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第7節 過去編 人魔大戦 キールとマサキ
第204話 アグレゴからの助言
しおりを挟むオーレリア「っ…ぐっ…かはぁ…! げほ…ごほっ…! あぐ! んぁ…ぁ…!
(くっ…身体に力が…いや…ランやスリスさまが人質に取られている以上 私は逆らえない…
今の私には剣もない…キール隊長も…誰も助けてくれる人は…いない…何も…ない…
再会も果たせずここで…終わってしまうのか…? もっと賢い選択もあったかもしれない…だが…それでも…私は…。)」
お腹を蹴られ髪を掴まれながら首に小刀を当てられ…リーゼの時にも感じた死がそこまでやってきていて…それでも何もできない…そして誰もそばにいない…それがより恐怖となり身体が震えてしまう…
ミレイを見捨てるということは…私としてある限りはできない…ただ…最後に思う事は…私の頭が賢ければ…私にもっと力があれば…で…恐怖と自身の無力さを痛感させられながら…私はゆっくりと目を閉じた…。
オーレリア「っ…くぁ…はぁはぁ…。」
しかしなぜかアグレゴに庇われ、私は命を奪われることはなかった…震えた身体に力が入らず、私はぺたんと地面に崩れてしまい…
キール隊長たちがそばにいないということもあるが…いつもあるはずの…そばに剣がないという不安感がより私を弱くしていて。
オーレリア「……い、いえ…謝る必要はありません…自分が何かを言える立場ではないことはわかっていますので…それに…彼が言ったことが事実なのも理解しています…
先ほどの質問の答えとしては…私が奴隷として一番足りていないのは、そういう『自覚』ができていないところなのでしょう…
しかし…そうですね…彼の言葉を借りるのなら…なぜ私を優遇するのですか…? 自分で言うのもなんですが…アグレゴ…さま…が庇うほど…私に価値があるとは思えないのですが…。」
なぜかアグレゴに謝られ、私は少し驚きながらも彼が言っていることは事実だと言って…実際のところアグレゴでなければ、私はすでにここで何回も命を落としていただろう…
アグレゴから最初に質問された足りないところは、彼が言った奴隷の作法なのだろう…感情のままに動いてしまう私には向いていない…
そして疑問に思う…実際に今の私は振る舞いも全然奴隷らしくなく、反抗的な態度と見られていても仕方がない…
それなのにアグレゴはなぜ自分の立場が悪くなるはずなのに、先程は私を庇ったのだ…? リンゴ殿が言っていた『私の身分や地位』に関係するのだろうか…? でも王子であるミレイより私の方が価値あるはずないのだが…。
ーーーー
アグレゴ「そうだな……まあ、いろいろあるがよお。俺はお前を見込んでんだ。…今日はもう下がれ。
理由を知りたきゃ、その陰気な『アグレゴ…さま…』ってのをいい加減スラスラ言えるくらいになってから、もう1度問い直してみろ。
オーレリアちゃんは、まずそっからだ。
聞いてる俺も不快だが、ブラッシュ辺りならそりゃお前…なあ?
……ああ、あと。オーレリアちゃんの話はわかったし、本気でミレイを助けたいってのもわかったわ。
俺の方から、幹部会を説得しとく。…4,5日ほどなら稼げんだろ。
ただしだ。そりゃ結局時間稼ぎ。
ミレイを助けたけりゃ、その間に、オーレリアちゃんが調教師として本気でミレイを『雌』に仕込め。
さっきブラッシュが言ってたことは裏を返せばヒントでもある。それを攻略しちまえば、奴も少しは見直すはずだ。
『しかしだ、ミレイの1人称は未だに『俺』。
言葉使いや仕草も、まだまだ雄のままだ。
雌の自覚が全く足りてないことが伺えるな。
客がミレイみたいなのに求めてんのは、ロリ属性を生かした、甘々の媚びだったり、幼さだ。
あとは、元雄として弄られたときに興奮する無様さとかな。
勝ち気な反応や、元王子としての反応はゴミにしかならない』…ってやつだな。
調教のやり方がわからないなら、他の調教師にアドバイスを聞きに行ってもいいしな」
当初に見せた恐怖と悪辣さが嘘のようにオーレリアを気遣い、その思いを汲んで彼女の助命嘆願を正式に聞き入れ、真剣な表情でアドバイスまで送る。
アグレゴ「……だがよお。俺に出来るのはそこまでだ。
失敗すりゃ、ミレイと纏めてオーレリアちゃんと俺は纏めて失脚。悲惨な末路を辿るはずだ。
それに調教師としてミレイを仕込みつつも、奴隷としての教育は受けてもらう。ハードな毎日だわ。
それでもやるかあ?」
ーーーー
オーレリア「私を…見込んでる…? あっ…そ、それは…はい…精進します…って…えっ…ほ、本当ですか…!?」
実際私の言葉が詰まっているのは気づいている…だって私は心だけは奴隷になるつもりはないからだ…しかし…私の何を見込んで…?
ミレイの処分について、アグレゴからそれを引き伸ばしてくれると言われ…私は驚きながらアグレゴの話を最後まで聞いて。
オーレリア「……もちろんやらせてもらいます…私がミレイたちにそんな末路を辿らせはしません…理由はわかりませんが…ありがとうございます…アグレゴさま…。」
もともと私の身がどうなろうとランやミレイたちだけは…と思っていたから今更だ…むしろ私だけでは何もできなかった…だからアグレゴの提案は渡りに船だ…
理由はわからないけど…助けてもらって私の想いを汲み取ってもらい…そのためのアドバイスや自身の身を賭けて私のための時間を稼いでもらってるのだ…
私を辱めたりしたことはどうでもいい…ただランたちに恐怖と辱めを与えたことについては許せはしない…そしてアグレゴが悪ということは今も変わらない…
だがそれでも…打算があるかもしれない…奴がしてきた悪事は消えない…が彼にここまでしてもらったからには、騎士としてそのことについてだけは心からのお礼を言って…そして一度くらいならと私は…さま…とちゃんと呼んで。
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