騎士学生と教官の百合物語

コマドリ

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第7節 過去編 人魔大戦 キールとマサキ

第245話 信念を示す者たちよ⑥

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人魔大戦の行方を左右する六つの戦い…その六つ目である、オーレリアたちと悪魔アムドゥシアス=ミラージュの戦いが、王宮の最深部で繰り広げられていた。


オーレリア「っ…!」

悪魔を守護するかのように大量の鎌が周りを浮遊し…その無数の鎌は独りでに動き、勢いよく敵たるオーレリアたちに襲い掛かる。

強力な魔力を帯びて回転しながら襲いくる鎌を…3人は背を互いに預けつつ、鎌を撃ち落とし続け、けたたましい金属音が鳴り響く。


悪魔が手をイーリスにかざすと、悪魔の力なのか…イーリスの身体が勢いよく、悪魔の方へと引き寄せられ宙を舞う。

イーリス「くっ…!」

引き寄せられた先には、鎌が待ち構えていて…イーリスは空中で身体を回転させて、手に持つ双刃剣で何とかその攻撃を凌ぐ。


黒騎士「七翼流剣術 風の型 魔神・疾風」

黒騎士は闇の風の力を加えた踏み込みで、地面や壁を蹴り、鎌を躱し切り裂きながら悪魔へと迫り。


黒騎士「七翼流 火の型 滅・爆炎剣」

「……。」

黒騎士「…!?」

黒騎士は黒き焔を纏った魔法剣を繰り出すが…しかし、悪魔から放たれた謎の衝撃波で攻撃を防がれ、そのまま黒騎士は吹き飛ばされ、壁へと叩きつけられる。


オーレリア「黒騎士殿! ぐぅ…!」

悪魔はオーレリアの方へと手をかざすと、オーレリアも悪魔のところへと引っ張られる…地面に剣を突き立てて踏ん張り、何とか引き寄せられないように堪え…それにより床が軋む。


黒騎士「オーレリアさん、そのまま耐えていてください…イーリス!

漆黒なる闇よ…この地に集まりて…世界を拒む檻となれっーーベルド・ニュー・グラビティ」

イーリス「はぁああ! 重力玉!」

オーレリアに意識がいっている間に、黒騎士は詠唱し魔法を放ち…作り出されたドス黒い小さな球体は、桁外れな重力場を生み出し、鎌の動きを鈍らせる…

その隙にイーリスは自身の掌の中に…超高密度で乱回転する重力の玉が作り出され、その重力の玉を鎌にぶつけて砕いていく。


黒騎士「右翼左翼四連!」

イーリス「カオスエッジ!」

黒騎士は両手に魔力の剣を4本作り出し、それを回転させながら投げる…剣に組み込まれた魔法術式により、4本の剣が転移される…

場所は悪魔の前方後方の四方向からで、回避不可能…必中のとっておき技が放たれる。

イーリスは自身の重力を操作し、回転する速度を高速化させ…闇魔力纏いし双刃剣の薙ぎ払いが繰り出される。


黒騎士&イーリス「っ…!?」

しかし、悪魔の全身を包むように円状の闇のバリアが作り出され…魔術文字が浮かび上がっている障壁で、黒騎士たちの攻撃を無効化した。


「……。」

黒騎士&イーリス「ダークシールド!」

再び放たれた悪魔の衝撃波を…二重に重ねた闇の盾で防ぐが、衝撃により吹き飛ばされる形で黒騎士とイーリスは、オーレリアのところへと戻ってくる。


オーレリア「お二人とも、ご無事でよかった。しかし…悪魔が使うあの力はいったい…。」

イーリス「おそらくは、引力と斥力を自在に操っているんじゃないかな。斥力で弾き飛ばし、引力で引き寄せてる…感じかな。

あの障壁については…悪魔がこの世の全てを否定し、この世の全てを拒む絶対障壁だね…物理攻撃も魔法攻撃も無効化してしまって、突破するのは困難な奥義だよ。」

難攻不落の悪魔から…砕かれた鎌に代わる、新たなる鎌が創り出され…補充された無数の鎌が再び襲いくる。

黒騎士「七翼流 氷の型 滅・氷雪斬」

迫る無数の鎌を黒騎士は、黒き冷気纏う剣で弾く……。


……黒騎士の戦い方を見ていたオーレリアは気付く…彼女は『七翼流剣術』『教会騎士の剣術』それから『王国騎士の剣術』の全てを収めていることに…

私はかじる程度だが、七翼流と王国騎士の剣術の二つ…レインでも七翼流と教会騎士の剣術の二つだけで…

その三つの剣術を同時に収めている人物など、今のこの世界にはいないはず…そして、その全てを絶妙に『複合させ自分の型へと昇華』させている…明らかに理に至った達人の域だ…

いったい…この人は何者なんだ……。


イーリス「……鎌に障壁…そして今奴が放とうとしている魔法までなら、魔神さんと黒騎士の2人で突破はできる…でも最後の一撃までは届かない。

だから、オーレリア…あの悪魔へのとどめの一撃は頼めるかな?」

障壁に守られた悪魔は両手に闇の魔力を集約し、異界化した王の間を吹き飛ばすほどの威力を溜めていて…オーレリアは眠るキールを見つめたあと、覚悟を決めた表情でイーリスへと振り向き。


オーレリア「私が、この手で『未来』を切り開いてみせます。」

イーリス「んっ…なら、任せた。黒騎士、やるよ! 合わせて!」

黒騎士「……オーレリアさん…あなたなら…いや…あなただからこそ、キールさんを必ず取り戻せるんです。

だから、その行く手を阻む壁を越え道を突き進むためのお手伝い…私とイーリスがします。」

黒騎士とイーリス…そしてオーレリアは未来を掴むために駆ける。


「……滅びよ」

異界化した王の間すら吹き飛ばすほどの闇の波動が放たれ…あらゆるもの闇に染め上げ、あとには一条の光すら残さなかった。


黒騎士&イーリス「滅びるのはそっちだ…重力玉+重力玉っーー魔神の月」

黒騎士とイーリスが作り出した2つの重力玉が混じり合い…究極の重力魔法…全てを飲み込むブラックホールが創り出される。

その放たれた漆黒の球体は、襲いくる無数の鎌を全て飲み込み…闇の波動と衝突し、凄まじい爆発と共に相殺し合った。


黒き爆風の中から黒騎士とイーリスが現れ、超高速でX状に交差し合った。

黒騎士「黒翼っーー」

イーリス「十字斬りっ!!」

七翼流の奥義『黒翼剣』とイーリスの双刃剣の奥義『ブラッディ・クロス』の合わせ技が放たれ…悪魔の障壁を切り裂いた。


「……障壁はすぐに復活する…だから、全て無駄なのだ」

全ての力を一点に集約した斥力の衝撃波が、駆けるオーレリアを飲み込む。


オーレリア「……キール隊長を取り戻せれば、私の身はどうなってもいいと思っていた…私の身と引き換えでも助けたいと思った…

だが…それは間違いだったことに気付けた…それでは残されたキール隊長を本当の意味で救えてはいない…だって残された方はたまらなく心が苦しいんだ…今の私のようにな…。

……私は絶対に生き残り…私はキール隊長と2人一緒に…絶対に幸せになる! だから! こんなところで死んでたまるかぁあああっ!!」

「なん…だとっーーー」

オーレリア「『10倍』重力剣っ!!」

シリウスの姿から学んだオーレリアは、決して折れず消えぬ『灯火』を心に灯し…キールへの想いの一太刀は、無明を切り裂く閃火と化した。
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