騎士学生と教官の百合物語

コマドリ

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第7節 過去編 人魔大戦 キールとマサキ

第243話 信念を示す者たちよ④

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人魔大戦の行方を左右する六つの戦い…その四つ目である、シンドバッドと救国の白神聖者ボスの戦いが、異空間で繰り広げられていた。


「なんど挑んで来ようが無駄なことよ。貴様の技も動作も何もかも、すでに見飽きたのだ…それでは我には届かん。」

シンドバッド「ふん…ならば限界を超えて、人の想いの一撃をその身に届かせるまでよ!」

シンドバッドは神剣で、白神聖者は白き魔力を纏わせた両手で…切り結びぶつかり合い、その衝撃で2人の足元の地面が耐えきれずに轟音を立て破壊され、歪む。


「……くだらん…人の想いなど、絶対的な白き力の前では何の意味もなさぬよ。」

シンドバッド「ちっ…!」

白神聖者が白き魔力纏う両手を天高く掲げると、空に巨大な半透明の手が二つ現れ…

その質量を持つ手がシンドバッドに襲い掛かり…彼が躱した場所の地面を、巨大な手が抉り取る。


白神聖者は白き魔力纏う両手を動かし、半透明の巨大な手を操り…拳状、手刀、と手の形を変化させながら連続で攻撃し、地面に次々と大穴が空き…

その猛攻を何とか避けながら、シンドバッドは前進して白神聖者へと駆ける。


「我が攻めを掻い潜れると思ったか?」

シンドバッド「っ…ぬぉ!?」

白神聖者の魔力が消費されたのと同時に、白き巨大なキューブ状の物体が7個、シンドバッドの頭上に突如現れ…

その白きキューブがシンドバッド目掛けて落ちてきて、彼は何とか避けるもその衝撃で吹き飛ばされて地面を転がる。


「どうした? 動きが止まっているぞ。」

シンドバッド「ぐっ…ごほぉ!」

白神聖者の魔力が消費され、その手に作り出された白き杭を、シンドバッドに向かって投げ飛ばされる…

高速で放たれた白き杭は、シンドバッドの目でも捉えるのがやっとの速さで…体勢を崩していた彼は、それを避けることができず、その身に白き杭が突き刺さる。


白神聖者の異能と平行世界での情報…それによりシンドバッドは追い詰められていき、その怒涛の猛攻で、彼はボロボロになっていく。


シンドバッド「はぁはぁ…ぬ…ぅ…。」

「わかったか? これが現実だ…諦めて我に管理されろ、人間。」

絶望的なまでの実力差を前にするも、シンドバッドの目から光は消えていなく。


シンドバッド「……己の命の行く先は、己が決める…その気概こそが、人を人たらしめるのだ…そこに貴様の管理なんぞ、必要ない。

人の道は、人が造る…『人が人を想う境地』を見せてやる。」

「なに…?」

シンドバッドが瞳を見開くと…全身から膨大な『蒼天の魔力』が溢れ出て、それと同時に彼の髪色が『蒼天』色に変化し…集約された『蒼天の魔力波』を彼は身に纏った。


シンドバッド「ーーー真なる想いの理」

(……奴にまだこんな奥の手があったとは…しかし、なぜ今までそれを使わなかった?)

神剣を左手に構えて、シンドバッドは白神聖者を睨みつける。


「なんだその目は…気に入らんな。」

白神聖者は地面を蹴り、高速でシンドバッドへと襲い掛かる。


シンドバッド「ふっ! ぜぇいっ!」

「…!」

白神聖者の白き魔力纏う手刀を、シンドバッドは左手の神剣で受け止め…蒼天の魔力纏う右腕で、白神聖者のお腹を殴りつける。


シンドバッドの一撃を食いながらも、怯みもぜずに白神聖者は攻める…その手刀や蹴りに殴りなどの攻撃を、彼は避け続ける。

「ちっ…ちょこまかと。」

シンドバッド「はぁあっ!」

白神聖者からの攻撃の隙をつき、シンドバッドは蒼天纏う右足で奴を蹴り飛ばす。


体勢を立て直した白神聖者は、半透明の手を操りシンドバッドを襲わせる。

シンドバッド「たっ! てやぁー! ぬぉお!」

「なん…だと…。」

シンドバッド「せりゃああっ!」

手に持つ神剣でシンドバッドは、半透明の手を切り裂き…そのまま彼は地面を蹴って踏み込み、剣で斬りつけ奴に傷を与えた。


僅かに傷を負った白神聖者は後ろへと退き距離を取りながら、7個の白きキューブを出現させ上空からシンドバッド目掛けて落とす。

シンドバッド「甘いわ! つりゃあっ!」

それを高速で避けながら前進し、シンドバッドは神剣で下から突き上げるように斬りつけ、白神聖者を上空へと弾き飛ばし…

そのまま自身も高く飛び上がって追いつき、蹴りを食らわせて奴を地面へと叩き落とす。


「下等種が…!」

シンドバッド「……。」

「…!?」

白神聖者の魔力が消費され、その手に作り出された白き杭を、シンドバッドに向かって投げ飛ばされる…

先程まではほぼ反応ができなかった…しかし、高速で投げれた白き杭を彼は、左手だけで全て掴み取って防いだ。


「バカなありえん…なんだこの急激なパワーアップは…! いったいどうやってこれほどの魔力を一瞬にして得た…!」

シンドバッド「なぁに…ただ『想いを魔力に変換』させているだけだ。

元々感情の昂りによって、魔力や魔法は威力などが増減し、それにより左右される…憎悪…恐怖…羞恥…など感情は様々だ。

その中でも魔族たちには生み出すのが難しい感情が…それ故に唯一人間が勝り、生み出される中でもっとも強い感情がある…それが『愛情』だ…我の場合は、団員である家族たちだ。

