騎士学生と教官の百合物語

コマドリ

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第8節 フィリア騎士学園本校地下・世界の深奥編

第255話 モニカの決意

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モニカ「フレイ教官! 今の訓練内容をさらに倍にしてください!」

フレイ「ふぅ…またですか? これ以上は身体に負担をかけ過ぎるので、許可できません。」

モニカ「私はなにをやっても全然できないので、できない分他の人より頑張らないと…だからお願いします!」

学園中庭で、私はフレイ教官と話をしている。


フレイ「……この際包み隠さずに言いましょう…あなたの『潜在的』な魔力量の高さは、コトリさんという『例外』を除けば、全生徒の中でも飛び抜けています…

ですが『王国騎士団が一般基準としている、剣や魔法の戦闘スタイル』では、はっきり言ってあなたはこれ以上強くはなれません、合ってないので。

幸いあなたは知識の吸収力…そしてそれを生かせる頭脳はあるので、そちらを生かし、前線に出ない王国お抱えの軍師…後方参謀あたりをおすすめしますよ。」

モニカ「それじゃあだめなんですっ!」

フレイ教官の提案を受け入れられなく、私は積もった想いを言葉にして紡いでいく。


モニカ「前までなら『私弱いので』という少し言い訳のような言葉で、済ませることもある程度は出来てました…

でももう誤魔化しきれません…あんな想いは2度とごめんなんです…みんな危険な目にあっていたのに、1人安全なところで待ってただけなんて、もう嫌なんです…!

私はこの手で、コトリちゃんやセイバーちゃんと一緒に戦って…この手で大切なものを守りたいんです…!」

フレイ「……くじけぬ魂と意思…そして、強い想いはもっているようですね。」

黒髪ボサボサで瞳まで隠れるぐらい伸ばし、丸眼鏡をかけたフレイ教官は…いつものやる気なさの口調が消え、丸眼鏡をくいっと指で持ち上げながら話し始める。


フレイ「これなら『資格』はありますね…モニカさん、強くなりたいというのなら、マリスミゼル学園長に弟子入りし『植物魔法』と『彼女の戦い方』を教わりなさい。」

モニカ「えっ…? わ、私が…マリスミゼル学園長の弟子に…ですか…?」

フレイ「そうです。言いましたよね、騎士団基準はあなたには合ってませんと…ですが何も『騎士団基準の戦い方をする必要はない』のですよ…学園長の戦い方は、あなたには合っていて『必ず強く』なれます。」

『きっと』ではなく『必ず』と断言したことには少し疑問がある…けど、それよりも私が言いたいことがあった。


モニカ「っ…わ、私にそんな強くなる道があるのなら、なんでもっと早くに教えてくれなかったんですか…!」

フレイ「自分の頭で何も考えもせずに、人にただ流されたまま、その示された道に進んでもあまりいい事はありません…強い意思や想いのない人は何をやっても身につきません、逃げ出すか全部が中途半端になって、全く使い物にはなりませんからね…

はっきり言って『時間の無駄』なので、私が最低限できるのは…その人たちが『できるだけ安全で役立てくれる場所』に居れるよう、その道を示すだけです。

……というかです、伸びないものをがらむしゃに繰り返すより、もっと効率を考えて、自分に合った戦闘スタイルを探す事に、自分から意識をシフトしてほしかったです…それこそ『いつもセイバーを目で追って』、セイバーを間近で見ているのですから、自分でそれに気づいてもらいたかったですね。」


モニカ「セイバーちゃん…? ……あっ…!」

フレイ「気づきましたか…あなたは頑張るという言葉をいい意味で捉え過ぎです。まあ、つまずき、周りみたいに出来なくても、投げ出さずにやれる…それは『今の』あなたの美徳ですがね。

モニカさん、覚えておきなさい…よくあなたの頑張りが足りないから、とか言う人がいますが、あれはクソくらえです…その人の適性を見抜けない者が、その人に合ったやり方を示すことができない者が、無能なのです。

私は効率厨なので、時間のロスにならないように、あなたの『土台』となるものを普段の課題で仕込んでいましたから、安心なさい。

すでに王国騎士団で確立され、用意された戦闘スタイルだけが答えではありません…眼を外に向ければ、視野が広くなり、見えてくるものもあります…

これからはもっと柔軟な考え方をしなさい、それが出来ればあなたは…まあ日常時はともかく、戦闘戦略時においてのあなたは『マリスミゼル学園長にも匹敵する情報処理能力と、魔法の才能がある』のですから。」

フレイ教官に言われてから、セイバーちゃんの戦い方が、既存の王国騎士団のそれとは違うことに気づく…剣では劣等生と周りからは言われているが、自分の意思とできる戦い方で、立ち向かっている彼女の姿が思い出された…

『眩しくて、勇気をもらえて、憧れで、守ってあげたい』背中のことを……。
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