245 / 365
第7節 過去編 人魔大戦 キールとマサキ
第244話 信念を示す者たちよ⑤
しおりを挟む
人魔大戦の行方を左右する六つの戦い…その五つ目である、マサキたちとヴァネッサの戦いが、王宮の中間にある広い間で繰り広げられていた。
『魔を極めし』者同士がぶつかり合う壮絶な戦闘は轟音と、強烈な魔力のぶつかり合い。闇の魔力同士が相手を喰らおうとせめぎ合う。
オフェリア「レグルス! 炎の壁!」
レグルス「おん!」
ヴァネッサは、詠唱なしで最上位の呪文並みの威力を誇る強力な爆炎を放ち、マサキとオフェリアの視界を飲み込む。
レグルスによる紅蓮の炎をぶつけ、その爆炎を相殺してみせて…視界が晴れると、そこからマサキが魔法を放とうとしているのが見えた。
マサキ「『氷雪花豪大葬』」
いつもの指を弾く動作すらなしに、無詠唱、無動作で強力な凍結魔術を繰り出し…たちまちヴァネッサを中心にして、大きな花が咲いたかのような氷柱が伸び氷つかせる。
古代上位語魔法をその身に受けたヴァネッサ…だがしかし、それは次の瞬間には直ぐ様、内部から砕かれ、氷のかけらが3人の間に流れ、折れた柱が派手な音をたてて水煙を上げる。
ヴァネッサ「それじゃあ今の私は止められやしないよ!」
マサキ「ちっ…『アルズ99式絶対魔法防護陣アイギスっ』」
ヴァネッサは、強烈な闇の魔力を身体にたぎらせ、マサキたちに向かって前進しながら、強烈な爆炎の弾丸を放つ。
その重たい一撃を…マサキは左腕を突き出し、何重もの防御魔法陣を展開し、爆炎の弾丸を防いでみせ…そのマサキの背後から魔力を両手に溜めたオフェリアが姿を見せ、それをヴァネッサに向けて放った。
オフェリア「フェンリル、ブーストしなさい! くらいなさいっーー天蒼の氷結矢!」
ヴァネッサ「ほぅ…やるじゃないか、さすが馬鹿弟子のパートナーだ!」
オフェリア「それは、どうも! マサキ! このまま畳みかけるわよ!」
マサキ「ああ、わかった!」
爆炎の壁を展開して、ヴァネッサは防御体勢をとったが…フェンリルによって強化された氷結の魔力矢は、その防御を凍らせ貫通し、ヴァネッサの左肩にダメージを与える。
マサキは、雷撃を放ち広範囲殲滅攻撃で全体を覆いながら牽制しつつ…オフェリアは拳ほどの大きさの氷のつぶてを雨のように降らせ、それにより地面に大穴が次々と空き…まるで天候を支配しているかのような、複合魔法がヴァネッサを襲う。
ヴァネッサ「いいぞ! 実にいい! 相性抜群のコンビネーションだ! だがその程度では、狂化された私にはまだまだ届かないぞ!」
オフェリア「なっ…!?」
マサキ「さすが先生だ…先代呪怨の魔具の継承者の名は伊達じゃない…だが俺たちはその壁を超えてみせる! やるぞ、オフェリア!」
オフェリア「っ…ええ! マサキと私たちの力を見せてあげるわ!」
フェンリル&レグルス「おぉん!」
ヴァネッサは爆炎に風魔法を合わせ、燃え盛る爆風でマサキたちの魔法を相殺してみせ…そのままノーモーションで爆炎球をオフェリアに放ち、それを庇いに入ったマサキは双刃剣で切り裂き防ぎ。
……雷鳴に暴風、氷塊、強焔、ありとあらゆる現象が目の前に轟く熾烈な連続した魔法合戦が続き…
大きな轟音を立てて3つの強大な魔力塊が何度も連続してぶつかり合う。闇と闇…交わるたび途方もない威力が、衝撃波となり周囲の壁を粉々に砕いていき…
王宮が異界化してなければ、もはや王宮が跡形もないほどの激しい戦いで。
2体の精霊獣がヴァネッサの左右に向かって、炎と氷のブレスを放ち逃げ場をなくしたところに…ヴァネッサの上をとったマサキが渾身の力を込め、両の手のひらをパン!と打ち鳴らすと『多重魔法陣』が展開される。
マサキ「『ワルズ86式多重魔法陣術 雪下紅梅 九段録』」
巨大な氷塊が一瞬にして生み出され、ヴァネッサの頭上から轟音を立てて落下する。
ヴァネッサ「馬鹿弟子が持つ最高の決め技…だがそれでも、私の爆炎の前では無意味よ!」
