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第8節 フィリア騎士学園本校地下・世界の深奥編

第272話 先輩と同級生②

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学園をあとにし、見回りのため夜の歓楽街地区へとやってきていた私たち。


コトリ「しかし、まさかこんな形で再会するなんて…強かったんだね、3人とも。」

「これでも私たち、成績はいいんですよー。コトリさんにセイバーさんと合わせて、新入生トップファイブなのです。

まあ最近はモニカさんの猛追で、その立場も危うくなっていますが。」

コトリ(そうなんだ…まったく知らなかった。)

正直、絡んできてたセイバー以外まともに名前も覚えてなかった…あの頃は自分のことで精一杯で、他人に興味がなかったからね…

今でも初対面の人とかだと、話すの緊張したり苦手だったりする…あとセイバーやモニカがいなかったら、私ぼっちだったりする。


「あ、そういえばちゃんとした自己紹介がまだだったね…私はアズ=ランスターです。」

「私はロア=ランスター。」

「ミヤコ=ランスターだよー。」

コトリ「あれ…姓が一緒だけど、3人は姉妹だったの?」

ライトグリーンのツインテールがアズ…黒髪ポニーテールでリボンをしているのがミヤコ…茶色ポニーテールがロアだそうだ。

気になったことがあり、私が尋ねると。


ミヤコ「うん、姉妹だよー。でも、血は繋がってはないんだけどねー。」

コトリ「え…血が繋がってない?」

アズ「私たち戦争孤児なんだ…それで、孤児院で仲がよかったから、今の両親が3人まとめて引き取ってくれて、血は繋がってないけど三姉妹になったんです。」

ロア「勝利国ではありますが…大戦の影響で、王国は戦争孤児が多いんですよ。」

コトリ(戦争孤児…私がいた教会の孤児院でも、アメリアを含めて何人かいたけど…やっぱりあの戦争はアイリス教官のことも含めて、いろんなものを奪っていったんだ…。)

アイリス教官たちだけではなく、ここにも大戦によって色々奪われた人がいることを知り…私がそう思考している間にも、先輩たちと3人は話を続けていた。


アネット「なるほどねぇ…それじゃあ3人が騎士になろうとしているのことにも、それが関係しているのかしらぁ?」

ミヤコ「うん、そんなところだねー…あの大戦の時はまだ子供で力もなくどうしようもなかったけど、今度はちゃんと今の大切なものを自分たちの力で守ろうって3人で誓ってるんだ。」

ロア「そのために私たちは騎士を目指してるんです…この平和もいつどうなるかなんて、誰にもわからないですからね…。」

アズ「そういえば先輩たちのお母さんは『義母』って聞いてますが、もしかして先輩たちも大戦孤児ですか?」

ニニム「私たちは少し違うかな。

私については戦争孤児ではあるけど人魔大戦ではなく…それより『昔』魔族によって滅ぼされた、今は亡き国出身の孤児よ。

アネットはこの王国出身で…孤児となったのは魔族が関係してるけど、王国貴族の利権争いが1番の原因ね。」

大戦より昔というのが気になる…見た感じ若いけど、いったい先輩たち何歳なんだろう?

ニニム先輩は途中まで話すと、ちらりとアネット先輩を見て…それを受けて、アネット先輩が続きを答えていく。


アネット「あまり詳しいことについては話せないのだけどねぇ…まあ話せる範囲だと、私の生家は国王にも影響力をもつ高位貴族だったの…もう滅んでしまってるけどね…。

私は元貴族のお嬢さまだったわ…それで、下には妹が2人いたの。ふふ…1番下の妹は、高飛車だったけどすっごく甘えん坊だったわね。

……1番下の妹は生存が確認できてるけど、もう1人の妹は不明…名乗れない家名というのは、今は滅んでしまってるけど『未だ王国に影響力』があるからよ。」

コトリ(貴族の利権争い…そこに魔族がどう関係してるのか分からないけど、そんなくだらないことで人の命を奪うだなんて…。)

アネット先輩が懐かしむような表情を見せ…アネット先輩が、その妹さんたちのことを本当に大事に想っていたのが伝わってきた。

少し重い空気のなか、それを切り裂く声が…。


ミコト「あー! 暗い話はおしまーい! てかこんなに女子がいるんだから、もっと明るい話しようよー! 恋バナとかがいーなー!」

コトリ「……なんで恋バナ…?」

ミヤコ「なんでって、人の恋バナは私たちの大好物だからだよー♪ 誰かが幸せにしてるところを見てると、私たちの心まで潤ってあったかくなるからねー♪」

アズ「最初はエリシア教官とマリスミゼル学園長しか、心潤う観察対象はいないのかなって思ってたんだけど…今はコトリさんとアイリス教官、セイバーさんとモニカさん、そしてアネット先輩とニニム先輩も最高に熱いかな。」

ロア「特にコトリさんとアイリス教官は、クレープ屋でのデートで見た…人前なのに2人の空間を作ってのちゅーは最高でしたね♪」

コトリ「っ…// そ、そのことは忘れて…//」

アネット「あらあら、私たちもかしらぁ。」

ニニム「てか女の子ばっかりね…まあ、アネットとの仲は否定しないけど。」

コトリ「って、えっ!?」

アズたち「私たちがこうなったのは、今の両親のせいですよ…だって私たちの両親2人とも、女性ですから。」

コトリ「!?」

あの時のことをからかわれ、私が赤くなってる横で…ニニム先輩のとんでも発言が出て、私は驚く…先輩たちもそういう関係だったの!? ってかアズたちもさらっと驚き発言してない!?


そんな緊張感ない見回りで、歓楽街地区の表通りが終わり…次は人気がない裏通りに入って…そして中間辺りまで行った時、その現象は起きた。


ニニム「…! アネット!」

アネット「……どうやらサキュバスの件とは違う、また別の異変…それも、よりたちの悪い『怪異』に出くわしたようねぇ。」

アズたち「えっ?」

コトリ「っ…あれは…月…なの…?」

辺りにうっすらと黒い霧がたち込め、重たい空気が流れ…そして空には、怪異を起こすとされる『赤い月』が現れていた……。
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