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第8節 フィリア騎士学園本校地下・世界の深奥編
第305話 回想 襲撃者
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あれから月日が経ち、私はシオンさまと共にフィリア騎士学園に入学することとなった。
今は授業で、戦場を想定した連戦形式の模擬戦をしていた。
そんな中…地面にひれ伏した貴族生徒3人を前に、私は立ち尽くしていた。
レジー(……やってしまいました…これは少しまずいですね…。)
入学試験で貴族より上…1位は姫さまで、2位は私…になってしまって、私は複数の貴族生徒たちに目をつけられていた。
それなのに模擬戦の途中で私は今、その複数のうちの貴族生徒に絡まれ…それを簡単に打ち負かしてしまった。
これ以上ことを大きくしないように負けようと、一応気づかれないように手加減はしたのですけどね。姫さまに比べて弱すぎて…姫さま基準で考えていたのが間違いでした。
レジー「……え、えっと…大丈夫でしょうか?」
どうしようか迷った末に、私は手を差し伸べる…それが癪に触ったのか貴族男子生徒は、ばちんと私の手を振り払い、ある一言を言う。
「調子に乗るなよ! 貴族の気まぐれで生まれた女のくせに!」
レジー「っ…!」
彼の暴言で、周りが静まり返る。
いけません…これは、先程よりまずい事態に…私がそう思っていると、声が聞こえてくる。
「ねぇ、次は私としてくれませんか?」
「うるさい邪魔だ! 今俺はこの混じりカス女とっーーひぃ!?」
その声の主はこの国の姫で、私の主人であるシオンさまだった。王族である姫さまだと…自分より身分が上だとわかると、貴族男子生徒3人は途端に黙り込んでしまう。
姫さまは笑顔だが、目がまったく笑っていない…そして、冷や汗が出るほどの威圧感を彼女は放っていた。
シオン「さあ、はやく立ち上がりなさい。」
「あ、あの…えっと…。」
シオン「ふふ…戦場で敵は待ってくれませんよ? 今すぐ立って構えなさい!」
「は、はい!」
そうして、貴族男子生徒3人を…姫さまは容赦なく、笑顔で完膚なきまでに叩きのめした。
姫さまのその姿を見て、かっこいいなどと言う女生徒…その強さに怯える男子貴族生徒など…さまざまな反応が飛び交う中、私はジト目で姫さまを見つめていた……。
今日の授業が終わり、学園の女子寮に戻ってきて…私たちは汗を流すため、2人でお風呂に入っていた。
王族である姫さまが使うということで、その間浴室は貸し切りで…でもそれは、私のある理由が関係していた。
私は泡を立てて、姫さまのお背中などを流し始める…そんな私の右の脇腹には、火傷跡が今も残っていた。
この火傷跡を見せるのが嫌で、最初はお風呂だけは断っていたのだが…あの食べ歩きの後に彼女と話し合い、姫さまは火傷跡をきみわるがったりしなく、だから今ではお風呂のお世話をさせてもらうため一緒に入っている。
レジー「姫さま、あそこまでやらなくてもよかったのでは? 彼らのプライド、もうズタボロですよ。」
シオン「私のレジーにあんなことを言った報いです。それにあの程度で心が折れ騎士の道を諦めるようなら、彼らは戦場に出ない方がいいです…戦場ではもっと過酷で、常識では測れない凄惨なことで溢れていますからね。」
私のためと言われると嬉しくはなるが、さすがに彼らが少し可哀想だとも感じたり…
しかし…姫さまが言うことももっともであり、あれは姫さまなりの慈悲でもあったのかもしれない…たぶん。
シオン「それよりレジー、次は私が背中を洗ってあげます。」
レジー「はぁ…え? いえ、私は…。」
シオン「姫さま命令ですよ♪」
レジー「……それ、ずるいです。」
姫さま命令と言われれば、従者である私は逆らえなくて…まあ、私が本当に嫌がるところでの命令はしないので、姫さまはちゃんと私のことを考えてくれながら、使っているのだろう。
姫さまは楽しそうに泡立てた手で、私の身体を洗い始めた……。
日が落ち始めた時間帯…旧校舎前、シオンに打ち負かされた貴族男子3人が集まっていた。
「あのクソ女…王族だからって偉そうにしやがって! このままじゃ気が済まねぇ。」
