騎士学生と教官の百合物語

第7節 過去編 人魔大戦 キールとマサキ

第148話 リリスの気遣い

ー幕間ー

見下ろした先にあるステージ上には３日間限定の絶品料理があるということで、客の入りは普段より上々だしサキュバスたちも楽しそうだ。

思う存分、日頃の欲望をぶつけている。

主役の二人もなんだかんだノリノリ♡のようだし。

リリス「でも……マーサ、貴女は変わりつつあるのね」


あのドM幹部をなんとか撤退させつつも、ごまかす過程でアクメをキメたオーフェが気絶してる中、彼女とのやり取りを思い出す…。


リリス「ねぇ、マーサ。どうしてこの子に、そこまで肩入れするのよ？ ……以前までの貴女なら、失敗した奴は味方であれ駒であれ、ためらいもなく切り捨てたはずよね。

『足手まといはいらない』って。

私も前回、貴女に会ったときは……今回とは比べ物にならないくらい殺気を浴びてた覚えがあるわ。

さっきの取引も正直なところ、決裂するものだとばかり。

それともオーフェを利用して、何かしら企んでいるのかしら」

スレンダーな裸体にローブ１枚姿の彼女は、その問いに少しだけ驚いたような表情を浮かべた。


マサキ「ああ……まあ、そうだよな。リリス、いろいろとお前にも済まないことをした。世話をかけたな」

…驚いた。この女は間違っても魔族に『済まない』などと言う言葉を持ち合わせてはいなかったはずだ。

それに表情にも、はっきりと嘘偽りのない『悔恨』の表情が見受けられる。


マサキ「以前の俺は……何もかも１人で背負って全てを解決しようとしてた。

『俺１人の犠牲で済むなら安いもんだ』ってな。

恩人や世界を救えるなら事実、それは安い。

実際、正規通りの手順を踏んじまえば犠牲もそこそこ出る。

だからこそ『呪怨の魔具』をこの身に取り込んだし、人とも距離を置いた。

どうせいなくなる人間と親しくなっても、それはかえって悲しみが深くなるだけだ。無駄だってな。

だけど……」

一呼吸おいて、寝息を立てるオーフェの横に座ると彼女の頭を優しく撫で初める。


マサキ「こいつが俺に……『可能性』を見せてくれたんだ。

諦めていた可能性を。もう１度歩み始める道を。

ポンコツの癖に、必死に俺なんかにしがみついて心に寄り添ってな。

俺に身体をズタズタにされて、消されるところだってのに。諦めなかったんだぜ？俺と違ってな。

そこまでしてくれたオフェリアを無下に扱うほどは、俺だって墜ちちゃいねーし。

残りの短い寿命くらい、こいつに捧げるのも悪くねーって思った。

そしたら、俺の中でいろんなものの見方が変わりつつある。

それだけだ」

穏やかな表情で見つめ返すマーサは、以前と違い親しみやすい雰囲気を醸し出していた。


リリス「いい相棒なのね……♪オーフェとはもう交尾したの♡？」

するとマーサは飲んでいた水を口から派手にブハッ！と吹き出すと、僅かに頬を染めてこちらを睨み付ける。


マサキ「どうして、そーなる…//あーゆうのは好きな人同士でやることだろーが。

仮にアイツが俺を好きだとしても。

俺はアイツに『寿命を捧げてもいい』って思っただけだぞ」

リリス「いや、それ…………」

このクール系美人。自分が言ってることを理解しているのだろうか、アホなのか。

それ、ほぼ結婚と同意義だと思うのだけど。


リリス「まあいいわ♡これから行われるショーが楽しみね♪」

しょうがない淫紋をちょっと変態チックなものに変えておこう。やれやれ、一肌脱いであげましょうか…♪