騎士学生と教官の百合物語

コマドリ

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第7節 過去編 人魔大戦 キールとマサキ

第167話 囚われのオフェリア

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「……く……い。……て……。

……起き……い。

……起きて下さい」

暗い部屋で。

昏睡している吸血鬼の身体が揺れる。

彼女の覚醒を促したのは、女性の抑揚のない声。

そして僅かに感じる肌寒さと、揺すられる身体。


「……起きましたか。

すみませんが、オフェリア様。

貴方の首には『魔法鉱石』付の首輪を着けさせてもらっています。

抵抗や魔法力の行使、敵対的行動は制限されますが、他は何の影響もありませんのでご容赦下さい」

彼女の眼に飛び込んできたのは、口元以外の全身を黒色のラバースーツで包まれた8人の人影だった。

顔すら覆われた彼女たちは視界が塞がれているとは思えないほど適格に行動した。

その装いから、ボディラインが強調され卑猥かつ淫靡な雰囲気をそれぞれが醸し出す中、手を差し出しオフェリアを立たせる。


「……服や、身体には『今のところ』何も弄っておりません。

それでは、こちらに。

博士が、お待ちです」

長く細い回廊を歩く。

そうして、暫く経つと1つの部屋にたどり着く。

それは東にあるとされる皇国の伝統的建築技法。

この地域、周辺では見られない作りの入り口

襖だった。

仕掛けなども何も無さそうな、和室の入口によく備えられている純白の和紙が張り付けられた、何の変哲もない入口。

襖を開くオフェリア。

広がっていたのは、畳と座布団が敷かれた、広間が中心の小さな茶室。

そして奥には一組の布団に2つの枕が敷かれた寝室が広がる。


「……ふふ♪そう身構えることはないよ、お嬢ちゃん。

お姉さんは、これでも赴きを大事にしていてね……

いきなり取って食うような無粋な真似はしないとも

まあ、君も……!」

花びらがあしらわれた質素な和装姿の黒髪の妙齢の美女は瞳を閉じたまま手元の湯飲みを口に運び味わい小さく吐息をつく。

彼女はスカイブルーの瞳をオフェリアに向けると思わず息を呑み、頬を赤らめた。  

そうしてオフェリアに近づき、彼女の手に自らの両手を優しく添える。


「……済まない、自己紹介がまだだったな。

私は、ティフィア=ミルコビッチ。

早速だが、オフェリア君。

お姉さんは君に惚れてしまった。

一目惚れという奴だ。

私と結婚してほしい」

ーーーー

オフェリア「……ん…あ…ぅ…ここ…は…。」

誰かに身体を揺らされ、私は覚醒していく…

目を開くと…目の前には8人の女性たちがこちらを見ていて、私はゆっくりと身体を起こす。


オフェリア「あなた…たちは…っ…そ、そういえば私…確かリーゼに淫紋を掌握されて…。

(ということは私…リーゼたちに囚われたということか…

この『魔法鉱石』付きの首輪とかいうののせいなのか…レグルスたちを呼んで抵抗しようとすると…うまく力が入らない…完全に無力化されてしまってるわね…。

たぶん…あれから時間はそんなに経ってないと思うけど…ネットワにエリシアさん…それに…マサキは無事かしら…。)」

どうやら魔眼までも封じられてしまっている感覚があり…今置かれている自分の状況を私は理解しつつ、彼女たちに支えられ立ち上がる。

囚われの身になったけど…今は自分の心配より 残してきた マサキたちのことが心配だ…

一緒だったはずのエリシアさんの姿が見当たらないけど…あれから状況はどうなって…。

それにしても…すごいえっちな格好をしてるわねこの子たち。


オフェリア「今のところは…ねぇ。

博士って…はぁ…わかったわよ…今の私に拒否権はないからね。

あなたたちにおとなしく着いてくわ。」

彼女たちの言葉であのボスの言葉が蘇る…

そういえば あいつ…私を洗脳して玩具にするとか言ったわね…

他の人たちを…何よりマサキを傷つけた奴らに私が屈すると思ってるのかしら…。


……ずいぶんと歩くわね…っと…これは…えっと…そう…確か皇国で見たことがあったわね…襖…だったかしら…?


オフェリア「これは…確か茶室…とかいうのだったかしら…っと…

あなたが…この子たちが言っていた博士なのかしら? 博士って聞いてたから…私はてっきりおじいさんをイメージしてたんだけど…

って……えっ…?」

博士といえばフォウおじいさんみたいな…結構歳のいった男性なのだと 私の中ではイメージがあったんだけどね…

それにしても 綺麗な女性ね…同性でも一瞬 目が離せないくらい…和服美人というやつね…

しかし…こんな女性まで組織の一員とは思わなかったわ…洗脳されてるのかしらーーって…今…この人何て言って…。

今出会った人にいきなり告白され、彼女に手を持たれてる私は動揺する…

結婚って…あれ…よね……えっ…ほ、本気で言ってるの…吸血鬼の私に…?


オフェリア「あ、あなた いきなり何を言って…いや…そうじゃなくて…

あなたのこと知らないけど…『私』だけはやめといた方がいいわ…

悠久の時を生きてきたからわかるけど…真祖…『吸血鬼』なんかと結婚なんてしても良いことなんて一つもないわ…

私みたいな化け物と結婚なんてしたら…あなたまで『不幸』にしてしまうから…。」

吸血鬼であることを知らないのかと思い…私は自己紹介を彼女にしていく…

……自分で言ってて気分が悪くなってくる…

だって私がマサキに想っていた気持ちはそういうことだから…

マサキに花嫁を望むということは、自分が生きて体験してきた経験…差別に彼女を巻き込んでしまうということだから…

マサキと出会って自分の『生まれ』を受け入れ始めれたけど…

やっぱり過去のことを思い出すと…

昔人間たちに言われた…自分は化け物で『不幸を呼び込む』だけの…

そんな存在なんだと今でも思ってしまう。


オフェリア「……それよりあなた ティフィアって言ったわね? その名前は確か…あのボスさんが言っていた名前ね。

ということはあなたが私を『改宗』させて、あなたたち組織の『玩具』にするんでしょ?

ふふっ…私 これでもAランク冒険者で真祖よ…吸血鬼をそう簡単に屈服させられるとは思わないでね。」

何をされても抵抗することも出来ないけど、私は軽く微笑んで挑発する…

自分のペースを崩されるのが嫌だからだ…フェアラートの時は調子を狂わされたけど…

せめて強がる…弱いところは見られたくないから…見せたらつけ込まれるし…それに…見せても誰も助けてはくれないから…。

首輪に身体は縛られても…これから服装や身体を弄られようと…心までは負けない。
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