騎士学生と教官の百合物語

第7節 過去編 人魔大戦 キールとマサキ

第170話 オフェリアの選択

ティフィア「なに、心配いらないよ。

気づいていないだろうが、君は２日ほど昏睡していたんだ。

とうに決着は付いている。

つまりは、オフェリア君が急いで戻る必要もないという訳だ。お姉さんと2人きりという訳さ。

君も、対価を払って良いと言ってくれたことだしね♪」

オフェリアの疑問を遠巻きに断ると、彼女の肩に手を置きつつ語りかける。

しかし、瞳を閉じて小さく笑うと更に続けた。


ティフィア「だが、お姉さんも惚れた相手には弱いものだ。

本心から君が嫌がるようなことはしたくない。  

そこでだ。どちらかを選ばせてあげよう♪

…どちらも選ばないなら、速攻襲ってお姉さんにふさわしい人形にしちゃうけどね。その子たちみたいに。

自分の意思で選ぶことこそが、その者がその者であることの証明。

いわば、命の証だから」

周囲に控える黒色のピッチリ張り付いたラバースーツを纏う女たちを示しながら、一定の警告を示す。


ティフィア「さて、1つ目だ。

オフェリア君は、ここに残り『力の制御』の訓練と、お姉さんとの『交流』を楽しむ。私に惚れてしまうこと受け合いだ♪

期間はオフェリア君にも都合がある。

2週間でどうだろう。いろいろな意味で過酷かもしれん♪

終わった暁には、君の頼みごとを何でも1つ叶えてあげよう。ご褒美としてね。

もちろんお姉さんに叶えてあげる範囲内での話だが。


２つ目

こちらの場合は、２日後にはオフェリア君を解放する。

ただし、その２日間は徹底的に『狂ってもらう』♪

なに拷問ではないさ。いろいろ『実験』したいことを詰め込むだけの話。

終われば、また敵同士だ。

ここでのことは忘れていいし、お姉さんも君のことを忘れよう」

ほんの僅かに悲しげな様子を覗かせるも、またすぐにもとの様子を取り戻しコホンと一息つく。


ティフィア「さあ……答えを聞こう、オフェリア君♪」

ーーーー

オフェリア「なっ…！？ う、うそ…私そんなに長い間 気を失っていたの…！？

選ば…せる…？ っ…なるほど…この子たちの服装はティフィアの趣味だったのね…

私にこんなぴっちりスーツ似合わないとは思うけど……その言葉は…言ってみなさいな…。」

自分が2日も意識がなかったことに驚き 焦る…そ、それじゃあマサキたちは…どうなって…

最悪な想像ばかり浮かんでしまい 微かに私の身体が震えてしまう…。

ラバースーツを纏う女性たちが軽く警戒し 私の周りを囲む…

見た感じでは彼女たちがどんな力を持っているか把握できない…

さらには今の私は首輪でただの女にされてる…しかもここは敵地…

私が何をしようと 100%何も出来ずにティフィアの人形にされてしまうのは明らかだ。


オフェリア(力を封じられてる私じゃ ティフィアどころか この女性たちにも勝てない…

選択肢1番目は…交流という言い方にエロチックな響きで言われた気がするけど…力の制御に関してはマサキたちの役に立てる…。

でも2週間も待ってられない…マサキたちが心配だ…今すぐに向かいたい…だけど…

選択肢2番目の実験と狂ってもらうは…一体 何をされるのだろうか…？

人間たちにされた『拷問』や私の血の『採取』が目的ではないのは安心できるけど…

なんだろうこの悪寒は…ティフィアに弄ばれたら…私が私じゃなくなるような気がする…

マサキ…私はどうすれば……。)

２つの選択肢を突き付けられ…そして…自分の意思で選ぶことこそという…マサキから教わった言葉が彼女の口から飛び出し…

私は瞳を閉じ…そして数分後 目を開けて 彼女の選択肢に対して返事をしていく。


オフェリア「……はぁ…今更 慌てても仕方がないか…2日も経ってるんじゃあね…。

マサキたちは無事だと信じてる…なら私は私に出来ることを…自分の意思で選ぶだけよ…

あなたの『実験』とやらに少し怖気付いたのもあるけど…『格』はともかく 今の私の力じゃ悔しいけど…あなたたちに太刀打ち出来ないのはどうしようもない事実…

ならマサキたちと再会するのを遠回りして、マサキたちの力になれる『もの』を少しでも身につけておく…それがこの先で生きてくると…私はそう信じたい。

それに…あなたに大切なことを教わったのもある…そのお礼を返せていないし、それを返さないのは私の流儀に反するからね…1番よ。」

あの時 私が微かに感じていた気配…あれは今思うとおじいさんのものだった気がする…

なんであの場に居たのか知らないけど、おじいさんが居たのなら無事な可能性は…いや…マサキたちなら必ず無事でいてくれてるわ…。

なら私が無茶をする必要がない場面なはず…

実験とやらでボロボロになって無理して向かっても…最悪 足手まといにしかならない…

それに…リリスを倒した…リーゼやあのボスたちを相手にしていくのだ…今のままの私じゃ この先きっと…マサキを守りきれない…

なら私は…『吸血鬼の真祖』であることを受け入れる時…なのだと思う…

その指南の相手がティフィアなのだ…初めて出会った人生の先輩で、私と同じ身体を持つ女性…そんな彼女からなら…私も色々と学べると思う…。