「だがよ、王族相手に直接仕返しなんて出来ねぞ。」
「ならあのクソ女のお供…メイドのアレを酷い目に合わせてやったらどうだ?」
「おお、なるほど…それはいい。所詮は気まぐれの混じりカス女、何をしたって構わねぇよな。」
そんなことを話す彼ら…すると、どこからか女性の声が聞こえてきた。
「……ふふ…面白そうな話をしてるわね…私も混ぜてくれるかしら?」
シオン「本当にこの辺りなのですか?」
レジー「ええ、旧校舎方面へと向かっていったと証言がありました。」
私と姫さまは旧校舎前までやってきていた…その理由は、行方がわからなくなっている、あの貴族男子3人を探しにきたからだ。
彼らは昨日から寮にも戻っておらず、旧校舎の方に行くのが最後に目撃されていた。
レジー「しかし、なぜ姫さまが彼らの捜索を引き受けたのです?」
シオン「彼らが寮に戻ってこなかったのは、私が昨日したことが原因かもしれません…だから一応は、心配はしています。
自主退学届なら気にはしませんが、行方がわからないとなると…さすがにね。」
レジー(つまり、彼ら自身には興味がないのですね…それはそれで、可哀想な気が…。)
周囲を見回し、私たちが彼らの捜索を始めようとした…その時…。
シオン「っ!?」
木々の間から、超速で接近してきた男…貴族男子の1人が、その手に持つ剣で姫さまを襲う…姫さまはぎりぎりのところで、その攻撃を自らの剣で受け止めた。
レジー「姫さま! っ…あなた方は…!?」
木々の影から、残る2人の男子貴族も現れ、私に対して剣を向けてくる。
「そっちから来てくれるとは、手間が省けたぜ…クソ女どもが、裸にひん剥いて、辱めてから殺ってやる!」
レジー「くっ…は、速い…!」
シオン「これは…昨日までとは、動きの質がまったく違う…!?」
3人は、人間離れした速さと力で襲い掛かってくる。彼らの戦闘能力が桁違いに跳ね上がっていて、それは明らかに異常で…そんな彼らの変化はそれだけではなく…瞳の色が真紅に染まり、黒い闇の魔力を纏っていた。
シオン「……仕方がありません…そちらがやる気なのであれば、こちらも本気で対処させてもらいます。」
レジー「状況の理解が追いつきませんが…姫さまに剣を向けたのです、ならば容赦なく排除させていただきます。」
「っ!?」
貴族男子たちの速さなどは驚異的だったが…全然なってない連携の穴をついて、私は姫さまと連携して彼らを倒す。
「ば、ばかな…一度ならず二度までも、こんなクソ女どもに…!?」
レジー「さて…その力は何なのか、洗いざらい吐いてもらいましょうか。」
「へー…『擬似化』とはいえ、そうなったそいつらを倒すなんて、やるじゃない。」
私たちが、男子貴族3人を制圧すると…後ろから、女性の声が聞こえてきた。
私たちが声のした方に振り向くと…束ねた紫の髪を両サイドにまとめたダブルお団子ヘア、紫のチャイナドレスの女性がいた。
シオン「……あなたは…? 見たところ騎士学生ではなく、この事件を先導していた者にみえますが。」
「いいところに来た吸血鬼! あのクソ女どもを殺るために、俺たちを本物にしてくれ!」
レジー「吸血鬼…!?」
私と姫さまは警戒を強める…その対象である吸血鬼と呼ばれた女性は、冷めた目で貴族男子たちを見ていた。
「……あなたたちみたいな血筋主義人間を、私の眷属にするわけないじゃない…小手調の捨て駒、ご苦労さま。」
「てめ、ふざけーーう、うぎゃあああ!?」
吸血鬼が指をぱちんと弾くと…紫電色の雷魔法が発生し、貴族男子たちを焼き払った。
シオン「っ…なんて酷いことを…!」
「あら…なぜ怒るのかしら? 貴族に恥をかかせたという自分勝手な逆恨みで、あなたたちを殺るための力を望んだ連中よ…そんな連中、消されても当然ではなくって? 私は力を貸してあげただけで、彼らの言葉と行動は本心よ。
それに…あなたたち人間こそ、私にしたことを棚に上げて、よく酷いとか言えるわね…私が吸血鬼ってだけで、迫害しておいて。」
レジー「っ!」
私と姫さまに向けて、吸血鬼の女性は憎悪のプレッシャーを放つ…その圧力に冷や汗と身体が震えて、この女性がやばい相手だと本能が警告してくる。
「そういえば、自己紹介が遅れたわね。私は吸血鬼のランホア…『紫の真祖』または『悪魔の舞姫』と呼ばれているわ。」
