203 / 365
第7節 過去編 人魔大戦 キールとマサキ
第202話 騎士と博士と本物は
しおりを挟むー幕間ー
シャロン「……決着ですね」
剣を鞘に納める際の短い金属音とともに、小さく息を吐く女性の声の先には大弓を構える白衣の女性。
ヴィレーヌ「ん~。コイツで……終わりっ!」
放たれた矢は雄叫びを高らかにあげ、拳を振り上げたオークの眉間のど真ん中を貫き貫通。
そのまま後方の壁に突き刺さり、矢尻を中心に壁に大きな亀裂が瞬時に入るのを見届けたかのように、膝から敵が崩れ落ちる。
ヴィレーヌ「やれやれ。僕はこうゆう荒事は苦手なんだけどな。
あそこでしょ?眠り姫が入ってる箱。
手早く済ませて、ラボに帰ろう。
シャロンちゃんなら出来るよ!」
シャロン「博士。さりげなく私に丸投げしないで下さい。
あ、こら。ゆ、弓を収納しない!
まだ何があるかわからないですよっ」
呆れた顔を浮かべながら魔族の屈強な護衛の屍を避けて目的地の扉の前に進む騎士と、その後を鼻歌まじりに陽気な様子で進む魔族。
騎士は自分の後ろから聞こえてくる声。
『リリスを助けた借りは何がいいっかな~♪僕としては、お金ってゆうよりは彼女から奴隷を貸し出してもらって~……いや、それより~……♪』
自らの主の現金な態度、そしてすっかり助けた気でいる様子にため息をつきながら部屋の扉を開いた。
目先には幾つもの等身大の長方形の箱が壁に立て掛けられるようにして、安置されているものの、真新しく魔力が強い1つが開け放たれて、お目当ての彼女が傷だらけでグッタリとその身体を横たえているのが見えた。
ヴィレーヌ「………」
シャロン「リリス様っ、しっかりなさって下さい。
今、手当てを……!!」
慌てて駆け寄るシャロンの目の前を一条の弓が通り過ぎ、女帝の腹部に突き刺さる。
驚きで眼を見開く騎士は言葉もなく、主を見つめ、もう1度女帝を見つめ直す。
すると眠りついた彼女の身体は腹部を中心に、ピシッ…ピシッ…と、亀裂が入り、崩れ落ちれまるで砂時計が全て落ちた後のような粉末と。
小さな四角形の紙に『お馬鹿さん♡』と書かれたカードのみがそこに残った。
ヴィレーヌ「……っ!っ!っ!」
うつむきながら、何やら暗いオーラを滾らせながら拳を震わせる主に慌てて騎士はかけより、心配そうに声のトーンを強め呼び掛ける。
ヴィレーヌ「あ、あ、あの盗賊サキュバス~っ!!!」
シャロン「……え?」
予想外の主のリアクションに敵地にも関わらず間の抜けた声を出してしまう自分を抑えこみながら、事情を話すように促す。
ヴィレーヌ「コレさ……。
僕の学者人生の経験を結集して開発した、『身代わりの魔法』なんだけど。
発動には触媒が要るから1度しか使えないのさ。
……その触媒、僕のラボにあったはずなのに……
強盗オーレリアちゃんもビックリの泥棒っぷりだよ
うっ……もうダメだ。僕をココに放置してくれ、歩きたくない。やる気がおきない……土に返してくれ……もう、白衣もビリビリに破いてくれ……」
シャロン「いや、何を言ってるんですか。
……でも……」
項垂れる主にやや同情するも、心配はしない。
この人は私が大好きなんだ。
……まあ、恥ずかしくはあるが、デレたら絶対元気でるだろうし。
しかし、その結果はつまり、1つの疑問が生じる。
シャロン「本物のリリス様は、どこに……?」
0
お気に入りに追加
106
あなたにおすすめの小説

〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
【ママ友百合】ラテアートにハートをのせて
千鶴田ルト
恋愛
専業主婦の優菜は、娘の幼稚園の親子イベントで娘の友達と一緒にいた千春と出会う。
ちょっと変わったママ友不倫百合ほのぼのガールズラブ物語です。
ハッピーエンドになると思うのでご安心ください。

とある高校の淫らで背徳的な日常
神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。
クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。
後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。
ノクターンとかにもある
お気に入りをしてくれると喜ぶ。
感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。
してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
身体だけの関係です‐原田巴について‐
みのりすい
恋愛
原田巴は高校一年生。(ボクっ子)
彼女には昔から尊敬している10歳年上の従姉がいた。
ある日巴は酒に酔ったお姉ちゃんに身体を奪われる。
その日から、仲の良かった二人の秒針は狂っていく。
毎日19時ごろ更新予定
「身体だけの関係です 三崎早月について」と同一世界観です。また、1~2話はそちらにも投稿しています。今回分けることにしましたため重複しています。ご迷惑をおかけします。
良ければそちらもお読みください。
身体だけの関係です‐三崎早月について‐
https://www.alphapolis.co.jp/novel/711270795/500699060
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる