騎士学生と教官の百合物語

コマドリ

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第8節 フィリア騎士学園本校地下・世界の深奥編

第280話 怪異②

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ミヤコ「っ…みんな、あそこ…!」

ビルの中、広間の奥に…頭と尻尾が蛇、上半身が豹、下半身がライオン、足が鹿…の怪物がそこにはいた。


「この前逃した、騎士と冒険者ではないか…まさか獲物が、そちらからやって来てくれるとは思わなかったぞ。」

コトリ(っ…本当にキメラと同じような見た目…それに、それだけじゃなくて…。)

ロア「この感じ…本当に、ただの魔獣や魔族じゃないですね…。」

アズ「色々なものが混ざってるような…この不気味な気配…。」

ニニム「これが『合成獣』ですか。」

アネット(様々な魔獣や魔族の細胞や因子などを掛け合わせ、作り出された生物…今の王国騎士団副団長の『人造人間』とはまた違った、究極の生物兵器のひとつのようね。)

唸る獣と少し距離を空けた位置で、私たちは武器を構え警戒する。


シャロン「あなたには、王国中央書庫の放火事件の犯人として、指名手配がかかっています…捕縛または討伐どちらの許可もでていますが、おとなしくご同行いただけますか?」

「……なぜ我が、貴様ら下等種の話を聞かなくてはならないのだ?

我、人の世を終わらせる獣…下等生物よ、その身を差し出し、最強生物となる我の糧となるがいい。」

ミヤコ「予想通り、交渉失敗だね! 向こうやる気だよ!」

アズとロア「くる/きます!」

私たちへ向けて…唸る獣は蛇の尻尾の口から、魔力で出来た毒針を無数に撃ち出す。


シャロン「コトリさん、私と共に!」

コトリ「っ…七翼流 水の型 水円陣」

唸る獣が放つ無数の毒針を…私は魔法剣で、シャロンさんは魔力の糸で弾き落とし…

隙をつき、アネット先輩とニニム先輩はスピードを乗せて連続で相手に斬撃を叩きこむと…相手の身体から青色の液体が溢れるも、傷口が瞬く間にふさがる。


ミヤコ「うそ、本当に傷が!?」

シャロン「噂の超速再生ですね…キメラと同種という予想は当たりでしたね。」

ニニム「っ! ふぅ…それに加えて、この速く重たい一撃…。」

アネット「本物じゃないにしろ、これはなかなかに反則な生物兵器ねぇ…。」

相手の『硬質化』させた前足の重い一撃を、ニニム先輩は剣で受け止め反動で、わずかばかり吹き飛ばされるも体制を立て直す。

尻尾の口から燃え盛る炎、前足から衝撃破を放つ唸る獣のバリエーションある攻撃を…アネット先輩は紙一重で防御、回避し戦いを続け。


「避けるのはうまいが攻撃は軽いな…もっと『重たい攻撃』で我を楽しませるがいい。」

ミヤコ「っ! くぅ…2人とも、今!」

アズ&ロア「はぁあ!」

唸る獣が呟いた瞬間、一瞬で姿が立ち消えミヤコに鋼鉄の前足を振るうも、ギリギリのところで彼女は受け止め、その隙をつきアズとロアが渾身の一撃を叩き込むが…。


アズ「っ…また超速再生を…!」

ロア「こんなのいったい、どう対応すればいいのですか!」

ミヤコ「なら、魔法でどぉかーんっと!」

すぐに傷が塞がりダメージを与えられなく…そこでミヤコは剣から魔法に切り替え、詠唱しファイアーボールを放ち、相手にぶつけ、炎が敵を飲み込む。


「ははは! 『これ』を待っていたのだ…ファイアーボール!」

魔法を受けたにも関わらず、その身体には傷一つなく、唸る獣がニヤリと口元を歪めると…

蛇の尻尾を対峙する私たちに向けると、ミヤコがたった今放った、炎魔法の火炎球を途切れることなく私たちに向けて放ち。


アズ「全然効いてない…それに、あれってミヤコの魔法…!」

コトリ「あの唸る獣も、キメラと同じように、一度見た魔法を自分のものに…!」

シャロン「……完全ではないですが、リーゼの力を流用しているようですね…

純粋な魔法は『転写』し、自身のものに…そして『固体化』の力を使って、自身の肉体を硬化させている…それ以外を使わないところをみると、奴が扱えるのはおそらく、その2つだけでしょうか。」

