騎士学生と教官の百合物語

コマドリ

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第7節 過去編 人魔大戦 キールとマサキ

第154話 魔紋

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ラン「オーレリア」

馬を駆けさせながら、彼女に話を振る。

その表情は深刻さを表しているのが誰の目にもわかるほどになっているかもしれない、隠すのは苦手だ。


ラン「ここまで離れればもう見張りの手合いはいない。

だから、伝える。

あの野営キャンプには、『裏切者』がいる。

情報漏れがあるのかも。

首都までへの避難ルートへの行軍は哨戒班が確実に精査して決めてる。

敵は出ないはずなのに……

見計らったかのように規則的に出現してる。

まるで進軍を『遅らせる』ためかのように」


ラン「それだけじゃない。

……以前、強力な魔族があの野営キャンプに来ていたのを私は見た。

魔力を隠していたけど、あの隙のない振る舞いに殺気は間違いない。

顔は見えなかったけど……暗がりの中、ソイツは誰かと話していたの。

指針会議が行われた、あの『天幕』の中で。

これがどういう意味か、貴女にはわかる?」

天幕には指針会議に参加する会議長、部門責任者、近衛、兵士のみ限られた人間しか入ることは出来ない。

それはつまり……


ラン「……その現場から、更に追跡して探る気だったけど。

気付かれてお互いに一撃ずつ手傷を負った。

私はこの『魔紋』を……

奴には、私の魔力を込めた追跡マーカーを打ち込んだ。

わかる?今、私たちが向かってるのはその追跡マーカーの反応があるところなの」

ーーーー

オーレリア「どうしたラン殿? …どうやら重要な話のようだな…。

…! 裏切り者だと…? ……なるほどな…。しかし遅らせるか…理由はなんだ…?

(ラン殿の話が本当だとするなら…バルボアたちや私が感じていた感覚や…殿下の行動も納得できる…。)」

真剣な表情のラン殿からの話を聞き、私は驚きの表情を浮かべ…そして思考を始める。

裏切り者…もしかすると活動初期からの『熱波』もそれによる工作か…?


オーレリア「強力な魔族…ネミーコが言っていた謎の敵がキャンプに接触していたといったところか…?

…! 天幕の中でだと…なるほど…裏切り者がいるとするならば…上の者だということか。」

まさかキャンプに魔族が侵入していたとは…

しかも天幕の中で…ということは裏切り者は限られてくる。

……もし怪しい者がいるとすれば…。


オーレリア「なるほどな…それでは確かに手掛かりがあっても キャンプ内で話ができなかったわけだ。

私たちがすることはわかった。しかしラン殿…その魔紋とやらは…その…大丈夫なのか…?」

ーーーー

ラン「……」

馬を駆けさせる手綱に力が入る中、意識は手傷を受けた手甲の下へ向かう。


ラン「大丈夫。

今のところ身体に異常はない。

私は呪いの類いは、それなりの知識しかないから効果がわからないけど……

気にしないで、解決したらサクヤさんに診てもらうから」

彼女にとりとめもなく状態を話す。

当然だ、この紋の配置は即効性があるタイプではない。

その分、効果が発揮されたときの能力は強くはなるのだけど……今は気にしても仕方ない。


ラン「それより、オーレリア。

来たばかりの貴女に問うのは酷だと思う。

だけど、聞かせてほしい。

直感でも構わない。

貴女が怪しいと思った人物は……誰?」

問い掛けをする内に、雰囲気が重い森林地帯が姿を現し始める。

マーカーの反応が強くなる……

もう少し。

ーーーー

オーレリア「そうか よかった…だがくれぐれも無理はしないでくれ。

一時的ではあるが今は私がラン殿のパートナーだ…そなたに何かあったら、そなたを想う者たちに謝っても謝りきれんからな。

何かあったら我が剣でそなたの力になろう…だから頼ってくれると嬉しい。」

サクヤ殿の話を聞いて納得するも、いつ影響がでるかわからないこともわかり…

だから私は自身の言葉を紡ぎ、何かあれば持てる力の全てを貸すから頼ってほしい…とラン殿に伝えて。


オーレリア「……そうだな…感で人物をあげるとすればリンゴ殿…または…ネミーコだ。

理由はある…リンゴ殿は人が変わったという話…それに近衛騎士を連れずに殿下 一人で私に助言しに来たということ…

そしてネミーコに関しては…私の聞いていた話と食い違ったというところだ…基本的に彼女はキャンプを離れないと言った…

もしかしたらバルボアや私たちに極秘になってる部分もあるかもしれない…だが彼女の言葉が本当だとしたら、アイリス=レイフィールドを救ったのは誰だ…?

