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第7節 過去編 人魔大戦 キールとマサキ
第228話 千の雨
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かつてキールが指揮をし、その部下たちがいる西砦の最前線…今そこに千近くの魔獣が迫っていた。
ここが崩されると西側の砦は全て壊滅する…しかし、これだけの魔獣の大群を相手にするだけの戦力など、もはや王国騎士団には残っていなかった。
それでもキールから託された砦を死守しようと、彼女の副官の1人であるエイデンとその部下たちは戦闘準備を始め…負傷兵や戦火に追われた民たちを砦の中に避難させていた。
「……。」
そんな中1人で砦の外に出て行き、魔獣の大群の元へ歩いて行こうとする…褐色肌に灰色の髪、闇色の瞳をした幼い少女がいた。
「あら…どうしてこんなところに、こんな小さな子が…あなたはここで何をしてるの? 早く避難しないと危ないわよ。」
その少女に声をかける…腰まである赤髪に、赤のレオタード型騎士服を身に纏った女性がいた。
その問いに少女は振り向き、光ない瞳で赤髪の女性を見つめながら話し始めた。
「パパもママも戦いに巻き込まれて死んじゃったの…だから私も今から死のうと思って。」
その少女から返ってきた言葉を聞いて、赤髪の女性は一瞬悲しみと辛さの混じった表情を浮かべ…しかしそれはすぐに消え、彼女は少女と話を続ける。
「そっか…なら、お姉さんと一つ賭けをしよっか? お姉さんがあの魔獣全てやっつけたら、あなたは私と一緒に砦に戻る…それで、あなたは私のものとなる…というのはどうかな?」
「…? そんなのできるわけないじゃん…1人であの魔獣を全部やっつけるなんて…それこそ『奇跡』でも起きない限り。それに…私があなたのものにって、どういう意味?」
「それならその『奇跡』を私が起こしてあげるわ…そしてその奇跡を見せたら、あなたはもう勝手に死のうとするのは許さないわ…なぜなら、あなたは私のものになるからよ。
……あなたが1番辛いというのはわかってるわ、それこそ生きていたくないくらい…それでも私は、あなたに生きて欲しいの…これは私の身勝手な願い。この賭け、してみる?」
魔獣の咆哮がもうそこまで近づいて来ているなか、少女は考え込んで…そして答えて。
「……なんで今日会ったばかりの私のために、そんな親身になってくれるのかわからないけど…いいよ、私なんかのためにお姉さんが命を賭けるんでしょ? なら私の命もあげる。
でもお姉さん死んじゃうよ? 今からでも私を置いて1人で逃げた方がいいよ?」
「それは、あなたと私の境遇が似ているからかしら…まあ、それがなくても人としてあなたを見殺しにするなんてできないわよ。
ふふ…心配してくれてありがとう。あなた、名前は何て言うの?」
「アメリア=シンクレア」
「いい名前ね。私はレイン…レイン=ウイングよ。それじゃあ、少し下がってなさい。」
アメリアの頭を微笑みながら優しく撫でて、赤髪の女性は魔獣の大群の方へ歩いていき…
キールから…そしてミクから…この砦で兵の指揮及び、防衛時の対応を任された【赤い閃光=千の雨】のレインが1人で、魔獣の群れの前に立ち塞がった。
「さて…キールさんやミクから引き受けた以上、ここはやらせはしない…【千の雨】レイン…これより二つ名通り暴れさせてもらう。」
【赤い閃光】の二つ名と共に、レインにはもう一つ…聖剣使用時の二つ名があった。
背中に聖剣を発現させ、レインは右手を天へと掲げる…すると上空に聖なる魔力纏う剣が現れ、それは一本でも魔族を消し飛ばす威力を持ち…それが千本あり空を埋め尽くす。
「……剣の…雨…これが…レインの奇跡…。」
「くらいなさい…サウザンドレイン」
