229 / 365
第7節 過去編 人魔大戦 キールとマサキ
第228話 千の雨
しおりを挟む
かつてキールが指揮をし、その部下たちがいる西砦の最前線…今そこに千近くの魔獣が迫っていた。
ここが崩されると西側の砦は全て壊滅する…しかし、これだけの魔獣の大群を相手にするだけの戦力など、もはや王国騎士団には残っていなかった。
それでもキールから託された砦を死守しようと、彼女の副官の1人であるエイデンとその部下たちは戦闘準備を始め…負傷兵や戦火に追われた民たちを砦の中に避難させていた。
「……。」
そんな中1人で砦の外に出て行き、魔獣の大群の元へ歩いて行こうとする…褐色肌に灰色の髪、闇色の瞳をした幼い少女がいた。
「あら…どうしてこんなところに、こんな小さな子が…あなたはここで何をしてるの? 早く避難しないと危ないわよ。」
その少女に声をかける…腰まである赤髪に、赤のレオタード型騎士服を身に纏った女性がいた。
その問いに少女は振り向き、光ない瞳で赤髪の女性を見つめながら話し始めた。
「パパもママも戦いに巻き込まれて死んじゃったの…だから私も今から死のうと思って。」
その少女から返ってきた言葉を聞いて、赤髪の女性は一瞬悲しみと辛さの混じった表情を浮かべ…しかしそれはすぐに消え、彼女は少女と話を続ける。
「そっか…なら、お姉さんと一つ賭けをしよっか? お姉さんがあの魔獣全てやっつけたら、あなたは私と一緒に砦に戻る…それで、あなたは私のものとなる…というのはどうかな?」
「…? そんなのできるわけないじゃん…1人であの魔獣を全部やっつけるなんて…それこそ『奇跡』でも起きない限り。それに…私があなたのものにって、どういう意味?」
「それならその『奇跡』を私が起こしてあげるわ…そしてその奇跡を見せたら、あなたはもう勝手に死のうとするのは許さないわ…なぜなら、あなたは私のものになるからよ。
……あなたが1番辛いというのはわかってるわ、それこそ生きていたくないくらい…それでも私は、あなたに生きて欲しいの…これは私の身勝手な願い。この賭け、してみる?」
魔獣の咆哮がもうそこまで近づいて来ているなか、少女は考え込んで…そして答えて。
「……なんで今日会ったばかりの私のために、そんな親身になってくれるのかわからないけど…いいよ、私なんかのためにお姉さんが命を賭けるんでしょ? なら私の命もあげる。
でもお姉さん死んじゃうよ? 今からでも私を置いて1人で逃げた方がいいよ?」
「それは、あなたと私の境遇が似ているからかしら…まあ、それがなくても人としてあなたを見殺しにするなんてできないわよ。
ふふ…心配してくれてありがとう。あなた、名前は何て言うの?」
「アメリア=シンクレア」
「いい名前ね。私はレイン…レイン=ウイングよ。それじゃあ、少し下がってなさい。」
アメリアの頭を微笑みながら優しく撫でて、赤髪の女性は魔獣の大群の方へ歩いていき…
キールから…そしてミクから…この砦で兵の指揮及び、防衛時の対応を任された【赤い閃光=千の雨】のレインが1人で、魔獣の群れの前に立ち塞がった。
「さて…キールさんやミクから引き受けた以上、ここはやらせはしない…【千の雨】レイン…これより二つ名通り暴れさせてもらう。」
【赤い閃光】の二つ名と共に、レインにはもう一つ…聖剣使用時の二つ名があった。
背中に聖剣を発現させ、レインは右手を天へと掲げる…すると上空に聖なる魔力纏う剣が現れ、それは一本でも魔族を消し飛ばす威力を持ち…それが千本あり空を埋め尽くす。
「……剣の…雨…これが…レインの奇跡…。」
「くらいなさい…サウザンドレイン」
レインが授かりし広域殲滅技が炸裂し…
千本の聖剣…彼女の名前レイン(雨)…まさしく戦場に降り注ぐ『千の雨』が魔獣の大群を一瞬にして滅ぼした…。
ここが崩されると西側の砦は全て壊滅する…しかし、これだけの魔獣の大群を相手にするだけの戦力など、もはや王国騎士団には残っていなかった。
それでもキールから託された砦を死守しようと、彼女の副官の1人であるエイデンとその部下たちは戦闘準備を始め…負傷兵や戦火に追われた民たちを砦の中に避難させていた。
「……。」
そんな中1人で砦の外に出て行き、魔獣の大群の元へ歩いて行こうとする…褐色肌に灰色の髪、闇色の瞳をした幼い少女がいた。
「あら…どうしてこんなところに、こんな小さな子が…あなたはここで何をしてるの? 早く避難しないと危ないわよ。」
その少女に声をかける…腰まである赤髪に、赤のレオタード型騎士服を身に纏った女性がいた。
その問いに少女は振り向き、光ない瞳で赤髪の女性を見つめながら話し始めた。
「パパもママも戦いに巻き込まれて死んじゃったの…だから私も今から死のうと思って。」
その少女から返ってきた言葉を聞いて、赤髪の女性は一瞬悲しみと辛さの混じった表情を浮かべ…しかしそれはすぐに消え、彼女は少女と話を続ける。
「そっか…なら、お姉さんと一つ賭けをしよっか? お姉さんがあの魔獣全てやっつけたら、あなたは私と一緒に砦に戻る…それで、あなたは私のものとなる…というのはどうかな?」
「…? そんなのできるわけないじゃん…1人であの魔獣を全部やっつけるなんて…それこそ『奇跡』でも起きない限り。それに…私があなたのものにって、どういう意味?」
「それならその『奇跡』を私が起こしてあげるわ…そしてその奇跡を見せたら、あなたはもう勝手に死のうとするのは許さないわ…なぜなら、あなたは私のものになるからよ。
……あなたが1番辛いというのはわかってるわ、それこそ生きていたくないくらい…それでも私は、あなたに生きて欲しいの…これは私の身勝手な願い。この賭け、してみる?」
魔獣の咆哮がもうそこまで近づいて来ているなか、少女は考え込んで…そして答えて。
「……なんで今日会ったばかりの私のために、そんな親身になってくれるのかわからないけど…いいよ、私なんかのためにお姉さんが命を賭けるんでしょ? なら私の命もあげる。
でもお姉さん死んじゃうよ? 今からでも私を置いて1人で逃げた方がいいよ?」
「それは、あなたと私の境遇が似ているからかしら…まあ、それがなくても人としてあなたを見殺しにするなんてできないわよ。
ふふ…心配してくれてありがとう。あなた、名前は何て言うの?」
「アメリア=シンクレア」
「いい名前ね。私はレイン…レイン=ウイングよ。それじゃあ、少し下がってなさい。」
アメリアの頭を微笑みながら優しく撫でて、赤髪の女性は魔獣の大群の方へ歩いていき…
キールから…そしてミクから…この砦で兵の指揮及び、防衛時の対応を任された【赤い閃光=千の雨】のレインが1人で、魔獣の群れの前に立ち塞がった。
「さて…キールさんやミクから引き受けた以上、ここはやらせはしない…【千の雨】レイン…これより二つ名通り暴れさせてもらう。」
【赤い閃光】の二つ名と共に、レインにはもう一つ…聖剣使用時の二つ名があった。
背中に聖剣を発現させ、レインは右手を天へと掲げる…すると上空に聖なる魔力纏う剣が現れ、それは一本でも魔族を消し飛ばす威力を持ち…それが千本あり空を埋め尽くす。
「……剣の…雨…これが…レインの奇跡…。」
「くらいなさい…サウザンドレイン」
レインが授かりし広域殲滅技が炸裂し…
千本の聖剣…彼女の名前レイン(雨)…まさしく戦場に降り注ぐ『千の雨』が魔獣の大群を一瞬にして滅ぼした…。
0
お気に入りに追加
106
あなたにおすすめの小説

〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
【ママ友百合】ラテアートにハートをのせて
千鶴田ルト
恋愛
専業主婦の優菜は、娘の幼稚園の親子イベントで娘の友達と一緒にいた千春と出会う。
ちょっと変わったママ友不倫百合ほのぼのガールズラブ物語です。
ハッピーエンドになると思うのでご安心ください。

とある高校の淫らで背徳的な日常
神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。
クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。
後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。
ノクターンとかにもある
お気に入りをしてくれると喜ぶ。
感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。
してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
身体だけの関係です‐原田巴について‐
みのりすい
恋愛
原田巴は高校一年生。(ボクっ子)
彼女には昔から尊敬している10歳年上の従姉がいた。
ある日巴は酒に酔ったお姉ちゃんに身体を奪われる。
その日から、仲の良かった二人の秒針は狂っていく。
毎日19時ごろ更新予定
「身体だけの関係です 三崎早月について」と同一世界観です。また、1~2話はそちらにも投稿しています。今回分けることにしましたため重複しています。ご迷惑をおかけします。
良ければそちらもお読みください。
身体だけの関係です‐三崎早月について‐
https://www.alphapolis.co.jp/novel/711270795/500699060
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる