騎士学生と教官の百合物語

コマドリ

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第7節 過去編 人魔大戦 キールとマサキ

第240話 信念を示す者たちよ①

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人魔大戦の行方を左右する六つの戦い…そのひとつである、マリスミゼルたちとノアたちは互いの死力を尽くした戦いを繰り広げていた。


ノア&ブラッド「あははは! おそいおそい! そんなスピードじゃ、絶対に私たちに攻撃を当てることなんて出来ないよぉ!」

雷を纏うことにより反応速度や身体強化されたノア&ブラッドは…マリスミゼルの植物魔法の蔦も、リリスの攻撃魔法も剣で切り裂きながら彼女たちに襲いかかる。


ノア&ブラッド「さっきまでの余裕はどこにいったのかなぁ? その盾の娘…フランお姉ちゃんがいなかったら、もうとっくに戦いは終わっちゃってるよぉ!」

フラン「っ…くっ…!」

エネルギードレインによりエリシアの剣技も使える双子のサキュバスは、怒涛の接近戦でマリスミゼルたちを追い詰めていく…

前衛フラン…中衛リリス…後衛マリスミゼルのフォーメーションを作って対抗しているが、双子の攻撃の全てを防ぐことは難しく…

剣はフランの盾の守りをすり抜けていき、その剣閃からマリスミゼルを庇ってリリスはダメージを受けていき、戦いは防戦一方で。


リリス「くっ…私愛用の鞭がないからとはいえ、さすがに大口を叩くだけあって、なかなかやるじゃない…

普段のあなたたちの力に加えて、エリシアの力に狂化の上乗せで…私の想定していた以上のパワーアップを果たしたようね。」

ノア&ブラッド「いつまで余裕ぶってるつもり? 私たちの方がリリスたちより強い! 私たちの方が上で、リリスたちが下だということを…その身に刻み込んであげるよぉ!」

雷の速さで移動しながら双子たちは、氷と炎の魔法をリリスたちに放つ。


リリス「でもね…あなたたちの魔法は、私に通じないわよ?」

双子の放たれた魔法を同じ属性の魔法で迎撃し…高速戦闘をしながらもリリスは、双子との魔法の撃ち合いは劣っておらず…相殺し、魔法攻撃では無傷で。


ノア&ブラッド「くっ…さすが魔王六武聖の夢魔女帝…魔法の勝負じゃ、まだ敵わないか…でもエリシアお姉ちゃんの力をプラスした、私の速さには対応できないよねぇ!」

リリス「っ…!」

魔法戦ではリリスに敵わないとわかるや否や、双子は近接戦に切り替えて剣技を主軸にしながら攻めを強める…

フランがその攻めから2人を守るも、時間が経つにつれてダメージを負っていき…マリスミゼルの魔法もリリスの魔法も、雷纏う双子の剣には通用せず万策が尽き…

これで決着かと思った瞬間、リリスはにやりと微笑んだ。


リリス「……ふふ、ざんねん…どうやら時間切れみたいね。」

ノア&ブラッド「…? 何を言って…。」

リリス「マリスミゼル…『誤差の修正』などは終わったかしら?」

マリスミゼル「……ええ、時間を稼いでくれたフランやあなたのおかげで『解析/アナライズ』が完了しました…一応あなたにも感謝はしておきます。」

ノア&ブラッド「だから何を言ってるの!」

纏う雷の力をさらに強めて速さを上げ、それに加えてフェイントもいれ、先程よりも鋭い動きで攻撃を仕掛けて…もはや対応はできないはずで、しかし…。


ノア&ブラッド「なっ…!?」

双子が動いた先にはすでに、マリスミゼルの蔦攻撃で先回りされていて…それをなんとか避けるが、避けた先にもすでに先回りの攻撃が設置されていて…双子は初ダメージを受ける。


