騎士学生と教官の百合物語

コマドリ

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第8節 フィリア騎士学園本校地下・世界の深奥編

第282話 怪異④

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「『剣姫』か、無双の剣術と聞くが…まあ、誰が加わろうと無意味だ。では、まずは新しく頂いたこいつを試そう…水の檻!」

ウンディーネ「ほら、代償にもらった魔力を返してあげる…まあ私のだけ、だけどね。民間人を守るんでしょ? それが口先だけじゃないのなら、結果で証明してみせなさいな。」

コトリ「っ…魔力が戻って…! これなら…蒼き水よ、敵を閉じ込める檻となれっーー水の檻!」

先程消耗した魔力が少しだけ戻ってきて、回復した私は詠唱…そして、放たれた水魔法同士が激突し、相殺し合う。

その隙にエレインさんたちは剣を手に、唸る獣へと向かって行く。


アネットとニニム「ふっ!」

エレインとシャロン「はぁあ!」

エレインとシャロン…アネットとニニム…の4人は相棒とのコンビネーションを使い、隙を作らないよう統制のとれた連携を見せ、幾重もの剣撃を繰り出すも、高速再生され、傷口が再生しダメージを与えれず。


「ほぅ…少しはやるようだ、しかし無意味だがな。」

シャロン「ここ! っ…ぐっ!」

壁を踏み台に大きく跳躍したシャロンが背後から斬りかかるも、カウンターで同時に脇腹を貫かれ地面に叩きつけられる。


エレイン「シャロン! っく!」

追撃を受けようとしたシャロンをエレインが、すんでのところで庇い、唸る獣を一刀両断するも、すぐに再生してしまう。


「くく…全て躱しきれるかな。」

ニニム「数が多い…!」

コトリ「ふぅ…小鳥の舞」

唸る獣の妖しく瞳が光ると…天井から私やアネット先輩とニニム先輩の周囲全体を多い尽くすように、大小様々な剣や槍が現れ、私たち3人に目掛けて降り注ぐ…。


「貴様らが速いのは認めるが、ゴミには限度があるぞ…ふっ!」

アネット「ニニム、下がりなさい。」

コトリ「あっ!」

ニニム「っ…アネット!」

必死に回避し受け流す私たちに、奴は呟き…上空の攻撃に気をとられていたニニム先輩の足元四方から、彼女に鉄の刃が襲い…

アネット先輩はそれを庇うように、ニニム先輩の腕をぐいっと掴んで後退させる…庇ったことにより、その内の一本がアネット先輩の左太ももを深々と貫通する。


「ふむ…いい感じだ、力がみなぎる。む、もうそれはいらん…諦めよ、下等種共よ。」

アネット(……なるほど、やっぱりね…。)

最初に相対したときより、唸る獣の力や魔力は増しているようで…辺りに奴の白い魔力が満ち溢れ、アネットの剣を睨みつけると、立ちまち彼女の剣は腐食し刀身が折れてしまう。


エレイン「誰が」

コトリ「諦めるもんか…!」

私とエレインさんは剣を手に、2人で唸る獣へと駆ける。


「力の差も把握できんとは、これだからゴミは…我の力をその身に刻むといい、水の檻」

エレイン「七翼流 風の型 風車」

奴の魔法を…エレインさんは魔法剣で迎撃ち、吹き荒ぶ風を纏った鋭い突きを放つ…

それにより水魔法を一点突破で貫き、魔法を貫通し奴にもダメージを与える…もちろん高速再生で傷は塞がるが、私はその剣筋を見て…。


コトリ「(こんな技もあるんだ、それに美しくも鋭い太刀筋…レインにも負けてない…エレインさん、やっぱりすごい……私だって…!)

ーーー七翼流 風の型 風車」

「ぬ!」

エレイン「…!」

感情が高揚し、エレインさんに負けていられないと思った私は、見様見真似で先程見た魔法剣を放つ…

威力は及ばないが…技の切れ、足運び、体幹、剣筋…そのどれもがエレインさんとほぼ同じもので、命中した唸る獣にダメージを与える。


コトリとエレイン「七翼流 光の型 閃」

光魔法を合わせた剣技…閃光の居合い抜きで、2人同時に唸る獣を切り裂き…。


コトリとエレイン「七翼流 雷の型 春雷」

その動作から流れるように連続して、雷魔法を合わせた剣技…雷を纏った斬撃で、唸る獣にダメージを与えながら、奴に麻痺を与え…。


「ちょこまかと!」

コトリとエレイン「七翼流 水の型 水円陣」

鋭い太刀筋、状態異常に剣撃を喰らうも、高速再生で瞬く間に傷口が塞がり、反撃に尻尾の蛇の頭から無数の毒針を放ち…その攻撃を私とエレインさんは、水の魔法剣で受け流す。


ミヤコ「なんか戦いが始まった時より、コトリの動きよくなってない…!?」

アズ「エレインさんと共闘することで、エレインさんの剣筋などを学んで…コトリ、この戦いの中で進化していってる。」

ロア「何というセンス…!」

ウンディーネ(……感受性が高い子ね、仲間に呼応して強くなっていくだなんて…まるで…。)