ヴァネッサはジャンプして精霊獣の攻撃を躱し…両手に全力の魔力を集約し、超巨大な爆炎球を作り出し…その灼熱の炎が、マサキの決め技を相殺してみせる。
マサキ「ふっ…残念だが、本命はあっちだ。」
ヴァネッサ「なに…!?」
オフェリア「魔眼・照準固定ーーー我が血濡れの牙をくらいなさいっ!」
魔眼の空間固定魔法で、ヴァネッサの動きを封じ…オフェリアが構えた右腕からまるで血のような真紅色の魔力が、極大の力が溢れ出し…彼女から放たれた、高まった魔力の奔流は真紅の手となってヴァネッサに直撃した。
ヴァネッサ「がっ! これ…は…!?」
オフェリア「今ある、あなたの魔力などは食らってやったわ…これで終わりよ。」
ヴァネッサに直撃した血濡れた手は、彼女の生命エネルギーや魔力を吸い上げ…そして、そのまま彼女を貫き上空へ行き炸裂すると、真紅の雨となってオフェリアとマサキへ降り注ぐ…
その血の雨によりオフェリアやマサキは、ヴァネッサから奪い取った魔力などで回復し、逆にヴァネッサはほぼ魔力などを失った。
ヴァネッサ「なる…ほど…真祖はこうやって、血や生気を吸血することもできるのか…ためになったぞ…。
その授業料として、魔族をも塗り潰す『闇の力』を見せてやろう…!」
オフェリア「なっ…!?」
マサキ「……俺がウルフヘイムの時に使用したのより、さらに深淵の領域に達したか…『呪怨の魔具』と完全なる一体化をすることでな。」
爆発的魔力がヴァネッサの身体に宿り地面が強力な圧力により派手な音を立てて盛り下がる。
さらに魔族文字が身体中に浮かび上がり、それはヴァネッサの全身を漆黒に染め上げ…身体は巨大化し、『呪怨の魔具』と融合したヴァネッサは『異形の怪物』と化した。
マサキ「これが『呪怨の魔具』を手にした者が、行き着く先か。」
ヴァネッサ「ああ、そうさ…これが私が元いた…並行世界のお前が成り果てる姿だ。」
その話を隣で聞いたオフェリアは、マサキの手をとる。
オフェリア「この私が、マサキをそんな風には絶対にさせないわ。」
マサキ「……オフェリア…。」
手と手を重ねて、ぎゅっと力強く握る…マサキを絶対に離さないという、オフェリアの強い想いが感じ取れた。
ヴァネッサ「くく…くははは! 言うじゃないか…ならば、私の最後の力を打ち破ってみせよ! それにより、その想いを証明してみせるがいいっ!
ーーー『生命の樹』」
オフェリア&マサキ「っ…!?」
ヴァネッサの身体を白色の魔力…治癒魔法と同じ魔力光が包み、彼女の身体が巨大な白色の樹となって聳える…
闇の魔力性質を治癒魔法のものに極限まで近づけたそれは、白き枝を複数に伸ばしてマサキたちを襲う。
白き枝を強力な魔法などで迎撃を試みるマサキたちだったが、その白き枝に貫かれた魔法は掻き消される…魔力を吸い取られるように。
オフェリア「何よそれ! まったく魔法が通じないじゃない! それにこの光…前にマサキが見せたのと同じじゃ…。」
ヴァネッサ「そうさ、治癒魔法のひとつだ…ただし、敵から生命エネルギーを吸い取り、使用者を回復する…攻撃型の治癒魔法だがな。」
かつてマサキがオフェリアを回復させた術と原理は似ていて、マサキが辿り着く極地のひとつでもあった。
その術は、はるか昔に存在したとされる神代の力にも匹敵し…
生命の樹から伸びる白き枝は、マサキたちを追いかけて広がって…逃げ場を埋め尽くしていき、マサキたちは追い込まれていく。
ヴァネッサ「……マサキ…お前も気づいているとは思うが、同じ『呪怨の魔具』を持つお前なら、生命の樹と私を滅ぼすことができるぞ…私と同じ異形化をして、お前が持つ全てをぶつけて相打つ形でだがな。
やればお前は消えるが、そこの真祖を守ることはできる…さて、どうする?」
マサキ「……。」
ヴァネッサの問いに…一度オフェリアの方を見てから、彼女の方に再び振り向いたマサキは穏やかに微笑みながら答えて。
