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第8節 フィリア騎士学園本校地下・世界の深奥編
第299話 回想 責任と罰と、他人に迷惑をかけていいわけじゃ
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アイリス「……まさかリーゼにここまで深いダメージを与えれる者がいるだなんてね…。」
メイヴ「悪魔の武器は『この次元には存在しない…高位次元の力』だからね、さすがのリーゼでもこうなるのは仕方ないよ。
ちゃんと手当てはしたけど、傷は深いから、あまり無茶はしない方がいいよ。」
リーゼ「メイヴ博士に剣鬼アイリス…治療してくれた礼を言っておくよ、助かった。」
待ち合わせ場所の宿屋に、傷を負ったリーゼが現れた時は驚いた。
今は手当てを受けた…お腹に包帯を巻いたリーゼが、ベッドの上に横になっている。
メイヴ「しかし、まさか1人で偵察しに行くとは…しかも余裕ぶって無様に返り討ちとは、情けない…そんなザマじゃ、六武聖や転写の魔術師という、二つ名が泣いているよー。」
アイリス「リーゼがこれじゃあ、今夜の計画は中止にするしか…。」
リーゼ「いいや、救出作戦は予定通りやる…そして、私も当然参加だ。」
リーゼはそう言うと、ベッドから起き上がり、立ち上がった。
メイヴ「安静にしてないと、いくらきみでも、無理をすると死んじゃうよ?」
リーゼ「それも、まあいいかもね。」
アイリス「……消滅してもいいって…何があなたをそこまで突き動かすの…? まずどうして人間嫌いのあなたが、人間のために命をかけるの…?」
大戦前のリーゼとは明らかに違って…別人のような彼女に、私は戸惑いと疑問だらけで。
リーゼ「私は彼女のところに行かなければならない…自身がしたことへの、責任に対する後始末をしにね。」
アイリス「責任って…ますますもって意味がわからないんだけど…。」
メイヴ「……復讐を果たしても収まることのない憎悪…そんな怒りの獣と化した自身を斬られたことで、やっと昔と同じく、自分の目で物事の正しいかをみれるようになったようだね。
それによって、自分がしてきたことの重さを理解したみたいだね。」
リーゼ「……同じ六武聖のヴィレーヌたちですら知らない、私の遥か昔を知っているとは…アイリスくんの先生らしいけど、きみはいったい何者なんだい?」
メイヴ「なぁに…『見て知っている』だけの、そして他の人たちより、ちょっと『物知り』なただの人間さ。」
いつになく真剣な表情のリーゼと、いつも通りのメイヴ先生。生徒だった私も思うけど、先生っていったい何者ですか…あのパラドックス博士とは、旧知の仲らしいけど…。
リーゼ「そこまで知っているのなら、まあいい機会だ…アイリスくんにも、私の怒りの原点を簡単に語ってあげるよ。
私の母は、お前たち人間に殺された。それも手を差し伸べたのに、それを裏切る形でね。」
アイリス「!?」
リーゼ「まあその時からだよ、人間なんてのは自己利益で、自分の一方的な言い分を突き通し、嘘で塗り固め…他者を傷つけ、他者から奪っていくしかできない生物だとね…
そして人間なんてものは、私たち魔族とは違い…どれだけ良い言葉や信念を掲げていようと、死が迫るとその恐怖で、自身のことしか考えらず、自身が生き残るために他者を蹴落とす…所詮口先だけの生物だとね。
……でも…シリウスくんみたいな…私を相手に逃げ出さず、己が信念を曲げずに突き通した…
そんな人間もいることを私は知った…そしてそこで気づいた、全部の人間がそうだと一括りにして、私が思い込んでいたことに。」
メイヴ「リーゼが言いたいことを、私たち人間風に例えようとするなら…
これだから最近の若者は…
これだから年寄りは…
これだから何々世代は…
あとは親や親族が犯罪者だから、その子供なども同じく犯罪者扱い…
国のトップが悪いから、そこに住む国民全員も同じく悪い…
とか、まあ1人が悪かったらまとめてそうだと見たり、思い込むあれだね。
リーゼは自分の感情…復讐心と怒りだけでちゃんと見えてない、ちゃんと見ようとしていなかった…たまにだけど、シリウスみたいな人間もいることをね。」
リーゼ「私は復讐を果たしても、虚しさに燃えたぎる怒りがまだ残っていた。そしてなぜ怒りは残り、なんで虚しい思いをしなければならないのかを考えた…
その結論は、人間が悪い。人間を全部消せば、この怒りも虚しさも晴れる…人間を根絶やしにしないと気が済まない怒りが、止められない溢れ出続ける怒りが、私を突き動かした。