「素早いだけの羽虫が…ならば守りも回避も不可能な、高速貫通火炎光線をくらえ!」

エレイン「っ…速い…!」

ニニム「大丈夫、あれなら私が。」

コトリ「ニニムさん…!?」

奴は物質を焼き付くす強烈な火炎光線を、私とエレインさんに向かって放ち…それをニニム先輩が庇いに入り、爆発し…爆炎に包まれる。


アズ(っ…!? 何…この不気味な魔力…。)

爆炎が晴れると…ニニム先輩の全身を包むように、円状の闇のバリアが作り出され…魔術文字が浮かび上がっている障壁で、唸る獣の攻撃を防いでいた。


「なん…だと。その障壁は確か…そうか、貴様『悪魔付き』か。」

ニニム「私ばかりを気にかけてていいの?」

シャロン「ふっ!」

「ぬ!」

私たち3人に注目していた隙をついて、シャロンさんは最大力の魔力糸で、奴の動きを封じる…それに合わせるように、アネット先輩が攻撃に移る体勢をとっていた。


アネット「ーーーデビルパニッシュ」

アネット先輩が暗く低いトーンの声で呟くと…全身からドス黒い闇の魔力が溢れ出し、その魔力で手に魔槍を作り出す。


アネット「もう、仕舞いにしましょうか…滅!」

「がかっ!?」

止血した足で踏み込み、超速ですれ違いざまに、唸る獣を切りつけた後…闇の力で形成した複数の槍が地面から突き出し、唸る獣の身体を貫き、さらに追い討ちをかける。


アネット「ふふ…あなた強いけど、超速再生と硬化のせいで自信過剰になりすぎ…それに加えて私たちを舐めすぎていて、余計に隙だらけなのよねぇ。

慢心して攻撃を基本避る気がないし、思考回路が単純で助かるわぁ♪」

「き、貴様…その傷でなぜ動ける!」

アネット「これくらいの痛みなら『慣れてる』わ。それより、まだ攻撃は続くわよ…いいの、こっちばっかり気にかけていて?」

悪い笑みを浮かべたアネット先輩がそう言うと、唸る獣はこっちに気づく…私とエレインさんが剣を構え、攻撃体勢に入ってることに。


エレイン「風の型」

コトリ「風車!」

私とエレインさんは魔法剣を同時に放ち、吹き荒ぶ風を纏った一点突破の鋭い突きが、唸る獣の顔に直撃し…。


「……くく…効かんな。人界で無双程度の技で、なぜこの我を殺れると思った。」

しかし、最大に硬質化された唸る獣にダメージを与えられず…奴は無傷で、勝ち誇る。


アネット「ふふ…ほら、また無駄に勝ち誇る…そういうところが単純なんだぞ♪ 最初っから、私たちは動きを止めるまでしか、言われてないわよ。」

普段とは違う悪い笑みを浮かべながら、アネット先輩は奴に言う…その言葉通り、唸る獣の足は完全に止まっていた。

私たちがバックステップすると…その状況に反応するように、2つの声が聞こえてきた…。


「「漆黒なる闇よ、この地に集まりて、世界を拒む檻となれっーーベルド・ニュー・グラビティ!!」」

二重の詠唱により…ドス黒い重力の小さな球体が2つ、唸る獣の身体の中央に作り出され、そこに奴の身体が引き込まれていく…

小さなブラックホールのような桁外れに強力な重力場が、敵の身体の近くに作り出され、そこに引きずり込んで、圧縮するかのように相手を押し潰す闇の重力魔法が発動した。


「ぐぉおお!?」

コトリ「えっ…あ、あれって私の魔法!?」

「「にしし…『コトリお姉ちゃんからエナジードレイン』した重力魔法すっごい威力だね♪

それに…組み込んだ術式、封印術もちゃんと機能しているみたいだし…作戦通りだよ♪」」

「OK…それじゃ、そのままでおねがーい。……目標インサイド…全身全霊、全力全開!」

気配を消していたのか、入り口からエルフと2人のサキュバス、計3人が姿を現し…

2人のサキュバスは重力魔法を使用し、エルフは大弓を唸る獣に向けていて…全魔力を大弓に注ぎ込み、極大の力を持った魔力矢が生成されていく。


「き、貴様らは!」

ニニム「『吸収姫』と『叡智』…聞いていたけど、本当に王国内に入り込んでいたのね。」

アネット「へぇ…あれが噂のノアとブラッド。そして、魔王軍六武聖の1人…。」

シャロン「……お嬢さまの様子が変だと思ってましたが、なるほど…あなたが原因でしたか、ヴィレーヌ博士…。」

「こ、れは…動けん…! 再生能力も…! よせ、やめろ!」

ヴィレーヌ「ーーーエーテル・アロー」

エルフの大弓から放たれた魔力矢は、流星のような輝きと軌跡を描く…その光の奔流は唸る獣を飲み込み、矢は魔力核を撃ち抜いた……。
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