騎士学生と教官の百合物語

コマドリ

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第7節 過去編 人魔大戦 キールとマサキ

第184話 絶対に俺は

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ー幕間ー

「うん、一言で完結♪全くセンスなし!」

竹を割ったような性格の彼女は堂々と言い切った。

そして私の表情を見て不思議そうな表情を浮かべた。


「ありゃりゃ?思ったよりショック受けてないね。

あれだけキールちゃんの力になりたいって、頑張ってたのに。

…それとも衝撃が強過ぎて、どう反応すればいいか、わからないとか?」


「…いえ、そうじゃありません。

先生は『馬鹿弟子、馬鹿弟子』ってよく言うけど、私は馬鹿じゃありませんから。

自分の才能の無さくらい、察することぐらいできます」

それは嘘偽りない言葉だった。

流れの放浪者のこの人が、村に来て1年。

教師役を買って出たこの人の生徒は、私を除いてメキメキと上達している。

特にキールちゃんは、子どもながらに魔法を利用した剣術の訓練に入っているほどで、腕前は村の自警団と遜色ないくらいだという。


「まあ……先生は思う。

君は全くの、ノーセンス。

私が教えてあげて、身につけさせてあげれたのは文字の読み書きに、人としての礼儀作法くらい。

私も無力で申し訳ないと思うけど。

根本的に『魔力が練れない体質』の君は、元来、そうならない運命だった……と、思ってもらうしかないね」


「…いえ……感謝しています。

私はここまで親身になってもらった先生は、貴女が初めてですから。」

本心から出た言葉だった。

しかし、悔しさはある。

拳に力が自然と入るのが、自分でも理解出来た。


「…君は平凡な村娘として生きる。

だけど、それは誤りではない。

キールの力になる方法は、共に戦場で戦うことだけじゃない。

彼女の帰りを待つこと。

あるいは、手に職をつけて、いつか彼女の装備を整えてあげるのも、キールの力になることに違いはない」

先生の言葉に、未来の私とキールちゃんが思い浮かぶ。

私が整えた装備に、感激するキールちゃんと、それを照れた表情で諌める私。


「君は怒るかもしれないけど、先生はその道を進める。

無理に力を求めれば、その無理は『必ず』反発作用として災厄という形で跳ね返る。

過ぎた力に代償はつきものだ。

先生は、『誰よりも』それを知っている。

君は敢えて、その道に堕ちる必要はない」

先生が肩に手を置いて気遣うような視線を注ぐ。

らしくない彼女の表情に私は、僅かに頬が緩んだ。


「…まあ、私くらいになれば『そんな力』を手に入れたら使いこなして先生より強くなっちゃうかもしれませんしね♪

勉強なら、私、トップに近い成績だし」


「調子に乗るな、馬鹿弟子。

まあ、あり得ない話だけど……そんなことがあれば、先生がボコボコにするまでさ。

…覚悟しておきなさい。いいね?」


……。

………。

「……かっ……ひゅ……!!!」

「ごっ……あぁ……ぐっ!!」

2人の人物が交差した影は、お互いの身体から相手の腕が貫通し、心臓をお互いに至近距離から潰していた。

1人はそのまま倒れ伏すが、もう1人は口から血を何度も吹き出しながらも留まり大地を踏みしめる。

呪怨の魔具は残り『5』つだ。

ここで蹴りをつける。


「っく……げほっ!こぼっ!ごほっ!」

そのまま剣を手に突進してくる女騎士をギロリと睨み付け、右手の『杖』を翳すとギョロつく目玉から強力な闇色の電光が蜘蛛の巣のように拡大して発せられ彼女を襲う。

電光が触れた壁はたちまち『腐り落ちる』。

しかし女騎士は、全く同様することなく突進を続ける。

そして腐食効果を持つ電光を連続して『斬り捨てた』。

呪いを帯びた雷撃に触れてもその剣は全く腐食することなく一瞬で距離を詰められ、禁忌の魔女の頭を割ろうと一刀が振り下ろされる。

鈍い金属音がその場に反響する。

女騎士の胸元に、ひび割れた『白翼のエンブレム』が揺れた。


「…三賢人の放つ聖魔法すら腐らせる雷撃を斬り捨てるとは……聖剣の力を更に強めたか…『千の雨』。

……この…化け物が!!」

彼女の聖剣を、左手に顕現させた呪怨の魔具の1つ『小刀』で受け止めながら、右手の『杖』で空間ごと爆発させる。


「…かくも美しい純白を理解できぬ異教徒よ。

哀れな虫にも等しい存在よ。

そのおぞましい闇の魔力……

何よりその姿。

どちらが化け物なのか……

師も嘆きますよ?」

既に右腕は『侵食』が進み、彼女の肘のあたりまでいくつもの小さな『目玉』がギョロギョロと点在し初めている。

早めに決着をつけようと魔力を練り込むと、『侵食』の副作用の激痛が走り一瞬の隙が出来た。

その隙に、両手足を刃で貫き、地面に縫い付け動きを封じたはずのもう1人。

女騎士が解放する。


「……ああ、全く、その通りだ馬鹿弟子。

だから言ったろう?

この世界の私が言うことを。

先生の言うことを聞いておくべきだった」

詠唱なしで最上位の呪文並みの威力を誇る強力な爆炎が視界を飲み込む。

仕込んでいた多重魔法陣を全力展開させるが、魔力消費が激しく右腕の侵食が更に肘を越え痛みが走る。


オフェリアに分けてもらった『3年分』は使いきった再生はもう出来ない。

だが、諦めるものか。

絶対に俺は……

キールを助ける……!!

オフェリアともう一度、会う…!!

「まだだ……!!まだ、俺は!戦える!!」
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