マサキ「それはできない。確かに以前の俺なら、1人で全てを背負い、自分を犠牲にしてオフェリアや他の大切な人たちを救おうとしていただろう…だがそれでは、俺のことを想い、俺のために泣いてくれる人たちを本当の意味で救うことはできない…そのことに俺はやっと気づけた。
俺は…私は、幸せにならなくちゃいけないんだ。大切な人たちに幸せになってもらうためには、私がそこにいて、まず私が幸せにならなくちゃダメなんだ。
それを私1人で叶えることは難しいのはわかっている…だけど、オフェリアやアイリスたち…それにこれから先出会う人たちと力を合わせて、その人たちを信じて共に進めば…きっと、いや絶対に光ある未来を掴めると信じてる。
……だからオフェリア…お前の力を私に貸してくれ…一緒に未来を信じて、私と共に前に進んでくれ。」
オフェリア「……ええ! 共に歩むわよ! そして必ず全員で、私たちの在るべき未来を掴みとるわよっ!」
マサキはきっぱりと拒絶する…一人で全てを背負うのではなく、悪意の闇が立ち塞がっても自分と大切な人たち、そしてまだ見ぬ仲間たちを信じて前へ進むという…並行世界や今までの自分とは違う道を選ぶ覚悟を決め。
オフェリアは想いに呼応し、右目の『魔眼・固有結界 宵闇に潜む緋い月影』を発動し…左目も緋色に染まり、真祖の力を全て覚醒させた。
オフェリア「漆黒の闇を裂き、天地を焼き尽くす真紅の月よ! 万物を睥睨し、神域より降り注ぎ終焉をもたらせ! ーーー終極魔法・紅月っ!!」
レグルスの力も借りて、空を覆い尽くす『真紅の多重魔法陣』を展開して…巨大な真紅の月を創り出し、全てを燃やし尽くす業火で生命の樹を焼き滅ぼして。
灰となった生命の樹からヴァネッサが現れ、マサキは地面を蹴り、双刃剣を手に彼女へと駆ける…それをヴァネッサは向かい打つ。
ヴァネッサ「ーーーこれが『生命の樹』のもうひとつの能力…吸収し蓄積した魔力を放出する…そのための門だ。
万物創世の光を受けよ…『生命の門 開門』」
ヴァネッサとマサキの間に『白き門』が創り出され…その門が開き、門から極大な光の魔力が放たれた。
マサキ「フェンリル! 力を私に!」
フェンリル「おぉおんっ!」
マサキ「くらえ! 終焉の十字ーーーブラッディ・クロスっ!!」
フェンリルの全ての力を貰い受け、イーリスから繋いでもらった力を極限まで高めて…彼女が手にした力は絆となり、己が行く道を…万物創世の光を切り開いた。
極大な闇の魔力と超高速斬撃によって、繰り出された双刃剣の奥義により…X状の軌跡が煌めいた。
ヴァネッサ「よくやった…さすがは我が弟子だ……マサキ…お前はもう、私がいなくても大丈夫だ…ふふ…達者でな…。」
マサキ「……あなたがいたからこそ、今の私があります…だからその教えと想いを胸に、私は大切な仲間たちと一緒に歩んで行きます…今までありがとうございました…さようなら、もう1人の先生…。」
異形の姿から元の姿に戻ったヴァネッサは、優しく穏やかな表情を見せ…マサキが出した答えを嬉しく思いながら、光の粒子となってマサキたちに見送られながら消えた……。
『魔を極めし』者同士がぶつかり合う壮絶な戦闘は轟音と、強烈な魔力のぶつかり合い。闇の魔力同士が相手を喰らおうとせめぎ合う。
オフェリア「レグルス! 炎の壁!」
レグルス「おん!」
ヴァネッサは、詠唱なしで最上位の呪文並みの威力を誇る強力な爆炎を放ち、マサキとオフェリアの視界を飲み込む。
レグルスによる紅蓮の炎をぶつけ、その爆炎を相殺してみせて…視界が晴れると、そこからマサキが魔法を放とうとしているのが見えた。
マサキ「『氷雪花豪大葬』」
いつもの指を弾く動作すらなしに、無詠唱、無動作で強力な凍結魔術を繰り出し…たちまちヴァネッサを中心にして、大きな花が咲いたかのような氷柱が伸び氷つかせる。
古代上位語魔法をその身に受けたヴァネッサ…だがしかし、それは次の瞬間には直ぐ様、内部から砕かれ、氷のかけらが3人の間に流れ、折れた柱が派手な音をたてて水煙を上げる。