まあ私が今持っている情報を当てはめただけで、二人に怪しいところは話してみた感じはない…だがその辺りが引っかかってはいる。」

ラン殿の言葉に話すかどうかを迷うが、私は躊躇しながら…

そして彼女たちを疑うことは本当に申し訳ないと思いながらも…

ほんの少しだが…私が引っかかっている部分を話していく。

ーーーー

ラン「……!」

先ほど会ったばかりにも関わらず真摯な眼差しを私に向ける彼女に少し驚かされる。

キャンプ内に内通者がいると言うなら、私もその1人に入っていると疑っても良さそうなものだけど。

考えていないのか……それとも、信じてくれているのか。

とにかくそのひたむきに真っ直ぐな心に私は好感を覚える。


ラン「ん。お互いに支えあってベストを尽くそう。

私も相棒をむざむざ傷つけさせるような甘い訓練は、積んでないから」

そんな中、彼女の見立てを聞く。

やや躊躇いがちではあるが、なるほど理にかなうものだと思う。

彼女のひたむきさが分析にも現れている。

これなら、殺りやすそうだ。

……え? 

いま、私……何を……?


ラン「え、あ……そ、そう」

表情を戻し、先ほどの思案を横に追いやりながら改めて彼女の意見を考慮する。


ラン「貴方の話を聞いた限り、ネミーコの話が矛盾しているのは確かだとは思う。

それが真実なら、同時刻に彼女は2ヶ所に存在していることになるから。

冷静に考えばどちらかが偽物なんだろうけど……今のところ、見分けようもないしね。

それに、そもそもの情報が誤ってる可能性はある。

アイリスを治療したのは、ネミーコに似た別人だった。……とか」

私自身がこの野営キャンプで見た彼女は、不器用なりに人とのコミュニケーションを行い、確かな腕で非難民に笑顔をもたらす1人の人間。

王国医療兵団というより、たよりない少女といった印象だから……彼女がそんな大それたことをするとは思えないけど。


ラン「リンゴさんは……確かに今、オーレリアが話した通り以前はもう少し感情を出していたかも。

私と彼女はあまり関わりがないから、はっきりとは言えないけど……

戦況が悪化するにつれて余裕がなくなってきた……と、取れないこともないから」

近衛騎士の中でも高い実力を持つされる彼女は、その性質上、避難民ともあまり関わらない。

もし彼女が内通者なら、戦闘力においてネミーコより厄介なことになるかも。


ラン「……ありがとう。

とにかく先ずは、この先にいる黒幕を捕らえよう。

そうすれば、自然に見つかるはず

私が先行するから遅れないように付いてきてっ」

私たちは森林地帯の中に入る。

敵は……近い

ーーーー

オーレリア「そうか…ふふ なら頼りにさせてもらおう。

…? ラン殿 大丈夫か…何か違和感があったらいつでも言ってくれよ。」

一瞬彼女の様子が少し変だったから、魔紋のせいなのかと私は心配をして…

何かあったら 私が彼女を助けないとな…。


オーレリア「ああ ラン殿の言う通り 向こうの治療した彼女が偽物なのか、そもそも情報が誤っているとか可能は他にも十分ある…

この推測はただ私が持っている情報から出しただけに過ぎない…つまりは結論を決めつけれるだけのものではない。」

ラン殿の言う通りで、私と同じ意見だ…そこ以外に他に疑えるものはないのだ。

何より…キャンプに到着した時に見た 彼女の民たちへの接し方…そして話した彼女の印象…

やはり私も彼女が敵であるとは思えない。


オーレリア「……私はその時の彼女は知らないが…ただ無口や言葉のあたりが少し強いだけで疑うのは私もしたくはない…そういう人を私は知っているからな…。

何にしてもだ…ちゃんとお互いに話し合ってみないと相手のことなんてわからない…

まあつまりは他の人から聞いた話だけで、彼女を敵と疑いきるのはしたくはい。

だからネミーコについてもリンゴ殿についても…私が持っている情報と感覚だけによる推測程度に思ってくれたらいい。」

リンゴ殿…どこか彼女には マサキ隊長にも似た雰囲気を感じる。

そして今話したことはどこまでいっても推測の域を出ない…だがラン殿の話を聞かされたら、民たちの安全のために疑うのは仕方ない…

だから…この真実がわかった時 彼女たちに疑ってしまったことを謝罪をしよう。


オーレリア「ああ 了解した…ちゃんとした真実は自分たちの目で見極めよう。」

ラン殿に遅れないよう…私も馬を駆けさせ後ろをついて行った……。
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