怒りと虚しさの化け物、それが私だった…彼に叩っ斬られるまではね。」
アイリス(なるほど…だからこその、あの問いかけだったのか…。)
『目の前に復讐相手の1人がいるのに、なぜ冷静でいられる…なぜ怒りをぶつけない』
とリーゼが聞いてきたのを思い出した。でも…リーゼの言い分は…。
アイリス「……はっきり言うけど、あなたも同じようなことをしていたよね…? 人間を滅ぼすために、同じ魔族であるベアトリーチェたちを裏切ったりとか。
あなたの人間に対しての怒りについては、全体の詳細まではわからないにしろ、少しはわかった…人間があなたにしてしまったことも…
けど、それとこれとは話は別だよ…自身の一方的な感情のまま、あの戦争でしでかしてきたことが許されると思わないで。何があったにせよ…関係のない人にまで、怒りを当たり散らしていいわけじゃないよ。」
リーゼ「ああまったくその通りだよ、だから言っただろう? 私は完全悪だと。
起こしたことは変えられない、許される気もない…そのうち報いを受けるだろう、復讐しにきた者によってな。それまでにできるだけ、今の私にできる償いと責任を果たすだけだ。」
アイリス「リーゼ…あなたこそ、もしかして罰を…。」
私もまだその気持ちは深く残っているが…リーゼこそ、罰せられることを望んでいるのではと感じた……。
……。
リーゼ「……まあ、しかしだぁ…アイリスくんは、状況が私と似ているのに、なぜ怒りに飲まれなかったんだい?」
アイリス「それは対象が違うからだよ…私の怒りと虚しさは、なぜ守れなかったかという自分自身に対してだから。」
リーゼ「またそれかい、きみも頭が硬い。相手のせいにすれば、少しは気持ちが楽かもしれないのに…難儀な性格だねぇ。」
アイリス「誰かさんみたいに、他の人たちに当たり散らして、迷惑をかけるより、1人で溜め込んでる方がましだと思うけど。」
メイヴ「言っとくけど、アイアイのそれ、医学的にだめなやつだからね?」
そんな会話をしながら、私とリーゼとメイヴ先生は…屋敷正面の頑丈な門前まで来ていた。
アイリス「リーゼ、私はあなたを許したわけじゃなからね…ただ今回は、共闘するよ。」
リーゼ「それでいい。ただ同じ目的のために、戦いを共にする関係…それが私たちだ。」
メイヴ「さあ、2人の共闘を祝して…派手にいこっか♪」
メイヴ先生の爆弾で、門は砕かれ、私たちは屋敷へと突入した……。
メイヴ「悪魔の武器は『この次元には存在しない…高位次元の力』だからね、さすがのリーゼでもこうなるのは仕方ないよ。
ちゃんと手当てはしたけど、傷は深いから、あまり無茶はしない方がいいよ。」
リーゼ「メイヴ博士に剣鬼アイリス…治療してくれた礼を言っておくよ、助かった。」
待ち合わせ場所の宿屋に、傷を負ったリーゼが現れた時は驚いた。
今は手当てを受けた…お腹に包帯を巻いたリーゼが、ベッドの上に横になっている。
メイヴ「しかし、まさか1人で偵察しに行くとは…しかも余裕ぶって無様に返り討ちとは、情けない…そんなザマじゃ、六武聖や転写の魔術師という、二つ名が泣いているよー。」
アイリス「リーゼがこれじゃあ、今夜の計画は中止にするしか…。」
リーゼ「いいや、救出作戦は予定通りやる…そして、私も当然参加だ。」
リーゼはそう言うと、ベッドから起き上がり、立ち上がった。
メイヴ「安静にしてないと、いくらきみでも、無理をすると死んじゃうよ?」
リーゼ「それも、まあいいかもね。」
アイリス「……消滅してもいいって…何があなたをそこまで突き動かすの…? まずどうして人間嫌いのあなたが、人間のために命をかけるの…?」
大戦前のリーゼとは明らかに違って…別人のような彼女に、私は戸惑いと疑問だらけで。
リーゼ「私は彼女のところに行かなければならない…自身がしたことへの、責任に対する後始末をしにね。」
アイリス「責任って…ますますもって意味がわからないんだけど…。」
メイヴ「……復讐を果たしても収まることのない憎悪…そんな怒りの獣と化した自身を斬られたことで、やっと昔と同じく、自分の目で物事の正しいかをみれるようになったようだね。
それによって、自分がしてきたことの重さを理解したみたいだね。」
リーゼ「……同じ六武聖のヴィレーヌたちですら知らない、私の遥か昔を知っているとは…アイリスくんの先生らしいけど、きみはいったい何者なんだい?」
メイヴ「なぁに…『見て知っている』だけの、そして他の人たちより、ちょっと『物知り』なただの人間さ。」
