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第8節 フィリア騎士学園本校地下・世界の深奥編
第290話 自制できぬ感情
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シオンさまたちと話し合っている間に、通り雨が降ったのか、地面は濡れていた。
セイバーは1人で街を歩いていて…歓楽街地区の表通りから、人気がない裏通りへ入り、そこから旧市街地区へと向かう。
その後ろから気配を消し、姿を隠しながらシオンさまたち…そして身軽な私は、屋根からセイバーのあとを追っている。
ウンディーネ「それで、本当によかったの?」
コトリ「……仕方ないじゃない…あんなにセイバーが頑固だとは思わなかった…。」
今より少し前、セイバーが私たちにある作戦を提案した時のことを思い出す……。
………。
セイバー「その唸る獣というのが、騎士を狙っているのでしたら…私が囮になりますわ。」
コトリ「っ…!?」
イムカ「……なるほど、冒険者でいうところの、いわゆる『つり』というやつか。」
セイバーの作戦はこうだ…自分自身を餌とし、唸る獣を誘き寄せる…というものだった。
コトリ「そ、そんな危ない方法…リスクが高すぎる…! 他にも方法があるはず…もしなかったとしても、それなら私がやる…!」
セイバー「私から提案したのですから、囮役は私がやるのが当然ですわ…
それにコトリさんは剣に魔法と遠中近距離と万能で、各メンバーをフォローできます…自分はそこまで器用じゃないですから、このメンバーの中で役割があるとしたらそこくらいです…
まあ、それじゃなくても、コトリさんには絶対に囮なんてやらせませんが。」
コトリ「で、でも…!」
セイバー「コトリさん、いいですか? こうしてもたもたしている間に、騎士全員に…モニカさんにも危険が及ぶかもしれません。
それに…亡くなった騎士の方たちにも、大切な人たちがいたはず…それなのに自分自身が強くなるためだけに、その方たちを襲うなど、私は絶対に許せません。」
この場にいる以上、学生は関係なく…1人の騎士として、私たち2人は、シオンさんたちにそう見られていて。
仲間思いで正義感が強いセイバーの想いを…私は止めることができなかった……。
………。
ウンディーネ「今は目の前に集中しなさいな。というか…彼女があなたを危険な目にあわせたくなかったのくらい、あなたもわかってるんでしょ?」
コトリ「そんなのわかってる…だけど、それなら私だって…。」
お互いに危険な役目を相手にやらせたくない…そんな想いは私もセイバーも同じで。
シオンとノエイン「前衛にはマコさんもいらっしゃるから、大丈夫だと思いますが…もしもの時は、あの子たちのフォローを頼みます。」
イムカとレジー「ああ、わかってる/はい、かしこまりました」
マコ(……。)
………。
マコ、危なくなったら迷わず『抜き』なさい…
『転写の魔術師』たちは、唸る獣と戦わせることで、あなたやシオン皇女殿下たちの実力をその目で確認しておきたいのでしょう…
あなたの『力』を皇女殿下に知られることになりますが、あなたの安全が1番ですから…。
………。
マコ(ミクの許可はもらってる…憎き白神聖者の駒…ここで確実に潰しておく。)
私たちは、建物の物陰、建物の上などに気を配り…唸る獣がつれるのを待つ。
通り雨により、セイバーの歩く地面には、水溜まりが何個か出来ていた。
……女騎士か…くく…女騎士を狩るのは初だ…さて、どんな声で鳴いてくれるのか。
コトリ「……?」
建物の上からセイバーを追いかけている私は、何かがおかしいということに気づく…あの水溜まり…『位置』が変わっているような…。
そうしていると瞬く間に、セイバーの背後にあった水溜まりが『姿を変えて巨大な人型を形作って』いく…。
コトリ「っ!? セイバー! 後ろ!」
イムカ「あれは…まさか『液体化』!?」
セイバー「えーーっ!?」
セイバーは…突如背後に現れた、牛の顔をした魔族の大きな手に掴まれた。
セイバー「くっ…は、離しなさい…!」
「気の強い女騎士…これはいい声で、我を楽しませてくれそうだ。」
セイバー「っ…う…ぁ…!」
2メートルを超える魔族の手で掴まれ…セイバーは抵抗するも、その小さな身体では振り解けず、みしみしっと骨が軋む音が響く。
