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第7節 過去編 人魔大戦 キールとマサキ
第187話 ランとオーレリアの絶望
しおりを挟む近くにいた柄の悪い、いかにもゴロつき風格の男はスリスとランの服・鎧を受けとると炎の初級魔法でそれを灰に変えてしまう。
「お前らにはこんな贅沢なもの、勿体ねぇよ♪長い付き合いになるかもしれないしなあ。
ま、お前らが大人しく従っておけば、誰も消えずに済むからさ。その調子で頼むわ♪
そうそう。見てわかったろうけどよお。アグレゴ様の機嫌は損ねない方がいいぞ~……おっかねぇだろ?」
ゴロつきの男は、機嫌よく笑いながらオーレリアの肩に馴れ馴れしくパンパン♪と叩き、親玉の命令を素直に聞いたことを褒めつつ、親玉に逆らわないよう警告をする。
スリスとランは、胸と股間を手のひらで隠しながら、敵の舐めるような視線に晒されつつも表情は対照的だった。
『先ほどの自分が動こうとしたことを見抜かれ、1人を消させてしまったことは勿論だが、このような事態に陥る前にもっと上策を提案出来たはずだ。イークレムンを励ましたいところだが、下手に口を動かせば、全員を更に危険に晒す可能性がある…。
何よりこんな下衆どもに、裸を見られるとは…!イークレムンに片棒を担がせるやり口そのものにも、吐き気がする…!!』
思考を羞恥と怒りで満たし、頬を赤らめうつむくスリス。一方のランは、顔面を蒼白に染めて裸にされ小さく震えていた。
親玉…アグレゴ様と呼ばれた男に対して、口を開いてしまう。
ラン「なん、で……?」
小さく震える声は、止まることが出来ない。
ラン「どうしてそんな簡単に、命を扱えるの…?なんで…?
ざ、罪悪感はないの…?無抵抗の女の子たちが、あなたに、なにかするの…?
人の命、なんだよ…?」
強力な力を持つが戦場でしか戦ってこなかった彼女は、人が持つ『純粋の悪』に触れてしまいある感情が芽生えさせた。
恐怖という、人が根源的に持つ感情を。
ランを見て、ソファに腰かけた太った男は頭をボリボリと書いて小さくため息をつく。
アグレゴ「そりゃあ、まあ……。特に理由なんて……なあ?
楽しいからじゃねえか?実益と享楽を兼ねた、お仕事。
狩りや畜産農家に似てるな。
雄や雌を捕獲して、俺ら好みに仕込んでいく。反抗心が強いのは最高だな。心をへし折った時の顔がヤバいほど、チンポにくる♪
それに反抗心が強い雌ほど、心をへし折ってやったとき従順で役立つ家畜になるしなあ。
それに、成長する過程には、俺らも喜びを感じるし、その過程で利益もでる。
お前らも家畜に、情なんてかけないだろ?」
特になんら感じることはない。普通のことだと。
淡々と話すアグレゴは残酷なほど、罪悪感を感じていないという様子を見せる。
『イークレムン……!せめて、これくらいは…!』
ランの話に気を取られている間に、スリスは胸が露になるのも構わず片手を外し、ぎゅっっ!とオーレリアの手のひらを握る。
『負けてはダメ…!諦めないで…!』そう励ますように。
アグレゴ「で。そこの気力を取り戻しかけてるリーダーちゃんよ。
そこの男。刀持ってるだろ?
そう、それ。
それで、お前の仲間のどっちか刺せや。
ほら、早くしろ」
辺りに一瞬の沈黙が流れ、オーレリアにも、ランと同様に戦場とは全く異なる『純粋な悪』が降り注ぐ。
迷うオーレリアを見て、アグレゴは『くっくっく♪あーはっはっは♪』と高笑いをする。
アグレゴ「あ~、リーダーちゃんの顔、面白い。
…嘘だよ、嘘♪そんなことしなくていいよ♪
でもなあ、お前がちゃんと言うことを聞いてくれないとそうなるんだわ。
その軽い頭で、理解できたわけ?
とりあえずさ、リーダーちゃん。
リーダーちゃんも、服を脱ごうか?
ほら、早くしろ早く~。時間かかるの嫌いよ、俺」
ーーーー
オーレリア(ラン…? っ…この男…は…人の命を…なんだと思って…!)
アグレゴとランのやりとりを聞いて…私の中に…これまでにない『怒り』が芽生え…
人間の悪とは…これほどか…リーゼの方がまだ可愛く見える…こいつは生かしておけない…
『冷酷さ』が足りない…この男の首を噛み切るには…もっと『残酷なまでの憎悪』を…。
オーレリア「(あっ…スリスさま…ありがとうございます…。)
……えっーー」
手に温もりが感じられ…私は見ると…スリスさまがぎゅっと握ってくれていて…
憎悪と守れない恐怖に呑まれそうになっていた私は…心の中でスリスさまに感謝をする…
けど…その直後…アグレゴの命令の内容を聞き…私は思考できず固まる…
……私が…この手で…ランやスリスさま…を…? そんなことできるわけ…が…
でも…刺さなければ…あの娘たちが…でも…そしたらランたちが…っ…私が…私の手で…守りたい者を…傷つけ…る…?
オーレリア「っ…ぁ………は、はい…わかり…ました…あなたの言う通りにし…ます…
私は…なんでも…します…あなたの雌にでもなんでもなります…
だから2人とあの娘たちには…何もしないでください…お願いします…お願い…します…。」
……いつも戦場で うちひしがれる あの感覚が…命を預かっている仲間たちが消えるという…絶望感が襲ってくる…
命令に従い服を脱ぐ私の身体が勝手に震える…震えが…止められない…
自分のせいで…仲間や守りたい者たちの命が消えるという…恐怖に…。
私は裸を男たちに晒し…羞恥に頬を赤く染め…瞳と顔に涙と怯えを浮かべた表情で…
胸と…ヴィレーヌに生やされたふたなりおちんぽを手のひらで隠しながら…
騎士としては無様で情けない許しを願う…。
……リーゼやリンゴ殿の言う通りだった…
甘さを捨てられず…冷徹にもなりきれず…どっちつかずの私のせいで状況が変わらないどころか…状況が最悪になってる…
私が来なかったら…さっきの彼女たち2人は…今もきっと……私…は…。
ーーーー
アグレゴ「お~お~♪強気で自分が強いって勘違いしてる雌を屈服させる時の、その卑屈で情っさけない態度は、いつ見てもいいもんだわ~♪
やべえぐらい興奮するわ♪
リーダーちゃんよお。ま、大人しく命令聞いとけや。
その綺麗なムチムチのケツの尻尾さえふっとけばよお。
何もお前の仲間や、コイツらを消すことはしないからよ♪」
卑劣な脅迫を持って、ランに続いてオーレリアをほぼ屈服に追い込み、彼女の無様な姿を見ると笑いが堪えられないと言った様子で周りのゴロツキたちと下品な笑い声を響かせる。
それから、そのでっぷりした身体をソファから持ち上げるとゆっくりオーレリアやランの方へ近づいてくる。
アグレゴ「……ん~でも、どうすっかなあ。
ぶっちゃけ失礼な態度を取られて、ムカついてはいるんだわ。
とりあえず、その真面目そうな雌に、『アレ』投げろ。
ストレス解消だ、ストレス解消」
黒い球体状の物体を、ゴロツキがスリスに向かって軽く投げそれが彼女の剥き出しになった柔肌に触れた瞬間。
スリス「んぎぃいいいぃい!?あががががががが!!!こ、こひゅ…っ、う、あ…」
ラン「す、スリス様っ!スリス様あっ!!」
まるで感電したかのように身体を震わせて、悲鳴を上げた後、彼女はパタリと意識を失い倒れる。涙を流して、小水を漏らした無様な姿で時おり身体を震わせる。
そんな彼女にランが駆け寄り、必死に揺さぶる。
彼女の側に転がった球体状の物質は、黒色から純白に煌めく一点の曇りもない白色へと変わり強い魔力が込められているものに変化していて。
アグレゴ「お~♪いいのが出来たな、高く売れそうだわ。
…ん?ああ、消えちゃいねーよ
『約束』は守ってるぜ、リーダーちゃん。
リーダーちゃんが態度を改めてくれたからなよ。
今の態度のままならお前らは生かしといてやるって言ったろ?
