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第7節 過去編 人魔大戦 キールとマサキ

第157話 彼女はそういう人間だった

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リリス「ふふ……♡さて、もう1発……♡」

「お姉様、た、た、大変ですっ!あ、お、お楽しみ中、失礼致します!」

寝室に駆け込んできた2人組の少女サキュバスはビシッと背を但すも白目を剥き快楽にショートし意識を失うエリシアを見て頬を赤らめる。

優しく微笑むとエリシアから離れ、彼女を優しくベッドに寝かせ改めて部下へと向き直る。


リリス「構わないわ♡……報告なさい」

私はその時、悟った。

予想より速いが……

『来るべき時が』来たのだと。


「はっ!館の外郭、南天楼より敵勢魔族、多数侵入!敵方には幹部のリーゼ様、フェアラート様、ベアトリーチェ様のお姿を確認っ」

「迎撃に迎ったお姉様方の魔力反応、次々に変異を起こしていますっ。恐らく敵方に取り込まれたものと推測します、リリス様、至急待避して下さいっ」

彼女たちの顔には焦りが見える。当然だ。

ともすれば、私たちの陣営はまるごと『奴』に取り込まれて道具にされるかもしれないのだ。

見積もりが甘かったと言わざるを得ない。


私を襲撃するのは、ヴィレーヌを捕まえて『調整』した後と考えていたのだけど。

……この襲撃の速さは、マーサとオーフェを保護したからじゃない。

予想以上に『魔王の目覚めが近い』ということ。

その際に、思い通りに動かない可能性のある邪魔な私を自分の駒として『調整する』つもりと言ったところか。


リリス「いいえ。アーラ…交戦中の同胞で正常なもの。及び非戦闘員を全て退避するように指示を出しなさい。

『奴』の狙いは私よ……逃げ切れるはずだから♪

ネットワ、貴女は保護していた2人を……マーサとオーフェに事態を伝えてこの館からの脱出を援護なさい。2人とも魔力はまだ回復してないわ。

ああ、『伝言』を伝えるのを忘れずにね。

私のエリシアのことも頼むわ♪きちんと逃がしてあげなさいな♪」

指示を出しながら、戦闘用の特別性のボンテージドレスを纏う。しかし、言葉の意味を理解しつつも彼女たちは動かない。


「お姉様……どうしても行くんですか、これは命令なのですか」

「せめて……お供させては貰えないのでしょうか」

リリス「ふふ♪こんな大きなステージにデビューして、お客様を楽しませるには、手練手管が未熟な貴女たちは十年早い。でも……そうね。

それなら、背中のジッパー上げて貰えない?♡」

彼女たちは別れを惜しむかのように私との僅かな触れ合いを楽しんだ。だが、時間はない。

私の思いを汲み取ったのか、二人は私から離れた。


リリス「ほら、エリシア……いつまでも寝てないの♡起きなさい♪」

ーーーー

エリシア「あ…ぅ…リリス…お姉…さま…? 私は…確か…っ…// い、いや…それより…。」

お姉さまに起こされ…身体には力が入らないけど、少しずつ思考する力が戻ってきて…

快楽に負けてアヘ堕ちして意識を失っていたことを理解し…騎士としてなんと情けなく無様だと恥ずかしくなる…

けど…なんだかお姉さまたちの雰囲気がおかしいことに気づいて…。


エリシア「お姉さまのその格好に…その2人…は…何か…あったのか…?

……私に…手伝えることはない…か…? …今はお姉さまの雌猫であるのもあるが…それがなくても…騎士として困っている者を放っておけない…。」

アクメさせられまくって力が入らなくなった身体をゆっくりと起こし…私はお姉さまの目をしっかりと見つめ…

お姉さまの雌猫としてもだが…困っている者の力になるのが騎士としての務め…それが囚われて雌に堕とされても…騎士としての私の揺るぎない信念で。

ーーーー

リリス「ふふ…♪私たちと月日を過ごして情でも湧いたの?

