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第7節 過去編 人魔大戦 キールとマサキ
第169話 どうして君たちは
しおりを挟むティフィア「……ふ。誤解しないで欲しい、オフェリア君。
お姉さんは君のことを軽い女だなんて思っていないよ。
むしろ、世界中を探しても君ほど価値がある女性はいるまい。
確固たる意思を感じさせるつつも、儚げさを健気にも湛えるその瞳。
人類を超越した存在であるにも関わらず、人に寄り添うその真心。
そして吸血鬼ならばこそといっていいのか、優しさとその純粋さ。
お姉さんは君のことを高く評価している。
君のことが欲しいのだ、それはもう。
……君が想像する以上に♪
さ、飲むといい……のど越しが通りやすいように、苦味を押さえて薫りを高めるようにして淹れてみた。
口に合うと良いのだが」
オフェリアの前で緑葉を利用して、1人分の茶を完成させると器に注ぎ、彼女の前に差し出す。
背筋の伸ばした正座と皇国の精神を体現した気品ある様子とはだけた着物のギャップそのままに、言葉を続ける。
ティフィア「……話を聞いて見るに……オフェリア君の心の中には、1人の候補がいる。
その人物の返事待ちでもあり、しかし未だにその者のことを一途に好いていると。
見上げた律儀さだ。
お姉さんには既に失われた心でもあるから、感服するよ。
聞かせて欲しい。
純粋に興味が湧いてきたよ。
どうして、そこまで待ち人を想うのか」
自らの分の器を口に運び、小さく吐息をはく。
だが、それでいて彼女は続けた。
ティフィア「ああ……でも最初に言っておくよ、オフェリア君。
君は、その候補を嫌いにはならないかもしれないが。
オフェリア君は、お姉さんにも惚れてしまう。
これは曲げられない事実だ、断言してもいい♪
お姉さんほど、君を愛してあげる者など絶対にいないからね」
妖しげな雰囲気を出しながらも人を惹き付けるカリスマ性を発揮し、微笑みつつ彼女に笑顔を向ける。
ーーーー
オフェリア「っ…// か、からかって…はないみたいね…本気で私をそんな風に見てるのなんて…あなたくらいな気がする…けど…//
え、ええ…いただくわ…んっ…こく…普通に美味しいわね…そんな姿で淹れてるくせに。」
ここまで褒められたことは初めてだから…今までのほとんどが 化け物 扱いだったから…
ティフィアの言葉に嬉しさもあるが、気恥ずかしさの方が強く…私は赤くなったままで。
恥ずかしさを紛らわせようとお茶に手を伸ばし、それを飲む…普通に…いやすごく美味しいじゃない…
でも…気品を感じながらも上乳丸出しとか、ギャップがあり過ぎて違和感しかないけど。
オフェリア「失った…? もしかしてフィリア=オックスフォードにそういった感情…気持ちを抱いてたの…?」
ティフィアが一途に誰かを好いていた気持ちがあったと言ったため、私はそれが気になったから聞いてみる…
つまりは彼女も…私と同じで人間に恋していたことがあるのだろうか…?
オフェリア「そうね…一つは私が欲しかった言葉をくれたから人…だからかしらね…
化け物の私が人間らしい…人の心があるって言ってくれて…私に歩み寄れるのは自分とかな…って言葉をかけてくれたから…。
でも今はそれだけじゃない…きっかけはそれだったけどね…
あの子は自分の身を犠牲にしてまで他の人のために頑張れる『優しさ』と『強さ』…そして『諦めない心』を持っていたわ…
あの子は自分の価値を低く見てるけど私はそうは思わない…
あの子は自分のことを『諦めた』哀れな女って言ってたけど…私から見たら『進む』ことだけはやめてなかった…
本当に諦めた者は…『そのことから目を背けて』その場に立ち止まってしまった者のことを言うのよ…
私は…頑張れなくなった…周りと違うという どうしようもない絶望を前に…目を背けて…もう全てを諦めていたの…
でもあの子は…私とは別のだけど…同じかそれ以上の絶望に1人で立ち向かってた…
それが無理かもとわかっていても…あの子は ただひたすらに、ひたむきに前へ…。
それが二つ目のきっかけ…そんなあの子に私は惹かれ…その想いも日々 強くなっていて…
私の全部を賭けて あの子を支えたいと…幸せにしてあげたいと想ってるのよ…
吸血鬼と人…たとえこの気持ちが報われないとしても…あの子が幸せを取り戻せるなら…掴めるなら…私はそれだけでいいと思ってる。」
マサキは自分の価値を低く見ているから…この際 ひたむきなあの子の良いところを…素敵なところを言葉にしていく…
差別…迫害で自分が他と違うから…と諦めてしまっていたこともティフィアに語りながら。
オフェリア「多分 今ティフィアが見ている私は…あの子のおかげでもう一度頑張り始めれた私なんだと思う…
ふふ…真祖なんて言われてても本当の私は弱いの…自分の持つ力を制御出来ずに『呑まれて』衝動のままに暴れたり…支えてくれる人がいないと立っていられないくらいね…その…ティフィアをがっかり…させちゃったかしら…?
っ…確かにあなた…ティフィアは同性の私から見ても素敵な女性だと思うわ…なぜあのボスさんに力を貸しているのか不思議なくらいね…
でもだからと言ってそんな簡単に惚れてしまうものなのかしら…いや 私 恋愛なんて初めてだからわからないのだけど…
サキュバスみたいに魅了を使ったりとか…それか…私に今刻まれてるこの淫紋みたいなの…ティフィアも使えたりするのかしら…?