ヴァネッサ「それじゃあ今の私は止められやしないよ!」
マサキ「ちっ…『アルズ99式絶対魔法防護陣アイギスっ』」
ヴァネッサは、強烈な闇の魔力を身体にたぎらせ、マサキたちに向かって前進しながら、強烈な爆炎の弾丸を放つ。
その重たい一撃を…マサキは左腕を突き出し、何重もの防御魔法陣を展開し、爆炎の弾丸を防いでみせ…そのマサキの背後から魔力を両手に溜めたオフェリアが姿を見せ、それをヴァネッサに向けて放った。
オフェリア「フェンリル、ブーストしなさい! くらいなさいっーー天蒼の氷結矢!」
ヴァネッサ「ほぅ…やるじゃないか、さすが馬鹿弟子のパートナーだ!」
オフェリア「それは、どうも! マサキ! このまま畳みかけるわよ!」
マサキ「ああ、わかった!」
爆炎の壁を展開して、ヴァネッサは防御体勢をとったが…フェンリルによって強化された氷結の魔力矢は、その防御を凍らせ貫通し、ヴァネッサの左肩にダメージを与える。
マサキは、雷撃を放ち広範囲殲滅攻撃で全体を覆いながら牽制しつつ…オフェリアは拳ほどの大きさの氷のつぶてを雨のように降らせ、それにより地面に大穴が次々と空き…まるで天候を支配しているかのような、複合魔法がヴァネッサを襲う。
ヴァネッサ「いいぞ! 実にいい! 相性抜群のコンビネーションだ! だがその程度では、狂化された私にはまだまだ届かないぞ!」
オフェリア「なっ…!?」
マサキ「さすが先生だ…先代呪怨の魔具の継承者の名は伊達じゃない…だが俺たちはその壁を超えてみせる! やるぞ、オフェリア!」
オフェリア「っ…ええ! マサキと私たちの力を見せてあげるわ!」
フェンリル&レグルス「おぉん!」
ヴァネッサは爆炎に風魔法を合わせ、燃え盛る爆風でマサキたちの魔法を相殺してみせ…そのままノーモーションで爆炎球をオフェリアに放ち、それを庇いに入ったマサキは双刃剣で切り裂き防ぎ。
……雷鳴に暴風、氷塊、強焔、ありとあらゆる現象が目の前に轟く熾烈な連続した魔法合戦が続き…
大きな轟音を立てて3つの強大な魔力塊が何度も連続してぶつかり合う。闇と闇…交わるたび途方もない威力が、衝撃波となり周囲の壁を粉々に砕いていき…
王宮が異界化してなければ、もはや王宮が跡形もないほどの激しい戦いで。
2体の精霊獣がヴァネッサの左右に向かって、炎と氷のブレスを放ち逃げ場をなくしたところに…ヴァネッサの上をとったマサキが渾身の力を込め、両の手のひらをパン!と打ち鳴らすと『多重魔法陣』が展開される。
マサキ「『ワルズ86式多重魔法陣術 雪下紅梅 九段録』」
巨大な氷塊が一瞬にして生み出され、ヴァネッサの頭上から轟音を立てて落下する。
ヴァネッサ「馬鹿弟子が持つ最高の決め技…だがそれでも、私の爆炎の前では無意味よ!」
ヴァネッサはジャンプして精霊獣の攻撃を躱し…両手に全力の魔力を集約し、超巨大な爆炎球を作り出し…その灼熱の炎が、マサキの決め技を相殺してみせる。
マサキ「ふっ…残念だが、本命はあっちだ。」
ヴァネッサ「なに…!?」
オフェリア「魔眼・照準固定ーーー我が血濡れの牙をくらいなさいっ!」
魔眼の空間固定魔法で、ヴァネッサの動きを封じ…オフェリアが構えた右腕からまるで血のような真紅色の魔力が、極大の力が溢れ出し…彼女から放たれた、高まった魔力の奔流は真紅の手となってヴァネッサに直撃した。
ヴァネッサ「がっ! これ…は…!?」
オフェリア「今ある、あなたの魔力などは食らってやったわ…これで終わりよ。」
ヴァネッサに直撃した血濡れた手は、彼女の生命エネルギーや魔力を吸い上げ…そして、そのまま彼女を貫き上空へ行き炸裂すると、真紅の雨となってオフェリアとマサキへ降り注ぐ…
その血の雨によりオフェリアやマサキは、ヴァネッサから奪い取った魔力などで回復し、逆にヴァネッサはほぼ魔力などを失った。
ヴァネッサ「なる…ほど…真祖はこうやって、血や生気を吸血することもできるのか…ためになったぞ…。
