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第7節 過去編 人魔大戦 キールとマサキ
第168話 初源の龍
しおりを挟む「…ふふ♪
君は吸血鬼の真祖、それは知っているよ。
種族としては、あらゆる生物体系の中で最強種の一角と言っていい。
肉体を粉々に破壊しても、時が経てばまた復活する。
痛みこそあれ、滅びることはない。
君はもっと種としての格に誇りを持つべきだな。
倫理観も価値観も、君のものは人間のそれに近いようだし」
一端手を離して、少しだけ注言を混ぜながらも小さく溜め息をつく。
「だけど、お姉さんは君の気持ちがわかるぞ。
はっきり言って、君の言う『不幸』はもう超越してしまったけど経験はある。
私は私で……君と同じ『最強種』の一角だからね。
ああ……ふふ♪うん、吸血鬼ではないよ。
遥か昔から生きて名前もいろいろ変えてきたし、フィリア=オクスフォードと旅をしたこともある。
最も君と違うところは、私は種としての誇りを持っている。そんなところだ」
意味深に自己の存在を提言しつつ、自己と彼女の区別に一線を引きながらも続ける。
「うん?……う~ん、そう言えばそうだったか……うむ……」
オフェリアの挑発に自分の役割を思いだしたのか、少し悩むような素振りを見せる。
「…………辞めだ、辞め!
ことオフェリア君を『組織の玩具』にするなんて、勿体ない。
……というか全然、面白そうと思わない。
玩具は誰か適当な奴を取っ捕まえて、仕込んだ後、ボスに渡すことにする」
堂々と彼女の前で代案をぶつけると、しかし。
また熱っぽい視線を彼女に向け、再び彼女の手を取る。
「……君に惚れたんだ、オフェリア君。
組織の玩具に改宗するのではなく……
お姉さんの花嫁に改宗してあげよう♪
それなら、私も楽しいし、オフェリア君もドキドキするだろう♪」
ーーーー
オフェリア「なぁんだ…知ってたのね。
残念ながらそう簡単に割り切れるものじゃないのよ…人間と違うということは…
別に力を持つこと自体 マサキたちの役に立てるからなくてはならないものだし…
今では私がそういう存在なのだと少しずつ受け入れようとしてるけど…
いまだに私の中では『真祖』というのは忌むべきもの…ということよ。
まあ…あなたの励ましだけは…ふふ…ありがとう…とだけ言っておくわ。」
真祖ってだけで吸血鬼の中でも畏怖されるのが私という存在…
同種族でもそれだったら 本当の意味で寄り添える相手なんていない…
それに…他の種族ではそもそも私と『生きてる刻』が違う…
そう思っていたし…どこかで諦めていた…あの子と出会うまでは…
私が真祖だと知ったうえで…私が欲しかった『言葉』をくれたあの子…だから私はあの子のために自分の全てを賭けようと誓った…。
人間のそれに近いという彼女の気遣いに…私は軽く微笑んでお礼を言っておく。
オフェリア「えっ…それってどういう……『最強種』…もしかしてあなた…人間じゃないの…?
って…はぁ…!? フィリア=オックスフォードって…騎士学園の礎を作って 王国を建国した1人である…あの…
そんな人と旅をしたことがあるってあなた…いったい何者なのよ…。」
フィリア=オックスフォードの名前が出てきて、私は目を見開きながら驚いてしまう。
どこからどこを見ても姿形は人間にしか見えなく、彼女の気配からもそんな雰囲気でしか感じ取れない…
それが本当だとしら…いや…私と違って種としての誇りを持ってるのだ…本当なのだろう…
このティフィアって人物…底が見えない…。
オフェリア「は、はぁ…辞めって…あなた組織の一員なんでしょ? ボスのオーダーに簡単にそんなことを言っていいわけ?
というか誰かを捕らえて仕込むって…そんなこと私が許さな…っ…!?
なっ…惚れ…// あ、あなた さっきの本気で言ってたわけ…! いやそれより…私があなたの…は、花嫁…って…//」
ティフィアの言葉を聞いて、私はジト目を彼女に向ける…なんだか調子が狂うわね。
私なんかのために他の誰かが犠牲になるだなんてあってはならない…だから反論しようとするも彼女の言葉を聞いて固まってしまう。
その言葉の意味を理解して…私は赤くなって彼女から目を背ける…
マサキには…私から自爆での愛の告白をしたことはあっても…
向こうから先に告白とか花嫁とか言われたの…初めてだから…顔が熱くなって 目をちゃんと見れなくなってしまう。
オフェリア「あ…ぅ…// い、いきなりそんなこと言われても…だって今出会ったばかりで 私 あなたのこと何も知らないし…//
そ、それに…私には返事待ちの人がいて…だから…その…花嫁とか言われても…困る…//」
私が好きだと想っているのはマサキ…一人で必死に頑張り続けた優しいあの子を支えたい。
予想外の事態に頭も口もうまく回らない…体験したことがない状況にどうしていいかわからず、彼女に手を握られたままの私の瞳は潤んで左右に泳ぐ。
首輪もされ、淫紋も掌握され、今の私は力も持たない ただの女性でしかなく…
彼女に告白されて迫られ、赤くなりながら身体にうまく力が入らないでいた。
ーーーー
ティフィア「ふふ……ボスの命令をおざなりにするのは良くない。
だが、お姉さんは特別なんだ。
見くびってもらっては困る」
オフェリアの顔に指を這わせるようにしながら、片目を閉じてからかうような表情を浮かべる。