レジー「なっ…し、真祖…!?」
シオン「伝説の災厄…災害級とされる深淵なる者…そんな真祖がなぜ、この王都…いえ、この学園に…?」
ランホア「それはあなたがターゲットだからよ、お姫さま。」
シオン「私をっーー!?」
姫さまの目の前まで、一瞬で移動したランホアは蹴りを繰り出し…お腹に蹴りをくらった姫さまは吹き飛ばされ、木へと叩きつけられる。
レジー「姫さまっ!」
ランホア「来なさい、ルルム」
私が姫さまのところに駆け寄ろうとすると、ランホアが割って入り…彼女の身体から闇の魔力が溢れ、その魔力で召喚魔法が発動…全身青色の人型スライム、スライム娘が召喚された。
レジー「っ…スライムの魔物…!?」
「私はランホアさまの精霊獣で、名はルルムと申します。短い間でしょうが、よろしくお願いいたします。」
ランホア「ルルム、その娘を足止めしときなさい。その間に私は、お姫さまを捕らえるから。」
眷属の獣…眷獣または、精霊獣と呼ばれる存在だというスライムが、私を足止めしている間に…ランホアは歩いて姫さまに近づいてく。
ランホア「さあ、全力できなさい。私に勝たないと、いっぱい恥ずかしい目にあうわよ?」
シオン「っ…はぁああ!」
剣を手に姫さまは、ランホアに駆け…蹴りのダメージも感じさせない素早い動きで、ランホアに攻撃を仕掛ける。
ランホア「……それで終わり? 噂に聞く、王族の力はこの程度なの?」
シオン「くっ…!」
速く鋭い太刀筋で斬り掛る姫さまの剣撃をも、ランホアは軽くいなし…常人には考えられない身軽な様子で、剣閃の隙間を縫い攻撃を躱しながら、彼女は小さく嗤う。
ランホア「どうやら本当に、それが限界のようね。あの方から聞いていた王族情報とは、全然かけ離れているけど…まあもういいわ、終わりにしてあげる。」
シオン「っ!?」
姫さまの身体に、ランホアが手を翳すと…姫さまの身体を包むように水の膜が作り出され、その水の檻に姫さまは閉じ込められてしまい。
ランホア「水の拘束魔法よ…このまま意識を奪ってあげる。」
レジー「姫さまを離しなさいっ!」
ランホア「あなたには、用はないわ…寝てなさいな。」
レジー「あっーー」
シオン(っ…レジー!)
ランホアに一瞬で距離を詰められ、首筋に手刀をくらわされ…私の意識は暗転した……。
今は授業で、戦場を想定した連戦形式の模擬戦をしていた。
そんな中…地面にひれ伏した貴族生徒3人を前に、私は立ち尽くしていた。
レジー(……やってしまいました…これは少しまずいですね…。)
入学試験で貴族より上…1位は姫さまで、2位は私…になってしまって、私は複数の貴族生徒たちに目をつけられていた。
それなのに模擬戦の途中で私は今、その複数のうちの貴族生徒に絡まれ…それを簡単に打ち負かしてしまった。
これ以上ことを大きくしないように負けようと、一応気づかれないように手加減はしたのですけどね。姫さまに比べて弱すぎて…姫さま基準で考えていたのが間違いでした。
レジー「……え、えっと…大丈夫でしょうか?」
どうしようか迷った末に、私は手を差し伸べる…それが癪に触ったのか貴族男子生徒は、ばちんと私の手を振り払い、ある一言を言う。
「調子に乗るなよ! 貴族の気まぐれで生まれた女のくせに!」
レジー「っ…!」
彼の暴言で、周りが静まり返る。
いけません…これは、先程よりまずい事態に…私がそう思っていると、声が聞こえてくる。
「ねぇ、次は私としてくれませんか?」
「うるさい邪魔だ! 今俺はこの混じりカス女とっーーひぃ!?」
その声の主はこの国の姫で、私の主人であるシオンさまだった。王族である姫さまだと…自分より身分が上だとわかると、貴族男子生徒3人は途端に黙り込んでしまう。
姫さまは笑顔だが、目がまったく笑っていない…そして、冷や汗が出るほどの威圧感を彼女は放っていた。
シオン「さあ、はやく立ち上がりなさい。」
「あ、あの…えっと…。」
シオン「ふふ…戦場で敵は待ってくれませんよ? 今すぐ立って構えなさい!」
「は、はい!」
そうして、貴族男子生徒3人を…姫さまは容赦なく、笑顔で完膚なきまでに叩きのめした。
姫さまのその姿を見て、かっこいいなどと言う女生徒…その強さに怯える男子貴族生徒など…さまざまな反応が飛び交う中、私はジト目で姫さまを見つめていた……。
今日の授業が終わり、学園の女子寮に戻ってきて…私たちは汗を流すため、2人でお風呂に入っていた。
王族である姫さまが使うということで、その間浴室は貸し切りで…でもそれは、私のある理由が関係していた。
私は泡を立てて、姫さまのお背中などを流し始める…そんな私の右の脇腹には、火傷跡が今も残っていた。
この火傷跡を見せるのが嫌で、最初はお風呂だけは断っていたのだが…あの食べ歩きの後に彼女と話し合い、姫さまは火傷跡をきみわるがったりしなく、だから今ではお風呂のお世話をさせてもらうため一緒に入っている。
レジー「姫さま、あそこまでやらなくてもよかったのでは? 彼らのプライド、もうズタボロですよ。」
シオン「私のレジーにあんなことを言った報いです。それにあの程度で心が折れ騎士の道を諦めるようなら、彼らは戦場に出ない方がいいです…戦場ではもっと過酷で、常識では測れない凄惨なことで溢れていますからね。」
私のためと言われると嬉しくはなるが、さすがに彼らが少し可哀想だとも感じたり…
しかし…姫さまが言うことももっともであり、あれは姫さまなりの慈悲でもあったのかもしれない…たぶん。
シオン「それよりレジー、次は私が背中を洗ってあげます。」
レジー「はぁ…え? いえ、私は…。」
シオン「姫さま命令ですよ♪」
レジー「……それ、ずるいです。」
姫さま命令と言われれば、従者である私は逆らえなくて…まあ、私が本当に嫌がるところでの命令はしないので、姫さまはちゃんと私のことを考えてくれながら、使っているのだろう。
姫さまは楽しそうに泡立てた手で、私の身体を洗い始めた……。
日が落ち始めた時間帯…旧校舎前、シオンに打ち負かされた貴族男子3人が集まっていた。
「あのクソ女…王族だからって偉そうにしやがって! このままじゃ気が済まねぇ。」
「だがよ、王族相手に直接仕返しなんて出来ねぞ。」
「ならあのクソ女のお供…メイドのアレを酷い目に合わせてやったらどうだ?」
「おお、なるほど…それはいい。所詮は気まぐれの混じりカス女、何をしたって構わねぇよな。」
そんなことを話す彼ら…すると、どこからか女性の声が聞こえてきた。
「……ふふ…面白そうな話をしてるわね…私も混ぜてくれるかしら?」
シオン「本当にこの辺りなのですか?」
レジー「ええ、旧校舎方面へと向かっていったと証言がありました。」
私と姫さまは旧校舎前までやってきていた…その理由は、行方がわからなくなっている、あの貴族男子3人を探しにきたからだ。
彼らは昨日から寮にも戻っておらず、旧校舎の方に行くのが最後に目撃されていた。
レジー「しかし、なぜ姫さまが彼らの捜索を引き受けたのです?」
シオン「彼らが寮に戻ってこなかったのは、私が昨日したことが原因かもしれません…だから一応は、心配はしています。
自主退学届なら気にはしませんが、行方がわからないとなると…さすがにね。」
レジー(つまり、彼ら自身には興味がないのですね…それはそれで、可哀想な気が…。)
周囲を見回し、私たちが彼らの捜索を始めようとした…その時…。
シオン「っ!?」
木々の間から、超速で接近してきた男…貴族男子の1人が、その手に持つ剣で姫さまを襲う…姫さまはぎりぎりのところで、その攻撃を自らの剣で受け止めた。
レジー「姫さま! っ…あなた方は…!?」
木々の影から、残る2人の男子貴族も現れ、私に対して剣を向けてくる。
「そっちから来てくれるとは、手間が省けたぜ…クソ女どもが、裸にひん剥いて、辱めてから殺ってやる!」
レジー「くっ…は、速い…!」
シオン「これは…昨日までとは、動きの質がまったく違う…!?」
3人は、人間離れした速さと力で襲い掛かってくる。彼らの戦闘能力が桁違いに跳ね上がっていて、それは明らかに異常で…そんな彼らの変化はそれだけではなく…瞳の色が真紅に染まり、黒い闇の魔力を纏っていた。
シオン「……仕方がありません…そちらがやる気なのであれば、こちらも本気で対処させてもらいます。」
レジー「状況の理解が追いつきませんが…姫さまに剣を向けたのです、ならば容赦なく排除させていただきます。」
「っ!?」
貴族男子たちの速さなどは驚異的だったが…全然なってない連携の穴をついて、私は姫さまと連携して彼らを倒す。
「ば、ばかな…一度ならず二度までも、こんなクソ女どもに…!?」
レジー「さて…その力は何なのか、洗いざらい吐いてもらいましょうか。」
「へー…『擬似化』とはいえ、そうなったそいつらを倒すなんて、やるじゃない。」
私たちが、男子貴族3人を制圧すると…後ろから、女性の声が聞こえてきた。
私たちが声のした方に振り向くと…束ねた紫の髪を両サイドにまとめたダブルお団子ヘア、紫のチャイナドレスの女性がいた。
シオン「……あなたは…? 見たところ騎士学生ではなく、この事件を先導していた者にみえますが。」
「いいところに来た吸血鬼! あのクソ女どもを殺るために、俺たちを本物にしてくれ!」
レジー「吸血鬼…!?」
私と姫さまは警戒を強める…その対象である吸血鬼と呼ばれた女性は、冷めた目で貴族男子たちを見ていた。
「……あなたたちみたいな血筋主義人間を、私の眷属にするわけないじゃない…小手調の捨て駒、ご苦労さま。」
「てめ、ふざけーーう、うぎゃあああ!?」
吸血鬼が指をぱちんと弾くと…紫電色の雷魔法が発生し、貴族男子たちを焼き払った。
シオン「っ…なんて酷いことを…!」
「あら…なぜ怒るのかしら? 貴族に恥をかかせたという自分勝手な逆恨みで、あなたたちを殺るための力を望んだ連中よ…そんな連中、消されても当然ではなくって? 私は力を貸してあげただけで、彼らの言葉と行動は本心よ。
それに…あなたたち人間こそ、私にしたことを棚に上げて、よく酷いとか言えるわね…私が吸血鬼ってだけで、迫害しておいて。」
レジー「っ!」
私と姫さまに向けて、吸血鬼の女性は憎悪のプレッシャーを放つ…その圧力に冷や汗と身体が震えて、この女性がやばい相手だと本能が警告してくる。
「そういえば、自己紹介が遅れたわね。私は吸血鬼のランホア…『紫の真祖』または『悪魔の舞姫』と呼ばれているわ。」
レジー「なっ…し、真祖…!?」
シオン「伝説の災厄…災害級とされる深淵なる者…そんな真祖がなぜ、この王都…いえ、この学園に…?」
ランホア「それはあなたがターゲットだからよ、お姫さま。」
シオン「私をっーー!?」
姫さまの目の前まで、一瞬で移動したランホアは蹴りを繰り出し…お腹に蹴りをくらった姫さまは吹き飛ばされ、木へと叩きつけられる。
レジー「姫さまっ!」
ランホア「来なさい、ルルム」
私が姫さまのところに駆け寄ろうとすると、ランホアが割って入り…彼女の身体から闇の魔力が溢れ、その魔力で召喚魔法が発動…全身青色の人型スライム、スライム娘が召喚された。
レジー「っ…スライムの魔物…!?」
「私はランホアさまの精霊獣で、名はルルムと申します。短い間でしょうが、よろしくお願いいたします。」
ランホア「ルルム、その娘を足止めしときなさい。その間に私は、お姫さまを捕らえるから。」
眷属の獣…眷獣または、精霊獣と呼ばれる存在だというスライムが、私を足止めしている間に…ランホアは歩いて姫さまに近づいてく。
ランホア「さあ、全力できなさい。私に勝たないと、いっぱい恥ずかしい目にあうわよ?」
シオン「っ…はぁああ!」
剣を手に姫さまは、ランホアに駆け…蹴りのダメージも感じさせない素早い動きで、ランホアに攻撃を仕掛ける。
ランホア「……それで終わり? 噂に聞く、王族の力はこの程度なの?」
シオン「くっ…!」
速く鋭い太刀筋で斬り掛る姫さまの剣撃をも、ランホアは軽くいなし…常人には考えられない身軽な様子で、剣閃の隙間を縫い攻撃を躱しながら、彼女は小さく嗤う。
ランホア「どうやら本当に、それが限界のようね。あの方から聞いていた王族情報とは、全然かけ離れているけど…まあもういいわ、終わりにしてあげる。」
シオン「っ!?」
姫さまの身体に、ランホアが手を翳すと…姫さまの身体を包むように水の膜が作り出され、その水の檻に姫さまは閉じ込められてしまい。
ランホア「水の拘束魔法よ…このまま意識を奪ってあげる。」
レジー「姫さまを離しなさいっ!」
ランホア「あなたには、用はないわ…寝てなさいな。」
レジー「あっーー」
シオン(っ…レジー!)
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