リリス「情報解析はマリスミゼルの得意技でね…解析の時間さえ彼女にあげれば、敵の攻略法を探し出してしまうほどにね。

特にエリシアマニアのマリスミゼル相手に、エリシアの力を使うとは相性が最悪…いや、最高だったわね。」

マリスミゼル「私がエリシアを好きなのは否定はしませんよ、事実ですから。

そのエリシアとの差異…リーチの差…あなたたちの思考パターン…雷魔力のフルパワーも全部計算済みです。

エリシアの剣技などで戦う以上、もはや私には勝てません…残念ですが、あなたたちの勝機は今完全に消えました。」

ノア&ブラッド「ぐっ! う、うそだ…こ、こんなことが…あるわけ…! だ、だったらこの魔法で…!」

解析により双子の動きの全てを見切った、マリスミゼルの猛攻により、戦況は逆転して双子はマリスミゼルに圧倒される…

双子は、まだマリスミゼルに見せていない炎と氷魔法攻撃を繰り出す。


リリス「はいはい、無駄よ。」

しかし、それもリリスによって完全に防がれ…さらには攻撃に加わったリリスと、マリスミゼルの連携プレイにより、双子は防戦一方に。


ノア&ブラッド「う、うそだうそだうそだっ! なんで敵同士で、双子の私たち以上の連携ができて…!」

マリスミゼル「一応…本当に一応は、好敵手…ではありますからね…不本意ですが。

それとエリシアとなら、この女よりもっと上な連携ができますよ。」

双子以上に息の合ったコンビネーションを見せ…マリスミゼルたちの猛攻により、双子たちは息を切らしながら地に膝をつき…終局で。


リリス「妹ちゃんもおつかれさま…あなたの盾の守りには、本当に助けられたわ。

……ノアとブラッド…あなたたちの才能は認めてるわ、純粋な力だけなら『狂化』と『エネルギードレイン』で私たちの上をいってるかもね…でも戦いは、それだけで勝てるほど甘くないのよ。

それをわからない、今の現時点のあなたたちでは、私たちには絶対に勝てないわ…そんなのじゃ私の後継者としては、まだまだよ。

敗因は、夢魔女帝である私と…マリスミゼルと妹ちゃんのエリシアに対する『想い』を甘く見過ぎたから…これで詰み、よ。」

ノア&ブラッド「ぐ、ぐぅぅ…! 認めない…みとめないみとめなぃ! っ…ネットア!」

ネットア「はいはい…かしこまりました。」

マリスミゼルとフラン「っ…!?」

勝敗が決したと思った瞬間…ネットアが双子の指示を受け、抱きかかえているエリシアへとナイフを向けて…

誇り高い魔族である彼女たちならそんなことはしない、そう正常な状態であれば…しかし狂化されて洗脳された彼女たちは、誇りなど関係なくいくらでも卑怯な手段を使う。


リリス「……私の愛する同胞たちに…あなたたちにそんな行動をさせる奴を、私は心の底から許せないわ…。」

ノア&ブラッド「ーーー雷獣翔斬…エリシアお姉ちゃんの全身全霊の技…この技で死ねるのなら本望でしょっ!!」

マリスミゼル「(私は…また彼女を助けられない…? いやだ…私は…エリシアを…!)

ーーっ! エリシアっ!!」

雷獣が如き雷を天に掲げた剣へと纏わせ、その一撃をマリスミゼルたちに振りかぶり放つ…避けることも許されないその狂刃が迫るなか、マリスミゼルはエリシアの名前を心の底から想いを込めて叫んだ……。

…………。

………。

……。

マリス…の声が…聞こえる…

また私はマリスに心配を…またマリスに迷惑かけているのか…?

やはり私は…マリスの足を引っ張ることしか…できない…のか…?

いや…違う…私は…今度こそ私がマリスを…!

…。

……。

………。


ネットア「…っ!? か…はぁ…!?」

エリシア「……すまないネットア、手荒な真似をしてしまって…。

フランっーーマリスたちを頼むっ!」

ノア&ブラッド「なっ!?」

フラン「ーーはい!姉さまっ!」

マリスミゼルの声と想いで、洗脳を打ち破ったエリシアは、ネットアのお腹に強力な一撃をいれて、彼女を気絶させた…

エリシアは、フランにマリスミゼルたちを守ってくれと叫び…その想いを受け取ったフランは全身から魔力を放出し、盾を手に双子の雷獣の一撃を受け止め…爆発に飲み込まれた…。


フラン「……盾使いに1番必要なこと…まずは自分の身を守る…それが出来なければ、大切なものを守ることなど出来るはずがない…そうでしたよね、エリシア姉さま。」

エリシアと同じく『紫色の雷』を纏い覚醒したフランが、ノアとブラッドの渾身の一撃を防いでみせた…『絶対に自分が生き残り、姉であるエリシアの大事な人たちを傷つけさせない』という想いの全てで…。


ノア「エリシアお姉ちゃんの技を…見様見真似…で…!?」

ブラッド「私たちの洗脳から…エリシアお姉ちゃんが逃れられる…わけが…!」

リリス「……人の想いは、時に私たちの想像を超えてくるのよ…そしてその想いに触れ、私たちもまた在り方を変えていく…

それを示す一撃を見せてあげるから、歯を食いしばりなさい…大丈夫よ、ただ戦闘不能になる程度に抑えてあげるから…♪

……我が身に芽生え、宿し愛の欠片、其の想いの翼は、我が新たなる命の輝きなり…

星海切り裂き、集え、星の輝き、一筋の閃光となりて、魂を震わし世界に轟けっーーースターダスト・ブレイカー!!」

魔族の闇属性とは対極にある、光属性の集束砲撃魔法が放たれ…人の想いに触れ、何かが変化し始めたリリスの一撃で、決着した……。
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