その授業料として、魔族をも塗り潰す『闇の力』を見せてやろう…!」
オフェリア「なっ…!?」
マサキ「……俺がウルフヘイムの時に使用したのより、さらに深淵の領域に達したか…『呪怨の魔具』と完全なる一体化をすることでな。」
爆発的魔力がヴァネッサの身体に宿り地面が強力な圧力により派手な音を立てて盛り下がる。
さらに魔族文字が身体中に浮かび上がり、それはヴァネッサの全身を漆黒に染め上げ…身体は巨大化し、『呪怨の魔具』と融合したヴァネッサは『異形の怪物』と化した。
マサキ「これが『呪怨の魔具』を手にした者が、行き着く先か。」
ヴァネッサ「ああ、そうさ…これが私が元いた…並行世界のお前が成り果てる姿だ。」
その話を隣で聞いたオフェリアは、マサキの手をとる。
オフェリア「この私が、マサキをそんな風には絶対にさせないわ。」
マサキ「……オフェリア…。」
手と手を重ねて、ぎゅっと力強く握る…マサキを絶対に離さないという、オフェリアの強い想いが感じ取れた。
ヴァネッサ「くく…くははは! 言うじゃないか…ならば、私の最後の力を打ち破ってみせよ! それにより、その想いを証明してみせるがいいっ!
ーーー『生命の樹』」
オフェリア&マサキ「っ…!?」
ヴァネッサの身体を白色の魔力…治癒魔法と同じ魔力光が包み、彼女の身体が巨大な白色の樹となって聳える…
闇の魔力性質を治癒魔法のものに極限まで近づけたそれは、白き枝を複数に伸ばしてマサキたちを襲う。
白き枝を強力な魔法などで迎撃を試みるマサキたちだったが、その白き枝に貫かれた魔法は掻き消される…魔力を吸い取られるように。
オフェリア「何よそれ! まったく魔法が通じないじゃない! それにこの光…前にマサキが見せたのと同じじゃ…。」
ヴァネッサ「そうさ、治癒魔法のひとつだ…ただし、敵から生命エネルギーを吸い取り、使用者を回復する…攻撃型の治癒魔法だがな。」
かつてマサキがオフェリアを回復させた術と原理は似ていて、マサキが辿り着く極地のひとつでもあった。
その術は、はるか昔に存在したとされる神代の力にも匹敵し…
生命の樹から伸びる白き枝は、マサキたちを追いかけて広がって…逃げ場を埋め尽くしていき、マサキたちは追い込まれていく。
ヴァネッサ「……マサキ…お前も気づいているとは思うが、同じ『呪怨の魔具』を持つお前なら、生命の樹と私を滅ぼすことができるぞ…私と同じ異形化をして、お前が持つ全てをぶつけて相打つ形でだがな。
やればお前は消えるが、そこの真祖を守ることはできる…さて、どうする?」
マサキ「……。」
ヴァネッサの問いに…一度オフェリアの方を見てから、彼女の方に再び振り向いたマサキは穏やかに微笑みながら答えて。
マサキ「それはできない。確かに以前の俺なら、1人で全てを背負い、自分を犠牲にしてオフェリアや他の大切な人たちを救おうとしていただろう…だがそれでは、俺のことを想い、俺のために泣いてくれる人たちを本当の意味で救うことはできない…そのことに俺はやっと気づけた。
俺は…私は、幸せにならなくちゃいけないんだ。大切な人たちに幸せになってもらうためには、私がそこにいて、まず私が幸せにならなくちゃダメなんだ。
それを私1人で叶えることは難しいのはわかっている…だけど、オフェリアやアイリスたち…それにこれから先出会う人たちと力を合わせて、その人たちを信じて共に進めば…きっと、いや絶対に光ある未来を掴めると信じてる。
……だからオフェリア…お前の力を私に貸してくれ…一緒に未来を信じて、私と共に前に進んでくれ。」
オフェリア「……ええ! 共に歩むわよ! そして必ず全員で、私たちの在るべき未来を掴みとるわよっ!」
マサキはきっぱりと拒絶する…一人で全てを背負うのではなく、悪意の闇が立ち塞がっても自分と大切な人たち、そしてまだ見ぬ仲間たちを信じて前へ進むという…並行世界や今までの自分とは違う道を選ぶ覚悟を決め。
オフェリアは想いに呼応し、右目の『魔眼・固有結界 宵闇に潜む緋い月影』を発動し…左目も緋色に染まり、真祖の力を全て覚醒させた。
