騎士学生と教官の百合物語

コマドリ

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第7節 過去編 人魔大戦 キールとマサキ

第186話 オーレリアの甘さ

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ラン「はああぁああっ!」

スリス「我らを護り賜え…地断鉄壁。からの、岩砕爆流菠!」

オーレリアを中心に一点突破の構えを見せる三人は、洞窟内に蔓延る魔物を次々に倒していく。

冴え渡る剣技を披露するオーレリアは、ガーゴイルなどの硬石悪魔を一刀の下に切り捨て、隙が出来れば、そこをスリスの岩石魔法が補助を行い、防御と一斉撃破の手助けを。

不意に死角から攻撃する、グレムリンなどの大型種を容赦なくランの剣が粛清する。

急造のコンビとはいえ、中級魔物程度では彼女たちに手傷を負わせること等出来るはずもない。

まるでリンゴの警告がハッタリだと考えるくらいには、彼女たちは快進撃を続け、やがて洞窟内にも関わらず大きな赤黒い扉が彼女たちの進路を塞いでいた。


オーレリアは立ち止まることなく、剣で空気の刃。

剣撃刃をそのまま打ち込み、扉が木っ端微塵に吹き飛ぶところを一斉に三人で踏み込む。


飛び込んできた光景は洞窟内にも関わらず、薄暗いピンク色の明かりが照らし、煙草の臭いが香る場末の酒場そのものだった。

柄が悪そうな人間と魔族がともにこちらを睨み付ける中、床には大量の血液を流した少女がぐったりと倒れふし、部屋の隅には数人の人間の女性が首輪と足枷をされた状態で控えていた。

そして、ひときわ目を引くのは大きなソファに、でっぷりと太った身体を預け、両脇に薄絹の露出度の高い雌の魔族を抱き寄せた初老の男。

「で、お前ら。なんなの?人様の玄関ぶち壊すなんて、何してくれちゃってんの」

ーーーー

オーレリア「ふっ! ぜいっ! ん…ふぅ…スリスさま サポートありがとうございます。

(今のところは順調…だが…リンゴ殿のあの忠告…それに…奥からぴりつく感覚…何か嫌な予感がある…が…それでも騎士として助けを求める声から背けるわけにはいかない。)」

リンゴ殿の言葉を思考はするがその間も立ち止まりはしない…

悲鳴は奥からだ…はやく行かなければ…

剣で襲いくる敵を薙ぎ払い…そして…最後に立ち塞がった扉も問答無用でぶち破る。


オーレリア「……それはすまないことをしたな…弁償ならしよう…だがその前に話しだ。

私は王国騎士だ…ひとつ尋ねるが…これは貴様らがやったのか…?」

剣の切っ先を男に向けながら私は話を進め…

湧き上がる怒りを抑え…迂闊には飛び込まない…だがいつでも一瞬で男の首を断てる自分の間合いは保つ…

そのまま状況を確認する…首輪をされてる娘たちとこいつらの距離はある…これなら魔法で人質にされる前に守れる。

ーーーー

「はぁ?だったら何?偉い騎士様が無力な市民に剣つけて脅迫?

だいたい、そこの小娘が自分で招いた事。俺らも困ってんのよ。『稼ぎ所』が1人分減ってさあ」

軽薄な口調で丸々とした頬を歪ませながら明らかに気分を害したとばかりに、強気に睨み返す。


スリス「……!」

ラン「魔力を……っ!」

ランとスリスが、それぞれ戦闘体勢をとるのをめんどくさそうに見つめると、彼は告げた。


「……1番を処分だ。やっぱり目の前で見せたほうが早いわぁ。コイツらみたいな偉そうな雌どもにはな」

「そんなっ!?いや、やめて!やめて下さいっ!な、なんでも!なんでもしまっっっ」

部屋の隅に控えていた女性の1人が半狂乱に陥りながらも、初老の男に助命をこうも、イラついたのか彼女を蹴りつける。

彼女の首輪から、プシュッ!!と音が聞こえたかと思うと女性は白目を浮かべ泡を吹きながら倒れ付した。

その瞬間、オーレリアの目の前の光景は部屋の隅に控えていた女性たちの悲鳴と、それを見てニヤニヤと低俗な笑みを浮かべる者たちに二分された。 


「わかったあ?

俺が一言命じるだけで、コイツら消せるわけ。

その軽い頭で理解できたら、ほら。

早く武器捨てろ、武器。

床において、そこの真面目そうな女。

お前が纏めてぶち壊せ。

ん?真面目ちゃん、何かしようとしてる?じゃ、2番も処分~行ってみよ!?」

スリスの視線が気に入らなかった初老の男は、まるでゴミを捨てるかのように、気軽に人の灯火を消していく。悲鳴を上げて泣きわめく女性は、首もとから血液を流血して倒れた。

少し慌てた様子で三人は自分たちの武器を使用不能にして、ひとまず『処分』をとめる


「…よしよし。最初から、大人しく命令聞いとけばいいんだよ。

それじゃあ、そこのリーダーっぽいお前っ。

仲間の服を脱がせろ。ああ、下着もだぞ♪

脱がしたらその衣類は手近な男に渡せ。

言うことを聞かないと、どうなるかはわかってるだろうなあ♪」

オーレリアを指差して命令を下し、彼女がどういう反応をとるか面白そうに楽しみ始める♪

ーーーー

オーレリア「悪いが貴様はぜんぜん無力な市民には見えんな。

貴様…如何なる理由があろうとこんな…なっ…くっ…ま、待て! やめろっーーあ…。」

男が命令をし悪だと確定した瞬間…私は間合いを詰め奴の首を断とうとする…

が…女性が男との間に現れ…しまった…あの娘を避けていては奴の首を跳ねるだけの速度が間に合わない…!

剣を届かせる事も出来なく…蹴られた彼女を受け止めた…瞬間に彼女は何かをされ…

私の腕の中で彼女は倒れ…その光景を目の当たりにし…無力感にうちひしがれる…

こんなに…触れられるほど目の前にいたのに…私は…この娘に何も出来なかった…。


オーレリア「(っ…私の判断ミスだ…踏み込んだ瞬間に奴の首を跳ねるべきだった…

その間合いは取れていたのに…悪かどうか確認などするから…奴に隙を与えてしまって…

私のせいで…私はまた…何も守れ…ない…。)」

奴は彼女たちに近づかなくても何かをする手段があるのか…くそ…私のせい…だ…

私にはそのつもりはなかったが…どこかに『甘さ』があったのだろう…

大切な者を守る力も…隙を与えない断ち切るほどの『冷酷さ』も…私には足りてない…

私は…次の彼女が倒れるのも何も出来ずにただ見ているしかできなくて…。


オーレリア「なっ…! ま、待て…私が代わりに全てを引き受けて…っ…いや…なんでも…ない…わ…かった…。

すまない…2人とも…この状況は全て私の…責任だ…本当に…すま…ない…。」

男の指示に私は異議を唱えようとするが、唇を噛み締めながらそれに従い…ランたちに謝りながら脱がしていく…。

私がランたちの代わりになる…と言ったらきっとこいつはあの彼女たちを…今は従うしかない…だが…従っていても打つ手がない…

私の身ならどれだけ傷つこうと構わない…だけど…自分のせいでそれが仲間にも及ぶ…

そして…あの彼女たちを救えないどころか逆に危険に晒してしまっている…

私のせいで…私は…どうすれば…。


オーレリア「脱がせ…終わり…ました…私は…ど、どうすればいいでしょう…か…?」

ランたちの服を脱がせ終わり…私はそのまま男の方へと振り向く…

糸口が見えず 動けなくなった私は…どこか怯えるような瞳で…自分はどうすればいいかを男に聞いて。
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