ティフィア「……状況は理解した。
オフェリア君の答えとしては、私のことを良く知りさえすれば、花嫁になることに異存はないということだな。
その待ち人という奴は、話を聞くに恋人ではないようだし、お姉さんが先にオフェリア君を奪ってしまうことに問題はあるまい。
まあ、例えオフェリア君に彼氏が居ようとも、彼女が居ようとも、奪い取る気ではあったが。
第1、恋人候補を待たせるというのは、それだけ他のライバルにチャンスを与えるということだ。
魅力的な女性……この場合オフェリア君だな。
君を射止めたいなら、お姉さんのように勝負は速く持ち運ぶ必要があるのは自明の理」
サワ…と彼女の耳元を弄りながら納得したように頷くと少しだけ彼女から離れ距離を取る。
そして着物を上乳が出るほど胸元までずり下げ肩を露出し、両の手のひらに拳を作ると脇腹の横に軽く構える。
ティフィア「お姉さんの豊満な胸元に目がいくかも知れんが、今回の目的は、おっぱいを見せて君の視線を奪うことではないぞ♪
先程の装いでは着物を破いてしまうからな。
目的としては、私が君を花嫁にしようとしている。
その本気度を見せつけてやるために……まずは正体を明かそう。
ふん……っ!!」
彼女が魔力を高めた瞬間、その背中から大きな翼が双翼を表す。
その翼は光沢を持った鱗に覆われ見るからに硬く、先端は大きな牙のような刺が剥き出しにつき、その威厳を更に高めるのに役割を果たしている。
ティフィア「……見ての通り、今は人間の形態を取ってはいるが、お姉さんは人間じゃない。
種族名は『龍族』。
栄華を極めた昔はどこへやら、今では絶滅危惧種扱いの種族だよ。
……お姉さんはその中でも『龍樹』と言われる存在。
初源の龍の1体でね。
オフェリア君と同じく、神に準ずる存在だから肉体を破壊されようと、時間を置けばまた復活する不死性を持っている。
ん?信じられない?
まあ、完全変化してもいいんだけど……お姉さんが龍化したら全長は100メートル超えるから、この部屋はおろかオフェリア君を傷つける。
いつか機会があったら見せてあげよう。
あまりにカッコ良くて見惚れてしまうよ♪」
そのまま上乳を露出させたまま、少しオフェリアと距離を縮め微笑みかける。
ティフィア「とまあ、これだけでもお姉さんはオフェリア君と対等の存在になり得るわけだ。
恋人の資格は誰よりも相応しいと確信しているよ。
なぜなら、君と同じように私も死ぬことが出来ない。
存在が発生した、その遥か昔からお姉さんも生きている。
君より発生が速かった分、お姉さんの方が先輩だしな。
……まずは、私の本気度は理解してもらえたと思う。
さ、座って話そうオフェリア君。」
座布団を示して、自分も彼女の前の座布団に腰を下ろす。
ーーーー
オフェリア「あっ…んんっ…と、特別…?」
ティフィアの指先が私の頬に触れ…ぴくんと身体を震わせながら、私は彼女に聞き返す。
そういえば博士として信頼されてるようだったし…何か特別な力を持っているってこと…?
オフェリア「ふ…ぁ…何を言って…っん…私なんかが魅力的なはず…あるわけ…//
た、確かにあなたのことを知らないからとは言ったけど…花嫁ってそんな簡単になれるものじゃないでしょ…お互いを愛する気持ちとか…そういうのがないと…だめ…なんでしょ…?
はぁはぁ…ふぅ…それに…私は…これでも…うん…初めてだけど…確かにこの胸のなかにある一途な気持ちを…その子に抱いてるの…
だから…改宗なんて方法で他の人に堕ちるような…そんな軽い女じゃないわよっーーって…ちょ…な、何をして…//」
ティフィアにさわさわと優しく撫でられ…私は熱っぽい吐息と声を漏らしてしまう…
淫紋は今は発動していないようだけど、首輪のせいで彼女のすることに抵抗できない。
私に触れるのを止めて少し離れた彼女に、私は自分の花嫁像を口にしていく…
花嫁になれるのはマサキみたいな素敵な女性…花嫁は愛し愛される者…
私なんかが花嫁になって愛される側だなんて…うん 想像ができない。
私は自分に芽生えた気持ちがあるからと伝えようとするも…
彼女の上乳が露出され丸見えになり…私は赤くなったまま目を慌てて逸らして。
オフェリア「本気度に正体って…いったい何をっーーなっ…!?
っ…龍族で…しかも『龍樹』ですって…!?」
翼を見せられ…そして彼女の正体を明かされ、自分の目が見開くのがわかった。
私も真祖のうちの1体で…自分では望んでないけど、世界でも特別な存在…なのだが…
初源の龍…もしかすると彼女は私より貴重種で…特別…なんじゃないだろうか…
その力も…もしかしたら『満月で狂化』した私より…上かもしれない…。
オフェリア「そう…理解したわ…私が吸血鬼の真祖だって知ってるのに『お姉さん』と言ってたから 少し気にはなってはいたけど…そういう意味だったのね…。
それに…私と同じく…死ぬことができない身体……わかった…あなたは『先輩』で正体も明かしてくれたんだもの…お話してもいいわ。」
私は、彼女が自分のことをお姉さんと呼んでいたことに納得ができた。
ティフィアは私より長く生きている…
つまりは私より…辛い目に…あの地獄の日々を過ごした歳月が長いということ…
敵であることや花嫁は一旦 置いておいて、私は腰を下ろして…彼女とお話したいと思った。
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