オフェリア「漆黒の闇を裂き、天地を焼き尽くす真紅の月よ! 万物を睥睨し、神域より降り注ぎ終焉をもたらせ! ーーー終極魔法・紅月っ!!」
レグルスの力も借りて、空を覆い尽くす『真紅の多重魔法陣』を展開して…巨大な真紅の月を創り出し、全てを燃やし尽くす業火で生命の樹を焼き滅ぼして。
灰となった生命の樹からヴァネッサが現れ、マサキは地面を蹴り、双刃剣を手に彼女へと駆ける…それをヴァネッサは向かい打つ。
ヴァネッサ「ーーーこれが『生命の樹』のもうひとつの能力…吸収し蓄積した魔力を放出する…そのための門だ。
万物創世の光を受けよ…『生命の門 開門』」
ヴァネッサとマサキの間に『白き門』が創り出され…その門が開き、門から極大な光の魔力が放たれた。
マサキ「フェンリル! 力を私に!」
フェンリル「おぉおんっ!」
マサキ「くらえ! 終焉の十字ーーーブラッディ・クロスっ!!」
フェンリルの全ての力を貰い受け、イーリスから繋いでもらった力を極限まで高めて…彼女が手にした力は絆となり、己が行く道を…万物創世の光を切り開いた。
極大な闇の魔力と超高速斬撃によって、繰り出された双刃剣の奥義により…X状の軌跡が煌めいた。
ヴァネッサ「よくやった…さすがは我が弟子だ……マサキ…お前はもう、私がいなくても大丈夫だ…ふふ…達者でな…。」
マサキ「……あなたがいたからこそ、今の私があります…だからその教えと想いを胸に、私は大切な仲間たちと一緒に歩んで行きます…今までありがとうございました…さようなら、もう1人の先生…。」
異形の姿から元の姿に戻ったヴァネッサは、優しく穏やかな表情を見せ…マサキが出した答えを嬉しく思いながら、光の粒子となってマサキたちに見送られながら消えた……。
0
お気に入りに追加
106
あなたにおすすめの小説

〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
【ママ友百合】ラテアートにハートをのせて
千鶴田ルト
恋愛
専業主婦の優菜は、娘の幼稚園の親子イベントで娘の友達と一緒にいた千春と出会う。
ちょっと変わったママ友不倫百合ほのぼのガールズラブ物語です。
ハッピーエンドになると思うのでご安心ください。

とある高校の淫らで背徳的な日常
神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。
クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。
後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。
ノクターンとかにもある
お気に入りをしてくれると喜ぶ。
感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。
してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
身体だけの関係です‐原田巴について‐
みのりすい
恋愛
原田巴は高校一年生。(ボクっ子)
彼女には昔から尊敬している10歳年上の従姉がいた。
ある日巴は酒に酔ったお姉ちゃんに身体を奪われる。
その日から、仲の良かった二人の秒針は狂っていく。
毎日19時ごろ更新予定
「身体だけの関係です 三崎早月について」と同一世界観です。また、1~2話はそちらにも投稿しています。今回分けることにしましたため重複しています。ご迷惑をおかけします。
良ければそちらもお読みください。
身体だけの関係です‐三崎早月について‐
https://www.alphapolis.co.jp/novel/711270795/500699060
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる