騎士学生と教官の百合物語

コマドリ

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第7節 過去編 人魔大戦 キールとマサキ

第203話 アグレゴとブラッシュ

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オーレリアを始めとする3人が捕縛は、奴隷墜ちをして3日目の夕刻。そしてミレイの処刑まで残り2日。

この日、既に見切りをつけられたミレイはもちろん、朝から調教があるはずのオーレリアでさえ、何の音沙汰もなく夕刻まで来ていた。


そのため気分転換を交えて、2人はお互いに親睦を深めていた。

朝を迎え、日が昇り、そして瞬く間に夕刻。

これまでお互いが歩んできた道、理想をかけた信念、信頼を与えた仲間、自分の責務。

2人が相手に親しみを持つのにそうはかからなかった。

最初こそ主君と見ていて固かったオーレリアは、昨日ミレイを抱いたこと、本人の願いもあり、気さくに、まるで姉のように接した。

また、ミレイ自身も本来は家臣と理解しつつも、安心して頼ることのできる存在に甘える心地良さ、雌化された身体を受け入れてくれたオーレリアに、妹のように親しみを込め接していた。


ミレイ「もう!そんなにからかって!俺だって、あの時は本当に恥ずかしくて、顔から火が……!」 

そんな中、扉がノックされ乱暴に開けられると野太い声がその時間の終わりを告げる。

『オーレリア、アグレゴ様が呼んでる。広間だ』

準備を手早く整え男とともに部屋を後にするオーレリアにミレイは『あ、あの……気をつけてねっ。オーレリア…待ってるから……』

と心配げな表情を浮かべて見送る。


道すがら今回オーレリアを連れて歩く男は、いつも下品な視線を送るものたちとは異なり、全く興見なさげに視線を合わせようともせず、更に距離を取ったままアグレゴのいる広間に送り出した。

部屋の奥の中心に据えられている王座にふんぞり変える組のボスはオーレリアを見つけると手招きして、彼女を側に近寄らせる。


アグレゴ「いや~オーレリアちゃん、今日は悪かった。

本来なら、奴隷の作法のお勉強をさせてやるつもりだったんだがよお。

ミレイの処分方法で幹部会が紛糾しちまってなあ。

俺はやっぱり、いつも世話になってる上客に無償で『取扱自由』でやるってのがいいと思うわけさ。今後の毎度ご贔屓にみたいな。

だが、他のもんはよ?

王族の1人であることをバラして、『首を晒す』ことで組織の威信をみせるとか。

もしくは、他の奴隷への見せしめを兼ねて『オーク族の洞穴に捨てちまう』とかよ。

まあ、長引いた。

結論は明日の採決に持ち越しだなこりゃ。

だから、今からオーレリアちゃんの調教を行ってやろうかなってとこなんだわ」

ダルそうにあくびをしながら疲れたのか、でっぷりした身体を椅子に預ける。


アグレゴ「そんでよ。その足りない頭で、こうしたいとか、これ身に付けたいとか希望あるわけ?

奴隷としての作法にもいろいろあんでしょ。

ほら、昨日奴隷としての心がけがなんとか発言してたろ。

意識高い系の奴隷の考え聞いとこかなって。

まあ、どうすっかは俺がきめっけどよ」

ーーーー

オーレリア「ふふ…あの時のミレイが可愛かったのは本当のことだろう?」

今日はまだ一度もアグレゴたちに呼ばれていなく、何かあったのかと気になっていて…そして離れ離れになってしまっているランたちのこともすごく心配で…

その不安を気にかけてくれたのかミレイが色々と話しかけてくれて…自分も不安であろうにその心遣いに感謝しながら、気分転換に…だけどお互いの親睦が深まる…笑顔で温かな時間が流れて。


オーレリア「む……わかりました。すぐに準備をしますので、お待ちください。

ミレイ…ふふ…心配してくれてありがとう…ミレイこそ私がいない間気をつけてな…私はちゃんと戻ってくるから安心して待ってろ。」

部屋に入ってきた男にその時間も終わりを告げられ、私は言葉遣いを意識しながら部屋を出る準備を始め…

部屋を出ようとすると心配してくれたミレイ…彼女を安心させるように私は優しく微笑み、彼女のことを気遣いながら部屋を後にして。


オーレリア「(ふむ…此奴 他の下っ端どもとは何かが違うようだな…。)

いえ…その分 身体を休めたり、ミレイの調教に時間を回せましたので……なるほど…です…一応 私からも報告しておきます…

私も調教というのは初めてで慣れないところもありましたが…今のところは上手く彼女を雌に堕としていけてる…はずだと思います。」

いつもの下品な視線を全く感じなく、私は前を歩く男はこの組織の中でも位が上の方か? など思考しながら、アグレゴの元にやってきて。

ミレイのことについて話していたことを知り、私はミレイとした『お前を守る約束』などは伏せながら…アグレゴとした『ミレイを処分しない約束』は今も有効なのかを確認して…

初めてだからと少し自信なさげに見せながらも、ミレイが雌の快楽に染まりつつあると…判断材料してもらえるよう報告をして。


オーレリア「私への調教…えっ…わ、私が奴隷として身に付けたいことですか…?