そのもっとも強き想いだけを残し、それ以外の感情を断ち切った…今の我は、そのこと以外何も考えていない…それ以外の余計な感情など必要なく、ただその想いだけあればあとは何もいらぬ。

『揺れ動く想い』に力は宿らない…その人が大切に想う人を…人が人を愛する『不変の想い』ならば、その想いには力が宿り…その愛情には『上限』などない。」

フォウが見せた感情を無念無想にするのとは真逆で、常に愛情だけに身を焦がし感情を昂らせている状態で…

無念無想が『静の動き』で『武の行き着く先のひとつ』だとすれば、シンドバッドのそれは『想いが行き着く先のひとつ』で『剛の動き』だった。


「……全く理解できん…が、それは我の管理世界には不必要だ。

よし、よかろう…我が全力で叩き潰してやる…そして、人の想いなどくだらんことを見せつけてやろう。」

シンドバッド「…!」

膨大な白き魔力が白神聖者の全身から溢れ出し、集約された『白きの魔力の波』を奴は纏い…そして顔全体に巻かれた白き包帯から、白き右ツノが現れた。

さらに異空間に手を突っ込み…そして引き抜き、奴は『白き神剣』を取り出した。


「こうなってはもはや、加減はできんぞ…これで、完全なる決着がつく…覚悟はよいか?

さて、その力…いつまで持つかな?」

シンドバッド「望むところよっ!」

白神聖者は背中に白き日輪を発現させ、宙に浮いて超高速でシンドバッドに斬りかかる…

シンドバッドは神剣を力強く握りしめ、地面を蹴って踏み込んで迎え撃ち…

蒼天と白き光がぶつかり合い、周囲に凄まじい衝撃が走り…2人の衝突で岩などが粉々に吹き飛んだ。


シンドバッド「ふははははっ!」

2人がぶつかり合う壮絶な戦闘は轟音と、強烈な剣と魔力のぶつかり合い…蒼と白の魔力は相手を喰らおうとせめぎ合う。

降り注ぐ白き杭と白きキューブの雨により、地面に大穴が次々と空き、シンドバッドを襲う。

それを超高速で避けながら、彼は白神聖者へと斬りかかる…それを奴が受け止めると、その衝撃で暴風が起こり…

切り結び合う剣戟だけで…山が吹き飛び、地面に亀裂が走り、地震のような振動が続き…まるで天変地異のような戦いを繰り広げ。


シンドバッド「ぬっ!」

「ふっ…やはり無理をしているのは貴様の方だな、シンドバッド。

いくら貴様でも、それほどの魔力を急激に纏えば、身体の消耗が激しく持たんだろう…所詮それが人間の限界だ。」

シンドバッド「なぁに! 人の意地を見せ、貴様を倒せば、何ということはない!」

白神聖者の神剣とシンドバッドの神剣がぶつかり合い、切り結び合って…剣で撃ち合うたびに、シンドバッドの身体が軋む。

シンドバッドの攻撃は確実にヒットしているが、本気を出した白神聖者には通じていないのか…打撃はあまりダメージを与えられず、神剣でも少ししか傷をつけられず、このままではいずれ彼の方が先に力尽きてしまう…

しかし彼は、決め手となる一撃を繰り出すためのチャンスを伺っていた…そして彼が力尽きる寸前で、その時が訪れた。


シンドバッド「ふっ! ぬぉおっー!」

「がかっ!」

鍔迫り合いでシンドバッドは押し切り、白神聖者の持つ白き神剣を弾き飛ばし、奴がよろけて隙ができる。


シンドバッド「……今ある全ての技が見切られているのならば、新たな技でその道を切り開けばいいだけよ! いくぞ、裁きの時だ!

ーーー王の道は、この一太刀が造る! 波動蒼天剣っ!!」

両手を合わせて蒼天の魔力を集約し、そして勢いよく両手を広げると、蒼天の弓が空に造り出される…

さらにシンドバッドの魔力が消費すると、同じく空に蒼天の巨大な両手が造り出されて…

その蒼天の弓が、蒼天の両手によって引かれ…彼自身が矢となって、蒼き流星の如く撃ち出された。


その一筋の蒼き光は、未来への可能性を繋ぐ一太刀だった…だが…。

「……残念だが、その技も攻略済みだ…どんなパワーアップを果たしても、技の行き着く先は同じようだな。

しかし、やはり人の想いなどというのはくだらない…なぜならそんなものでは、我には届かないからだ…そして、我を手にかけようなどという思い上がりも甚だしいのだ…その傲慢さが、己が身を滅ぼすこととなったのだ。」

一度目の戦いと同じところへ、再び白神聖者の手刀が貫いていた……。
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