真面目ちゃんは、お前ら二匹と違って、『生意気な目』をしてたし、躾だよ。躾。
家畜にもアメと鞭っていうだろ?
…今のは、『吸爆石』っていう特殊な鉱石で、この鉱石に触れた魔力が強い人間や魔族の魔力を一気に吸収しちまうシロモノだ。
強い魔力の持ち主ほど、しっかり魔力を吸収されてコイツのように純度が高い『魔力鉱石』が出来るわけだな。
高く売れるんだ、コレ1つでお前ら王国騎士の給与の3ヶ月分はくだらねんだ♪
代わりに魔力を一気に吸われた奴は、こんな感じになんだがなあ」
スリスの魔力で構成された綺麗な白色の鉱石を手で弄びながら、2人の精神的支柱であったスリスを昏睡状態に追い込み、楽しげに笑う。
ラン「こ、怖いっ…怖いよっ……オーレリアぁ!!」
ランが耐えきれず身体を震わせて、1人の少女として相棒に抱きつく。
アグレゴ「おいおい、そう怯えるなよお。傷つくわあ。
ちゃんと俺らに『正しい態度』を取ってくれたら、こんなことするわけねだろ。
見てみろ、アイツら。
あの二匹の雌もちゃんとした態度だから、自由にしてんだろ。
拘束具も、な~にもナッシングだわ♪」
先ほどアグレゴの両側に寄り添っていた魔族は、薄絹の衣装姿でニコニコと微笑み、2人に手を降る。
アグレゴ「……それじゃ、二匹とも。
ある程度、『ルール』ってやつがわかってきたろ。
まず、俺の前で正座しろ。
いいか、その腐った耳かっぽじって聞け?
俺はよ、裏の犯罪シンジゲートを仕切ってる組の、組長ってやつなんだわ。
でだ。
末端だが、二匹ともそこに『所属』してもらおうと思うんだわ。
な~に、末端だからそんな大それたことさせねーよ。
安心しろ、危ないことなんてなんもないわ。
そこの隅の雌どもも、みんな、うちの所属だしな♪
ああ、好きな方選んでいいぞ♪
ってことで、改めて聞くけどさあ。
お前ら、うちの組に入りたいわけ?入りたくないわけ?」
アグレゴは大したことないと、おおざっぱに話ながらもどす黒い笑顔を浮かべながら『好きな方を選べ♪』と威圧的な選択を迫る。
ーーーー
オーレリア「っ……えっ…なっ…ま、待て…何をっーース、スリスさまっ! ……あっ…。」
私以外の命が失われてしまう恐怖…そして辱められた羞恥で…身体が震えてしまう…
だけど…私が辱められるだけで…2人が傷つかないなら……っ…なんで…私は従った…のに…
スリスさまが目の前で倒れ…私は身体から力が抜け…ぺたりと床に座り込んでしまう…。
オーレリア「きさ…まぁ…! っ…ラ、ラン……大丈夫だ…私がそなたらを…必ず…。
(そうだ…私がしっかりしないと…たとえこの身がどうなろうと…ランたち…だけは…
だけど…憎い…こいつもだが…何も守れていない弱い自分が一番…憎い…!)」
スリスさまに手を出したことにより…私の中の怒りが…強烈な『殺意と憎悪』の焔が灯る…
…ロス…こいつは…コロ…ス…! その身を八つ裂きにして惨たらしく…!
刺し違えれば確実に殺れる…と思った…が…怯えるランに抱きつかれ…私は我にかえる…
そうだ…『この感情に呑まれる』わけにはいかない…ランとスリスさまを守れるのは…今は私だけしかいない…
だけど…力が…欲しい…こいつも…弱い自分も…残酷に…無情に断ち切れるだけの…
そして…もう二度と…大切な者を取り零さないだけの…絶対的な力が…悪魔にこの身と魂を売って…でも…。
オーレリア「…………はい…私たちを…あなた…さまの組に入らせて…ください……でも…もう一つだけ…約束して…ください…
もし2人や彼女たちがあなた…さま…の何か気に触ることをした場合は…その全ての責任は私とし…躾や罰…辱めなどは私に与えてください…
そう『約束』していただければ…私の全てを…あなた…さまに忠誠を捧げ…あなた…さまのお役に立てる剣となることを…誓い…ます…これがその…忠誠と誓いの証…です…。」
リンゴ殿の忠告を無視して来たのは私…それで2人や彼女たちを巻き込んだのは私…
私が弱いからこうなった…だから…私が責任を償わなければならない…。
ランやスリスさまの2人や彼女たちに『何もしない…処罰は全て私に…の約束』の代わりに…私の持てる全てを賭けて男たちの役に立つことを告げ…
それが心からの言葉だというのを真実にするために…私は両手と頭を床につけ…
『男たちが見ている前で裸で土下座』という…女騎士としてこれ以上ない惨めで無様な姿を自分から晒して…完全な屈服を示し…
羞恥にまみれながらも私は…2人や彼女たちが無事な限り…都合のいい戦える駒として…従順な雌奴隷となることを…忠誠を…誓った…。
ーーーー
アグレゴ「ふぅん、お前が全部1人で背負うの。
そんなこと約束しちゃっていいわけ?
その2人だけならともかく、コイツらも背負うんでしょ~?
多分、リーダーちゃん1日でチンポ狂い糞ビッチに進化♪頭おかしくなっちゃうよ?
まあ、見せ物にすりゃいいか♪
それじゃ~、ホントにいんだな?」
ラン「そ、そんな!やめてオーレリア!わ、私を1人にしないでよ!ねえ、オーレリア!!」
ランが土下座したオーレリアを揺さぶり思いとどまらせようと、必死な表情の中、見下した態度を取りニヤニヤして最後の確認としてオーレリアの返事を引き出そうとした瞬間。
土下座した彼女の無防備な腹に、強力な一撃が走り空気が抜ける音と、ともに身体が、くの字に折り曲がる。
そのまま姿勢を崩し、力無く倒れ付し、かすれる瞳の中、後ろに影が1つ佇む。
アグレゴ「……お~い、おい。今、すげぇ面白い場面だったろ。
な~にしてくれてんのよ。
いくら⚫⚫でも、やっていいことと、悪いことあんじゃないの?お?」
意識が無くなる前にオーレリアの目に写ったのは、険しい表情で影を睨み付けるアグレゴの姿だった。
ーーーー
オーレリア(ラン…1人にしてしまうこと…すまない…だが…これ以外に今の私がとれる方法がないんだ…
だが言動から察するにこの男…私をおもちゃとし とことんまで辱めて いたぶる つもりだ…
なら私が何をされても壊れずに耐え続ければ…ランたちに危害は及ばないはず…
プライドが高そうなこいつのことだ…私が堕ちるまでは飽きることはないだろう…。)
下衆が…そう心の中で思うが…弱い自分が一番悪くて…絶対悪だから…状況を受け入れる…
力なき正義ほど…虚しいものはない…
そしてこれは…大切な人も…他の人たちも…何も守れなかった私への『罰』なのだろう…
ランにお願いされるが…私は裸で土下座という惨めで屈辱的な姿は崩さない…私が恥辱にまみれるだけで可能性が残るなら…やめない…。
オーレリア「はい…全て私がーー!? く…ぁ…っ…げほっ!!」
誓いを交わそうとした瞬間…お腹に衝撃と痛みが走り…私は息もできないで倒れる…
何が…起こって…く…そ…意識…が…ラン…スリス…さま…キール…たい…ちょ……。
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