レインが授かりし広域殲滅技が炸裂し…
千本の聖剣…彼女の名前レイン(雨)…まさしく戦場に降り注ぐ『千の雨』が魔獣の大群を一瞬にして滅ぼした…。
ここが崩されると西側の砦は全て壊滅する…しかし、これだけの魔獣の大群を相手にするだけの戦力など、もはや王国騎士団には残っていなかった。
それでもキールから託された砦を死守しようと、彼女の副官の1人であるエイデンとその部下たちは戦闘準備を始め…負傷兵や戦火に追われた民たちを砦の中に避難させていた。
「……。」
そんな中1人で砦の外に出て行き、魔獣の大群の元へ歩いて行こうとする…褐色肌に灰色の髪、闇色の瞳をした幼い少女がいた。
「あら…どうしてこんなところに、こんな小さな子が…あなたはここで何をしてるの? 早く避難しないと危ないわよ。」
その少女に声をかける…腰まである赤髪に、赤のレオタード型騎士服を身に纏った女性がいた。
その問いに少女は振り向き、光ない瞳で赤髪の女性を見つめながら話し始めた。
「パパもママも戦いに巻き込まれて死んじゃったの…だから私も今から死のうと思って。」
その少女から返ってきた言葉を聞いて、赤髪の女性は一瞬悲しみと辛さの混じった表情を浮かべ…しかしそれはすぐに消え、彼女は少女と話を続ける。
「そっか…なら、お姉さんと一つ賭けをしよっか? お姉さんがあの魔獣全てやっつけたら、あなたは私と一緒に砦に戻る…それで、あなたは私のものとなる…というのはどうかな?」
「…? そんなのできるわけないじゃん…1人であの魔獣を全部やっつけるなんて…それこそ『奇跡』でも起きない限り。それに…私があなたのものにって、どういう意味?」
「それならその『奇跡』を私が起こしてあげるわ…そしてその奇跡を見せたら、あなたはもう勝手に死のうとするのは許さないわ…なぜなら、あなたは私のものになるからよ。
……あなたが1番辛いというのはわかってるわ、それこそ生きていたくないくらい…それでも私は、あなたに生きて欲しいの…これは私の身勝手な願い。この賭け、してみる?」
魔獣の咆哮がもうそこまで近づいて来ているなか、少女は考え込んで…そして答えて。
「……なんで今日会ったばかりの私のために、そんな親身になってくれるのかわからないけど…いいよ、私なんかのためにお姉さんが命を賭けるんでしょ? なら私の命もあげる。
でもお姉さん死んじゃうよ? 今からでも私を置いて1人で逃げた方がいいよ?」
「それは、あなたと私の境遇が似ているからかしら…まあ、それがなくても人としてあなたを見殺しにするなんてできないわよ。
ふふ…心配してくれてありがとう。あなた、名前は何て言うの?」
「アメリア=シンクレア」
「いい名前ね。私はレイン…レイン=ウイングよ。それじゃあ、少し下がってなさい。」
アメリアの頭を微笑みながら優しく撫でて、赤髪の女性は魔獣の大群の方へ歩いていき…
キールから…そしてミクから…この砦で兵の指揮及び、防衛時の対応を任された【赤い閃光=千の雨】のレインが1人で、魔獣の群れの前に立ち塞がった。
「さて…キールさんやミクから引き受けた以上、ここはやらせはしない…【千の雨】レイン…これより二つ名通り暴れさせてもらう。」
【赤い閃光】の二つ名と共に、レインにはもう一つ…聖剣使用時の二つ名があった。
背中に聖剣を発現させ、レインは右手を天へと掲げる…すると上空に聖なる魔力纏う剣が現れ、それは一本でも魔族を消し飛ばす威力を持ち…それが千本あり空を埋め尽くす。
「……剣の…雨…これが…レインの奇跡…。」
「くらいなさい…サウザンドレイン」
レインが授かりし広域殲滅技が炸裂し…
千本の聖剣…彼女の名前レイン(雨)…まさしく戦場に降り注ぐ『千の雨』が魔獣の大群を一瞬にして滅ぼした…。
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