いつになく真剣な表情のリーゼと、いつも通りのメイヴ先生。生徒だった私も思うけど、先生っていったい何者ですか…あのパラドックス博士とは、旧知の仲らしいけど…。
リーゼ「そこまで知っているのなら、まあいい機会だ…アイリスくんにも、私の怒りの原点を簡単に語ってあげるよ。
私の母は、お前たち人間に殺された。それも手を差し伸べたのに、それを裏切る形でね。」
アイリス「!?」
リーゼ「まあその時からだよ、人間なんてのは自己利益で、自分の一方的な言い分を突き通し、嘘で塗り固め…他者を傷つけ、他者から奪っていくしかできない生物だとね…
そして人間なんてものは、私たち魔族とは違い…どれだけ良い言葉や信念を掲げていようと、死が迫るとその恐怖で、自身のことしか考えらず、自身が生き残るために他者を蹴落とす…所詮口先だけの生物だとね。
……でも…シリウスくんみたいな…私を相手に逃げ出さず、己が信念を曲げずに突き通した…
そんな人間もいることを私は知った…そしてそこで気づいた、全部の人間がそうだと一括りにして、私が思い込んでいたことに。」
メイヴ「リーゼが言いたいことを、私たち人間風に例えようとするなら…
これだから最近の若者は…
これだから年寄りは…
これだから何々世代は…
あとは親や親族が犯罪者だから、その子供なども同じく犯罪者扱い…
国のトップが悪いから、そこに住む国民全員も同じく悪い…
とか、まあ1人が悪かったらまとめてそうだと見たり、思い込むあれだね。
リーゼは自分の感情…復讐心と怒りだけでちゃんと見えてない、ちゃんと見ようとしていなかった…たまにだけど、シリウスみたいな人間もいることをね。」
リーゼ「私は復讐を果たしても、虚しさに燃えたぎる怒りがまだ残っていた。そしてなぜ怒りは残り、なんで虚しい思いをしなければならないのかを考えた…
その結論は、人間が悪い。人間を全部消せば、この怒りも虚しさも晴れる…人間を根絶やしにしないと気が済まない怒りが、止められない溢れ出続ける怒りが、私を突き動かした。
怒りと虚しさの化け物、それが私だった…彼に叩っ斬られるまではね。」
アイリス(なるほど…だからこその、あの問いかけだったのか…。)
『目の前に復讐相手の1人がいるのに、なぜ冷静でいられる…なぜ怒りをぶつけない』
とリーゼが聞いてきたのを思い出した。でも…リーゼの言い分は…。
アイリス「……はっきり言うけど、あなたも同じようなことをしていたよね…? 人間を滅ぼすために、同じ魔族であるベアトリーチェたちを裏切ったりとか。
あなたの人間に対しての怒りについては、全体の詳細まではわからないにしろ、少しはわかった…人間があなたにしてしまったことも…
けど、それとこれとは話は別だよ…自身の一方的な感情のまま、あの戦争でしでかしてきたことが許されると思わないで。何があったにせよ…関係のない人にまで、怒りを当たり散らしていいわけじゃないよ。」
リーゼ「ああまったくその通りだよ、だから言っただろう? 私は完全悪だと。
起こしたことは変えられない、許される気もない…そのうち報いを受けるだろう、復讐しにきた者によってな。それまでにできるだけ、今の私にできる償いと責任を果たすだけだ。」
アイリス「リーゼ…あなたこそ、もしかして罰を…。」
私もまだその気持ちは深く残っているが…リーゼこそ、罰せられることを望んでいるのではと感じた……。
……。
リーゼ「……まあ、しかしだぁ…アイリスくんは、状況が私と似ているのに、なぜ怒りに飲まれなかったんだい?」
アイリス「それは対象が違うからだよ…私の怒りと虚しさは、なぜ守れなかったかという自分自身に対してだから。」
リーゼ「またそれかい、きみも頭が硬い。相手のせいにすれば、少しは気持ちが楽かもしれないのに…難儀な性格だねぇ。」
アイリス「誰かさんみたいに、他の人たちに当たり散らして、迷惑をかけるより、1人で溜め込んでる方がましだと思うけど。」
メイヴ「言っとくけど、アイアイのそれ、医学的にだめなやつだからね?」
そんな会話をしながら、私とリーゼとメイヴ先生は…屋敷正面の頑丈な門前まで来ていた。
アイリス「リーゼ、私はあなたを許したわけじゃなからね…ただ今回は、共闘するよ。」
リーゼ「それでいい。ただ同じ目的のために、戦いを共にする関係…それが私たちだ。」
メイヴ「さあ、2人の共闘を祝して…派手にいこっか♪」
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