正直、貴女の気持ちは嬉しいけど…私も魔族の端くれ。魔族内のゴタゴタを人間に片付けさせるほど、魔族の矜持を捨てては居ないわ。

ま、貴女がサキュバスに転生してたら話は別だったけどね。

それに、た~っぷり魔力と精気を吸収されてヘロヘロでしょ♡下手に貴女が取り込まれでもしたら、それこそ消しづらいわよ。一応、貴女に愛着はあるのだし♪

いいから、ネットワに従って逃げなさいな」

アーラ「…お姉様…こちらを。『鬼炎滝の帝荊黒鞭』です」

アーラと呼ばれた少女サキュバスから、禍々しいデザインの深黒の荊鞭を受け取りながら、エリシアを見てクスクス♪笑うと、部屋の扉へと進む。

…戦場へ至る道へと。


リリス「心配しすぎ♪私だって魔王軍六武聖の一角よ?貴女なんかより、数倍は強いんだから安心しなさい♡

夢魔女帝なんて、大層な異名までついてるんだから。

…でも、ああ。そうね…」 

扉に手をかけて振り向くと、不安げに『敵であるはずの私』を心配し、見つめる彼女に不思議な気分を抱くもそれを打ち消す。

…この雌猫は。

…いや、エリシアは『そういう人間だった』


リリス「…また落ち着いたその時は、貴女の瑞々しい精力を吸わせてくれると嬉しいわ♡」

部屋の扉はそうして閉められた。

アーラと呼ばれたサキュバスが少し時間を置いて、更に部屋から退出する。

同時にもう1人の少女サキュバスが騎士に近寄り頭を下げる。


ネットワ「エリシア様。お姉様の命により、貴女、オーフェ様、マーサ様の脱出を援護致します、サキュバス。

名を『ネットワ』と申します。

早速ですが、全裸のようなその格好では心もとないでしょう。

こちらへお着替え下さい。

貴女がここに来たときに着ていた街娘衣装です。そして、こちらも……貴方の剣です。

どちらもお姉様の命により、『貴女が館を去るときのために』と、整備を済ませておりました。

お急ぎ下さい。

いくらお姉様がご出陣されたといっても、そう長くは持ちこたえられません。

化粧や髪などはそのままでお願いいたします」

無表情でエリシアに差し出されたのは、シワ1つない綺麗に整備されたワンピースタイプの衣装一式と、傷1つない磨がれた剣。

更には戦況の分析を伝えて、エリシアに急ぐように促す。

ーーーー

エリシア「まあ…そこは否定できないな…だいぶお前たちには辱めは受けたが…それでも私を壊すようなことだけはしなかった…

それにこの1ヶ月で…お前たち魔族側も一枚岩ではなく事情があることもわかった…少なくとも…ヴィレーヌやお前たちは話し合いができる者たちだと私は思ってる。

だがそれがなくても…私は騎士として困ってる者の力になりたい…ただそれだけだぞ。」

この1ヶ月で彼女たちと話していて、魔族にも色々とあるのがわかった…穏健派など…

それを踏まえての自分の感じた気持ちと…マリスと出会って定まった…揺るがない自分だけの騎士としての信念を伝えて。


エリシア「転生って…つまりはお前 私をサキュバスに堕とそうとしてたのか…いや今はそれより…全員ではないかもしれないが…私たちも力になれるはずだ…。

っ…それは…そうだが……消しづらい…か…リリス…やはりお前は…。」

聞いていた話からでは…魔王派が私たち人と戦争を指揮しているらしい…

詳しく細かい事情とかは把握できていないが…少なくとも戦うこと望んでいないリリス…穏健派とは手を取り合う道もあるのではないだろうか…。

確かにリリスの言う通り…魔力への恐怖から雷を纏うことができないことを考慮しても…今のへろへろな状態の私では足手まといでしかないこともわかってしまい…

リリスの言葉に私は…困っている者…彼女の力になれない自分に悔しさが溢れてくる。


エリシア「それは…確かに私より強かったのは身をもって知ってはいるが…しかし……あっ…リリス…。

……ああ…わかった…仕方がないから約束してやる…それと…お前になら…妹や家族を紹介してやらんこともない…

だから…約束を守るために無事でいろよ。」

リリスが強いのは知っている…だがそれでも不安が拭えないでいると…この1ヶ月で何度も聞いた…リリスがいつものノリでつぶやき…

私も…こちらからも約束を増やし交わして…どこか人らしさを感じる彼女の無事を祈りながらその背を見送って。


エリシア「むぅ…様…はなんだかこそばゆいな…気軽にエリシアと呼んでくれ。

……あいつ…いやお姉さまは最初からそんなことを考えていたのか…それに…私の…剣…。」