愛してあげるって…どんな風に…?」
作戦である時もあるが…強がって相手を挑発するのも そのほとんどがただの威嚇だ…弱い自分を隠すための…
種としての威厳もなく、本当の私は弱虫だと知られ…ティフィアをがっかりさせてしまったかと申し訳なくなってしまう。
同性から見ても素敵な笑顔だし、気品さもカリスマ性も持っている彼女…ポンコツな私と違って麗人と呼んでいいほどの女性だ…
だからこそ私のこともそうだが、あのボスさんに協力してるのがわからないところだ…フィリア=オックスフォードにも力を貸していたみたいだし。
ーーーー
ティフィア「……オフェリア君は、その想い人を余程好いていると見えるな。
しかし、話を聞いてるとお姉さんは疑問に思うぞ。
まるで『どちらかが犠牲』にならねば、幸せが成就しないように聞こえるからだ。
その想い人は、君が惚れるだけの人格を持った者ではあるのだろう。
しかし、その者は『自分の身』を犠牲にしていると君は言った。
オフェリア君は『私の全部を賭けて』『例え自分の想いが報われなくとも』と言った。
君は、いや君たちは……どうして両方を掴み取ろうとしていないのか。
それどころか、自ら幸せをかなぐり捨てに言っていることにも気づいていないんだろう。
考えはしないのかな?
例え、どちらかが犠牲になって物事が成就され、世界が、友が、親が、民が救われ……英雄として後世にまで讃えられたとしても。
それほど信頼しあっている2人の片方が、欠けてしまえば、相手が不幸になると。悲しむ現実を。
言えばいいだろう?
『全部まとめて悪い奴をやっつけて、2人とも生き残る。それで私も、そいつも幸せになってやるんだ』
ってね。
その方が理想的だし、何より私好みだ♪」
淡々と事実のみを述べる穏やかな口調で、諭すように言葉を投げ掛ける。
ティフィア「それに、弱いところを見たからといってお姉さんの君への評価が変わることはない。
むしろお姉さんがリードしてあげようと保護欲がそそるな♪
なんなら、力の制御のやり方もお姉さんが教えてあげてもいいぞ。一応、敵同士だから有料だがね。
お姉さんも君も、神に準ずる存在であることは同じ。
完全とは言わないまでも、抑えるための強度は高めることが出来る。何しろ、もうこの戦争は終盤。
そろそろ脱落者が出るころだからな」
明るい口調で助力を申し出るも1線は引いている様子を見せ、何か思いだしたように『そうそう…』と呟き、改めて向きなおる。
ティフィア「多少の秘密があったほうがドキドキするだろう♪
具体的な愛で方については、夜までお預けだよ♪」
ーーーー
オフェリア「えっ…? っ…そ、それ…は…
ふぅ…一応 その悪い奴があなたのところの親玉なのだけどね…まあ今はそれは置いておくわ…その…ありがとう…ね…
私は今言われるまで気づかなかった…あの子の周りの人たちが帰って来て、そうしてその人たちと平和に暮らす…それがあの子の幸せなんだと思ってた…
でも…私が欠けたら…だめなのね…そうじゃないとあの子…きっと自分を責めちゃうわ…。
だから…ティフィア…私にそのことを気づかせてくれて本当にありがとう…
ふふ…やっぱりそんな考え方を持っているあなたが…あのボスさんに力を貸してるのは不思議でしかないわね。」
それが簡単ではないにしろ ティフィアの言っていることは真実だ…
マサキの想いを私は知っていたはずなのに…自分が言っている意味に気づかなかった…
だから私は穏やかに微笑みながら、アドバイスをくれた彼女にお礼を言った。
敵である彼女にアドバイスされるというのは不思議な感じだけどね…
でも…同じ存在だからかな…ティフィアにはすごく親しみが持てる。
オフェリア「リードに保護欲って…まあティフィアの方が先輩だからそう感じるのかしら…
ふふ…お姉さん…なんて私が言われるなんて思わなかったわ…不思議な気分よ。
なぁんだ…敵同士だとはちゃんと思ってるのね…それでもアドバイスしたりとあなたは不思議な人よ本当に…
一応 言っておくけど 私お金そんなに持ってないからね…冒険者や踊り子の仕事をやってるけど、困らない程度にしか稼いでないから、高額な金貨も魔族通貨ないわよ。」
初めて出会った 自分より年上で先輩のティフィア…彼女のお姉さんという響きが…なんだか…くすぐったい…。
ティフィアに制御の指南は有料だと言われたので、私はお金持ちじゃないわよと言って…
あれ…なんだか同じようなやりとりが少し前にもあった気がするような…?
オフェリア「しかし…脱落者に…夜まで…か…私としては今すぐにでも残して来た人たちを助けに向かいたいのだけど…当然 この首輪は外してくれないし、帰してはくれないのよね…?
秘密に愛でるって…何よ…そんなにすっごくエロチックなのでもするつもりかしら…?
まあ…さっきは色々と気づかさせてくれたし…その対価は払ってもいい…けど…さ…//」
ティフィアが優しくしてくれるからそう感じないが、今の私が囚われの身に変わりはない…
首輪のせいで…魔眼も…レグルスたちも…『牙』も…魔法も魔力も使えない…今の私は不死なこと以外 本当にただの女でしかなくて。
性格もいいしスタイルもいいティフィア…きっと男性だけではなく 同性でも惚れてしまうくらい素敵な女性だ…
そんな彼女に意味深に愛でると囁かれれば…誰だって『どんなことをされるのだろう』とか…想像してしまう…。
彼女は敵だけど…私に未来を示してくれたんだ…その対価は生きる者として当然 払わないといけない。
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