらおうか」

入場口からマコさんが現れ、私と彼女はグラウンドで迎えあった……。
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