リリス…お姉さまが初めっから私をどうこうするつもりはなかったことを知り…私の表情は余計に彼女を心配するものになり…

やはりお姉さまは感じていた通り…高貴でどこか人らしいさを感じさせる…優しい心の持ち主だったようだ…無事を祈るしかない…。

そしてネットワに差し出された…自分の愛用の剣を見つめる…

魔力の雷を纏えなくなった今の私で元のように扱ってやれるのだろうか…いや…。


エリシア「オーフェにマーサというのは誰か知らないが…察するにリリスお姉さまの客人という感じか。

私もできるだけこの剣で…その者たちやお前たちサキュバスの力になろう…だからネットワ…どうかよろしく頼む。」

自分が囚われる前に着ていた街娘衣装のワンピースを身に纏い…

騎士の表情でネットワから…愛用の剣を私は受け取った。

ーーーー

ネットワ「はい。お姉様から…最後のご命令です。

身命をもって貴女方を絶対に脱出させます。

……まずは、北館の深部にいるお二人と合流します。

私に続いて下さい。出来る限り安全なルートでご案内致します。

それでは参りましょう」

彼女に一礼すると、ほんの僅かに寂しげな思いを抱くが彼女を誘導して一緒に部屋を退室し、駆け始める。


回廊を行くと窓の外からは対面や外郭の館から煙が立ち上ぼり、魔族同士の戦闘が続いている様子が伺うことができる。

ゴブリンやガーゴイル。リザードマンがサキュバス族と交戦するが、最も大きな特徴は、仲間同士であるはずのサキュバスとサキュバスが戦っていることだろう。

戦闘の衝撃の余波で館全体が時折、揺れるのも今という現実を思い知らされる。


ネットワ「エリシア様……いえ、エリシア。戦闘は可能な限り避け、私にお任せ下さい。

脱出用の体力は残しておかなければ、逃げるものも逃げ切れなくなりますっ」

壁を破壊して目前に現れたガーゴイルは、2人が通りすぎる頃には真っ二つに割れると、同時に私の右手の爪が光を浴びて輝く。


ネットワ「ある程度の魔物までなら…私も、倒せます、ので……」

身体が熱い。

悪魔の黒翼がメキメキと大きく広がり、私の身体が大きく『成長』し、魔力量が増大するのを感じる。

これは満ち満ちた、魔力の共鳴。

支配下にある同族たちが纏めて『強化』される、優しき悪魔の導き掌。

どこまでも甘い女帝様だ。


ネットワ「失礼しました…もう大丈夫です。先を急ぎます」

ーーーー

エリシア「……ああ…よろしく頼む。だが1つだけ…ネットワ…必ず君も一緒に無事に脱出しよう…それがリリスお姉さまの願いであるはずだからな。

オーフェにマーサという人物たちのところにだな…わかった 行こう。」

最後の命令か……私がもっと強ければ…民たちや他の者たち…戦火に哀しむ者たち全員のために剣を振るえるのに…

いや…悔やんでも仕方がない…今は魔族のくせに甘い彼女のためにできることをしよう…

私と彼女の客人たちと脱出するという…彼女が描いていた望みを叶えるために…そのために我が持てる力と剣を振るおう。


エリシア「……魔族同士の戦闘…しかもサキュバス同士が戦っている様子も見れるな…。

お姉さまから軽く聞いてはいたが…本当に過激派というのは、意に沿わない魔族たちを『洗脳』して戦争へと駆り出しているのだな…。」

鈴付き首輪は付けたまま、淫紋を刻まれた身体で館を駆ける…どうやら淫紋の効果や催眠の効力などは、一時的に切られているみたいだな…完全に消えた訳ではないが、今この時は身体に熱さを感じずに動ける。

サキュバスたちも催眠によって人の心や身体を操ることができるが…

それとは『根本的』に違う…非道な『洗脳』を施すというらしい過激派たちに…私は怒りを覚えていた。


エリシア「それは確かにそうだが…むっ…っ…!? ネットワ…その姿は…?」

確かに先程 魔力に精気などをリリスお姉さまに食べられ…吸収されたのに加え…1ヶ月も雌調教されて過ごしていたのだ…体力は少なからず落ちているはず。

ネットワの話を聞きながらも目の前に現れたガーゴイルを見て、私は剣に手を掛けた…が…ガーゴイルは瞬殺され、ネットワの姿が変化していた。


エリシア「……お姉さまの恩恵か何かという感じか…ああ わかった…このまま2人がいるところまで急ぐとしよう。」

ネットワの変化がリリスお姉さまによるものだと推測しながら…彼女とネットワに戦闘を任せ、私たちは北館へと駆けていく。
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