マコ「おい、その娘を離せ。」
「む…他にもお仲間の騎士がいたか。なるほど…この娘を使って、我を誘い込んだのか。」
ノエイン「私たちは、セイバーさんを離しなさいと言っているのです。」
「それは聞けぬな。」
唸る獣は不気味に笑ってみせると…掴んでいる右手とは逆、左手を使い…指先を弾いて、セイバーの額にデコピンを食らわせた。
セイバー「!!」
シオン「セイバーさん!」
コトリ「っ…お前ぇえ!! セイバーを離せぇえ!!」
軽めのデコピンだったのにも関わらず、その衝撃でセイバーは額に傷を負い、血が流れ出る。
その光景に、私は感情が抑えられなく…その『私の怒りに呼応するかのように、肉体が自動的に半魔化』され…
建物の屋根から飛び降り、そのまま怒りの声をあげ、渾身の風神を奴の右腕に叩き込む…。
しかし、斬撃が奴の右腕に直撃するも…肉体の強度に阻まれ、傷すら与えられず。
斬撃の衝撃で、奴の腕から、セイバーを解放することはでき…意識を飛ばしたセイバーは、地面に落ちる。
コトリ「なっ…風神が肉体に弾かれた…!? こいつも硬質化を…!」
「まだいたか…だが、空中ではただの的だぞ。」
コトリ「くっーー!?」
空中では避けられないため、剣で奴の拳をガードする…が…威力を止めきれず、その強烈な殴りで、私は勢いよく建物の壁に叩きつけられ…奴の一撃で、私の剣が砕かれた。
レジー「コトリさん!」
コトリ「かひゅ…!! っく…はっ…!」
ウンディーネ「バカね、冷静さを欠いてどうするのよ。感情が乱れたら…あなたのよさである、瞬時の判断能力や動きのよさが鈍るでしょ。」
壁に叩きつけられる前に、ウンディーネの魔法で、水の膜が私の背中に発生し…それにより衝撃やダメージを少し軽減できた。
しかし…それでも全身に痛みなどが走り、私はそのダメージにより膝をつく…そして剣を砕かれたことにより、武器を失ってしまった。
「どうやらお前たちは、我を討伐しにきたようだが…くく…早くも2人が戦闘不能だな。」
コトリ「っ…く…そぉ…!」
マコ(……まさかミクの娘が、この程度のわけではないよな…真の力を見せてみろ。)
セイバーは気を失い、私は衝撃の痺れが抜けるまで立ち上がれず…私とセイバーが一時的に戦闘不能となり、今前衛はマコさん1人になってしまった……。
セイバーは1人で街を歩いていて…歓楽街地区の表通りから、人気がない裏通りへ入り、そこから旧市街地区へと向かう。
その後ろから気配を消し、姿を隠しながらシオンさまたち…そして身軽な私は、屋根からセイバーのあとを追っている。
ウンディーネ「それで、本当によかったの?」
コトリ「……仕方ないじゃない…あんなにセイバーが頑固だとは思わなかった…。」
今より少し前、セイバーが私たちにある作戦を提案した時のことを思い出す……。
………。
セイバー「その唸る獣というのが、騎士を狙っているのでしたら…私が囮になりますわ。」
コトリ「っ…!?」
イムカ「……なるほど、冒険者でいうところの、いわゆる『つり』というやつか。」
セイバーの作戦はこうだ…自分自身を餌とし、唸る獣を誘き寄せる…というものだった。
コトリ「そ、そんな危ない方法…リスクが高すぎる…! 他にも方法があるはず…もしなかったとしても、それなら私がやる…!」
セイバー「私から提案したのですから、囮役は私がやるのが当然ですわ…
それにコトリさんは剣に魔法と遠中近距離と万能で、各メンバーをフォローできます…自分はそこまで器用じゃないですから、このメンバーの中で役割があるとしたらそこくらいです…
まあ、それじゃなくても、コトリさんには絶対に囮なんてやらせませんが。」
コトリ「で、でも…!」
セイバー「コトリさん、いいですか? こうしてもたもたしている間に、騎士全員に…モニカさんにも危険が及ぶかもしれません。
それに…亡くなった騎士の方たちにも、大切な人たちがいたはず…それなのに自分自身が強くなるためだけに、その方たちを襲うなど、私は絶対に許せません。」
この場にいる以上、学生は関係なく…1人の騎士として、私たち2人は、シオンさんたちにそう見られていて。
仲間思いで正義感が強いセイバーの想いを…私は止めることができなかった……。
………。
ウンディーネ「今は目の前に集中しなさいな。というか…彼女があなたを危険な目にあわせたくなかったのくらい、あなたもわかってるんでしょ?」