そう…ですね…私に足りないもの…女としての色気とか…でしょうか…? 私 騎士として剣の道に生きてきましたから…そういう色気というのとは無縁な気がするので…。」

少し真剣に悩んでから私は答えていく…

キール隊長に女として見てもらえるようにと色々磨いてきたつもりだが、自分自身では女として魅力的に見えるようになったとか…そこのところがわからなくて。

ーーーー

アグレゴ「え、なに?

マジでミレイの雌化調教始めちゃったわけ?

……いや~……無理だろ。処分だ処分。

なあおい。ブラッシュ、どう思うよ?」

後ろに控えていた黒服の男に質問が向けられる。

スキンヘッドに目元が分からない黒眼鏡の精悍な佇まいの彼は整えられた髭を撫でながら言い切った。


「俺もアグレゴ様の意見に賛成だ。

……部屋の外まで漏れ聞こえていた声からは、信頼関係の構築は確かに始まったと言っていいだろう。

しかしだ、ミレイの1人称は未だに『俺』。

言葉使いや仕草も、まだまだ雄のままだ。

雌の自覚が全く足りてないことが伺えるな。

客がミレイみたいなのに求めてんのは、ロリ属性を生かした、甘々の媚びだったり、幼さだ。

あとは、元雄として弄られたときに興奮する無様さとかな。

勝ち気な反応や、元王子としての反応はゴミにしかならない。

ヤツは全くそうゆうのを、わからない役立ずだ。

第一、アイツの調教には時間が掛かりすぎる。

既に普通の奴隷調教にかける労力の3倍は、人件費、餌代を持っていかれた。

その癖に、ミレイが稼いでくる金はゼロ。

かといって、他の奴隷が稼いだ資金をミレイに回すのもナンセンス。無駄もいいとこだ。

ウチには自分で稼ぐこともできない奴隷はいらん。

何かの間違いでも起こって、アイツが売れっ子のトップランカー娼婦にでもなりゃ話は別だが……

そんな奇跡を待つより、早いとこ損切りした方が、まだマシってもんさ。

…アグレゴ様、目の前の奴隷がお気に入りなのか?

ミレイの処分は既に決定事項、俺に聞くまでもないことだ。

オーレリア、だったか。  

お前も処分されたくなければ、早いとこ1人前の奴隷になるよう励むことだ」

バッサリと非情な決断を突きつけるも表情1つ変えず、理論的に整然と言い切り、感情の籠らない声で淡々とオーレリアに警告を送る。


アグレゴ「や~っぱ、そうだよなあ……。

オーレリアちゃん、まあ元気だしなよ。

別にオーレリアちゃんは、ミレイのこと調教したかったわけでもないし、調教したいわけでもないでしょ?

最初は『挨拶』だけしたいってことだったしさあ。

オーレリアちゃんが寂しいなら、他の奴隷を同室に置いてあげるから、その子と仲良くしたらいいじゃんよ。

今のとこ、オーレリアちゃんは奴隷として態度いいから悪いようにはしないからさあ」

でっぷりしたお腹に組んだ腕を乗せながら、やや生暖かい目線を送りこれまで従順なオーレリアに対して融和的な態度を取りつつも、だんだんミレイの処分が確定事項の流れが作り出されていく。

ーーーー

オーレリア「っ…処分…そん…な…。

(人の命を…そんな簡単に扱えるなんて……私はアグレゴの奴隷だ…だからアグレゴたちに何かを言える立場ではない…それはもう嫌という程わかっている…だけど…それでもミレイを見捨てることは…何か…何か手立ては…。)」

ミレイの処分の話を突きつけられ…私は何かそれを回避する方法はないかと思考する…

だけどアグレゴに直接逆らうことは私にはできない…アグレゴから与えられた恐怖は私の心と体にしっかりと刻み込まれていた。


オーレリア「それは…っ…確かに最初は挨拶するだけのつもりでした…でも一度 調教し始めてしまうと…その…情が湧いてしまって…

だから私がミレイ…彼女の分も…いえ…それではだめなんですね……それでしたら…私と彼女をセットにして娼婦や他のお仕事をさせてもらえないでしょうか…?

1週間だけでも見極める時間をもらえれば…それで何の成果を上げられなかった時は…ミレイのことは…ちゃんと諦めます…そして調教失敗した私はアグレゴさまのお仕置き調教を受けます…そして…そこでアグレゴさまに私の…初めてを…捧げます…ので…。」

奴隷の身である私にはアグレゴに何かを言える権限がないのは自覚しているため、素直に自分の気持ちを答えながらお願いをして…もしだめなら諦めるとも伝える…でも心はやっぱり…だからキール隊長に汚れた女として見られることになろうとも…私はミレイたちを…

アグレゴたちには人としての情など価値がないものだろう…そして奴隷の私はアグレゴの下した命令には逆らえないことを身をもって理解してしまってる…だからこのお願いも受け入れてもらえないかもしれないし、それ以上ミレイのことを言えなくなるかもしれない…

それにただ自分が背負うだけでは解決できないこともキール隊長を失ったこと…そして奴隷に堕ちて嫌という程わかった…私1人では誰かを守ることもできない無力で…だから可能性があるのなら…ミレイに…誰かに頼ることを…。

ーーーー

「……てめぇ、ふざけてんのか。

ウチの娼婦は最高の技術と気概を持ってる存在そのものが『商品』の奴らだ。

金を枝につける値打ちもの。『仕込み』も工程を踏んで仕上げてる。

1週間やそこらで、そんな技術や心得を身に付けれるわけねーし、身に付けれるならコチトラこんな苦労なんてねーよ。

お前、元騎士だっけ?

剣を振り回すしか能のない脳筋ヤローが。

奴隷としての所作を身に付けれてない今のお前は、ただの『素材』。

そんなにミレイが気になるなら、てめぇも一緒に『処理』してやろうか。あ?」

歩む彼の足先から、音が響く。

オーレリアに近寄った彼は仲間の騎士2名を人質にされている安心感からか全く警戒感など持たない。


「どうなんだ……奴隷のくせに堂々と意見を述べて、更には楯突いたってことは、覚悟も出来てんだろ。なあ」

そのまま思いっきりお腹を殴り付け、彼女の身体がくの字に折れ曲がるのを見て、そのまま髪を乱暴に鷲掴み自らの顔に寄せ、もう片方の手で懐から小刀を取り出し、彼女の首もとに這わせ威圧する。

彼女の首筋が薄く切れ、ほんの僅かに赤い滴が一粒滑り落ちる。 

恐怖と悪意で支配された命の灯火の危機。

戦場には彼女の手には剣が、傍らには友があった。

しかし、今や、何もなく薄絹一枚の無力さのみが残る。  

命の終焉。

…それを止めたのは意外な人物だった。


アグレゴ「……まあ、待てよ。ブラッシュ。

ソイツはここに来て日が浅い。

無作法は許してやれ。……な?」


「アグレゴ様、コイツに甘すぎるんじゃねえか。

奴隷のくせに、アグレゴ様を前にしても土下座は愚か片膝もつかねえ。同じ目線で話しやがる。 

それをご主人様に敢えて見逃してもらってるのに、感謝の言葉は愚か、自分から積極的にいい奴隷になるにはと考え、それを振る舞うこともしねえ。

いつまで騎士気分なんだ。ああ?

あげくの果てに自分の思いだけを、堂々と主張ときた。

こんな失礼なやつ、腹が煮えくり返る。

俺が、今此処でコイツを処分する。その後はミレイだ。地獄で2人過ごしてりゃいい。

それに…いくらアンタでも、真っ向からコイツらを……特定の奴隷のみを庇う真似をすれば幹部会から異論が出るぜ。わかってんだろ」


アグレゴ「ブラッシュ」

辺りを重苦しい沈黙が支配し、2人の視線が空中で火花を散らす。

しかし、やがてオーレリアの髪はゆっくり離された。

彼女に走っていた痛みが退いていく。

それと同時に黒眼鏡に髭の男は大きくため息をついた。


「……わかったよ。アンタに任せよう。

だが、アンタがいくらワンマン経営気取ろうが、幹部会は幹部会の役割を果たす。

今の件は報告させてもらうぞ」


アグレゴ「おう。……恩に着る」

黒眼鏡の男は不愉快そうに広間を出ていき、広間にはオーレリアとアグレゴただ2人が残された。

やがて音が聞こえなくなると、アグレゴは表情を緩めてその頬に肉がついた丸い顔を歪めて気まずそうに笑った。


アグレゴ「すまねえなあ、オーレリアちゃん。

アイツは極めて優秀で調教の腕もいいが、生意気な奴には取り分け容赦ねんだ。獰猛さだけなら俺以上かもなあ。

アイツが新しく入った奴隷を見させろってゆうから、同席させたんだが……

怖い思いをさせたな、悪かった」

ゆっくり近づいて彼女の前に立ち止まると、申し訳なさげに犯罪組織の長が謝罪を表明した。
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