騎士学生と教官の百合物語

第8節 フィリア騎士学園本校地下・世界の深奥編

第275話 唸る獣

エレイン「この怪異を起こしている犯人は『唸る獣』でしょう。」

ミヤコ「唸る獣？」

シャロン「唸る獣というのは『キメラ』に酷似した魔族のことです。」

コトリ「！？」

突然キメラの名前が出て、私は動揺する…どうしてここでその名が。


ミヤコ「えっと…キメラというのは？」

ニニム「キメラは、かつて人魔大戦で魔族軍のボスをしていた魔族のことよ。」

ロア「…！　あの戦争の…。……その唸る獣だというのを確定…とあなた方が断言するということは、ギルドはそれだけの情報を持っているということですね？」

人魔大戦の話が出て、アズたちは真剣な表情に…3人にとっても、あの戦争は大きなものだったからだろう。


エレイン「ええ…最近ギルドや二大騎士団が忙しいのは、その唸る獣が関連しているからでもあるわ。

その唸る獣が初めて確認されたのが、少し前に起こった『王国騎士団中央書庫放火事件』の時です。」

コトリ(…！　それって確かリュネの…。)

アネット「……。」

シャロン「放火とされていますが、あの後の詳しい調査で、火事となったのは『戦闘』のせいだとわかりました。

シオン皇女殿下によると……ギランバルト派の騎士、唸る獣『3体』…そして、そこに居合わせ巻き込まれたリュネメイア=レムグラスト……の3勢力の交戦によって引き起こされたもののようです。

まあギランバルト派は、リュネメイアも魔族側だとしています…彼女がなぜその場にいたのか、その目的も不明ですから仕方ないですが…。」

リュネが王国騎士に追われていたのは、そういう理由だったみたいで…それとは別に、聞き捨てならない言葉があった。


コトリ「って…ちょっと待ってください…唸る獣って3体もいるんですか！？

(う、嘘でしょ…キメラみたいなのがそんなに…しかも王国内に…冗談じゃない…！)」

エレイン「キメラと同種の可能性があると、うちのギルドマスターと皇女殿下の見解ではあるわ…最初にも言った通り、酷似した点がいくつも見られたそうよ。

実際のところは不明だけど、戦闘力もキメラのそれに近いものがあるのが予想される。あのリュネメイアが撃ち逃したとなると、同じ三英雄…アイリス=レイフィールドやキール=ゴールドウィン…クラスの実力者じゃないと太刀打ちできないと思われるわ。」

シャロン「リュネメイアが遭遇した3体のうち、逃げた1体の唸る獣が旧市街地区に入り込んだという情報を得て、私とエレインお嬢さまは張り込み捜査をしていたのです。」

アズ「なるほど、そういうことですか…あの裏通りの先は確か、旧市街地区でしたね。」

放火事件の真犯人…大戦によってできた旧市街地区…そこに元凶の1体がいる…唸る獣の対応でギルドや騎士団は忙しい…それが今の話によって伝わってきた。