コトリ「そんなのわかってる…だけど、それなら私だって…。」
お互いに危険な役目を相手にやらせたくない…そんな想いは私もセイバーも同じで。
シオンとノエイン「前衛にはマコさんもいらっしゃるから、大丈夫だと思いますが…もしもの時は、あの子たちのフォローを頼みます。」
イムカとレジー「ああ、わかってる/はい、かしこまりました」
マコ(……。)
………。
マコ、危なくなったら迷わず『抜き』なさい…
『転写の魔術師』たちは、唸る獣と戦わせることで、あなたやシオン皇女殿下たちの実力をその目で確認しておきたいのでしょう…
あなたの『力』を皇女殿下に知られることになりますが、あなたの安全が1番ですから…。
………。
マコ(ミクの許可はもらってる…憎き白神聖者の駒…ここで確実に潰しておく。)
私たちは、建物の物陰、建物の上などに気を配り…唸る獣がつれるのを待つ。
通り雨により、セイバーの歩く地面には、水溜まりが何個か出来ていた。
……女騎士か…くく…女騎士を狩るのは初だ…さて、どんな声で鳴いてくれるのか。
コトリ「……?」
建物の上からセイバーを追いかけている私は、何かがおかしいということに気づく…あの水溜まり…『位置』が変わっているような…。
そうしていると瞬く間に、セイバーの背後にあった水溜まりが『姿を変えて巨大な人型を形作って』いく…。
コトリ「っ!? セイバー! 後ろ!」
イムカ「あれは…まさか『液体化』!?」
セイバー「えーーっ!?」
セイバーは…突如背後に現れた、牛の顔をした魔族の大きな手に掴まれた。
セイバー「くっ…は、離しなさい…!」
「気の強い女騎士…これはいい声で、我を楽しませてくれそうだ。」
セイバー「っ…う…ぁ…!」
2メートルを超える魔族の手で掴まれ…セイバーは抵抗するも、その小さな身体では振り解けず、みしみしっと骨が軋む音が響く。
マコ「おい、その娘を離せ。」
「む…他にもお仲間の騎士がいたか。なるほど…この娘を使って、我を誘い込んだのか。」
ノエイン「私たちは、セイバーさんを離しなさいと言っているのです。」
「それは聞けぬな。」
唸る獣は不気味に笑ってみせると…掴んでいる右手とは逆、左手を使い…指先を弾いて、セイバーの額にデコピンを食らわせた。
セイバー「!!」
シオン「セイバーさん!」
コトリ「っ…お前ぇえ!! セイバーを離せぇえ!!」
軽めのデコピンだったのにも関わらず、その衝撃でセイバーは額に傷を負い、血が流れ出る。
その光景に、私は感情が抑えられなく…その『私の怒りに呼応するかのように、肉体が自動的に半魔化』され…
建物の屋根から飛び降り、そのまま怒りの声をあげ、渾身の風神を奴の右腕に叩き込む…。
しかし、斬撃が奴の右腕に直撃するも…肉体の強度に阻まれ、傷すら与えられず。
斬撃の衝撃で、奴の腕から、セイバーを解放することはでき…意識を飛ばしたセイバーは、地面に落ちる。
コトリ「なっ…風神が肉体に弾かれた…!? こいつも硬質化を…!」
「まだいたか…だが、空中ではただの的だぞ。」
コトリ「くっーー!?」
空中では避けられないため、剣で奴の拳をガードする…が…威力を止めきれず、その強烈な殴りで、私は勢いよく建物の壁に叩きつけられ…奴の一撃で、私の剣が砕かれた。
レジー「コトリさん!」
コトリ「かひゅ…!! っく…はっ…!」
ウンディーネ「バカね、冷静さを欠いてどうするのよ。感情が乱れたら…あなたのよさである、瞬時の判断能力や動きのよさが鈍るでしょ。」
壁に叩きつけられる前に、ウンディーネの魔法で、水の膜が私の背中に発生し…それにより衝撃やダメージを少し軽減できた。
しかし…それでも全身に痛みなどが走り、私はそのダメージにより膝をつく…そして剣を砕かれたことにより、武器を失ってしまった。
「どうやらお前たちは、我を討伐しにきたようだが…くく…早くも2人が戦闘不能だな。」
コトリ「っ…く…そぉ…!」
マコ(……まさかミクの娘が、この程度のわけではないよな…真の力を見せてみろ。)
セイバーは気を失い、私は衝撃の痺れが抜けるまで立ち上がれず…私とセイバーが一時的に戦闘不能となり、今前衛はマコさん1人になってしまった……。
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