ニニム「複写されるということは、気軽に魔法による盾は使えないわね。」

アネット「それに…それ以外の能力は、隠しているだけの可能性もあるから、今の情報だけに惑わされず、警戒はしなさいな。」

放たれた複数の火炎球は…シャロンさんの魔力の糸、私の魔法剣、アネット先輩とニニム先輩の剣撃で防ぎ…そのまま攻防は続く。


「どうした、はやく魔法を繰り出せ…それで、もっと我の糧となるがいい!」

コトリ「(……キメラと同じタイプだから、やっぱりこのままじゃジリ貧になる…あの硬化の守りと超速再生を上回るだけの破壊力が必要…なら…。)

シャロンさん、それに先輩たち…例のアレを使います。」

シャロン「話で聞いていたのですね…わかりました、サポートします。」

アネット「もし失敗したその時は、あとのことは私とニニムに任せなさいな。」

事前の作戦会議の予測通り、今のままの戦い方だと、攻略の決め手に欠けることを感じ…私は背中に背負った虹の花剣を手に取る。

シャロンさんたちには、事前に七属性剣のことを伝えている…先輩たちのフォローもあるから、問題点があっても私はこの剣を使える。


シャロン「それではいきます…ふっ!」

「ぬ!?」

コトリ「今だ…はぁああっ!」

シャロンさんは魔力糸で、唸る獣を拘束し…僅かな時間、動きを封じることに成功。

私は魔力を虹の花剣に注ぎ込み、刀身を顕現させ…蒼き魔力刃の形を維持しながら、そのまま唸る獣に向かって駆け出そうとする…。


コトリ「っ…くぁあ!?」

ロア「コトリさん!」

ミヤコ「もしかしないでも、失敗した!?」

アズ「あっちの拘束破られる…きます。」

だが、顕現した刀身が安定せず、蒼き魔力刃が弾け飛び、分散し掻き消える…

そのタイミングで魔力糸が打ち破られ、唸る獣は顔の口から、炎のブレスを放ってくる。


シャロン「くっ!」

放たれた炎のブレスを…シャロンさんを中心に、魔力の糸で複数の輪が作り出され、その輪が回転し、円形に回転する守りが展開され…水円陣のような技で、炎のブレスを防ぐ。

そんな中私は急激に魔力を消費したため、めまいで剣技を出せなく…そのせいでシャロンさん1人で守りをしないといけなくなり。


ニニム「炎を防いではいるけど、長くは保たなさそうね。」

アネット「あとは私とニニムがやるわ、巻き込まれないように下がってなさ……っ…?」

コトリ「先輩…? ……っ…!?」

途中で言葉が止まり、私は先輩たちを見て…それからその先に目を移すと、手に持っていた花剣の『蒼の宝玉』が光り輝いていて…

そして、そこから声が聞こえてきた…。


「……これは目覚めてそうそう、めんどくさそうな場面ね。

ちんまい騎士さん、私を…この剣をあの獣に向けて、それから水魔法を放ちなさいな、ブーストしてあげるから。

そうね、できれば拘束系で。」

コトリ「え? えっ? っ…蒼き水よ、敵を閉じ込める檻となれっーー水の檻!」

「ぬお!?」

虹の花剣から女性の声がして…状況が掴めていないが、私は指示に従い、刀身なき剣を唸る獣に向け、詠唱し魔法を撃つ…

普通は刀身があるはずの部分から、勢いよく大量の水が放たれ、炎のブレスを押し返し、唸る獣を水の膜のような檻で閉じ込めた……。
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